
台湾鉄路と日本人―線路に刻まれた日本の軌跡 (交通新聞社新書)
- 作者: 片倉 佳史
- 出版社/メーカー: 交通新聞社
- 発売日: 2010/02
- メディア: 新書
なぜか駅なかの本屋には鉄道関係の本をよく扱っている店がある。
新橋駅にあった新橋駅書店もそうだったし、桜木町駅のエキナカの本屋もそう。交通新聞社新書が置いてあるなんて。
で、台湾鉄道事情を回顧した1冊。
基隆から台北〜台中〜台南から高雄までの西海岸を通る幹線の建設逸話、それに産業の開発の要望もあって伸びていった支線の話。森林開発、鉱山開発、精糖業。
単なる回顧談に終わらず、結構緻密に現地取材をしてのルポになっているのが楽しい。
最後は台湾鉄道唱歌の紹介で終わっている。
ところで。
中に塩水港という港街が出てくる。製糖業で栄えた街だ。そういえば今でも塩水港精糖という会社があり、横浜の大黒に「さとうのふるさと」という看板を掲げている。元々大洋漁業(マルハ)系の会社だったが、今は三菱商事系に代わっているものの、その会長に納まっているのは元大洋球団の社長。何かうさんくさい総会屋とも付き合いのある、古い総務系のおっさんだと思っていたが、かつては「水産界の政治部長」と言われ、今は「精糖界のドン」と言われているそうな。確かに水産業も製糖業も農水省の保護の下に発展、商売をしてきた業界。何かそこに「巣くう」という感じがこの御仁には似合っている。
台湾の鉄道事情の本からとんでもない話を連想してしまった。ただ、台湾を植民地支配した時代は今も日本のあらゆるところにその姿をとどめているのだと思い、逆に台湾で今もそのインフラが活用されていることを幸いだと思う。いずれにせよ、筆者は鉄道マンであることの誇り、を高く評価しているが、その視点は大事にしたい部分だ。