2017年06月07日

★2017年5月に読んだ本。

5月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2863
ナイス数:537

真説・戦国武将の素顔 (宝島社新書)真説・戦国武将の素顔 (宝島社新書)感想
面白さは筆者が表白している立ち位置。曰く「僕らの頃は、少なくともソ連が崩壊する以前には(中略)共産主義と自由貿易主義があって、どちらが勝つのかわからない時代に生まれていたから、正義とか秩序というのは『疑ってかかるものだ』というのが深層心理の中にある」といい、「秩序を作る上位者を認めてしまう」若い研究者に疑問を投げかける。1960年生まれ、奇しくも同い年。先生のこの気持ちが分かる。本書の釈台に張り扇、調子のいい語り口の裏にある漠然とした「懼れ」みたいなものがシニカルに響いてくる。史料を読み込んだ自負と共に。
読了日:05月29日 著者:本郷 和人
プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)感想
教皇を頂点とする旧教の改善を求めて、ルダーに始まるプロテスタンティズムの分析が中心。ただ改善したものは次の時代にはまた権威を持つものになり、異端は別の場所で広まっていく。運動に旧と新の別を挙げている。社会の要求に合わせて姿を変える歴史である。ただ、個人的にはそれ以上に、面白く読めたのは「頭の中の代入」の故だ。教皇が天台座主なら、ルターは法然、バプテストが親鸞という見立てもできるし、教皇や公会議が明治政府ならルターは憲法を立てにとった大正期の政治とも見える。知識を得る以上に、人の営みとしての宗教は興味深い。
読了日:05月25日 著者:深井 智朗
東京下町百景 100 Views of Tokyo東京下町百景 100 Views of Tokyo感想
「おとなの週末.com」という雑誌に連載された作品集。東京の下町(というか東部)の風景を描いた戯画集。筆者自身も影響を受けたと記しているけど、浮世絵から発展した新版画の吉田博(瀬戸内海集など)や、川瀬巴水の版画(東京二十景など)を連想させる。ただ、画面の片隅に招き猫だったり達磨だったりが紛れ込んでいる。これを戯れと見るか、緩みと見るか。見る人間の感覚次第だろう。「少し不思議で少し懐かしい」という味を出したいのなら、個人的にはこれだけ上手の描き手、あえて戯れて見せる必要はなかったのではないかな、と思う。
読了日:05月24日 著者:つちもちしんじ
「成田」とは何か―戦後日本の悲劇 (岩波新書)「成田」とは何か―戦後日本の悲劇 (岩波新書)感想
筆者が本書を「世界」に連載したのは成田空港の閣議決定から四半世紀の頃、1992年刊。その後、さらに四半世紀の時が過ぎている。。時の経つのは早い。経済は低成長期に入り、当時は考えもしなかった人口減少が進む。今、本書から掬すべきは、為政者(と官僚)が恣意的に私的な財産権すら「公益のため」という理由で蹂躙することがあり得る、という教訓だろう。封建制度の時代と変わらぬ手法だった。と同時に、この成田空港という土地の長い歴史(江戸期からの住人、明治期の移住者、戦後の入殖者)という3層だったことも見逃してはなるまい。
読了日:05月23日 著者:宇沢 弘文
ノモンハン 1939――第二次世界大戦の知られざる始点ノモンハン 1939――第二次世界大戦の知られざる始点感想
秦郁彦の「明と暗のノモンハン戦史」を読んだので、本書を再度通読。やはり、おすすめの1冊だ。第1。二正面作戦を展開できる戦力、資本があったのは米国だけという当時、ソ連にとって西側の欧州戦線と東の満蒙の国境。2正面作戦となるのをどう回避するのか、という意味のある戦いだった訳で、アジアの局面だけ見ていると意識できない部分が多すぎる。第2。本書でも旧ソ連時代の資料の博索は進んでおり、戦いの評価は冷静である。第3。日本型の組織と、恐怖による統制を旨としたソ連の軍制。類似点を見せているのが興味深い。お勧めの1冊です。
読了日:05月21日 著者:スチュアート・D・ゴールドマン
明と暗のノモンハン戦史明と暗のノモンハン戦史感想
眼目は「旧ソ連側の資料と突き合わせた」という1点に尽きる。確かに戦史を綴るためには客観的事実が必要なのは分かる。只、筆者のタネ明かしの仕方は作為的。張鼓峰事件にも当て嵌まるが、当時も今も「軍事的に価値のないエリアは放置する」というのが正しい姿勢。GPSの発達した今の物差しとは違う。国境線の位置より、陸続きの大陸では第1歩を踏み出す事と、戦後処理こそ大事なのは謙信&信玄の川中島に同じ。撃鉄を誰が何のために引いたのか、どう終息を付けたのか。単なる数字の羅列では手薄い。単なる甲乙論併記、赤白の旗判定ではなく。
読了日:05月20日 著者:秦 郁彦
日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)感想
「議論による統治」に始まる近代化の分析に始まって、貿易、植民地と視野を広げていく。幕政の中に合議制の素地を見、権力の集中を回避する体制への親和性を見る。国民国家が成立するために不可欠な個人の成立、そのための教育の充実。地租改正による村の請負から個人の責任への移行、租税収入の安定化、外債に頼らない殖産から、戦争を機に国際金融の世界への転換。そして立憲主義の中で教育勅語の果たした役割。歴史を振り返る時、点を覚えて知ったつもりになり、線を知って理解したつもりになりがちだが、本書が示すのはその先、立体模型の世界。
読了日:05月13日 著者:三谷 太一郎
80時間世界一周 格安航空乗りまくり悶絶ルポ (扶桑社新書)80時間世界一周 格安航空乗りまくり悶絶ルポ (扶桑社新書)感想
80時間、13万円台で西周りで世界一周(茨城〜上海〜モスクワ〜デュッセルドルフ〜チューリッヒ〜NY〜LA〜羽田)する話。2012年刊。就航していない所に住んでいたので実感がなかったが、実はLCCが空の世界を大きく変えているのを実感する。旅の大半が旅客機の中という旅行記なので、J・ヴェルヌのような波瀾万丈の中身にはならないのだけど、手続きと出入国審査と乗り継ぎを繰り返すのが現代的な波乱劇なのかも。小さな出来事からお国柄の見立てはなかなかに巧者。ともあれ今、世界の空はLCCだらけだったんだ、と。
読了日:05月09日 著者:近兼 拓史
和食の歴史 (和食文化ブックレット5)和食の歴史 (和食文化ブックレット5)感想
和食の歴史を概観した1冊。卓上に備えた塩や醬で自分で調味しながら食べた大饗料理の時代から、醱酵調味料の登場で味付けまでした形で供される形へ。実質的には鎌倉期の精進料理(粉食文化も)、室町期の本膳料理が茶道の懐石料理、江戸期の会席料理を節目に進化する。根幹にあるのは主食の米。モンスーン地域に適合した作物だったのが幸い。で、興味深かったのは、戦前の水準に米作の量が戻ったのが1955年。高度成長期前夜。進学率、集団就職、いろんなことに繫がっていそう。副菜の中で、肉食が魚食を上回ったのが1988年だったとは意外。
読了日:05月06日 著者:原田 信男
「天皇機関説」事件 (集英社新書)「天皇機関説」事件 (集英社新書)感想
美濃部達吉が貴族院で追及された「天皇機関説」。立憲主義を守るために必要であったものが、「天皇主体説」を奉じる面々に駆逐されていった。端緒は箕田胸喜や菊池武夫らながら、政争の具にした鈴木喜三郎、枢密院議長の座を巡っての平沼騏一郎、陸軍内の主導権争いの梃子にした真崎甚三郎と、有象無象が群れていき、混迷を深める。しかも「国体」という実態のない概念を奉じての行動に振り回される。勿論、世上に正常な情報を与えるべき報道機関も含め、呆れるばかりの軽躁の様に、情けなくさえある。さて歴史の彼方と嗤っていられるか否か……。
読了日:05月05日 著者:山崎 雅弘
天下泰平の時代〈シリーズ 日本近世史 3〉 (岩波新書)天下泰平の時代〈シリーズ 日本近世史 3〉 (岩波新書)感想
江戸時代でも、4代家綱から10代家治の頃までを視野に入れた1冊。外は明から清への王朝交代に始まって、露国の蝦夷地への来訪まで。内は武力による統治から権威を利用した治世に、江戸と京の関係では融和、統制から幕末への胎動まで。版図の言葉通り、地図を作り、戸籍を作り、修史をし、貨幣の改鋳から経済政策まで。天下泰平の大筋を網羅していく。今に続く統治機構、官僚制度の根幹が作られ、確立した体制は盤石に見えても格差の拡大によって揺らいでいく。時代区分で言えば中世から近世への移行期。小さな変化を紡いでいく書きぶり、良書。
読了日:05月04日 著者:高埜 利彦

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posted by 曲月斎 at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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