2008年11月23日

「サービスの達人たち」

サービスの達人たち (新潮文庫 の 13-1)
「サービスの達人たち」

ルポものは好きなのだけど(ま、小説はめったに読まないということですな)、ビジネス誌に連載したもの、っていうのは独特の匂いがある。筆者が意識しなくてもどこかに教訓臭みたいなのが滲んでくるのである。本人は「人間を観察し人間を描く」のが仕事だといっているのだが、どうしても作者の顔が覗いてしまう。それも得意げな。

ま、この本もそんなそしりは免れないのではあるけど、キュッと締めを決めた文章のいくつかは気持ちがいい。

サービスの要諦は何なのか。ロールスロイスの営業マン、伝説のゲイバーのママ、電報配達員の話などなど、点綴した職種は千差万別(といってもこの本では9編だけど)。

1台数千万円の車を誠意で売る営業マン、新潟から上京して裸一貫三助で銭湯の親父にまで出世した話、東京大空襲直後の罹災地に安否確認の電報を配った話、昭和40年代に時代の徒花のように咲いたゲイバーの文化の話、新宿のグランドキャバレーでナンバーワンホステスを張っている女性の話、などなどどれもよくこなれた取材ぶり。エピソードの切り取り方も上手い。

それよりなにより、オチの付け方の上手さだ(以下ネタばれもある)。ゲイバーの走りを開いた銚子出身の人物、引退した後、結局実家の世話になって大往生を遂げる。血縁があるとはいえ、伯父と甥の関係だ。それでもなお、面倒を見続けた血縁の思いが最後にスッと出てくる。電報配達員はITの時代になってもなお、電報が一番だといいつつ、もうああいう電報は届けたくないという。ホステスの話を綴っておいて最後はエレベーターのドアマンの話で落とす。

確かに解説で酒井順子が書いている「世の中そう捨てたモンでもない」と思えるのは、描写や着眼点の妙もさることながら、読後感を軽くしてくれるこのオチのゆえんではないか、と思っている。

☆1つ半。

ま、自分の商売もサービス業?という本を焼津のバーTonakaのカウンターで読んでいた。
表紙カバーの絵に誘われたわけではないのだけど。
Tonakaは本が読めるくらいに明るいのはやはりありがたい。


posted by 曲月斎 at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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