2011年12月01日

11月に読んだ本。

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11月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:2718ページ
ナイス数:43ナイス

軍事学入門 (ちくま文庫)軍事学入門 (ちくま文庫)
最初の方は興味深いです。世界の歴史の中で、戦争というものをどう人間は扱ってきたのか、という部分は。ただ、読み進むに従って、歴史的事実の分析のうちはいいのですが、筆者の独善が顔を出してきます。現状認識で???という部分が増えてきます。そして何より博学な筆者には自明のことなのかもしれませんが、地図や写真がない。年表もない。こういう話をするときには絶対に必要なこういうツールがないので、非常に入門書といいながら不親切です。
読了日:11月28日 著者:別宮 暖朗
公安は誰をマークしているか (新潮新書)公安は誰をマークしているか (新潮新書)
毒にも薬にもならぬ羅列本。公安担当がながい新聞記者が筆者だそうだが、職業的に陥りやすい独善にみちている。公安事件というのは新聞や放送で取り上げられたとしてもごく断片的で、全容は分からない。あの時はこういうことも考えられたのだよ、と後付けしているだけだ。公安部の各部の職務分掌を新書にしたようなもので、それにお手柄だった事件をまぶしてあるだけ。新書として上梓する値打ちは特に見当たらなかった。
読了日:11月24日 著者:大島 真生
歌舞伎ナビ歌舞伎ナビ
自身の専門外である「能ナビ」のような闊達さは影を潜め、硬派な歌舞伎入門書。寺子屋、勧進帳、助六となじみの狂言が並んでいるのだけど、その話を敷衍するために掲載されている口絵写真が往年の名優というのが皮肉。6代目菊五郎だったり初代吉右衛門だったり。セピア色になっているだろう写真が、却って事実を雄弁に語るという筆者の口説は時に批判であり時に当代の舞台への詠嘆とも映る。渡辺保流の歌舞伎の正統的な解説書であって、「ナビ」というには内容が結構難解かもしれない。でも個人的には筆者を團菊ジジイ扱いする気には毛頭なれぬ。
読了日:11月24日 著者:渡辺 保
密室入門 (メディアファクトリー新書)密室入門 (メディアファクトリー新書)
まず、対談集の作りとして、脚注が充実しているのがいいです。対談では言葉だけで意足らざること多く、その点で双方の筆者が思う注釈を本文の下段に足しているのがいい。2番目。内容についてはミステリーの解説書という観点から隔靴搔痒の感を否めないのですが、いくつかこの本を開いた後に読み返して見たくなる本が上がっているのがうれしい。例えば、天城一。「天城一の密室犯罪学教程」とか、共著者の安井俊夫の「犯行現場の作り方」とか。江戸川乱歩の「推理小説の謎」は昔読んだことがあるのを思い出すし。広がりが出るのは楽しいです。
読了日:11月24日 著者:有栖川有栖,安井俊夫
天皇陵の謎 (文春新書)天皇陵の謎 (文春新書)
小生が幼少の砌、「仁徳天皇陵」と習ったのは「大仙古墳」と教科書に表記されているそうだ。天皇陵の呼称と歴史的事実が相違しているのは周智の事実であり、あれこれ蒸し返されても新鮮味はない。「考察」もどきも、新味はない。でも唯一新鮮だったのは末尾の方に出てくる記述。「もし陵墓指定地の発掘が許可されたとしても日本の考古学界にそれに答えるだけの陣容がない」という事実だ。終戦後まもないころの登呂遺跡や岩宿遺跡の発掘には学会を挙げての協力があったが、今は行政の主導でしか発掘ができない。その事実の方が発見である。
読了日:11月24日 著者:矢澤 高太郎
暴力団 (新潮新書)暴力団 (新潮新書)
最後に筆者が「考現学」という視点を見せていますが、暴力団の考現学として格好の本です。暴力団とひと言で片づけてしまいがちですが、資本主義社会の中で時代的な要請を終えた集団であるという見立ては今の彼らの姿を見きって余すことのない言葉です。その結論に至るまでに彼らの社会、権益構造、そして取り巻く法秩序と丹念に説明を重ねてくれている本だから、先の言葉が実に腑に落ちます。丹念な取材と論理構成をよく練った新書です。今年の収穫の1冊といってもいいし、歴史の風雪にも耐えうる1冊。さらには「半グレ」集団のルポも読みたい。
読了日:11月23日 著者:溝口敦
中島誠之助 やきもの鑑定五十年 (新人物往来社文庫)中島誠之助 やきもの鑑定五十年 (新人物往来社文庫)
中島誠之助。どう月旦すべきか。骨董の世界の開明者、あるいはクローズドサークルの秩序破壊者。どちらの評価も当たるだろう。しかし、その修業時代を回顧するとき、それは古き世界の静謐さ、あるいは義理人情の世界を覗き見ることができる。にせもの、本物、掘り出し物。すべて目を曇らすのは欲であり、愛玩物は自分の趣味に合うか合わないかの1点が一番大事であることを教えてくれる。どんなに高価な逸品でも、それが博物館の飾り棚に入ってしまえば、何の値打ちもない。道具は使ってこそ、なのだと思う。そんな肝要な1点も教えてくれる1冊。
読了日:11月21日 著者:中島 誠之助
ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)
正直に言えば「げっぷ」のでるような本です。やっと読了しました。ポルノ雑誌というのはある時期熱病に罹ったように興味を抱く分野です。でもそれが過ぎてしまえば「疱瘡」のように済んでしまうもの。それに何時までも関わり続けてきた筆者の情熱に敬意を表するばかりです。同趣向の自分史の観点でいえば、なぎら健壱の「日本フォーク私的大全」が思い浮かぶけど、それよりもずっと野卑で猥雑です。でもそれが味なのかも。「永遠に勝てることのないゲリラ」という仕事はすこぶる魅力的なのですけど。
読了日:11月21日 著者:川本 耕次
日本の聖なる石を訪ねて: 知られざるパワー・ストーン300カ所日本の聖なる石を訪ねて: 知られざるパワー・ストーン300カ所
素人が書いた原稿をそのまま活字化したような本。素人はどうしても「こんなに僕は調べたんだ」ということを書きたがる。でも羅列をすることがそのまま事実を紹介することにはつながらない典型。調べたことをそのまま書くのではなく、取捨選択しないと。前半部分の石のエピソードがすこぶる希薄になってしまう。羅列を書きたいなら、地図帳にすればいい。本当に巨石信仰の淵源、そして今に残る姿を書きたいのなら、全く別の構成になったはずである。写真の製版も汚いし、申し訳ないが、940円の値打ちは????
読了日:11月20日 著者:須田 郡司
河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)
読了日:11月16日 著者:元木 泰雄
日本を滅ぼす〈世間の良識〉 (講談社現代新書)日本を滅ぼす〈世間の良識〉 (講談社現代新書)
文体はともかく、書いていることは平明です。「チューサン階級」に属すると自称する筆者が「おまんじゅうを食べているおじさん」に物言いをつけるという構図の繰り返しです。でも自分が「チューサン階級」にあると思っていても、いつの間にか「おまんじゅう」を食べている側に回っているところはないのでしょうか。情報の開示が進んだ世の中で、情報をネタにおまんじゅうを食べ続けることは不可能です。おまんじゅうを食べるための手がかり、視点はどこにあるのか。きちんと指し示すことが、覚醒したチューサン階級の務めではないでしょうか。
読了日:11月16日 著者:森巣 博
地図の科学 なぜ昔の人は地球が楕円だとわかった? 航空写真だけで地図をつくれないワケは!? (サイエンス・アイ新書)地図の科学 なぜ昔の人は地球が楕円だとわかった? 航空写真だけで地図をつくれないワケは!? (サイエンス・アイ新書)
読者層の想定がよく分からない1冊。専門家の次元の解説と、初心向けの部分とが混在しているので、非常に読みにくい。「詳しい説明ははぶくが」みたいな記述が頻出するのはいただけない。今の国土地理院の目指す方向は地図という観点とはずれていっているのではないか、というのがよく分かる。GPSや航空写真の利用は結構なのだけど、地図は人間が使うもの。その目線で遣い勝手がよくなければ意味がない。平板測量の長所が言われて久しいものの、ないがしろにされる傾向が強くなっているのが残念。その辺りの反省が同院OBの筆者にないのが残念。
読了日:11月07日 著者:山岡 光治
『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書)『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書)
「七人の侍」を腑分けしようというのだから、興味津々。黒澤明を神格化せず、作品を神棚に上げず、謎解きを挑む姿勢を評価したい。ただキューバ、セルビア、パレスチナで筆者が体験したという観方は一つの証左ではあっても、個人的体験であって、普遍性はない。登場人物の造形についての考察も私見の域を出ない気がする。そういう論考が目につく。まず公開当時の時代相の解析をもっときちんとするのが第1命題ではなかったか。善悪二元論では捌ききれない黒澤の限界とか、話が盛りだくさんすぎて全体の論理立てが手薄に終わったのは残念。
読了日:11月07日 著者:四方田 犬彦

2011年11月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター


posted by 曲月斎 at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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