2011年04月12日

「能ナビ」

能ナビ ~誰も教えてくれなかった能の見方~ [単行本] / 渡辺 保 (著); マガジンハウス (刊)
今までにない能の解説書でしょう。

能を昔ながらにただ上演するのではなく、演劇として見直すという立場は、第2次大戦後に観世寿夫が提唱して以来の考え方です。

ただ、現実に能を取り囲む書き手にはその立場は本当に理解されていたのか。
どこかで「お能拝見」の気風が尾っぽとして残ってきた気がします。

その点、渡辺のこの本は、歌舞伎や浄瑠璃、あるいは現代演劇に至るまでの幅広い他の演劇の見聞が生きています。
そしてテキスト(能本)の読み込みに依って生まれる見識などを具体的に案内してくれるています。
総合藝術という謳い文句に踊っているばかりで、感じること、観ることが難しくなってしまいがちな能を芝居として読み解いています。

文章は「渡辺節」なのですけど、自身が能ににじり寄っていった軌跡が生きています。最初は自分も稽古事として踏み込み、能評を書くようになって観る能、そして喜多流の名手・友枝喜久夫に出会い、私淑し、傾倒した日々。筆者の経験が初心者にも、あるいは能に親しんできた者にも新鮮に映ります。

専門用語を遣うと、とかく衒学的になりがちなのですが、遣わない解説は明快にドラマを分解してくれます。ここまで新鮮な解釈を見せられれば、能作者の世阿弥や元雅、金春禅竹、観世小次郎信光も泉下で喜んでいるのではないでしょうか。


posted by 曲月斎 at 20:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 三間四方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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