2011年02月21日

「東京物語」

東京物語 (集英社文庫) [文庫] / 奥田 英朗 (著); 集英社 (刊)
青春小説というと、集英社、というイメージがあるのはなぜだろう。原田宗彦のエッセーを数多くだしていたからだろうか。

余談はさておき、短編小説集という体裁だが、完全に主人公は作者自身。中京圏から上京して駿河台の大学の文学部に入ってから、仕事をしている20代最後までの話。

いずれもキーになっているのは日付や歌にまつわる思い出が基調低音に流れているので、たぶん、読者も独善的になりやすい青春記ながら、何とか伴走してくれるだろう。1作目。すでに大学を中退して働き始めていた1980年12月9日。そうジョン・レノンの暗殺されたことが報じられた日です。思い出の曲をふと口ずさみながら、仕事に追われる主人公がいる。2作目。1978年4月4日。そうあのキャンディーズ(宝くじの森三中ではない)が引退コンサートを後楽園球場で開いた日。上京したばかりの主人公はあちこちと歩き回ったあげくに、後楽園に引き寄せられていく。3作目 1979年6月2日。巨人に強行入団した江川の初登板日。筆者が所属する演劇部での出来事、あの当時の演劇系のサークルは「ドラマツルギー」とか、状況劇場とか、早稲田小劇場、赤テント、黒テントの残党、鈴木忠志、筆者以上に変な方向に連想が連なる。そう、あのとき私は若かった。などなど、見てきたものに即感動し、感化されていくのであった。配列が妙、で最後はバブル崩壊前夜の物語。1989年11月10日。ベルリンの壁崩壊の日に京王プラザHでやった仲間内の宴会の話で締めくくられる。

携帯電話のない時代。電話も下宿なら「呼び出し」だった時代。PCのない時代。でも時間だけはあって、矢鱈に麻雀とか、不要不急のことに熱中した時代。その時代の記憶を持つものにとって、あるキーを提示されると、作者の語る世界と同時に「あのとき自分は……」スイッチが入って、別の読みが始まる。同世代作家ものを読む時の幸せ感だろう。ただ、それは後世には単なる風俗スケッチの掌編に成り下がるのだが。

作者は1959年、岐阜生まれ。原田宗典もそうだったけど、同世代というのはどうも安易に共感してしまうのであった。

しかし、森三中の宝くじのCM。時期といい、見事というべきか、無残というべきか……。G20110217000263780_view.jpg



あのシーンも腹が使えて屈めていない……。ネット上での情報では「怒られるのは当然です」と当人らも言っているが、そういう問題じゃないんだよな。でも大体、宝くじのCMに反応する層がそこまで高齢化しているということなのだろうか。


posted by 曲月斎 at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 積本抛讀 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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