2012年02月06日

「中国化する日本」

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史 [単行本] / 與那覇 潤 (著); 文藝春秋 (刊)

面白い本です。しかも講義録からの書き起こしの文章なので、基本的に読みやすい。参考文献の註も充実しています。

テーマは中央集権型(筆者のいう『郡県制』)の宋代、元代とそれ以外の時代の地方分権型(筆者のいう『封建制』)を2項対立の眼目として挙げ、この物差しで日本史を見てみると、という仕掛け。

この本のミソは「2項対立」です。それぞれの指摘(たとえば、江戸幕府と明治政府の連関性、建武の新政の革新性など)は正鵠を射たものと思います。だが、同時に2項対立、言い換えれば論理学でいう2分法は詭弁の温床になりがちなのを忘れてはいけません。

白か、黒か。こういう選択は非常に明快です。でも時代、人の世は筆者のいうように単純に割り切れるものではないはず。それに歴史経済学者の指摘するところですが、江戸時代には今、常識となっている以上に物流、金融が発達していたのです。筆者にはそんな視座が欠けています。

考え方、思考回路を元に、日本史を振り返るというのは、非常に面白いのですが、同時に危うさをはらんでいます。たとえば人口、たとえば物の生産など、もっと計量的な部分を重視していたら、裏付けと説得性に富んだものになったと思うのですが。

それと、先人の論考をこれだけ、虫食いのようにパッチワークする、換言すれはいいとこ取りを繰り返すと、嫌も応もなく、筆者の想定した結論への補強に仕立てられるという、好見本といえましょう。

どこか「張り扇」と「小拍子」の音がするような気がします。


posted by 曲月斎 at 01:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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