2012年02月06日

「マンチュリアン・リポート」

マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし) [単行本] / 浅田 次郎 (著); 講談社 (刊)
浅田センセの最新刊。
テーマは満州某重大事件、張作霖爆殺事件、皇姑屯事件……。どう呼称してもいいけど、関東軍が満州の軍閥の頭領だった張作霖を奉天郊外で爆殺した一件がテーマ。

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その真相を昭和天皇が陸軍若手将校に探らせる−−という虚構がまず縦軸。その横軸に事件に関わったいろんな人物が登場してくる。そして全体の構えは、「壬生義士伝」と同じく「ミルフィーユ形式」。虚構の提示の後、報告書、機関車の独白、という順で繰り返していく。
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当時からして、関東軍の謀略であったことは自明のことで、謎解きの重心は「なぜ張作霖が北京から奉天に戻ったのか」という謎解きの部分では末尾から2項目の独白の部分ですべてことは足りる。

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では何を興味として、最後まで引っ張るのか。
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関東軍の一部、河本少佐以下の独断先行だったのか、組織的な陰謀だったのか。
最後の1項で明らかになるとはいえ、その結構が物足りない気がする。

なお、小説にも出てくる町野武馬大佐というのは戦後、衆院議員を務めたそうで、その証言が国会図書館に残っているそうだ。
また引きになるけど、こう話しているという。
「関東軍首脳は、張を殺さないと満州は天下泰平になり、日本では軍縮が激しくなる。 軍人が階級を昇りぬくためには、満州を動乱の地とするのが第一の要件と考えた。 そして張作霖を殺した。それは『斉藤恒(関東軍参謀長)の案』なんだ」

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うらで1枚かんでいたと目される時の小川平吉鉄相は、事件の翌年、田中義一内閣の崩壊後に、5私鉄買収疑獄で下獄している。在任2年で与えた鉄道免許は200、という。とかく金臭い人物である。

最終項の体裁をとっている部分は、白紙だ。
いろんな余韻が考えられる。
一つの推測は。
浅田次郎は、報告書を書かせていたのではないかということ。呪師の呪いで、作中当事者が独白して、それでおしまい、というのでは物足りない。

黒沢明の「天国と地獄」には上映前に別の幕切れが用意されていたのは知られている。浅田先生もここで擱筆することで、「味」を見せたのかもしれない。

ともかく、この小説の本当の主人公の写真を見るにつけ、そんなに狡猾に見えない、むしろ好々爺の感じもするのだけど。


posted by 曲月斎 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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