2017年05月01日

★2017年4月に読んだ本。

4月の読書メーター読んだ本の数:9読んだページ数:2386ナイス数:354シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)シリーズ<本と日本史> 4 宣教師と『太平記』 (集英社新書)感想軍記物といっても平家物語や保元、平治物語と比べて影が薄い太平記。近代的な歴史学が移入する前、江戸時代までは貴賤、老若男女を問わず享受されていたことを説くのが眼目。「戦国と宗教」で筆者が説いたように、単に儒学や仏教の因果論だけではない「天道」の導くところが、歴史の帰趨に反映すると展開するのが、太平記が広汎に享受された理由と見立てる。と同時に、物語が成立した室町期は「日本国」「日本人」という概念が定着した時期。国民意識の形成に影響を与えたと見る。大津雄一の「平家物語の再誕」にも通じる「享受史」は興味深い。読了日:04月30日 著者:神田 千里
足利尊氏 (角川叢書 583)足利尊氏 (角川叢書 583)感想尊氏像を、発給した文書から探る1冊。中でも領地を与える際などの「袖判下文」(冒頭に花押が据わった文書)と「軍勢催促状」、所領安堵の「下文」など、文書の性格、書式、時期、、年号、書き手などを分析して、尊氏と弟直義、その次世代の義詮と直冬といった人物の内心や権限、役割を探る。倒幕の挙兵から南北朝、観応の擾乱と、時代が移る中で、発される文書の性格、権能が変わっていく。現存する文書を解析した功は興味深いが、同時に、未発見の文書の山が有り得るのでは、という気持ちが起こる。門外漢だからか。ま、「悪魔の証明」だけど。読了日:04月26日 著者:森 茂暁
帝国大学―近代日本のエリート育成装置 (中公新書)帝国大学―近代日本のエリート育成装置 (中公新書)感想本書の述べる通り、高等教育を自力でするにはまず教員の確保が必要で、明治の世に国家の人材養成のために作った機関というのが描かれる。と同時に、旧制高校、講座制、学位制度、大学特別会計など、旧7帝大という存在の特権的な地位を改めて実感する。予算があってこその高等教育、である。旧帝大>旧官立大>私学という序列……。ただ一方で、複線式の高等教育制度だった戦前と6334制に統一された今の学制と、どちらが良かったのか。巻末に取り上げられているが「研究大学(RU)」の芽は今後の「大学」像として求められるのではないか……。読了日:04月20日 著者:天野 郁夫
昭和の能楽名人列伝 (淡交新書)昭和の能楽名人列伝 (淡交新書)感想1939年生まれの筆者が書いた本書は33人登場して10人が見ていない演者。昭和の能楽師を語る上で、万六銕や新、長は欠かせないのだろうけど、選から外した役者に惜しい人が多い。例えば茂好、一次。紙幅を考えると差し替えても良かった気がする。「私の観た」の一句をタイトルに入れればいいのだから。振り返ればこの本に登場する役者の多くを観てきた仕合わせというか。一方で自分自身が観た印象を併せると、能狂言の評の本で、どうしても印象批評の域を出ない気がするのは残念。藝系とか空気とか。戦争という大事を挟んだ昭和の世だけに。読了日:04月19日 著者:羽田 昶
昭和の歌舞伎 名優列伝 (淡交新書)昭和の歌舞伎 名優列伝 (淡交新書)感想本文269頁の本で169頁までが筆者の未見の役者の話。列伝体ではあっても筆者の知識の集積を編輯した体裁。1次資料といいづらく、出典の明記も少ない。1955年生まれの筆者が取り組む主題としては厳しい気がする。75年以前が没年の役者になると、実際に見ていても運びが弱い。勢い文末を丸めるような文体で上品だけど、全体的に歯切れが悪い。同趣向の1冊として1960年生まれの中川右介「歌舞伎 家と血と藝」(講談社現代新書)の方が見立ての藝が行き届いていて出来がいいと思う。役者同士の聯関の説明が分かりにくいのも残念。読了日:04月17日 著者:石橋 健一郎
ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで (文春文庫)ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで (文春文庫)感想鬼平というと白鸚。高麗屋のニンに合っていた。丹波哲郎、萬屋錦之助と挟んで長く続いたのが当代の播磨屋。本書は4代目の話が軸。ただ背景の理解が欲しいところ。2章、序章を前にして1章の聞き書き部分を中に挟んだかも。元々「必殺」ものを撮影していた松竹京都に残っていた映像の職人衆が新生・鬼平を支えた。仕事の聞き書きは貴重で脚本、殺陣から記録まで、職責への自負が行間に覗く。4代目のシリーズが映像的にも今の時代で受け入れられ、長く続いた謎解きになったかどうか。アナログ時代からデジタル化。時代劇もその例外ではなかった。読了日:04月17日 著者:春日 太一
張作霖:爆殺への軌跡一八七五‐一九二八張作霖:爆殺への軌跡一八七五‐一九二八感想日本史の教科書なら1行にも満たない出来事が約350ページの本になった。1875年に奉天海城で生まれた張作霖を主人公に、日清、日露の戦役から清朝崩壊、軍閥の割拠、国民党の北伐を前に躍動した跡を辿る。2000年代以降に主に刊行された中国側の資料を読み込み、日本側の資料と付き合わせて描き出した物語、前半は講談を聞くような快感があり、後段はソ、日など外国勢力の思惑と各軍閥の絡み合いを描いて倦むことない展開。1928年の爆殺まで、精緻な細工ものを見るような楽しさがある1冊。行間にひとかどの人物像が浮かび上がる。読了日:04月09日 著者:杉山 祐之
プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)感想田口はプロ生活を始めた頃を知っているし、その後のMLBでの経験談も愛読してきた。書きぶりには一目どころか井目風鈴くらい置いているものの、本書はちょっと物足りない。テーマはファーム制度の話か、日米の比較なのか、2軍監督1年生としての経験談なのか。焦点が絞り切れていない感じが残った。もっと自在に書いていいのだし、筆者ならできるはず。何しろ、あの仰木彬やT・ラルーサの下でプレーした選手なのだから。もっと歯切れ良く書けたはず。プロの世界を一般社会まで敷衍しようという試みが本書の内容を半煮えにしたような気がする。読了日:04月08日 著者:田口 壮
世界のなかの日清韓関係史-交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)世界のなかの日清韓関係史-交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)感想冊封制度は中国に臣下の礼はとっても、内政外交は自主的にできる「属国自主」の概念。植民地とは東アジアでは似て非なるものと受け止められてきた。礼を基本とする儒教を国教とした朝鮮は中国本土の王朝が明から清にと変わった中、自身が正統で天朝を引き継ぐものとしての自負が膨らむ。一方、18世紀にこの地を訪れた帝国主義を掲げる西欧列強には不可解な慣習だったろう。本書は朝鮮のそんな歴史的背景を踏まえた上で19世紀以降の変化を解析した点が今に続く事情の理解に役立つ。筆者の一連の著作を併読すると立体的に見えてくるものがある。読了日:04月05日 著者:岡本 隆司
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posted by 曲月斎 at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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