2016年11月01日

☆2016年10月に読んだ本。

2016年10月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:4527ページ
ナイス数:712ナイス

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)感想
筆者の視点は「応仁の乱」を室町殿6代義教が謀殺された「嘉吉の変」と10代義材(義稙)が廃された「明応の政変」の間の変化の事象として捉える点にある。定点観測点を大和の興福寺に据え、2人の別当の日記を軸に、畿内の出来事を整理することで本書は成立している。従来は諸大名や室町殿の動きの傍証に使われてきた史料を土台にする試みは興味深い。ただ、日記とはいえ、登場人物が多く、空間の移動が激しい。この時代を描く手法として、新鮮だが、新書という体裁では複雑ではないか。1篇の叙述の中で、主語が錯綜するのが取っ付きにくかった。
読了日:10月29日 著者:呉座勇一
応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)
きのう何食べた?(12) (モーニング KC)きのう何食べた?(12) (モーニング KC)感想
珍しく再読。自分が好まないサツマイモとカボチャが登場していたことが熟読を妨げていたことがちょと判明。本巻はちょと2人の関係が割合、円滑に進んでいることが、薬味不足かと思わせる要因なのかも。ただ、「へうげもの」もそうだけど、面白いと入れ込んだ作家の描線が目に慣れてくると自分の中に別の反応が起きているのも事実な気がする。何が原因なのだろう? ただ本書のもう一つのテーマ、老いという点では、アクシデントが減っていくものなのかもしれない。
読了日:10月26日 著者:よしながふみ
通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで (中公新書)通貨の日本史 - 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで (中公新書)感想
副題にある無文銀銭から当今の電子マネーまで。本邦の通貨を主眼に置いた通史。面白い。というのは「1円は1円」という今の感覚(計数貨幣で法定貨幣)という概念が定着するには長い時間がかかったからだ。物々交換の経験を挟んで、金・銀・銅の産出量と市況による変動、対外貿易を管理した江戸時代ですら、貿易決済通貨としての銀があり、不足する少額貨幣の代わりとしての紙幣(藩札)があり、改鋳される度に品位による区別が起きる。勿論、財政経済政策としての操作がある。金銀銭の3貨体制といっても単純ではない。確かに「悪銭苦闘」である。
読了日:10月26日 著者:高木久史
本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝 (新潮新書)本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝 (新潮新書)感想
帯の惹句はとまれ、この人は偉いのだろうかという懐疑は誰にでもある。個人的には坂本龍馬のごときはその最たるもので、田中光顕が居なければ存在すらしなかった人物になっていたろう。裸の王様と一緒で世間が金襴玉褸であると言っている以上、何となく同調しておかなくてはいけないという気分になるもの。その筆法で歴史上の人物から近接する人物まで、俎上に上げては切りまくる。出自や人間関係等々、博引旁証、手練手管を使っての文章は軽快。博覧強記此処に有りという感じ。一種の快感は覚えつつ。所謂雑文の1冊、後に何が残るか振り返りつつ。
読了日:10月24日 著者:小谷野敦
きのう何食べた?(12) (モーニング KC)きのう何食べた?(12) (モーニング KC)感想
正直にいうと、ワクワク感が薄れていました。この漫画の面白さというか、魅力は、白黒のペン画ながら、匂い立つようなおいしさ(美味しそうというか)が魅力だったのですが。何か理屈が先に立っているような気がして。12巻を待たされた感が導くものなのか、何が原因なのか分析しきれないのですが。とまれ、スタイリッシュな表紙に比べて、自分の中では得心のいく展開ではなかったです。以上。
読了日:10月23日 著者:よしながふみ
憲法の無意識 (岩波新書)憲法の無意識 (岩波新書)感想
幣原の意思だった日本国憲法9条(戦争の放棄)を成立させたGHQの主意は1条(天皇)を成立させるためにあったことを読み解く。日本人にとって太平の世の記憶「pax Tokugawa(徳川の平和)」が蘇り、WWUの鮮烈な記憶と結びついて、9条の改正の意思を持たなくなったのではないか、と読み解く。碩学が先学の考察を読み解く構造。話が次々と展開して楽しい。フロイトから中江兆民、カントにヘーゲル、マルクスまで登場して、筆者の読み解きを追う形。講演録だけに口調が柔らかく、読みやすい1冊。昔の記憶は確かに根強く影響する。
読了日:10月22日 著者:柄谷行人
銀の世界史 (ちくま新書)銀の世界史 (ちくま新書)感想
通史を書くのは難しい。各々の分野の専門家の研究を横串に刺していくからで、粗さはやむを得ないのかもしれないが。本書のテーマは銀。冒頭に提示される2004年の東大世界史の問題「銀が果たした経済の国際化について」の説明が展開されていく。視点はどうしても英、蘭に傾きがちで、銀が決済通貨として世界中を一つに結んでいった様を描くことに力点がある以上、何処か「どうするどうする」とでも合いの手を入れたくなるような筆致。焦点を押さえることは大学受験的な知識プラスアルファならよいのだろうが。個人的には満足に欠ける内容だった。
読了日:10月21日 著者:祝田秀全
アメリカ政治の壁――利益と理念の狭間で (岩波新書)アメリカ政治の壁――利益と理念の狭間で (岩波新書)感想
要旨は「利益の民主制」と「理念の民主制」の相剋。題名にある「壁」は両者を隔てるものの意。大きな政府か小さな政府かの選択をx軸、軍事介入か不介入かをy軸に採って絵解きしていく。4章の相関図を手引きにすると理解しやすい。民主党か共和党か、リベラルか保守というような二項対立ではなく、2大政党制下の有権者の合従連衡は多元方程式の解法並みに展開する。本書はルポの体裁に近く、手がかりの概念図を元に整理しながら読んだ方がいいかも。TV番組のフリップを連想させる図の出来がいいのでもっと挿入してくれた方が有り難いが……。
読了日:10月19日 著者:渡辺将人
ヒトラーに抵抗した人々 - 反ナチ市民の勇気とは何か (中公新書)ヒトラーに抵抗した人々 - 反ナチ市民の勇気とは何か (中公新書)感想
「公益のために民衆共同体に一体化し、総統国家の下、国民同胞となる」。仕事とパンが配られる社会。本書には印象深い数字がいくつか引用されている。終戦時のナチ党員850万人超。1951年の輿論調査ながら「今世紀ドイツが一番うまくいった時期は」との問いに、@第三帝国期44%A帝政期43%Bワイマル期7%。こんな大衆の中で良心に基づく反ナチ行動を執った人がいたこと、無私の行動に頭が下がる。それ以上に戦後の独、EUの体制まで考えた「クライザウ・サークル」の人々がいたことが驚きであり、日本と彼我の差を考え込んだ。重い。
読了日:10月16日 著者:對馬達雄
帰郷帰郷感想
子供のころ、まだあった景色である。白衣姿の傷痍軍人がアコーディオン片手に奏でる傍ら、義手の男が正座をして頭を下げる。日常のように繁華街で見かけていた裏側にある(あっただろう)思いを綴った短編集。サラッと読めば、それなりの音だけど、引っ掛かって読むと別の顔を見せる。短編だけに寸景を切り取った形のものが多い。でも前後の余白をどう想像するのか、その余白の美を感じさせる1冊。普通の人が普通ではなくなる戦争という仕掛けへの穏やかな抗議でもある。浅田自身の年齢と経験が書かせる1冊であると思うし、余人では書けない。
読了日:10月14日 著者:浅田次郎
謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉感想
お見事。現場に勝る知見なし。語学の天才とは本当にうらやましい。納豆菌による大豆醗酵食品を訪ねての旅はタイ、ミャンマーなどの東南アジアに、中国南部に、ネパール、インドにと続く。豆を醗酵させた食品は実は「出汁」であり、魚醤や醤油、味噌(醤)などの調味料と競合する味であった発見。日本に戻れば広く分布した「納豆汁」が東北地方にのみ残る景色もあり。筆者のルポを読むと、思わず納豆が作ってみたくなるし、各地の料理を試してみたくなる。ワクワク感と驚愕と知の喜びと。高野ワールドはこの1冊でも爆発している。今年の5指に入る。
読了日:10月13日 著者:高野秀行
「国史」の誕生 ミカドの国の歴史学 (講談社学術文庫)「国史」の誕生 ミカドの国の歴史学 (講談社学術文庫)感想
「ミカドの国の歴史学」改題。歴史といえば国学、儒学、そして水戸学が果たした役割が大きい。一つの到達点として「大日本史」を挙げられよう。だが明治になって西欧の歴史学研究手法が導入される。文明としてか、文化としてか、両者の相剋を描く1冊。中で転換点となったのが久米邦武筆禍事件(「神道は祭天の古俗」)や喜田貞吉が巻き込まれた南北朝正閏論争だ。この2件は社会科学者としての学問の見識か、国民教育の問題かを争うものであったけど、筆者は日本独自の「中世」を描くことで、後の皇国史観に繫がるような土壌が生まれたと見立てる。
読了日:10月7日 著者:関幸彦
戦国と宗教 (岩波新書)戦国と宗教 (岩波新書)感想
起請文に見えるように、人倫五常を守り,神仏への帰依を誓う者に加護がある一方、他人の信仰には関与しないという姿勢=「天道」という絶対的な是非を想定する。中で信長と本願寺の関係については、実は宗祖親鸞の教団内での争いに、応仁の乱以降の室町殿の内紛が絡んだのではないかという読み解きや、九州のキリシタン大名の分析も新鮮。寺社というと俗世の権力ではないように今日的には先入観を持つが、中世では領地を持つ守護大名と同様の領主であることが伺える。ただ庶民に葬送儀礼が定着したこの時期、書中で時衆への言及が少ないのは残念。
読了日:10月7日 著者:神田千里
ひさしぶりの海苔弁 (文春文庫)ひさしぶりの海苔弁 (文春文庫)感想
最近、海苔弁にはまっているのでつい、買ってしまったが。最後のオチまで行かない感じの文が続くのが……。
読了日:10月6日 著者:平松洋子,安西水丸
日本陸軍と中国: 「支那通」にみる夢と蹉跌 (ちくま学芸文庫 ト 16-1)日本陸軍と中国: 「支那通」にみる夢と蹉跌 (ちくま学芸文庫 ト 16-1)感想
「支那通」−−旧陸軍で中国大陸の情報収集を旨とした専門家を謂う。 軍備兵站を調べ、時に政治工作もする。「日本は東亜の盟主。西欧列強から独立するために指導するのが役目」みたいな自惚れも。「アラビアのロレンス」と似た立場ながら、大局観がないセクト主義の一介の武弁だった。情報は偏向し、傲慢の誹りを免れぬ振る舞い。WWI以後の民族自決の流れを認められないままに。結果が張作霖の謀殺から始まる15年戦争である。中国大陸での抜き差しできない戦いをした揚げ句の日米開戦。少数のエリートが日本の進路を誤らせた歴史は重い。
読了日:10月6日 著者:戸部良一
日本経済のトポス 文化史的考察日本経済のトポス 文化史的考察感想
この本が刊行されたのは1980年代。筆者は著名なマルクス経済学者。まだ「マル経」が現役だった時代の本。丸谷才一がこの本を随筆で褒めていて、読んだ記憶がある。何度もの引っ越しでも、本棚の中でしかるべき位置に置いてきた。読んだ当座、班田収受法から説き起こすなんて、新鮮なのだろうと思ったからだ。あれから約40年、読み直してみたけど、あの当時の驚きはなかった。日本史への科学的研究の進歩のゆえか。権門体制論が生まれ、農民は搾取される存在という訳でもないことが明らかになった今、時代の使命はもう終えた1冊なのかも。
読了日:10月5日 著者:日高普
興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産 (講談社学術文庫)興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産 (講談社学術文庫)感想
岸信介の顕密構造を読み解く。内に国家社会主義、統制経済への志向や反米感情を抱きつつ、米国の覇権の下に自分の権力の扶植と拡大に努める姿は、一介の農業国だった韓国で高度成長を成し遂げた朴正煕と相似形なのかもしれない。2人の指向を培ったのが満州国ではなかったかと読み解く。時に満州事変後の大陸に、或いは5・16軍事クーデターの中にと話が展開していく。顕密構造である以上、主権者である国民の前に本心の部分を明かし切れないのは仕方ないところ。とまれ、祖父の遺訓を顕彰するに足らんと思っている坊ちゃんとは違う次元の話だが。
読了日:10月4日 著者:姜尚中,玄武岩

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posted by 曲月斎 at 01:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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