2018年04月02日

★2018年3月に読んだ本。

3月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2855
ナイス数:463

日本問答 (岩波新書)日本問答 (岩波新書)感想
感想が難しい1冊。日本で複線的に(筆者は「デュアルでリバース」という術語を使う)事態が進行してきたことを種々の例を挙げながら語らっていく。自分の断片的な知識をフル稼働して追いつくはずもないけど、この本の示唆で手を伸ばしてみようか、と思う本が何冊もあったのは事実。個人的には8章の「日本の来し方・行く末」から読む方がいいかも、と。2人の考えの後付けから理解しないと。あと、松岡の本は面白そうなのだけど、閊える理由が分かった気もする。というのは概念を表象する英語が理由で、もっと割註を入れてくれたらいいのに、と。
読了日:03月31日 著者:田中 優子,松岡 正剛
技術の街道をゆく (岩波新書)技術の街道をゆく (岩波新書)感想
ダム造りと酒井田柿右衛門の磁器づくりの共通項を探ったり、銑鉄→転炉→鋼材という一貫生産と鑪製鉄の技術を比較したり。筆者が出掛けてルポしていく。発想が興味深い。津波関連でも田老町の津波堤の話が出てくるが、知識と行動との間に聯関ができるかどうかはなかなかに難しいのが興味深い。あと、筆者が強調したいのが時間軸の概念。作業は直列つなぎで進めるような気分になるが、時間軸を考慮すれば並列つなぎで進めた方がいい。ただ、最終章の発想法の項目は本書のトーンにはそぐわない。再々筆者自身が書いているように、別の本を読めばいい。
読了日:03月26日 著者:畑村 洋太郎
空気の検閲 大日本帝国の表現規制 (光文社新書)空気の検閲 大日本帝国の表現規制 (光文社新書)感想
曰く「加納部隊長は死の直前軍旗をにぎらせてくれといつたから、軍旗をにぎらせるとにつこり笑つて死んだ」が事前検閲を通すと「○○をにぎらせてくれといつたから、○○をにぎらせるとにつこり笑つて死んだ」となった。伏字で却って卑猥でもあり不思議でもあり。新聞紙法、出版法に基づく内務省の検閲の一側面だ。寧ろ戦後のGHQによる検閲は徹底していた。筆者のいう「空気の検閲」とは言い得て妙の関係だったように思う。検閲する側・される側、双方忖度の産物が戦前戦中の検閲制度だったのか。放送禁止歌に通じる自主規制の感覚、今も。
読了日:03月25日 著者:辻田 真佐憲
墓石が語る江戸時代: 大名・庶民の墓事情 (歴史文化ライブラリー 464)墓石が語る江戸時代: 大名・庶民の墓事情 (歴史文化ライブラリー 464)感想
墓石の悉皆調査で歴史を探ろうという画期的な1冊。筆者は弘前などの津軽地方や北海道の松前、江差、海路で繫がっていた福井の敦賀、小浜、三国などの墓石を調べ上げ、人口動態や災害、疾病の流行、物流や家族像などを考察していく。墓石は位置が動かず、多様で紀年銘がある。過去帳や人別帳など他の資料と照合すると見事な史料になる。地道な文字の拾い起こしを続けたことで、生の人の動きが浮き彫りになる。家の観念が変化し、墓じまいなどの話題がのぼる昨今。筆者の地道な研究は翻って今の日本人の葬制観のみならず、生活観を映し出している。
読了日:03月23日 著者:関根 達人
古代の都と神々―怪異を吸いとる神社 (歴史文化ライブラリー 248)古代の都と神々―怪異を吸いとる神社 (歴史文化ライブラリー 248)感想
神社という装置について、飛鳥〜平安期に亘って考察した1冊。氏族の信仰装置はあったにせよ、都市の成立と共に変容していく。王権による地方の神社の系列化、王家の宗廟とされる神宮の位置と皇統の継承などに関わり、認定される祭祀の場に出現するものから、社に閉じ込められるものに変わる。行く先々で名が変わる春日社や、どこに出現しても八幡社となる信仰形態が出現。平安京の成立に至っては官幣の二十二社制や、法相、天台、真言の各宗派の影響での御霊信仰や神仏習合が起きる。今の神社の存在は、実は大きな変容の果て、なのかもしれぬ。
読了日:03月22日 著者:榎村 寛之
畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史: 因果応報と悪道 (歴史文化ライブラリー)畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史: 因果応報と悪道 (歴史文化ライブラリー)感想
中世に生きた人の宗教観を説話集等から探ろうという1冊。題材は今昔物語、沙石集などの説話や絵巻等。今の極楽と地獄という二分ではなく、悪道が畜生、餓鬼、地獄と細分化され、責苦の種類も観念されていたというのが不思議だ。また、前九年の役の源頼義が回向で成仏でき、後三年の役の義家が堕地獄したという考え方や、観応の擾乱で高師直らを討った足利直義が報いで非業の死を迎えるとか、因果を理屈として受け止められていたのが興味深い。あと万能の存在の地蔵菩薩。こんな風に獄代受苦は勿論、功徳を説かれれば信仰しておかない手はあるまい。
読了日:03月21日 著者:生駒 哲郎
陰謀の日本中世史 (角川新書)陰謀の日本中世史 (角川新書)感想
立大の一般科目としての講義録が底本。歴史学は人文科学で「科学する」範疇に入る学問。歴史の分野で陰謀論を振り翳す時の陥穽のパターンを示した。俎上は保元平治の乱から関ヶ原までだが、筆致に生彩があるのは室町期の章だ。曰く類型に「結果から逆行して原因を引き出す」「因果関係の単純明快すぎる証明」等々。暗記科目ではなく、歴史を学ぶ本当の意味を示す1冊となっている。同時に明治以来の歴史学の深化に触れている部分に学者としての矜持が覗く。「猫に鈴」というが、二元論的な論理に振り回されがちな今だからこそ、必要な1冊といえる。
読了日:03月20日 著者:呉座 勇一
壬申の乱と関ヶ原の戦い――なぜ同じ場所で戦われたのか (祥伝社新書)壬申の乱と関ヶ原の戦い――なぜ同じ場所で戦われたのか (祥伝社新書)感想
今でも日清どん兵衛の出汁の分岐点は関ヶ原と聞く。関ヶ原を舞台に起こった戦い壬申の乱、北畠顕家の戦い、関ヶ原の戦いを日本の東西の構図に落とし込んで見れば、という1冊。もう1点は戦いをやる必然の明確化。誰と誰が何のために仕掛けたのか。当たり前のことを手がかりに読み解く。内容に新味は薄いが、この立論の仕方が明解で、読み手は納得させられる。東西の境界は他にも、木曽三川や浜名湖、親不知子不知とあるが、全国一律と考える方が無理なのは当然。この一連の立論の向こうには権門体制論に対する東国国家論の意図、進化が見える。
読了日:03月11日 著者:本郷 和人
物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルトの乙女」の800年 (中公新書)物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルトの乙女」の800年 (中公新書)感想
日本から一番近い欧州・フィンランド。母語として瑞典語、芬蘭語を話す民からなり、スウェーデンとロシア、挟まれた位置から、両国の影響を受けながらの歴史を重ねてきた。アジアで言えば冊封体制のような。特にロシアの影響下から、二月革命、十月革命の起きた1917年に独立。以降も独ソの均衡の中で、或いは東西冷戦下で、独立を守った。トップの微妙な舵取りが絶妙で感服するしかない。冷戦終了後に市場経済に転換していく。木材資源の国から今の姿へと変貌したのもまた、入念な準備がある。女性の社会進出も然り。十二分に他山の石である。
読了日:03月09日 著者:石野 裕子
帝都防衛: 戦争・災害・テロ (歴史文化ライブラリー)帝都防衛: 戦争・災害・テロ (歴史文化ライブラリー)感想
人が集まった場所には騒乱が起きる。帝都東京で人が混乱した歴史を点綴していく。日比谷焼き打ち事件以降、内務省系の警察、陸軍の憲兵を始めとした武力、さらに東京府と東京市の二重行政の話と進んでいく。本書の要の空襲対策。ここで二重行政の解消が進み、防空法が登場。多くの犠牲を生む構図が生まれる。本書を読んでも、重慶爆撃でやる側の経験を、独ハンブルク空襲以下の戦訓を、学ぶことができたのに、何で生かせないのか、と改めて思う。「地震と違い、空襲は覚知できる」と言い放った結果を思うに。桐生悠々以来の予測は十分可能だったが。
読了日:03月07日 著者:土田 宏成
イスラームの歴史 - 1400年の軌跡 (中公新書)イスラームの歴史 - 1400年の軌跡 (中公新書)感想
モハメットの生涯に始まって、中東での盛衰とイスラム教、そして近代化を果たした欧州との角逐、瓜分された後の現代の話まで見事な通史です。スンニ派、シーア派などの分立については日蓮宗の分立してきた姿を代入しながら読みました。本書の核になる部分は5章「戦うイスラーム」以降。西欧の築いた政教分離や、その反動の原理主義の出現など。イスラムへのマイナスイメージは誤りであることを自然に説く筆運びに脱帽。分からない用語、人物名が出てきたら巻末の注釈、索引、年表を見るべし。イスラム世界を主語にした世界史は別の視点を生みます。
読了日:03月03日 著者:カレン・アームストロング

読書メーター
posted by 曲月斎 at 00:38| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。