2017年01月01日

☆2016年12月に読んだ本。

2016年12月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:5587ページ
ナイス数:641ナイス

近代はやり唄集 (岩波文庫)近代はやり唄集 (岩波文庫)感想
不思議な本です。別に歌ったことがあるわけではないけど、どこか知っている。記憶の奥底にあるのかもしれません(といっても世代的な隔絶はあるのを承知、ですが)。要は口伝え、実演で広まっていった唄です。自由民権運動の場面で、映画、演歌師、寄席、宴席。部立てがなかなかに巧いので、ひとかたまりで摑むのにはいい1冊です。方言があり、歌唱力がなかった日本人が唄を、歌を歌うという力を身につけてきた歴史の一部を綴った1冊とも言えるのかもしれません。パイノパイノパイとか、春はうれしや、とか、ダンチョネ節とか。
読了日:12月31日 著者:
勝負の極意 (幻冬舎アウトロー文庫)勝負の極意 (幻冬舎アウトロー文庫)感想
初期の作品ゆえ、今のねっとりした書きぶりではないが、「蒼穹の昴」が世に送り出されるまでの世過ぎ見過ぎを綴った1冊。前半は特に生業の傍らで、作家になるという一念で書くことを続けてきた執念。努力は凡才を天才にするとはいえ、本当に大した物だと改めて思う。競馬の方は余り親しくないので佳く分からない。でも随筆を頼まれて、最初は自衛隊のことを書き、次に自身の来し方を書き、本篇を書く機会を待ったという。日々6時間の執筆を続けるとは。畳のあちこちに座り込んでいたことで出来た窪みができていたという逸話がこの方らしく思えた。
読了日:12月31日 著者:浅田次郎
横浜港の七不思議―象の鼻・大桟橋・新港埠頭 (有隣新書 (65))横浜港の七不思議―象の鼻・大桟橋・新港埠頭 (有隣新書 (65))感想
日本の都市としては横浜は特異な街だ。貿易港が寒村に出来たことで一気に変貌した。砂浜だったところに港を造るのだから大変。石詰みの岸壁がやっとだった時代。今の大桟橋は、米に支払った下関戦争の賠償金がこの頃、返還されることで財源を確保できた訳で、鉄製の桟橋ができたのは知らなかった。「我が日の本は島国よ」の横浜市歌も、東京音楽学校の斡旋宜しきを得ての誕生とか、この街の成立には多くの僥倖があったのが知れる。精いっぱいのやりくりと、生糸輸出港での外貨獲得と。如何にもふるさとに矜恃という筆者の書きぶりが気になるが。
読了日:12月31日 著者:田中祥夫
日米開戦と情報戦 (講談社現代新書)日米開戦と情報戦 (講談社現代新書)感想
昨今「インテリジェンス」という言葉が独歩している。理解力、知性といった意味が本旨だが、情報や諜報という意味に重きを置いている感がある。暗号化情報でも自分が読めていれば相手も読んでいると考えるのが冷静な考えだろう。正確に把握できている保証もない。本書は"1次情報"と内向きの体面に振り回され、陸海軍、外務省、米英側と各々が予断を持ち、真意を摑みかねた揚げ句の失敗の来歴である。巻末に幣原喜重郎や米英駐日大使が公開情報と経験、人脈で適切な判断をした例を挙げる。今でも本当の意味で求められるインテリジェンス、である。
読了日:12月30日 著者:森山優
通州事件 日中戦争泥沼化への道 (星海社新書)通州事件 日中戦争泥沼化への道 (星海社新書)感想
北京郊外の通州で、日本の傀儡政権・冀東防共自治政府の守備隊が、駐屯していた日本軍や民間人を殺害したのが「通州事件」の骨子。華北分離工作の中で、冀東政府と国民党側の冀察政務委員会の対立、中国共産党の工作等の指摘、冀東密貿易や阿片の移動を黙認する体制など、本書は時代背景を完結にまとめている。シベリア出兵に際しての「尼港事件」同様、民間人が巻き込まれたことで、日本軍の統制下で対外宣伝工作の材料となったとの推論も示される。結論が明示されている訳ではないが、当時醸成されていた「抗日」の空気を十二分に理解できる1冊。
読了日:12月29日 著者:広中一成
最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常感想
行ってみたいけど実現していないことの一つに「藝祭」がある。東京藝大の学園祭。毎年9月、上野の山。音楽系、美術系混成の1年生8チームが作る神輿の見事さは写真で知れる。真剣に遊ぶ見事さの象徴に思えた。そんなギモンに答えてくれる1冊。筆致はルポの常道で、丹念に学生に話を聞き、紡いだ書きぶり。取材はこの何倍も重ねているのだろう。この学校の素顔を等身大で写す。「ニッポンの文化芸術を背負うのは、お前らじゃあァ」と言い切れる学長。読み終わってなおカオス。でも本当の姿を知ろうと思うのは「渾沌に目鼻を空ける」ようなものか。
読了日:12月28日 著者:二宮敦人
戦国大名: 政策・統治・戦争 (平凡社新書)戦国大名: 政策・統治・戦争 (平凡社新書)感想
自力救済の時代にあって、地域の単位である村・郡に注目し、戦国大名との関係を解析した1冊。支配構造、徴税、流通、軍役と話を進める。常に近隣との紛争が起こる中で、村という単位が果たした機能を説き起こし、下からの目線の像を描くことになる。史料が多く残る後北条氏が中心。今も残る「村」起源はこの時代にある。貫高制から石高制への移行だったり、大名同士の戦の契機となるのは周縁部の領域争いであったり。織豊時代、いや徳川殿の前期まで続く母型が見えるのが明解。中世と近世の境は軍事費を社会投資に回せる社会への変革だったのかも。
読了日:12月26日 著者:黒田基樹
ノモンハン 1939――第二次世界大戦の知られざる始点ノモンハン 1939――第二次世界大戦の知られざる始点感想
WWUで二正面作戦を勝ち抜けたのは米だけである。外蒙古と満洲の国境(というか口伝の境界線)を巡って関東軍と赤軍が衝突したのがノモンハン事件。本書は拡張を続けるナチスと英仏、ソの均衡と野心収攬の結果が独ソ不可侵条約成立、西部戦線の一時的静穏であり、その裏の東部戦線ではノモンハン事件が起きたのではないか、と筆者は読み解く。スペイン内乱も絡んで、英仏が植民地支配する余力がなくなっていた時代状況を前段で説明、関東軍内の暴走は中段で、日ソ不可侵条約とソの動きは後段で展開。旧日本軍の夜郎自大ぶりには頭を抱えるばかり。
読了日:12月23日 著者:スチュアート・D・ゴールドマン
ゴルゴさんち 全1巻ゴルゴさんち 全1巻感想
昔、別冊ゴルゴ13に連載されていた掌編。ある時期から突然消えたように記憶していたので不思議に思っていたが、実は離婚していたんですね。ゴルゴ13の作者さいとうたかお氏の元夫人が描いたこの漫画。一家の日常を描くもので、どこか昭和の香りのする作品です。巻末に「当時の空気を懐かしみつつ大らかに楽しんでほしい」と後記をいれるほど。でも何か懐かしいような。「将棋の渡辺くん」に刺激されて思い出した本。2009年に単行本として刊行されているのは日本の漫画文化の懐の深さを感じるというか。夫婦に娘2人、そんな生活は今は昔?
読了日:12月21日 著者:セツコ山田
犯罪の大昭和史 戦前 (文春文庫 編 6-18)犯罪の大昭和史 戦前 (文春文庫 編 6-18)感想
本書は「犯罪の昭和史1・戦前」(作品社、1984年)の再編集、文庫化。旧版3冊本を読んでいるので再読になる。戦前の説教強盗や玉ノ井バラバラ事件、阿部定事件など巷間を騒がせた事例から、北原二等兵天皇直訴事件、九大生体解剖事件まで多岐に渉る。今となっては忘れかけた事件も多い。本書の面白いところは当事者が登場する例あり、当時の知識人が分析したものあり。一種のアンソロジーになっている点。週刊誌的な興味だけではない。今、読み返しても事案の骨格と裏面を窺うことができる仕立てになっているのは類書の及ばぬ点だ。好復刊。
読了日:12月21日 著者:
ジャニーズと日本 (講談社現代新書)ジャニーズと日本 (講談社現代新書)感想
騒動の中で改めて、と手にした1冊。戦中戦後を生き抜いたジャニー喜多川という人物が作り上げたこの世界。巷間言われる通り、闇市世代の体験と米西海岸で見たというショービジネスの感覚とが渾然一体となった世界は再現不可能だ。本書の焦点は前半の音楽的な系譜を辿った部分にある。自家薬籠中。後段になって、戦後史の系譜の話になると一寸如何か。確かにバブル後の「失われた10年」は一面的に見れば筆者の所説になるものの、本当は人口減少時代を迎えたところでの安定成長期に切り替えられる契機でもあった。筆者1983年生、まだ若書きか。
読了日:12月20日 著者:矢野利裕
将棋の渡辺くん(2) (ワイドKC 週刊少年マガジン)将棋の渡辺くん(2) (ワイドKC 週刊少年マガジン)感想
この漫画も2年に1冊くらいのペースで単行本が出ているらしい。間遠である。でも何か、プロ棋士という普通には想像しがたい生活ぶりを垣間見ることができて、おもしろい。大タイトル戦だと和服が多くて、順位戦だと背広、意外に大事なのが靴下などなど。中学生でプロ入りした渡辺明のどこか純粋無垢なところが、将棋という藝を支えている気がした。
読了日:12月17日 著者:
将棋の渡辺くん(1) (ワイドKC 週刊少年マガジン)将棋の渡辺くん(1) (ワイドKC 週刊少年マガジン)感想
キンドルで読了。かつて、ゴルゴ13の別冊に「ゴルゴさんち」(セツコ山田)を連想させる内容。棋士という方々はもちろん常識的な方々が多いとは聞くが、渡辺明氏は、なかなかに取捨選択の上手い生活をしているようだ。ぬいぐるみ好き、虫嫌い、考え抜く理論派……。テレビの画面でご尊顔を拝する程度ではあるけど、本当にこの人はすごいんだろうな、と思わせる何かが画面が伝わってくる。いい1冊です。
読了日:12月17日 著者:
1941 決意なき開戦: 現代日本の起源1941 決意なき開戦: 現代日本の起源感想
「ディマジオの奇跡」とか「山田風太郎の明治小説」を連想させる筆致。筆者の管見に入った資料を換骨奪胎して複数の視点、思惑の錯綜を1篇の物語に織り上げた。主役級は近衛文麿、松岡洋右、東条英機。授権法で突っ走った独、ファシスト党独裁をつくった伊とは違い、すべて法手続に基づいて日米開戦への道をひた走るのが怖ろしい。結局「十万の英霊、二十億の国帑」と同じ論理展開が進んでいく。本書は細部が命、長身の近衛、キャビアとウオッカで赤い松岡、生者より死者のメンツを重んじる能吏東条。確かにこの3人に焦点があっているのはいい。
読了日:12月15日 著者:堀田江理
一冊でつかむ日本中世史: 平安遷都から戦国乱世まで (平凡社新書)一冊でつかむ日本中世史: 平安遷都から戦国乱世まで (平凡社新書)感想
帯にある通り、「図版満載 一目瞭然」の部分に惹かれて読んだ。だが、内容は高校の教科書に毛が生えたかな、くらい。「1冊でつかむ」という書名の方に重点を見て選択か。物足りなさが残った。日本の中世という激動期(というか自力救済が徹底していた時代)を俯瞰するHow To本しては佳いのかもしれないけど、事実関係が最新の主流の意見とは異なるものがそのまま定説として掲載されている箇所が散見するし、重要な変化と思われる箇所が簡素な表現で止まっているし。手を伸ばすなら岩波新書の中世シリーズの方が可。模式図化は上手いが。
読了日:12月7日 著者:
修行と信仰――変わるからだ 変わるこころ (岩波現代全書)修行と信仰――変わるからだ 変わるこころ (岩波現代全書)感想
宗教者ルポ本。登場するのは密教、修験道、念仏、神道、カソリック等々。今の日本で「魅力がある」と筆者が考えた人々が登場する。修行の過程でトランス(変性意識状態)になった体験が語られる。最終章のカソリック・本田哲郎氏を除いては個人的には一寸肩透かしの感。というのは取材相手と自分の距離感、あるいは周囲の状況、筆者が基礎に置いている立ち位置がいま一つはっきりしないし、点綴していく手法が某かの結論を導き出せていないように思ったから。勿論、修行を否定しないし、入神、脱魂、恍惚……という境地があるのは重々分かるのだが。
読了日:12月6日 著者:藤田庄市
村上春樹はノーベル賞をとれるのか? (光文社新書)村上春樹はノーベル賞をとれるのか? (光文社新書)感想
往年の井上靖、当今の村上春樹。毎年、ノーベル文学賞候補として話題になる。本書は逆にノーベル文学賞とはどんな賞なのかを分析した1冊と言って佳い。1章は過去の日本作家、川端康成と大江健三郎のほかに、数多くの候補が浮かんでは消えしていたと跡づける。本書の眼目。三島由紀夫はこの栄誉を逃したことを二重に苦しんだのでは、との見立てだ。又、候補に挙がっていたという賀川豊彦や西脇順三郎が受賞していたら、というifを逆に考える。2章は過去の受賞者、非受賞者の分析(名の羅列が続く)、3章で世界文学としての村上春樹を記述する。
読了日:12月3日 著者:川村湊
電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ感想
「海軍めしたき物語」(1979年、高橋孟)という本を思い出しました。戦艦霧島に乗務した主計兵の回顧談です。乗り組んでいても炊事場の周囲の出来事しか見えない−−。筆者は博報堂出身の元広告マンで、業界としての客観性を積み上げようとするのですが、視線が広告代理店寄りになっている気がします。利益率が実はどれほど高いか分からないものを商うのは不思議な気がします。電通が得意としたテレビ中心の枠をすべて制御する営業方法はWeb広告が伸びている中で業態自体が変わらざるを得ないし変わっている時期に来たのを改めて感じました。
読了日:12月3日 著者:本間龍
原発プロパガンダ (岩波新書)原発プロパガンダ (岩波新書)感想
プロパガンダは揉み手笑顔で、或時は世間話の様に近寄る。原発関連広告を回顧する1冊。新聞、テレビ、ラジオに雑誌に出稿し、広告主の意図とは反する内容になれば引き揚げる手法で、飴と鞭を繰り返してきたと説く。歯切れのいい書きっぷりで一気に読了。さてどうなのだろうか。今までの電通、博報堂を中心にきた日本の広告界の体制は。して、今やWebの時代。となると、Googleなどのサイトに左右されることになるが、どこまで信頼できるのか……。いずれにせよ、広告代理店はいる。情報は自分の頭と目で精査せよ、ということなのだが。
読了日:12月1日 著者:本間龍
喪失の戦後史喪失の戦後史感想
帰納的日本社会の分析。自身が生まれ育った蒲田での日常生活を土台に、日本社会がどう変わってきたのかを読み解く。筆者は家族制度を権威主義的か自由主義か、兄弟関係が平等か不平等かをXY軸にして考えると、日本は権威主義的不平等から自由主義的不平等に移行したと分析する。つまり家族の崩壊です。契機をエンゲル係数を指標に食べること=生きることという時代からの変化に見ます。結果が人口動態調査に出た日本では有史以来の減少傾向。筆者のいうように不可逆的である以上、静的平衡を探すのが一番だと思います。見事に絵解きされた心境。
読了日:12月1日 著者:

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posted by 曲月斎 at 01:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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