2017年02月01日

★2017年1月に読んだ本。

2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4097ページ
ナイス数:584ナイス

都市と暴動の民衆史 東京・1905-1923年都市と暴動の民衆史 東京・1905-1923年感想
日露戦争の講和後に起きた日比谷焼き討ち事件、1918年の米騒動、普選運動の時の暴動、そして1923年の関東大震災後の朝鮮人虐殺。農村から都市に流入した人、生活水準の差から生まれた「疎外感、劣等感」の産物と読み解く。さらに性差の意識の影が差す。「飲む打つ買う」が「男らしさ」の証とされた時代。生活水準の上昇かなう見込みない、抜き差しならぬ状況に置かれて、自分よりも立場の弱い者への暴力という形で発露した事実を史資料から読み解く。空気は「大衆迎合」という形で続いた。さらにこの構造は今も再現していないか。考える。
読了日:1月30日 著者:藤野裕子
浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)浄土真宗とは何か - 親鸞の教えとその系譜 (中公新書)感想
親鸞というと絶対他力。だが自筆の筆跡を見るに実に神経質な人の印象。仏教の験力が信じられていた時代に生きた人であり、衆生済度のために三部経千遍読誦をしたことを思い返して曰く「まはさてあらん」と振り返る。何があっても往生という教えを説く一方で自力を頼む自分も居た訳で、その揺れが興味深い。寧ろその後裔が何を齎したのか、神祇不拝の原則とか、善鸞の存在とか。一神教に近い考え方とか。宗祖、聖人と仰がれる存在である以前に1人の人間として、あるいは宗教者として見直すという姿勢は今に生きる読者には納得がいくものだろう。
読了日:1月26日 著者:小山聡子
<軍>の中国史 (講談社現代新書)<軍>の中国史 (講談社現代新書)感想
本書は「中国は法治ではなく人治の歴史」という前提と「故に中国共産党軍は共産党(正確には毛沢東、今なら習近平)の私軍である」という結論に至るのが骨子。残念ながら論証になっていない。清末までの記述は文献の矧ぎ寄せ。岩波新書の「李鴻章・袁世凱・孫文」の記述に及ばず、軍事力の苛烈さは中公新書の「中国革命を駆け抜けたアウトローたち」の方が躍動感がある。軍閥の長の抗争を跡づけしているだけの感がある。筆者の熱意は買うが新書という寸法、「帯に短し」状態というか。もっと題材を絞って点綴した方がこの分量には見合ったと思う。
読了日:1月25日 著者:澁谷由里
欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書)欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書)感想
興味深かった2点。1)「正統性」。選挙を通じて民意を反映することで担保される概念が成立しえてないことがEUという枠組みの危うさを招く。軍事はNATOに、以外はEUにという流れの中で、独の強大化を抑えようとした仏。局面的には正しくても、戦略的に如何だったのか。選挙という概念は国民国家単位にしか機能しない現実の前に。2)「富の再分配」。富める国の負担を他の国に分配するという機能。円滑に進んでいるのだろうか。日本国内に当てはめても「都市対地方」という構図が顕在化している中、EUには建前論では済まない世界が残る。
読了日:1月23日 著者:遠藤乾
戦国大名 (1960年) (塙選書〈第9〉)戦国大名 (1960年) (塙選書〈第9〉)感想
本書は黒田基樹の同題(平凡社新書)に先行書の記載ありて手を伸ばす。1960年刊。筆者は1904年生。中世史畑を一筋に歩んだ。組版や文章の進め方に時代の差を感じるものの、検索が簡単でなかった時代によくぞここまで様々な史料を頭に入れて、丹念に抽出し、書き上げたと思う。前半は戦国大名諸家の総論。後半は生活や産業、交通全般に及ぶ。細かく出典とした史料の名を引きつつ。江戸時代の随筆や博物学の文化と西欧史学の融合を目指したような1冊。多岐に渉りながら今も役に立つ部分が残るのはすごい。史料編纂の余技というにはすごい。
読了日:1月21日 著者:奥野高広
天に遊ぶ (新潮文庫)天に遊ぶ (新潮文庫)感想
原稿用紙10枚、軛を自らに課しつつ、書かれた掌編はどこまでもいとおしい。私小説は好きではないが、吉村が描く世界はきれいに私小説のそれとは違う世界を描きだす。筆者の他の作品を読んでいれば、思い当たる節も多いエピソードをここまで別世界の出来事のように換骨奪胎してしまう世界に驚きすら覚える。だって原稿用紙10枚、書ける世界は限られる。でもこの切れ味の良さ、首が飛んでもそのまま笑顔になりそうな、切れ味の良さ。元々は週刊新潮の連載だったという。こういう小説が存在しうる時代の犀利さを思う。身近な小説にはない切れ味。
読了日:1月19日 著者:吉村昭
密着 最高裁のしごと――野暮で真摯な事件簿 (岩波新書)密着 最高裁のしごと――野暮で真摯な事件簿 (岩波新書)感想
正確には「最高裁・裁判部門のしごと」という書名になろうか。1、2審が事実関係の審査であり、最高裁は法律に照らして齟齬がないかを確認する組織であること、少数意見も公表されること等々。日頃身近に感じることが少ない組織だけに、筆者の筆致は丁寧で平易。司法記者愛を感じる。ただ一方には司法事務部門があり、人事局が広く下級裁判所を掌握している存在。本書では調査官の話がチラと出てくるが……。それと「霞ヶ関の奇岩城」の異名に違わず、「権力の館」(御厨貴)で各裁判官の事務室の独立性が極端に高いと紹介していたのを思い出す。
読了日:1月18日 著者:川名壮志
戦国大名 (1978年) (教育社歴史新書―日本史〈55〉)戦国大名 (1978年) (教育社歴史新書―日本史〈55〉)感想
本書は1978年刊。同名の黒田基樹の1冊(平凡社新書)で取り上げていたので手を伸ばした。今となっては考古学的な知見が広がったり、新史料が出てきたりと、研究が進歩していることが改めて感じるような内容。後北条家の成立や斎藤道三の出自、長篠の合戦の有様等々。ただそんな点を割り引いても、当時の研究水準で軍事、政治、行政、文化、商業などあらゆる分野について、糸口を付けていくような書きぶりには頭が下がる。戦国時代の史料はなかなかに残っていない。一部の例を敷衍する危うさはあるにせよ、新書の判型でよく纏まっている。好著。
読了日:1月15日 著者:小和田哲男
数学する身体数学する身体感想
中・高校の恩師に卒業した後、蒙を啓かれたことがある。「世の中、物理と数学だ」と。現象の解析を積み重ねる帰納的な方法と仮説を元に演繹的に考える方法と。ものの考え方の手段として数学は有効、と教えられた点だ。本書は数学とは、という問いかけの果てを考える1冊。一人に抽象化を推し進めたチューリングを挙げ、一人に数学が生まれる瞬間を考えた岡潔を描く。「数学は零から」と考えるか、「零までが大切」と見るか。筆者は「ない」世界から「ある」世界への変転に心惹かれるのだろう。その変化をどう生み出すのかを考えるのが数学なのか。
読了日:1月13日 著者:森田真生
クー・クラックス・クラン: 白人至上主義結社KKKの正体 (平凡社新書)クー・クラックス・クラン: 白人至上主義結社KKKの正体 (平凡社新書)感想
白い三角頭巾に松明、燃え盛る十字架−−KKKへの先入観を改める1冊。運動の時期により、1期は南北戦争当時の南部諸州での体制維持が主眼、2期目は増える新移民への排斥主義と表裏のWASPに代表される白人至上主義が、3期目は公民権運動への対立命題として。「文化的定義」のエスニック集団か、「身体的基準」の人種か。さらに人(集団)という存在を「構造主義」的に見るか「本質主義」的に見るか。空想の産物ともいえる共通の敵を想定するときに、後者に傾く傾向が顕著になった事例なのだろう。この動きは米国内に限るものではない、と。
読了日:1月12日 著者:浜本隆三
ニセチャイナ―中国傀儡政権 満洲・蒙疆・冀東・臨時・維新・南京 (20世紀中国政権総覧)ニセチャイナ―中国傀儡政権 満洲・蒙疆・冀東・臨時・維新・南京 (20世紀中国政権総覧)感想
表装は禍々しいゲーム攻略本のようだが中身は真っ当。満洲事変から内蒙古、華北、華中と日本軍が仕立てた傀儡政権(対日協力政権)の記伝。占領地の維持を目指して「自治政府」を作っては崩壊していく。日本側についた人物も日本軍の利害関係者、権力欲を持っていて一筋縄ではない。一方、財源が阿片と関税。紙幣も英ポンドとリンクする法幣と、日銀券、朝鮮銀行券とのリンク頼みの満州中央銀行券、中央儲備銀行券、中国聯合準備銀行券、蒙疆銀行券、華興商業銀行券+軍票では民政も安定する筈もなく、砂上の楼閣建設を繰り返した当時の愚が分かる。
読了日:1月10日 著者:広中一成
「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 (中公新書)「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 (中公新書)感想
1945年8月15日は日本では終戦記念日。だが朝鮮、台湾、中国本土、南方、樺太、千島は同じ時期に別の事態が進展した。不可侵条約を破ってソ連軍が南下した北方では後のシベリア抑留や居留民の放置が起こり、朝鮮では南北分割の基礎が固まった。台湾も本省人と外省人の対立は残った。日本は国として戦争終結がやっとで、民間人の保護と統治の引き継ぎすら満足にできなかった。政府の責任や大である。当時、大東亜省は「居留民はできうる限り定着の方針を執る」との指示しかなかったと言う。統治者の責任放棄に近く、戦後の禍根を残した日々だ。
読了日:1月4日 著者:加藤聖文
SMAPと平成 (朝日新書)SMAPと平成 (朝日新書)感想
筆者には「歌舞伎 家と血と藝」という秀逸な1冊がある。梨園を愛憎、欲望、虚実入り乱れて描いたその本の印象があり、期待を持ってSMAP本2冊目と選んだものの、正直のところ期待外れだった。平成という時代区分(が一般化するかどうか分からないけど)、今上天皇、歴代内閣、世上の出来事をSMAPというグループの動向と繋ぎ合わせることで時代の空気感を描こうという意図なのだけど、結構、牽強付会のような気もして、総体にまとまりに欠ける。話の重心はグループとして世に出て第一人者になっていくまでに重心がある。話が流れ過ぎる。
読了日:1月3日 著者:中川右介
日本はなぜ開戦に踏み切ったか―「両論併記」と「非決定」 (新潮選書)日本はなぜ開戦に踏み切ったか―「両論併記」と「非決定」 (新潮選書)感想
1941年の日米開戦に至る官僚(近衛文麿を除けば大臣も官僚の一種)の動向を跡付けした1冊。意思決定というより、筆者の言う「非(避)決定」と「両論併記」、自己矛盾の繰り返しの記録である。資源を目指して南方に進出しても輸送手段が不如意、工業生産の目算もなく、先方の意向すら牽強付会。この論法は満州事変、日中戦争を通じて現場専行を周囲が追認する構図と相似である。明治憲法下で天皇は無答責の存在で、建前論と御都合主義を制止する権能がどこにもないという制度上の欠陥はあるにせよ。今でもこの行動様式への危惧が拭い切れない。
読了日:1月2日 著者:森山優
軍艦と装甲―主力艦の戦いに見る装甲の本質とは (光人社NF文庫)軍艦と装甲―主力艦の戦いに見る装甲の本質とは (光人社NF文庫)感想
「攻めるも守るも鐵の」という存在の軍艦。砲弾の威力と防禦の装甲は矛と盾。本書は木造帆船の時代、船首の衝角で体当たりという戦法の頃から40サンチ砲を備えたビッグ7の登場とワシントン条約で海軍の休日に入るまでの試行と結果を淡々と綴っていく。装甲鈑の質的な改良がある一方、砲撃や水中攻撃の進化で耐えられても人的被害が防げなくなる。1dの砲弾が音速の2倍で命中する世界は戦艦を巨大化させ、建艦費の高額化を招き、時代の遺物化を進めることになる。理詰めの書きぶりで納得。なぜ日本がこの妄想から抜け出せなかったか。不思議だ。
読了日:1月1日 著者:新見志郎
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posted by 曲月斎 at 14:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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