2018年01月08日

★2017年9月に読んだ本。

天皇の戦争宝庫: 知られざる皇居の靖国「御府」 (ちくま新書1271)天皇の戦争宝庫: 知られざる皇居の靖国「御府」 (ちくま新書1271)感想
皇居の中に今も残る(と推定される)御府と呼ばれた施設に就いてのルポ。日清戦争の戦利品と戦没者名簿、遺影を納めた振天府に始まり、北清事変の懐遠府、日露戦争の建安府と明治期に続き、大正天皇の時代のWWI、シベリア出兵の惇明府、昭和の戦役を対象とした顕忠府の5棟。天皇が身近で戦没者を慰霊していることを宣撫するための施設に変容し、終戦と共に姿を消す。鹵獲品の行方はともあれ、多くの写真等歴史資料が残る可能性があるという。竹のカーテンの奥、まだこういう存在があったことに驚く。記憶と記録は尚、封じ込められて……。
読了日:09月10日 著者:井上 亮
絶滅危急季語辞典 (ちくま文庫)絶滅危急季語辞典 (ちくま文庫)感想
本書は東京堂出版で出された1冊が親本。あの事典の東京堂が版元なのだが、寧ろ歳時記の体裁を取った随筆、漫筆という方がいい。筆者の謂う「絶滅の虞がある季語」を拾い上げ、俎上に載せて捌いていく。絶滅危惧といっても、「佐竹の人飾」のように、実態を失っているもの、「われから」のように疎遠になっていたもの。面白がるのか、素っ気ないか、それも俳味ということになるのだけど。「綾取」の項でふっと覘く心根や、「霹靂(はたた)神」の項で欣喜している筆者と青ざめる憧れの君の落差とか。句の背後に描かれる世界が面白い1冊。
読了日:09月07日 著者:夏井 いつき
字幕屋の気になる日本語字幕屋の気になる日本語感想
映画の字幕翻訳に生涯を捧げた筆者の最後の随筆。まず字幕が台詞1秒4文字という制約の下で成立しているとは知らなかった。プロ意識に関わる部分は「字幕屋・酔眼亭の置き手紙」の章に詳しい。"You didn't know?"が「知らなかった?」になり、秒数の制限から「初耳?」に置き換えていく。言葉への感覚が研ぎ澄まされるのはなるほど、と思う。それと1章目の「気になる日本語」も成程の連続。自分の言葉への感覚に近いのにちょっと安堵したり、膝を打ったり。制約の下で意を尽くす。字幕翻訳で身に着けた圧縮技術、畏るべし。
読了日:09月06日 著者:太田 直子
鎌倉幕府滅亡と北条氏一族 (敗者の日本史)鎌倉幕府滅亡と北条氏一族 (敗者の日本史)感想
鎌倉殿の屋台骨を支える北条氏が執権、得宗となり、滅亡していく過程から、権門体制論に対する「東国国家+西国での軍事勢力」という構図を見立てる。北条氏は実質的に政権を掌握した後、元寇を機に全国支配を目指すものの内部抗争から破綻していく。一門で鎌倉殿+六波羅、鎮西探題と切り回すのは人材的に厳しかった。それ以上に事務方の根強さが際立つ。実務を担った官僚は室町殿の時代になっても、或いは徳川殿の時代になっても(今も?)生き残る。角田文衛の「平家後抄」ではないが、「鎌倉殿後抄」みたいな本を読んでみたいなぁ、と。
読了日:09月02日 著者:秋山 哲雄
posted by 曲月斎 at 23:39| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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