2018年05月01日

★2018年4月に読んだ本。

★2018年4月に読んだ本。
4月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3603
ナイス数:637

脇役本 増補文庫版 (ちくま文庫)脇役本 増補文庫版 (ちくま文庫)感想
時代に彩りを添えた俳優(特に脇役)の追悼本を紹介する1冊。ただ本のあれこれを提示したいのか、人物、人柄を紹介したいのか、よく分からない。筆者の並々ならぬ熱意は伝わるのだけど。その多くは記憶の彼方にいってしまった人々。せめて顔立ちがはっきり分かる写真と各人の略歴は欲しかった。取り上げている人々は確かに忘れがたいのだが。解説を寄せている出久根達郎の「万骨伝(饅頭本にみる人物記。葬式饅頭同様、故人を顕彰する自家出版物)」と同じ趣向。せっかくの人びとが題材、読みものとしてもうひと工夫して欲しかったところだ。
読了日:04月30日 著者:〓田 研吾
後醍醐天皇 (岩波新書)後醍醐天皇 (岩波新書)感想
「建武の新政」というと教科書的には後醍醐天皇が武家から権力を一旦取り戻した事象、になる。だが本書では後醍醐帝が目指した別の側面を見る。身分を超えてつきあう場を作り、中から優秀な官僚を選抜して行う宋学的な天皇親政。理想ではあっても、現実は違う。科挙の制なく、登用の機会が限られていた上、堂上、武士にとっては意に反する存在でしかない。評伝というより、なぜ彼はそう考えたかを探った1冊。幕末、水戸学の中で南朝正統論が育ったり、延長で北一輝のような一天万民の思想が生まれたり。歴代の天皇の中で特異。改めてなぜ、と思う。
読了日:04月28日 著者:兵藤 裕己
スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書)スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書)感想
米社会でのスポーツの役割を分析した1冊。中世社会の経験のなく世界一の工業国になった国で、スポーツが地域の公共財として、人種間の差別を是正する機序として等、機能してきた歴史を辿る。筆者のいう民主主義と資本主義の架け橋の役割だ。時には利益至上に傾き、機能を失ったこともあるし、今、危機を迎えている。米もWASPが人口の過半を失うのも時間の問題。米中心主義はスポーツの在りようにも見える。翻って日本。人口減少局面にあって、電通のためのスポーツビジネス、という論理だけでは難しいのは自明だが、解も蓄積も見えぬままに。

読了日:04月25日 著者:鈴木 透
中世倭人伝 (岩波新書)中世倭人伝 (岩波新書)感想
「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」から「世界史のなかの戦国日本」を経ての転進。本書は「朝鮮王朝実録」を資料に、東シナ海を行き来した人の動きを描く。そもそも日本では国境という概念があったのかどうか。海を渡る舟があれば行き来は自由な訳で、孤立した極東の島国という先入観を変えてくれる1冊になっている。倭寇という概念も教科書的なものには収まらないのがよく分かる1冊。筆者のいう「境界人」という存在は存外、大きな足跡を残しているように思う。
読了日:04月24日 著者:村井 章介
日露近代史 戦争と平和の百年 (講談社現代新書)日露近代史 戦争と平和の百年 (講談社現代新書)感想
筆者が蓄積してきた研究の成果を近代の日露関係に絞り、簡潔に1冊にまとめた。舞台回しに登場するのは伊藤博文、後藤新平、松岡洋右の3人。伊藤の時代は帝国主義全盛の時代、干戈を交えても利権が一致すれば妥協できた。革命期を挟んで後藤の時代はスターリンが登場するがなお互恵関係と言える中にあった。松岡の時代は日本が逆に国際的に孤立を深めた時代。描いた構想は今となっては理解しがたい。でもそれぞれの時代で隣合う国としてどう交わっていくのかの思慮がある。日英、日米基軸は分かるが、従属ではない道を模索した前例、奇貨措くべし。
読了日:04月23日 著者:麻田 雅文
国体論 菊と星条旗 (集英社新書)国体論 菊と星条旗 (集英社新書)感想
筆者の「永続敗戦論」から一歩進んで、戦前と戦後の日本に相似を分析するというのが論旨。「国体」の一語で示した概念を天皇と国民の関係性で解き、「天皇の国民」の明治、日露戦争後から「天皇なき国民」の大正、「国民の天皇」となった昭和という分析を紹介。天皇の位置に米国を代入すれば同じ進展を示していると見立てる。戦前の社会が崩壊したのと同様、冷戦以降の現在も同じ状況ではないかと分析する。対米従属のみを不磨の大典と崇める危うさ。筆者は今上天皇の2016年8月の言葉に日本の成熟の鍵を見ている。日本の夜明けはまだ遠いか……
読了日:04月19日 著者:白井 聡
ペンの力 (集英社新書)ペンの力 (集英社新書)感想
読巧者2人よる日本文学概論。三島由紀夫、大逆事件、大正デモクラシーなどのテーマに沿って話が進む。就中、読ませる章は日中戦争期の戦争と文学。作家の従軍が資金面でも優遇された制度で、「生きてゐる兵隊」の件や、居留民保護名目の出兵と「在外邦人保護」の類似性など、2人の語らいは示唆に富む。事実を自在に繋ぐ作家の「勘」、というか。また今日的にも、浅田が南スーダン日報問題に言及しているが、蓋然性が高いだろう。集英社の「戦争と文学」のシリーズは手を伸ばしたい優先順位に入ってきた。何より自身が読んできた作家の月旦が秀逸。
読了日:04月16日 著者:浅田 次郎,吉岡 忍
中国ナショナリズム - 民族と愛国の近現代史 (中公新書)中国ナショナリズム - 民族と愛国の近現代史 (中公新書)感想
王朝名はあっても国名がない状況の国で国家という概念が成立する過程から説き起こす1冊。本書では中国という舞台に焦点を当てているが、翻って日本でも、一般人が国といえば藩、或いは令制国という認識だった時代は遠い昔ではない。西欧に触れて国という概念を生み出さざるを得なかったのは共通している。中国に於いては英国がまた日本がナショナリズムを妊んだ「卵」の殻を突く役になったのは歴史の皮肉か。本書では戦後の経緯にも触れているが、紙幅が狭い。また、多民族国家である中国で「人民」か「国民」か「民族」かという差違も気になる。
読了日:04月15日 著者:小野寺 史郎
世界史のなかの戦国日本 (ちくま学芸文庫)世界史のなかの戦国日本 (ちくま学芸文庫)感想
底本は1997年のちくま新書の1冊。改稿して文庫化された。大航海時代の渦中の16世紀、極東の島国も局外ではなく、能動的に受動的に関わってきたことを解き明かした1冊。朝鮮への対馬、琉球への薩摩、北方への蝦夷、そして勘合貿易以来の明との交易という四つの口の論に、スペイン、ポルトガルの極東進出で事態が動く。日本国内の動きも連動せずにはいられないのは自明だ。銀の産出、木綿の輸入、秀吉の朝鮮出兵……。海に囲まれた日本ゆえの事情を読み解いた1冊になる。本書を整理したのが筆者の「分裂から天下統一へ」(岩波新書)に続く。
読了日:04月14日 著者:村井 章介
辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦感想
本を読む楽しさは自分が読んできた本の間に次々と連環が広がっていくことにある。そんな愉悦そのままに、読巧者の2人の会話は八艘跳びに広がっていく。こんな風に読めたら楽しい。俎上に上がったのは旅行記、人類学、軍記、小説などなど8冊の本。無関係のようで、上手の連歌のような妙味で本が連なる。触手を伸ばしたい本が紹介されると付箋紙を貼るのだが、この本も一杯になった。「世界の辺境とハードボイルド室町時代」の延長で生まれた1冊、打ち止めにしたいというが、是非続編を期待したい。本の扉に自分用の索引を書き留めるとは上手い手。
読了日:04月12日 著者:高野 秀行,清水 克行
マーティン・ルーサー・キング――非暴力の闘士 (岩波新書)マーティン・ルーサー・キング――非暴力の闘士 (岩波新書)感想
キング牧師の生涯を縦糸に,貫くものを探っていく。人種差別、貧困、戦争の克服の3点が一貫したテーマ。無抵抗とは違う非暴力の抗議活動、バス、店、行進で。公民権運動の旗手から、格差社会の克服へと主人公の視点が広がっていくのが横糸。エポックとなった出来事の選択が巧みで、世相の流れも入れ、今日までつながる未解決問題まで提示する。直前に中東問題の本を読んだこともあるが、米国は国内で経験した教訓が、海外ではなぜ生かせないのだろう? 「I have a dream」と重ねて、彼が示したあの日の目標は未だ道半ばになのだが。
読了日:04月05日 著者:黒崎 真
イスラーム主義――もう一つの近代を構想する (岩波新書)イスラーム主義――もう一つの近代を構想する (岩波新書)感想
今の中東を俯瞰する時、格好の入門書。オスマン帝国の崩壊が基調低音。宗教と生活が一体とされるイスラムが異文明、異文化に接した時、どう対処しようとしてきたかを後付ける。世俗化という形で人、物の交流を受け入れるか、信仰に基づいた生活を守るか。後者の中でイスラム主義が1960年代のエジプトでの同胞団や、イラン革命を挟んで、アルカイダを始めとするジハード主義、さらにアラブの春の動きへと続く。ムスリムの心の揺れを「なぜ」「何」という視点で読み解いて立体的だ。其処で西欧、特に米国がこの地域に落とした影の大きさを思う。
読了日:04月04日 著者:末近 浩太
戦国武将と能楽―信長・秀吉・家康― (新典社新書 75)戦国武将と能楽―信長・秀吉・家康― (新典社新書 75)感想
能への関心をと書かれた1冊。信長、秀吉、家康の流れの中で、藝がどういう風に享受されたか、駆け足で追う。基礎資料として「能楽史年表」(全4巻、東京堂出版)の存在が透けて見え、丁寧に押さえるべきツボはあった気がした入門書です。一番はなぜ愛好されたのかの明解な謎解きなし。観世座の音阿弥と越智の流れの話とか、能作者の観世信光、長俊などは押さえたい処。金春座の中での金春安照の存在も。話を飛ばす所と微に入る所の息が自分とは合わなかったか。式楽になる過程(影が薄いとは言え、幸若舞も存続した)もきちんと読みたかった1冊。
読了日:04月02日 著者:原田 香織
語る歴史,聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から (岩波新書)語る歴史,聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から (岩波新書)感想
社会学の手法として、口述を歴史資料として活用するのがオーラルヒストリー。本書は民衆の生活史として長年、収集作業をしてきた筆者による日本での手法史。最初は速記の活字化から聞いたメモの再構成、さらに聞き手が登場する様式から、生活を共にして聞き出す方法へと進化する。曰く「ask→listen→take」と。ただ話者が全て事実を話す訳ではなく、御厨貴が言うように聞き手にも力量がいると思う。録音録画が容易に出来る今、話をテキスト化するのはともかく、聞き手の意思で「take」するのが適切なのかどうか。考え込む部分も。
読了日:04月01日 著者:大門 正克

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posted by 曲月斎 at 20:01| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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