2017年08月03日

☆2017年7月に読んだ本。

7月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3255
ナイス数:460

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 3 (ヤングアニマルコミックス)ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 3 (ヤングアニマルコミックス)感想
「覚悟ある武人の死は美しいものと思っていた。だが今、間近に来て知る。死というものは実に汚らしく、おぞましく、無残な悪臭を放つ−−」。本巻の終盤で指揮官が組織的戦闘の終結するに当たっての述懐だ。日本陸軍の戦死者の大半が餓死と水死と戦病死だった事実、小松真一が「虜人日記」で、或いは大岡昇平の「レイテ戦記」で書き綴ってきたことを、絵にするとこうなるということだ。本書の表紙のサクラの花、靖国神社の九段の桜などなど、意味するものを改めて考える。体験した者が居なくなる中、本書のような記憶を補完するものが必要だ、と。
読了日:07月29日 著者:武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)感想
呉座勇一は「応仁の乱」を「嘉吉の変」と「明応の政変」の間の変化と捉えた。本書のテーマ「観応の擾乱」も多くの事象、場面を含んでいるので、筆者独自の見立てが欲しい。一読後も理解しにくい。一言で言えば「足利家の内訌」だが、全国規模で、登場人物の立ち位置が変わっていくのが難しい。@出来事を明確に区分した方が理解しやすい。A系図、地図をもっと掲載できなかったか――と思う。将軍と御内人の関係、鎌倉殿から室町殿へと権力体制の移行での効用など、読みたかった。最終章の「観応の擾乱とは何だったのか?」を先に読む方がいいかも。
読了日:07月27日 著者:亀田 俊和
ソビエト連邦史 1917-1991 (講談社学術文庫)ソビエト連邦史 1917-1991 (講談社学術文庫)感想
20世紀の壮大な実験・ソ連。その歴史をWWUの時代に外相を務めたモロトフを主人公に据えて読み解く。格好の狂言廻しの人物を選び出したのがこの本の第一の妙味。革命の第一世代であり、スターリンの粛正の嵐をかいくぐって1986年にゴルバチョフの時代になるまで生き抜いていた。第二に共産党という組織以前に、ロシア正教の異端派とされた「古儀式派」との関係を探っているのが興味深い。急にボリシェビキが出てくる訳ではない。第三に党と政府、国民の関係が最後まで整序されないままであったのか、ということ。被粛正者の数が桁違いだ。
読了日:07月23日 著者:下斗米 伸夫
番地の謎 (光文社知恵の森文庫)番地の謎 (光文社知恵の森文庫)感想
番地は何のために振られているのか。要は土地登記を明確にする、という目的が第1に来るわけで、地租改正以来の地番が最初に成立する。地方では小字単位にすれば、どこに誰が住んでいるかは明解になるので住居表示はこの用で済む。ただ財政力の面で、明治、昭和、平成と基礎自治体の大合併が進んで、地名が土地の記憶と離れていくにつれ、新しく住居表示法に基づく番地が成立する。そういう当たり前の流れを概説した1冊。この人の本はネタの遣い廻しが多いのだけど、概論を示すには格好の入門書。悉皆性が薄いのでこの本はあくまで手掛かり。
読了日:07月19日 著者:今尾 恵介
飛行機はどこを飛ぶ? 航空路・空港の不思議と謎 (じっぴコンパクト新書)飛行機はどこを飛ぶ? 航空路・空港の不思議と謎 (じっぴコンパクト新書)感想
仕事の都合もあって読了。国内線で飛行機の窓から見える風景の話が一つ、航空機の航路と管制の話が一つ。どちらが眼目で書いているのか、焦点が合いきれない気も。結構乗った時期があったので、そうですね、としか言いようがないのだけど。
読了日:07月14日 著者:
「太平記読み」の時代: 近世政治思想史の構想 (平凡社ライブラリー)「太平記読み」の時代: 近世政治思想史の構想 (平凡社ライブラリー)感想
太平記秘伝理尽鈔。太平記の解釈を記した本だ。和歌・物語の古釈とか、古今伝授のような風体で、口伝のような形で伝えられた。江戸期に入って民衆に伝わり、講談のネタ本になったという。この本が楠正成を軸に忠義とは、宗教権力との対峙姿勢とか、撫民の考え方などを示す中で、金沢、岡山藩などでの享受史や、山崎闇斎や熊沢蕃山、安藤昌益に至るまでの思考の糸口になっているのではないかと読み解いていく。顕密体制が強固だった時代に、宗教を否定し、後の「造反有理」に近い考えを示しているのは驚き。今日忘れかけられた思索の源流が見える。
読了日:07月13日 著者:若尾 政希
ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 2 (ヤングアニマルコミックス)ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 2 (ヤングアニマルコミックス)感想
前巻に続き淡々とした筆致。飲料水を確保するために戦い、鹵獲した兵器で戦い、フィリピン出撃の米軍の基地となるはずだった島はすでに1間跳びで先に侵攻が進んで戦いの目的を失っても戦闘行為が続く。伝単も登場して、筆者の下調べのほどがうかがえる。「この世界の片隅に」もそうであったけど、調査が行き届いたシナリオで、なおかつバイアスがかかっていない分、説得力が増す。最終的にはこの島は戦史によると34人が1947年まで生き残っていたそうな。次の巻は組織的な戦闘の終了からその後辺りになるのかな。
読了日:07月11日 著者:武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミックス)ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミックス)感想
WWUでの米軍の太平洋飛び石作戦の一つ、ペリリュー島での戦いを日本軍の1兵卒の目線から描いた作品。人物が3頭身でケロロ軍曹のように見え、戯画的。背景は細密な描きぶりで、そもそもレイテ島、硫黄島、沖縄と続く戦いふり、敵に勝つというより、負けを引き延ばすための戦いという思いテーマとの乖離が逆に効果を生む。暴発で死に、居た場所で明暗が分かれ、屍体には蠅がたかり、戦死した兵の水筒の水を飲む。当たり前の出来事が淡々と描かれるが故の迫力。声高でない分、響くものがある。本巻は米軍の上陸辺りまで。
読了日:07月11日 著者:武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
人民元の興亡 毛沢東・ケ小平・習近平が見た夢人民元の興亡 毛沢東・ケ小平・習近平が見た夢感想
紙幣とは不思議なもの。たとえば日本円。外貨準備としてかつては金、今は米ドルの保有が信用の裏付けになる。今の人民元もバスケット制があり、米国債を保有が信用の源だ。大陸では多くの発券銀行が存在し、統一的な紙幣がなかった。日米英ソなどが瓜分を試みた時期に重なる。筆者はそんな時代から読み解き始め、人民元をIMFのSDR構成通貨まで育て上げた苦闘を読み解く。この先、米ドルとならぶ基軸通貨になり得るかと言えば、中国自身の体制が抱える弱点ゆえに限界があるとの指摘、ビットコインの登場まで目配りする視野が広くて楽しい1冊。
読了日:07月08日 著者:吉岡 桂子
バルカン―「ヨーロッパの火薬庫」の歴史 (中公新書)バルカン―「ヨーロッパの火薬庫」の歴史 (中公新書)感想
オスマン帝国の西端、バルカン半島の来歴をまとめた1冊。旧ユーゴ諸国が分離独立した後の出来事は記憶に残る。決して昔の話ではない。何で「火薬庫」になってしまったのか、を読み解くのが眼目。民族、宗教(イスラム、ギリシャ正教などなど)という「違い」を意識するきっかけとなったのは西欧から来た「ナショナリズム」の故であり、露、独、墺、仏、英といった周囲の国々の影響、思惑が覘く。一概に「国民国家」の成立が近代化なのか、と考え込む。現在進行形である中東での混乱を見るにつけても……。巻末の訳者外題から読む方が分かりやすい。
読了日:07月05日 著者:マーク・マゾワー
東京昭和百景―山高登木版画集東京昭和百景―山高登木版画集感想
たぶん戦後、1964年の東京五輪前後までの風景の版画。安藤広重を初め、多くの浮世絵師が手がけてきた素材だが、どこか、新版画の旗手、川瀬巴水の感性とか、川上澄生の色づかいの影響も感じられる。小、中学生のころ、背伸びして出かけた東京にあった風景。もう残っているところは少ないが。ちょと知人がいいねをしているので、手を伸ばした1冊。
読了日:07月03日 著者:山高 登
ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書)感想
ノモンハン事件の概要、国内での報道、現地での検閲ぶり、そして戦中戦後に亘る享受史を概説した1冊。新書という判型、入門書という制約があるので仕方ないのだけど、力点を絞って欲しかった気がする。抑も日本側、旧ソ連側の記録が詳細になっているという状況になく、なお先方の秘密文書が次々発見されているのが現状では事件についての記述も得心のいく内容を提示しにくいのは承知だが。個人的には本書は副題にもある「検閲資料」の部分と戦中戦後の当事者の執筆に懸かる戦記、そして藤田嗣治の絵が2枚あったという逸話を膨らませて欲しかった。
読了日:07月02日 著者:小林 英夫

読書メーター
posted by 曲月斎 at 02:04| Comment(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。