2016年07月01日

★2016年6月に読んだ本。

2016年6月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4040ページ
ナイス数:564ナイス

昭和の戦争 日記で読む戦前日本 (講談社現代新書)昭和の戦争 日記で読む戦前日本 (講談社現代新書)感想
今ならTwitterやFBなどのビッグデータを解析なのかもしれないなと思いつつ読了。とまれ昔の人は筆まめでした。ただ日記は読まれることを想定して書いている部分があり、本書のように時系列で対比することで史料的な価値が生まれる。中で印象的だった人物2人。広田弘毅の下で外務省東亜局長だった石射猪太郎、明治生命企画課の山中宏。犀利な目線が光る。と同時に宮沢喜一に繋がる小川平吉と床次竹二郎の2人の政治屋が残した影響の大なるを思う。民主主義と全体主義は紙一重、戦争は体制変革と体制破壊を齎すという結びの言葉が今に響く。
読了日:6月29日 著者:井上寿一
増補 大江戸死体考: 人斬り浅右衛門の時代 (平凡社ライブラリー)増補 大江戸死体考: 人斬り浅右衛門の時代 (平凡社ライブラリー)感想
処刑&刀剣の試し切り&生薬の製造を家業とした山田浅右衛門の話を縦軸に、横軸はそれを必要とした社会の話を以て組み上げた1冊。土壇場という言葉も実は生きた人間を据物切りした名残との見立て。人の胆嚢を乾した家伝薬(万能薬だったそう)も1家独占だったでしょう。江戸末期には武士が切腹の始末も難しくなっていたこと(山田家にアルバイトを頼む)や、技藝を持つ切り手の育成、刑死者の遺骸確保(蘭学者の解剖希望に死体の管理は山田家の独占事項という旧例の遵守)等々「御様(おためし)御用」の家を続けるのは中々に大変だったようで。
読了日:6月28日 著者:氏家幹人
へうげもの(22) (モーニング KC)へうげもの(22) (モーニング KC)感想
大阪冬の陣。真田丸登場。内堀埋立。俵屋宗達、岩佐又兵衛、桂離宮……。大団円ももうすぐ、ですな。久しぶりにすっきりした読後感。
読了日:6月26日 著者:山田芳裕
中国近代の思想文化史 (岩波新書)中国近代の思想文化史 (岩波新書)感想
新書とは言いがたい難解書。とにかく登場してくる人名が多い。人物の略歴が分からない。分からない出自の同一人物があちこちで活躍する。相関が分からない(清朝崩壊から国共内戦の終了までは戦国時代同様、知識人の移動が激し過ぎる)−−。ということであります。ただ本書の特色として、性差の話や女性の地位向上など従来の書にない視点や、戦火の下、疎開しながら存続したほどの高等教育機関(北京大、清華大ほか)や出版社(商務印書館ほか)の果たした役割の解説など新鮮な視点がある。組版や註記でもっとわかりやすくできたのではないかな。
読了日:6月25日 著者:坂元ひろ子
おすもうさんおすもうさん感想
角界には「よかた」という言葉がある。狭義は力士、親方、OB、広義は相撲記者やその出入り業者までを含めた境界認識である。身内が嘲笑すれば激怒するけど、外界人が揶揄しても決して体力的に優位にある彼らは手を挙げることはない。で、筆者はどこまで行っても「よかた」である。文献を紐解き、新聞紙面を博索し、引用しても、実像には近づけない。「のんびり」「あいまい」という言葉に集約してしまうけど、実は彼らはすごく繊細で目端が利く。分かりやすく言えば、関取と付け人の関係を観れば分かってもらえるかな。ありがちな相撲ルポ本。
読了日:6月23日 著者:高橋秀実(たかはし・ひでみね)
キリスト教と戦争 (中公新書)キリスト教と戦争 (中公新書)感想
最初に取り上げられる素材がチャプレン(従軍司祭、従軍牧師)の話。戦闘に参加しつつ平和を祈る存在。というきっかけから、自分の脳裏では日本の中世の陣僧、聖の存在との比較を考えながら読み進めていた。確かに戦いを否定すれば宗教は生き残っていなかったろう。ただ一方で暴力を肯定する訳でもなし、死者の成仏というか、死の除穢というか、戦場を駆け巡った僧がいたのが不思議に思えてならなくなった。聖書の読み解きからアメリカ教を生んだ世界最大の軍事大国などとは何かが違う。島国で発達してきた日本の宗教観が逆に謎めいて思える。
読了日:6月19日 著者:石川明人
絵巻物に見る日本庶民生活誌 (中公新書 (605))絵巻物に見る日本庶民生活誌 (中公新書 (605))感想
元々は中公が出版した「日本絵巻大成」(全26巻別1)の月報に綴った文章を再構成したものであるという。絵巻に登場する生活の風俗を細々と拾い、注釈を入れていく。ふと文章の裏側にある「採集カード」の存在を想定したくなるような1冊。古式ゆかしい。首を打つのは死者を怨霊にしないためで、戦場では顔の皮を剥いで人の識別をさせないようにする(そりゃ逃げる側を首を何個も抱えては大変)とか、衣食住すべてに及ぶ内容。ただ絵巻物資料が写真で見られるようになった時代の本。今は電子情報化され、検索が速い。今の学徒の新版を待ちたい。
読了日:6月19日 著者:宮本常一
戦いの日本史  武士の時代を読み直す (角川選書)戦いの日本史 武士の時代を読み直す (角川選書)感想
治承・寿永の内乱から小牧長久手の戦いまで、8件の合戦の意味をどう歴史の中に位置づけるかという試みの掌編集。曰く攻守の確認、目的の確認、目的達成の成否を元に、勝敗を判定していく理論。見立ての妙が生きる。中でも鎌倉殿の中での「霜月騒動」(安達泰盛と平頼綱)は「統治派対権益派」の内紛と、「応仁の乱」は「形式より実力重視」と、三好長慶と織田信長での「日本S(五畿)」「日本A(糸魚川静岡構造線以西、中国四国まで)、日本B(それ以外)」と区分けて考える法など。領国の石高、銭の蓄積から兵の動員可能数を勘案も一興。
読了日:6月18日 著者:本郷和人
妄想かもしれない日本の歴史      (角川選書)妄想かもしれない日本の歴史     (角川選書)感想
初出が新聞、或いはWebマガジンという媒体の故か、どうも中身が軽い。随筆、漫筆という風情の1冊。筆者が書かんとしていることは、後書きに挙げた沢村栄治の逸話に尽きている。曰く、復員後、投手として能力の落ちた彼を解雇し、彼自身は南海へのトライアルをしようとしていた、という話だ。今は「巨人の伝説の名投手が戦線に散った」みたいな美談になっているが、実は巨人は真っ先に沢村を見限っていたという話。歴史はある部分が隠され、ある部分は語られる。書き方が左右に揺らぐ中、勘所を見極めるのが歴史を味わう醍醐味、と。確かに然り。
読了日:6月18日 著者:井上章一
天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)感想
長く続いてきた東大対京大の史観論争の中で、黒田俊雄が提唱した権門体制論に対して佐藤進一譲りの本郷は武力の重みを説く東国国家論を説く。何を以て王権と考えるかという問いかけだ。この本では書札礼から宮廷の位階など読み解きの基本から宮廷、武門の機構に目を配る。基本的なことを押さえているので好著なのだけど、筆者が思っているほど読者は専門家ではない。例えば「畏友新田一郎」という記述。知っている人間なら東大大学院法学政治学研究科教授で中世法制史の泰斗と知れるが、筆の運びが性急。ススッと読み進められた人は何人いたか。
読了日:6月13日 著者:本郷和人
記憶の歴史学 史料に見る戦国 (講談社選書メチエ)記憶の歴史学 史料に見る戦国 (講談社選書メチエ)感想
あとがきに拠れば本郷和人に煽られて書いた1冊だという。学者のジレンマのような気分が書かせたのか。取り上げているのは本能寺の変、細川忠興夫人の死、佐竹殿統治下の修史作業等々。史料、記録として残っているものを分別し、系統だて、対比して、事実に近いと今の時点で探る作業の妙味を語る。ただ、膨大な歴史史料の前に如何な碩学といえど1人の人間。詳細に調査を極めたことが日本史として敷衍できるかどうか、研究手法が歴史を研究することにつながることかどうか、筆者の懊悩が覗く。典籍を元に記述すればいい時代は終わったのだから。
読了日:6月11日 著者:金子拓
戦国の食術: 勝つための食の極意 (学研新書)戦国の食術: 勝つための食の極意 (学研新書)感想
講談本。名将言行録などをネタ本に食事の点景を綴った1冊。元ネタが元だけに、1件のエピソード当たりの行数が短く、ぶち切れ、細切れの感が否めないのは残念。読んでいて連想したのは1974年にベストセラーとなった樋口清之の「梅干と日本刀」。カリウムだ、ナトリウムだ、アミノ酸だと、お説が並ぶのだけど、裏付けとなるようなデータに乏しい。読んでいる時は一種の快感もあるのだけど、読み終わってみると何が残ったのだろうと思い返そうと思っても思い出せない、っていうか。味噌大好きのそういう方向性の筆者であったのを見逃していた。
読了日:6月8日 著者:永山久夫
日本会議の研究 (扶桑社新書)日本会議の研究 (扶桑社新書)感想
書いてあること=椛島有三の「日本会議」、伊藤哲夫「日本政策研究センター」はともに生長の家原理主義者の安東巌に帰一するというのが本書の読み。70年安保の学園紛争での民族派系学生の動きや「元号法制定」を通して運動は地下水脈のように続いていた。左派学生の多くが転向したのとは対照的に。権勢の淵源は「動員力」だ。君が代に一体感を持ち、宗教的な差異は感じさせない運営能力、事務能力。組織力は票である。議員、特に小選挙区制の下の議員には確実な票になるという点で魅力だ。民主的を装う手段で民主主義が歪んでいく不思議。
読了日:6月8日 著者:菅野完
室町幕府と地方の社会〈シリーズ日本中世史 3〉 (岩波新書)室町幕府と地方の社会〈シリーズ日本中世史 3〉 (岩波新書)感想
今の生活にまで繋がる部分が多いもののイメージが湧きにくいのが室町時代。室町殿は15代とはいえ、歴代将軍の中で名が5人挙がれば上々なのではないか。そんな時代の空気を概説する好著。天皇を中心とする権力構造の中、武門も利用し利用されつつ王権を確立していく。何より興味深い指摘はこの時代に「村」が確定したのではないかという分析。灌漑や水防工事の技術が確立し、今に続く日本の集落、風景が確定してきたとみる。筆者自身があとがきで触れているように今に続いてきた景色(居住地、生業、信仰……)が急激に変化、崩壊している現実。
読了日:6月6日 著者:榎原雅治
夜明けあと (新潮文庫)夜明けあと (新潮文庫)感想
キンドルで購入。店頭でもしパラパラとやった後だったら、買ったかなぁ。安政5年から明治45年まで、新聞記事などの拾い書き。1項目3行ほど。時に寸評が入る。文章の調子は木村荘八とか、宮武外骨のようなにおいがする。時代の空気を示すものではあるだろうけど。
読了日:6月3日 著者:星新一
名前と権力の中世史: 室町将軍の朝廷戦略 (歴史文化ライブラリー)名前と権力の中世史: 室町将軍の朝廷戦略 (歴史文化ライブラリー)感想
偏諱というと堅苦しいけど、子供の名に父や祖先の名の一字を遣ったりするのは今でも身近な習慣。社会的な関係構築に援用された風習から権能の在処を探る。一字を賜る、貴顕の名に憚って改名する等々。猶子の話も取り上げているがテーマを名前に絞った方がよかったかも。主要な部分は足利殿の話だが、名を授ける側、受ける側に当然利益があるからの習慣。都合がいい時には利用し、悪くなれば知らんふりをする貴族のしたたかさが印象的。名前、諱への言霊信仰というか、礼儀というか。今は本名を呼ぶのが当たり前で感覚として分かりにくい話だけど。
読了日:6月2日 著者:水野智之

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posted by 曲月斎 at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする