2018年01月08日

★2017年12月に読んだ本。

12月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1951
ナイス数:348

「南京事件」を調査せよ (文春文庫)「南京事件」を調査せよ (文春文庫)感想
NNN系列で放送された「南京事件 兵士たちの遺言」の制作者が著した取材ルポが前段。「なかった」と言い募る人に対し、従軍兵士が残した記録を元に少なくとも1937年12月16日に揚子江に面した水魚雷営という施設で、また17日にも大湾子という地で「捕虜」を殺害したという事実を裏付ける。1次資料を残した兵、掘り起こした民間の研究者、記録に陽を当てた筆者。南京事件の全容には言及せず「あったこと」だけを記す手法が効いた。後段は自身にも潜む「視線」の解明の独白録。確かに大虐殺という言葉が適切と理解させる理詰めが明確。

読了日:12月31日 著者:清水 潔
日中戦争全史 上巻日中戦争全史 上巻感想
「統帥乱れて信を中外に失う」を繰り返した歴史−−これは北部仏印進駐に際して西原一策が打った電文だが、大局観なく、派閥争い、予算獲得と覇権奪取に血道を上げた結果が招いたものは重い。本書は1945年まで続く中国大陸での日本軍の行動通史で上巻は対華21カ条要求から南京占領まで。夜郎自大、現場が暴走しても抑止出来ない。今風に言えば「組織統治」が行き届かない。事態に引き摺られていく。西原もまた組織の駒だが。筆致に軽い違和感を抱くものの、前段から全史を通観しようという1冊なので、長いうねりを概観するには好個の編年史。
読了日:12月26日 著者:笠原 十九司
模索する1930年代―日米関係と陸軍中堅層模索する1930年代―日米関係と陸軍中堅層感想
「それでも戦争を選んだ」「戦争まで」の謂わば基礎部分、底本です。元は5篇の論文で、1930年代、満州事変から太平洋戦争前夜まで。「政党制の崩壊」や「軍部の擡頭」と単純化した理解とは異なり、不戦条約に起因する米国の互恵通商法、中立法の立場や、蜂起した皇道派に対して統制派が目指した改革を進める陸軍中堅層(課長級)に焦点を当てて、分析していきます。中国大陸での宣戦できない戦争「事変」に対しての現地と中央の感覚の差、貿易統計に見る比重、枢軸国側との思惑等々。「微小量」の表現で現実に起きたことを解析している好著。
読了日:12月17日 著者:加藤 陽子
炎の牛肉教室! (講談社現代新書)炎の牛肉教室! (講談社現代新書)感想
土佐あかうし、の話が登場するので読了。好きこそ物の上手なれ、というけど、本当に牛肉LOVEの筆者が体を張って書いたルポ、です。ただ、肉を相応に評価してくれる枠組みができてこそ、すべては始まる訳で、第4章の「土佐あかうし」の事例紹介は、担い手確保が難しくなっている日本の農業の中で、一つの好事例であるのがよく分かります。消費者の嗜好は変わりますが、相対的な評価ではなく、絶対的な価値を畜産農家が持ち続けられるかどうか。行間にあかうし王子こと高知県の公文喜一君や、世話になった室戸の信吾さん、拓也くんの顔が……。
読了日:12月15日 著者:山本 謙治
戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)感想
幣原喜重郎を中心に、終戦直後に組織された「戦争調査会」。本書では経緯、人選などに触れ、結局、GHQの意向で尻切れ蜻蛉になるまでが前段。後段は議事録をいくつか拾い読みして、興味深い部分の紹介、という構成。なにぶん、知名度の低い調査会の存在を書くのだから仕方ないとはいえ、組織の経緯よりも、証言集の内容の方に興味がある。ただ、この組織が辿った道は今の「もり・かけ」にも通底するような行政組織の記録の残し方、歴史の検証に耐えうるものかという好個の例であったのは間違いない。忘れるに加え、燃やす、消去では困るのだから。
読了日:12月09日 著者:井上 寿一
わたしが生きた「昭和」わたしが生きた「昭和」感想
1995年。戦後50年に刊行された1冊。手元に残った写真、家族と一緒に移住した満州の吉林での体験、また釜山の沖合にある加徳島に駐在し、一家全滅した叔父一家などが綴られる。五族共和、王道楽土という看板だった満州の実像こそ、貴重な記録といえる。食事や物資の配給、住居など、厳然とした差別が横たわる世界。朝鮮に渡る祖母との永久の別れとなった場面で「おかめ蕎麦」が羨ましかったという筆致が妙に印象的。結局、国籍法のなかった満州国。筆者のいう無数の無名な歴史を掘り起こすことこそ、歴史を確認するために必要な作業になる。
読了日:12月08日 著者:澤地 久枝
兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)感想
小机に肘を付いている姿が浮かぶ兼好法師。でも実に執着に富んだ人生を送った様が描かれる。金沢貞顕、高師直の所に出入りしたり、二条良基の下、頓阿らと歌人としての地歩を築いたり。閑居というより、器用に目端利かせて立ち回った人、という印象になる。文書と残っているものが少ない時代ゆえ、筆者の立論は推定、比定の部分が多いとはいえ、作者像の認識を一新させられる。そして「徒然草」自体が随筆というより、事例集としての「大草子」という分類に属するもの、という見立てが興味深い。本書自体が紙背に徹する読みを披露してくれている。
読了日:12月04日 著者:小川 剛生

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posted by 曲月斎 at 23:48| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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