2018年02月02日

☆2018年1月に読んだ本。

1月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2450
ナイス数:607

訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語 (光文社新書 352)訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語 (光文社新書 352)感想
東アジアには漢字文化圏があり、母語の言語体系とは異なる漢字を書き文字として使用するに当たって、折り合いを付けなくてはいけない。便法として登場したのが「訓読み」である訳で、日本語のみならず、朝鮮語、ベトナム語などのほか、北方、西方の領域にも広がった。本書は日本語での訓読みを相対的に位置づけると共に、事例を探っていく。後者の比重が高いか。漢字文化圏もハングルやクオック・グーの登場で漢字が退場した国あり、日本のように文字制限を加えながら遣うのもあり。高島俊男の随筆を連想した。本書は一生懸命だけど、少し散漫かな。
読了日:01月30日 著者:笹原 宏之
マニ教 (講談社選書メチエ)マニ教 (講談社選書メチエ)感想
西は欧州アフリカ、東は中国まで、伝播した宗教「マニ教」。書物と絵画で信仰が広まったのに、その2つながらに完全な形で現存しない。そんな宗教の姿を復元して入門書を書き上げた筆者の手腕に敬服。西域の砂塵に埋もれた断簡から、或いはイスラムの書、キリスト教の書と、繋ぎ合わせて全体像を描いていく筆運びはクロスワードを解いていくような愉悦がある。宗教自体の理解はキリスト教徒、イスラム教徒ならぬ身には理解し切れていないのは事実だけど。どんな宗教だったかという興味より、話の展開に惹かれた1冊。語学と宗教学への造詣に脱帽。
読了日:01月23日 著者:青木 健
特攻――戦争と日本人 (中公新書)特攻――戦争と日本人 (中公新書)感想
何か肝腎のところで、体を交わされることの連続のような読後感。勿論、本書は肯定的にとらえる訳でもなく、全体像を書こうとする。だがその試みのゆえに余計にピントが甘くなった感じ。筆者は毎日新聞学芸部記者。破綻はないのだけど平板。特攻に関し、事は単純な訳で、操縦をできる技術を持つ人間を養成するには時間と金と資源が必要な訳で、できないとなれば手を出すべきものではないということ。技術がなく、粗悪な機体だから、特攻が選択肢になるというのは本末転倒。戦争に関してもまた同じ。研究者の筆とは異質で、雑観記事の連続のような味。
読了日:01月18日 著者:栗原 俊雄
鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った (交通新聞社新書)鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った (交通新聞社新書)感想
徒歩か馬車だけだった時代に、鉄道の出現はどれほど大きな変化だったか想像が付かない。年に1度の正月に恵方詣に出掛ける程度だった都市住民は鉄道で遠出するようになる。川崎大師に成田山、関西圏なら伊勢神宮。今に変わらぬ年始の光景が出現する。しかも新聞広告の力もあって運行が2社競合になると人気が集まる不思議。一連の動きは寺社、参詣客、鉄道会社と三方良しの社会の進化だったように思える。そして生活から旧暦が消失する後付けを示した西宮戎の記録も興味津々。心地良い読後感とともに、文化の発展とは、という問いにもなっている。
読了日:01月16日 著者:平山 昇
日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)感想
戦争回顧では指導者層に目が向きがちだが、最前線にこそ実相がある。筆者が掘り起した細部には狂気が見える。例えば旧陸軍には歯科医師が職制としていなかったこと。中国大陸で伸びた戦線では虫歯を患う兵士が続出し、歯が欠損するのは当たり前。軍靴の材料の革が粗悪になり、縫製する糸が亜麻からスフの混紡になり、糸が腐って壊れた。軍靴ゆえの水虫や、南方でのマラリア、性病は勿論、集団生活を営んでいる中で結核を発症しても打つ手なく、戦争の極限状態が原因の精神疾患を惹起。或は員数合わせに知的障害者まで招集。傷病兵、俘虜の殺害……。
読了日:01月12日 著者:吉田 裕
仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版 (文春文庫)仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版 (文春文庫)感想
小林正樹、黒澤明、山本薩夫、岡本喜八、五社英雄……。邦画史を振り返る時、この人が欠かせないのは言うまでもない。五社協定など制約が多い時代だったから尚更だ。同時に、小沢栄太郎、滝沢修などアクの強い相手、三船敏郎、市川雷蔵等、渡り合った顔ぶれも錚々たるもの。中でも「天国と地獄」の山崎努、「影武者」の勝新太郎など、銀幕の向こう側からの見方も面白い。ただ、仲代自身が一方の軸足としてきた舞台が言及が少ないのが残念。せめて年譜に載せて欲しかった。「味のある役者がいた」「タレントと俳優の別が曖昧」などの苦言が効く。

読了日:01月11日 著者:春日 太一
通じない日本語: 世代差・地域差からみる言葉の不思議 (平凡社新書)通じない日本語: 世代差・地域差からみる言葉の不思議 (平凡社新書)感想
日本言語学会長の著作。謎解きが楽しい。音節とモーラ(拍)という単位で単語を読み解くところにこの本の新鮮さがある。俳句の五七五もモーラの概念なら休符の分も含めて888になるという説を紹介。高低、強弱のアクセントも語頭から何音目か、或いは語尾からかなど、母語の話者は意識せずに発音していることも分析する。規則性がないようでも、実は法則性があるというのが面白い。世代間、地域性など、語彙(略語)や発音の変化を理屈付けられるのがまた興味津々。「日本言語地図」など先行研究を別の概念で生かし、解析していく手際が心地よい。
読了日:01月09日 著者:窪薗 晴夫
日中戦争全史 下巻日中戦争全史 下巻感想
教科書的に言うと、1941年の太平洋戦争開戦で、戦場の中心は一気に南方に広がる。でも大陸でも延々と続いていた訳で、寧ろ物資の供給源の役割は増大。対国民党戦に加え、共産党の解放区を掃討する粛正戦を展開。無差別爆撃や、毒ガス、細菌兵器の使用、無為の大陸打通作戦。読んで情けなくなります。満州事変以来の流れを止める好機に「陸軍は暴力犯、海軍は知能犯。陸海軍あって国あるを忘れていた」振る舞いで開戦を避けえず、国益より組織的利益を優先した代価は大。日米開戦で敗者となる道しか残らぬ選択だったのに、気付かぬ不思議……。
読了日:01月06日 著者:笠原 十九司
一遍 捨聖の思想 (平凡社新書)一遍 捨聖の思想 (平凡社新書)感想
日本での浄土教の成立から、一遍の出現に至るまでが前段、後段はその言行録、伝承から教義を探っていく。極楽往生を願う民衆の願いを極限まで切り詰めて行けば一遍に至る。法然、親鸞に比して影が薄いのは否めない一遍に焦点を当てた好著。ただ一遍の没後、直ちに教団化が進んだ。戦国時代に陣僧の職務を果たし、庶民に近い宗教者だったと思うが、江戸期に徳川殿に全国遊行の許しを得る教団になり、権力の統制の下に入るのが現実。浄土系でも巧く立ち回った宗旨との差が出てしまった。一遍の個性、人柄が屹立した存在だったことの証左でもあるが。
読了日:01月03日 著者:桜井 哲夫

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posted by 曲月斎 at 02:36| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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