田口壮。懐かしい選手だ。
彼がプロ入りした時も見ているし、土井正三に陰湿でいじめのような矯正(指導ではない)に遭い、送球がおかしくなっていく姿を見ている。その後、仰木彬に見いだされ、中西太に打撃の手ほどきを受け、立ち直っていく姿も。左翼田口、中堅本西、右翼イチロー。ボクが今まで見た中で一番美しく軽妙華麗な外野陣だった。
そんな彼がカージナルスに行き、フィリーズに行き、カブスに行き。ベンチ25人目の選手として懸命に生きてきた話を、赤福のさらしあんみたいにしてしまった本。
田口の話は具体性があるから面白いのであって、抽象化したり、妙に一般社会の論理に昇華しようとするとつまらなくなる。確かにこの1冊は面白い。でも彼自身が書いていたブログに比すればちょっとビジネス書っぽくしたのが疵だ。
仰木彬、トニー・ラルーサ。いい監督の後ろ姿を見たと思う。僕自身の経験で言えば、近藤貞雄、仰木彬、この2人は有る意味で大きな存在である以上に。
お勧めするかといえば、ほぼ日刊イトイ新聞で掲載された2度の対談「野球のカミサマ、初球だけねらわせてください」「25番目のピース」の方が田口自身の話の持って行きようの軽妙さから、1冊の本よりも上であると思う。
今年はまた、古傷が再発したようだ。交流戦の時にでも会えたらいいなと思っていたけど。