2007年02月22日

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

こういう晩は「晴れ」の晩なのだろう。
新宿の劇場でロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を観て来たのだから。hedwig07_070104.jpg

実に、能、狂言、歌舞伎以外の演劇をライブで観るのは、記憶を探れば、転形劇場の「水の駅」以来、というのだから恐ろしい話ではある。このミュージカルを選んだのは、読売新聞の劇評で誉めていたから。あの新撰組の、また、華麗なる一族にも出ている山本耕史が、どんな芝居を狭い劇場でするんだろう、という興味が先に立った。

結論からいうと、山本耕史は、見事な歌手であった。
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ロックを歌い揚げるパワーは見事だった。でも。芝居とすれば三文芝居になってしまった。なぜか。それは、中村中の存在であり、ウィグを付けている間は山本は所詮、三輪明宏の二番煎じであったからだ。

芝居なのか、山本のコンサートなのかは不文明なのだが(というのは観客の年齢構成を観てもおばはんがすごく目立った)、本当は一人芝居でやった方が面白かったと思う。すべて独白で。それは東ドイツで生まれた少年がアメリカに渡るために性転換手術を受けて、自分の片割れを探し続けるというのが基調低音の芝居で、中村の存在はじゃまでしかない。まして山本の芝居でウィグを外してからの姿こそ、最後の1曲こそ、彼が歌いたかった曲であるというのが、見え見えなので、構成を上手く入れ替えるなり、独白体で仕立てるなり、一人芝居の方が最後も空間が広がっていったような気がして成らない。

日本の男優がゲイの芝居をすると何で、三輪明宏風になってしまうのか。開幕からずっと観ていて不自然な感じだった。何のカタルシスもない。さらに確かに彼がシャウトする声は非常に見事だけど、特に、舞台装置がそれをじゃましていた。字幕を後ろの画面で流すな、といいたい。

ロックのバンドもいいし、バラード系の曲など、本当に彼の天分を感じさせるものだった。だからいいたい。山本耕史の一人芝居にしてしまった方がずっと良かった、と。バンドをオーケストラピットに入れ、マイクスタンド1本で彼に芝居をさせたら、どんなに面白かったろう。不用意な照明とか装置は役者の芝居の力を殺してしまうということを今回の演出家は知るべきである。

14センチのヒールブーツを履いて、網タイツ姿の山本はそれは妖艶だった。
画像2.jpg

でも。妖艶さがストレートに伝わってこないのは中村が脇で余計な芝居をし、バンドも余計なことをしているからだ。蹴り上げた足の美しさは見事だったのに(ただ、それに対して、上半身の捌き方は山本はなっていない。ノリのいい場面でもただ腕をくねらせるだけで、本当に自分がロックロールはしていない。ポンキッキのお遊戯程度だ)。

小さい小屋でやっているサプライズはある。山本の登場シーン。また客席を巡る中村。それぞれに小さい小屋でやっているからだろう。でも、2度観ないと楽しめないような芝居は如何なものか。芝居はどこまで行っても一本勝負である。

アンコールの拍手の中、山本がカーテン(ないのだけど)コールに応じて現れた。レザーのショートパンツ1枚の姿になるので「最後はプロレスみたいな格好になって寒いんですけど……」としゃべりだしたけど、これは言ってはいけない台詞である。客席の芝居の余韻をいっさいリセットしてしまう独白だ。

以下、追記であらすじを掲載しておく。リターンで新宿厚生年金会館で上演するそうだけど、せめて観るなら、小さい小屋の方がいい。

全米各地を旅して巡る売れないロック・シンガー、ヘドウィグ。共産主義体制下の東ドイツで男の子ハンセルとして生まれたものの、憧れの国アメリカに渡る際、米兵の男性と結婚するため性転換手術を受け、その不手際で「怒りの1インチ」が股間に残ってしまった彼女。渡米した途端その男性にも去られてしまったヘドウィグは、ロック・スターになる夢を思い起こす。同じくロック・スターを夢見る17歳の少年トミーに出会う。ヘドウィグは、自分の失われたカタワレだと信じた彼に、熱い愛情を注ぎ込むが、しかしトミーは彼女を捨てたばかりか、彼女のオリジナル曲を盗んで人気ロック・スターになってしまう。失意のヘドウィグは自らのバンドアングリーインチを引き連れ、トミーの全米コンサートを追いつつ場末の店を巡業する。やがてトミーに再会。彼はヘドウィグに向けてオリジナルのラヴソングを歌う。そしてヘドウィグは、ありのままの自分が完全な存在であることに気づくのであった。
posted by 曲月斎 at 04:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 三間四方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
それだけ、幕切れの「Rize your armだったか、hand」というリフレーンが気持ち良かったんですわ。だって、それまで芝居が縮こまっていたんだもの。
Posted by 亭主軽薄 at 2007年02月22日 05:15
それと、新宿FACEでは10列目の後ろが通路で、もう2、3列まで真っ平ら。よほど前でないと見にくい。むしろ立ち見か、両サイドの方が見やすい席だった。
Posted by 亭主軽薄 at 2007年02月23日 00:04
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