2017年09月02日

☆2017年8月に読んだ本。

8月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2359
ナイス数:374

貧困と地域 - あいりん地区から見る高齢化と孤立死 (中公新書)貧困と地域 - あいりん地区から見る高齢化と孤立死 (中公新書)感想
大阪・あいりん地区(釜ケ崎)。東京の山谷、横浜の寿町と合わせて日本三大ドヤ街と言われた。一方、「ドヤ街」「寄せ場」という語彙が注釈が必要かと思う今。日雇労務者というと古色だが、非正規雇用者といえば今風に理解できるか。地縁血縁が薄くなり、社会的に孤立する人が増えている今、ここに暮らしてきた人々が独居高齢化している現況は決して特異な例ではない。日本のどこで起こっても不思議ない気がする。むしろここで暮らしてきた人々の長い歴史は社会福祉の先進例とも言え、学ぶべきことは多いと思う。筆者の手堅い筆運びに好感を抱いた。
読了日:08月29日 著者:白波瀬 達也
笛を吹く人がいる: 素晴らしきテクの世界 (ちくま文庫)笛を吹く人がいる: 素晴らしきテクの世界 (ちくま文庫)感想
話を聞いて面白い人と文章を読んで面白い人がいる。確実に筆者は前者だろう。Eテレの番組で話が興味深かったのだけど。解説でしりあがり寿が記している通り、宮沢は「口から万国旗を出す人」なのだ。面白そうに思って平積みから取り上げたけど、筆者の発想の連鎖に着いて行くのが難しかった。味があるなぁ、というのはしりあがり寿の扉絵くらい。頭上を右斜め60度くらいで横切って行くのが筆者の文。僕とは「ねじれ」の位置でした。非ユークリッド空間にでも行けるようになったら……。
読了日:08月26日 著者:宮沢 章夫
飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道 (講談社現代新書)飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道 (講談社現代新書)感想
「大艦巨砲主義」という言葉で旧海軍の旧弊を片付けてきたことの陥穽を思う。原因を単純化すれば、犯人捜しも責任の回避もしやすい。でも現実はもっと複雑な要素が錯綜していたことを本書は説き明かす。WWTの戦訓、軍縮条約の制約の中、建艦競争をする財政力なき日本では航空力の有為を国民にいち早く周知していたのだから。井上成実が指揮した重慶爆撃も1937年に実行している。航空兵は立身出世の手段であり、羨望の的でもあった。でも結果は承知の通り。巷間の説を否定し、日本が無分別な道を選んだ原因を探り直す契機をこの1冊にみる。
読了日:08月25日 著者:一ノ瀬 俊也
太平記の時代  日本の歴史11 (講談社学術文庫)太平記の時代 日本の歴史11 (講談社学術文庫)感想
扱う範囲は後醍醐天皇の即位から足利義満の死辺りまで。本書の一の主題は天皇が中心とした物語の成立、という点。権力の行使の為には天皇という権威が必要、という図式の定着をいう。通史である以上、事績を追う部分が前半。ただ列島を縦横に走り回る初めての事件が南北朝時代。手がかりになる。二に時代相を記した5章が白眉。村落に法が成立し、文書が登場し、通貨が流通する。平安以来の有職故実が整理される、といった事象が起こることを整理している。太平記やこの時代の本を読むなら、真っ先にこの1冊を選ぶことを勧める。座標軸が作れる。
読了日:08月20日 著者:新田 一郎
山口瞳「男性自身」傑作選 熟年篇 (新潮文庫)山口瞳「男性自身」傑作選 熟年篇 (新潮文庫)感想
久しぶりに山口瞳の随筆を読み直す。高橋義孝と並んで、当時から寸鉄人を刺す警句が含まれていたのは承知していたし、それは歯切れ良くも思えた。読み返してみても、話の扱いが上手いなと思う。ただ、それ以上に、読んでいてゴツゴツする何かがある。昭和の男性が持っていた照れ隠し半分以上とは分かっていても「男は……」「女は……」という口調が目についてしまうことに気がつく。古い言葉で言えば、ちょっと旧弊なのである。あの成人の日のサントリーの5段広告を思い出すにつけ、時代によって受け止め方は変わる、変わっていくものだ、と思う。
読了日:08月18日 著者:山口 瞳
ノーサイド成田闘争―最後になった社会党オルグ (ふるさと文庫)ノーサイド成田闘争―最後になった社会党オルグ (ふるさと文庫)感想
旧社会党オルグの加瀬勉を主人公に据えた成田闘争史。空港開港に向けて国の執った方策、手段は憲法に抵触するものであったと思う。開港40年を迎えようかという今、空港自体が一番の地域にとっての産業であり、雇用先であり、立地要件になっている。都市近郊農業で生活基盤を確保していたかつてとは異なり、「空港があるからこそ」の町なら、空港との共生共栄を考えるしかない。空港周辺で人口の増加が見込めるエリアと少子高齢化+人口減少の続くエリアに二分化している昨今、歴史と現実との間の清算が一層、自覚的に必要ではないか。
読了日:08月18日 著者:桑折 勇一
新・中世王権論 (文春学藝ライブラリー)新・中世王権論 (文春学藝ライブラリー)感想
本郷先生の権門体制論批判。謂わば「東国国家論」の改良版。「王権」という言葉が適切かは別にして、北条家が執権から得宗専制への移行を通じて、東の武門、西の朝廷の関係を読み解いていく。筆者は「将軍と首頂」という概念を提唱している。寧ろ武力政権が統治の手法を習得する過程と受け止めると分かりやすいかも。勿論、その延長線上に後醍醐天皇の建武の新政、また足利高氏、直義の太平記の時代を挟んで、義満に至って文字通りの「王権」が確立するのだが、頻りに2項対立的に見立てる手法には時に違和感があるものの、見立てとしては興味深い。
読了日:08月14日 著者:本郷 和人
日本史の快楽―中世に遊び現代を眺める (角川ソフィア文庫)日本史の快楽―中世に遊び現代を眺める (角川ソフィア文庫)感想
元原稿は1994年から週刊現代に連載された1ページの〈漫筆〉。1ページという紙幅と週刊という時間的制約。当然ながら、文章にコクがあるかと言われれば、普くその水準を維持するのは厳しい。江戸期に多く書かれた随筆を連想する。数篇は成程と思うものもあったが、舌足らずの感が拭えない。余談ながら、この手の随筆というと、その昔、岩波書店の「図書」に連載された「一月一話」(淮陰生=英文学者の中野好夫の筆名)が思い出される。時事ネタを取り上げても古びない。文章の運びがよく、切れ味がいい。こんな水準こそ〈随筆〉であると思う。
読了日:08月05日 著者:上横手 雅敬
歴史力で乱世を生き抜く (中央公論 Digital Digest)歴史力で乱世を生き抜く (中央公論 Digital Digest)感想
呉座本「応仁の乱」ベストセラー記念の特集号2017年4月号の中央公論の抜き刷り。日本中世史学者の呉座が言う「WWIに似ている応仁の乱」説をイギリス外交史学者の細谷雄一との対談で肉付けしていく。均衡・協調・共同体、という秩序の体系が破れ、戦時と平時の区別がなくなる時代になっていく、という見立てが浮き彫りになる。これは「応仁の乱」が改版になるなら是非解説代わりに巻末に欲しい対談。清水克行と古代オリエント学者の小林登志子の対談「神は紛争をどう解決してきたか」も興味深い。この2篇の対談だけで十分にお勧めです。
読了日:08月03日 著者:呉座勇一,細谷雄一,池田嘉郎,佐藤賢一,出口治明,小林登志子,清水克行,原田眞人,宇野重規,瀧井一博

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posted by 曲月斎 at 01:26| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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