2016年05月01日

☆2016年4月に読んだ本

2016年4月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:6104ページ
ナイス数:601ナイス

中国革命を駆け抜けたアウトローたち―土匪と流氓の世界 (中公新書)中国革命を駆け抜けたアウトローたち―土匪と流氓の世界 (中公新書)感想
今風に言えば、ISがつい隣の国を支配していたという話。義民風の緑林であれ、地縁を力で繋いだ土匪であれ、職域や生国を基盤にした紅幇、青幇などの幇会であれ……。呼称、遣り口は違えど、本質的には力次第で動いていたということ。日本で言えば法治が及ばなかった戦国時代を想定するしかないか。省境の山や低湿地で跳梁跋扈する訳で。中国共産党の聖地井崗山も蒋介石が立て籠もった重慶もそんな土地、民衆の記憶の上に成り立つという見立て。「三大紀律八項注意」「没有共産党就没有新中国」なんていう革命歌が今も歌われているのも示唆的かも。
読了日:4月29日 著者:福本勝清
江戸諸國四十七景 名所絵を旅する (講談社選書メチエ)江戸諸國四十七景 名所絵を旅する (講談社選書メチエ)感想
「名所」「名物」を名乗るためには「構成要件」が必要である、という概念が整理されたのが江戸時代である、ということ。それが製版の技術進化に伴い、図画化され、視覚情報となって定着した、ということ。古くは古今集、源氏物語、能などを通じて土地の伝承として定着していたものを再構成したものであり、換言すれば「歌枕」。と同時に近代的な百科事典的興味も生まれ、名所である上、特産、名産にも関心が広がったと説く。要件を下敷きにした読本、歌舞伎、浄瑠璃など江戸時代の文化も開花したとする。というか淡々とした内容で漫筆に近い。
読了日:4月28日 著者:鈴木健一
入門 国境学 - 領土、主権、イデオロギー (中公新書)入門 国境学 - 領土、主権、イデオロギー (中公新書)感想
国境の概念の淵源をヴェストファーレン条約の成立に見ているがどうだろうか。時に1648年=慶安元年。3代将軍家光の時代。別の概念もあった気がする。物理的な境界というより、社会的・精神的境界の方が実質的な効力としては大きいのではないだろうか。亜欧も接している訳で西欧的な概念に汎用性を求めるのは如何? 6章の多国間関係を考える上で国境を接しているか否か、海か陸か、という模式化は興味深いものの、全体に話の内容が広汎、抽象的な気がする。「入門」と銘打つ以上仕方がないのかもしれないが。扨々、国境はフェンスか壁か砦か。
読了日:4月27日 著者:岩下明裕
中南海――知られざる中国の中枢 (岩波新書)中南海――知られざる中国の中枢 (岩波新書)感想
浅田次郎の小説の舞台が13億余の人口を誇る中国の中枢たり得ているということがイメージしにくい。国内に当て嵌めて強いて想像すれば赤坂御用地か。中の様子は分からないけど、生活している人がいる、プロトコルの舞台装置たりえる等々。本書の前段はベールに包まれたこの中南海のルポである。筆者2度の体験と膨大な文献情報から築き上げた世界。1800年落成のホワイトハウス同様、古蹟に居住することは正統性の証なのかも。後段は中国共産党のシステムの読み解き。結党以来の支配制度「幹部等級別待遇制」と「檔案」は健在なのだな、と。
読了日:4月27日 著者:稲垣清
石油・武器・麻薬 中東紛争の正体 (講談社現代新書)石油・武器・麻薬 中東紛争の正体 (講談社現代新書)感想
プロテスタンディズムの上に資本主義が成立したとは古人の説くところ。ムスリムの説くところの上に安定した社会が成立しても不思議はない。多様な価値観が認められる社会といいつつ、エネルギー資源を巡る利権争い、社会の不安定化に乗ずるような軍産複合体の闊歩。テロルが終わらないのではなく、見識の欠如がテロルを生み出していることを示す。瞬時に巨万の富が飛び回る今に至っては、従前の文化の墨守だけでは対処しきれない部分もある気がするが。何より情報が平均かつ平準に享受できることの大切さも。メルカトル図法ではない世界観が必要。
読了日:4月26日 著者:宮田律
国宝神護寺三像とは何か (角川選書)国宝神護寺三像とは何か (角川選書)感想
作品を美術品として見る立場=印象批評は指標作品との比較に留まるに対して歴史学の傍証の一分野として観る立場の筆者。3図の読み解きをする。鍵になるのが「足利直義願文」。像が三幅対でなければならなかった理由、絵絹の異例の幅から見えるもの、夢窓疎石と直義の対話による「夢中問答」の読み解き。黒田節が全開する。歴史科学は新資料が出れば変わるにせよ、今の時点での最高の読み解きを示すものがこういう形で出るのが興味深い。歴史の頼朝像(筆者のいうョ義像)は江戸時代に徳川家の外護の都合で寺が変身させたという読みまで興味津々。
読了日:4月25日 著者:黒田日出男
明治政府と英国東洋銀行(オリエンタル・バンク) (中公新書)明治政府と英国東洋銀行(オリエンタル・バンク) (中公新書)感想
印度のムンバイで生まれ、日本に4番目に乗り込んできた銀行が日本の明治政府の財政面での牽引役を引き受けてくれた歴史。曰く旧幕からの横須賀造船所接収に当たっての抵当解除資金、曰く新橋〜横浜の鉄道資金、大阪での造幣寮設立、秩禄公債の処理用資金。そして貿易決済に使った洋銀券の流通、三井組の救済も。この銀行がなかったら、日本はどうなっていたことやら。ただこの銀行自体も1880年代にはセイロンやセーシェルへの投資失敗などが響き退場していくのだが。極東の小国の明治初頭の一つの裏面史である。横浜の雑踏が聞こえるようだ。
読了日:4月22日 著者:立脇和夫
日本陸軍とモンゴル - 興安軍官学校の知られざる戦い (中公新書)日本陸軍とモンゴル - 興安軍官学校の知られざる戦い (中公新書)感想
モンゴルの独立運動を描いた1冊。民族自決の機運の中で、日本が先導役になることを期待しながら、日本の陸士を出たエリートは興安軍官学校やモンゴル少年学校の設立を通して独立を窺う。満州国成立時も王道楽土という耳良い標語で誤魔化された。日本が抱いた野心(というか利用した)、蒙古聯合自治政府〜蒙彊聯合自治政府と民族自決の本意とは遠ざかる結果に、狭間の民族の悲哀がある。内蒙古、外蒙古一体となった民族国家を作る目標がWWIIのヤルタ協定で崩れ、日本に協力した者として共産党中国では追われる身に。軍官学校の存在の大きさよ。
読了日:4月21日 著者:楊海英
第一次世界大戦史 - 諷刺画とともに見る指導者たち (中公新書)第一次世界大戦史 - 諷刺画とともに見る指導者たち (中公新書)感想
筆者の「戦争の帰趨には偶然の要素も入り込む余地があるが、戦争を起こすのも遂行するのも終わらせるのも最終的には人である」という視点に基づいての記述が連なる。あの人がここに、みたいな驚きが処々にあったり、寸土も敵国に占領させず降伏した独の話等々、日本的には遠い戦争が実は結構身近な問題と関連があるのを教えてくれる1冊となっている。高校日本史の教科書では青島占領くらいしか出てこないが、WWIがWWIIへの芽を胚胎していることがよく分かる。日本人にかけてきた知見に関する良書。写真ではなく風刺画を入れたのも効果的。
読了日:4月21日 著者:飯倉章
寺院消滅寺院消滅感想
人が減れば寺も減る。当然だ。全国で約3〜4割の寺が無住になり、消えていくとの見立てだ。需要と供給のバランスが崩れるから淘汰されるのは仕方ないかもしれない。寺が消えることで、地域社会で寺や神社が担ってきた人と人を「紐帯」のような役割を果たす場も消える。家族関係も薄れる。住侶にも檀家にも1960年代以降の社会変化は想定してきたものではないにせよ。ただ人間は死だけは絶対であり、人質ならぬ「骨質」を持つ寺院がどう再生の道を探るか、家ではなく個人と寺の結びつきを生み出していくのか。むしろその点が興味深い気がした。
読了日:4月18日 著者:鵜飼秀徳
気まぐれコンセプト 完全版気まぐれコンセプト 完全版感想
1981年からの35年分、より抜きの1冊です。前のクロニクルも厚かったけど、これも厚い。この35年間は、日本という国が「Japan as No.1」と持ち上げられて浮かれ、「失われた20年」を味わって、震災もあって今に至る時間に当たります。この年月、ある意味で空気を上手く切り取っている気がします。漫画というより、おじさん向けの年鑑という感じ。このページにはないけど、本に付いている帯が秀逸。曰く「第1位」(売れないとホイチョイが困る本ランキング)、「おかげさまで満足度No.1」(著者の印税に対する)……。
読了日:4月16日 著者:ホイチョイ・プロダクションズ
当確師当確師感想
選挙の「裏面」を描いた小説ということになるのだろうけど、現場を少し知っている身にはちょっと違うかな、という気が。小説に仕立てるために劇的に盗聴だ、裏切りだ、二重スパイだと情報戦風の味を効かせているのだけど、実際はそんなものではない。特に後段というか、メインの市長選の話は道具立てがあまりに荒唐無稽。ちょっと鼻白む感じ。世論調査の結果や選管の書類風のものをはさみ込むことでリアリティを持たせているつもりだろうが、井上ひさしの「十二人の手紙」にある道具立てほどの効果はない。面白いテーマを飾り、作り込みすぎた感じ。
読了日:4月16日 著者:真山仁
アマチュア・ベースボールオフィシャルガイド’16 グランドスラム47 (小学館スポーツスペシャル)アマチュア・ベースボールオフィシャルガイド’16 グランドスラム47 (小学館スポーツスペシャル)感想
創刊号からもう腐れ縁のように購読している。昔懐かしい顔がちらほら。明治安田生命の監督に日石の林さんが就任していたり、横製や金港倶楽部の部長に懐かしい顔があったり。チーム紹介号でありますが、体裁が統一していないのが残念。広告の出稿の都合なのは分かるのですけど、対向面に記事がなくて広告しか載っていないとなると寂しい。今、社会人野球に進むのは本当に難しいのだな、と。あ、四国銀行のページは白黒でした。
読了日:4月14日 著者:小学館
金(ゴールド)が語る20世紀―金本位制が揺らいでも (中公新書)金(ゴールド)が語る20世紀―金本位制が揺らいでも (中公新書)感想
金融システムの枠組みから金は今でこそ外れたが、その存在は長く「等価」を示す指標だった。筆者は国力(という抽象的なもの)を探るために金の当時の価格を利用して外貨準備などを金換算して見せる。外募国債のためにも、輸出入の決済にも結局は金が不可欠であった訳で、金の現送、勘定の移し替えなどなど。何よりWWIに突入していく独で保有の金がかなり少なめだったこと、食料の確保も。WWIIでも同じだ。日本も開戦前夜、横浜正金銀行や日銀の面々がぎりぎりの為替、金操作をして軍需物資の輸入に努めたとは。見事な裏面史になっている。
読了日:4月13日 著者:鯖田豊之
フジテレビはなぜ凋落したのか (新潮新書)フジテレビはなぜ凋落したのか (新潮新書)感想
筆者は1986年入社。本書は入社以前の社の歴史が前半部分。後段、1980年代後半のバブル期の思い出話は入社間がない時代になる。平成不況、企業統治が重視され、法令遵守が当たり前となる今。CXは株式上場に伴うTOBも経験した。後半の要点「なぜ凋落」の部分は一介の元社員の叙述であり、蓋然性が薄い。「企業の老化」という点で片付けられないし、目指したという「敗因」の分析について十二分に目が行き届いているとは思えない。市谷河田町時代の、バブル期の経験があり、その体験から筆者自身も離れられないのではないだろうか。
読了日:4月10日 著者:吉野嘉高
世界の名前 (岩波新書)世界の名前 (岩波新書)感想
1編が2ページ前後。掌編随筆ながら、「名前」という素材で描かれたお国ぶり、伝統、来歴が見えるのが興味深い。筆者はその国語や文学の専門家。ドストエフスキーのような文豪の名の読み解きあり、本人+父+祖父の名を連ねるアラビアのような父系の伝統を重んじる国もあり、古代インドのサンスクリット語+近世のイスラム文化+近代の西洋文化と重なったインドネシアのような国あり……。日本の明治維新の時同様、適当に作った姓があったり、新生児の死亡率が高かった時代に名付けに気を配ったり。国や民族を問わず通底する人間の思いが見える。
読了日:4月10日 著者:
和食はなぜ美味しい――日本列島の贈りもの和食はなぜ美味しい――日本列島の贈りもの感想
虻蜂取らず、かなぁ。「マグマ学者」が和食についての蘊蓄を、専門の地球物理学に絡めて解説している本です。でもどちらの要素に関しても説明不足の感が否めないです。入門書、という括りの中で書かれたのだと思うのですが、初学への本こそきちんと正対した姿勢で書くべきではないか、と思うのです。専門の地球物理学に関する事項の模式図がちょっと雑駁で丁寧ではありません。取っつきにくい分野の話ですから崩して書こうという意欲は買うのですが。同じ趣向の本で「物理の散歩道」というシリーズがありました。あのレベルはやはりほしいところ。
読了日:4月8日 著者:巽好幸
洛中洛外図屏風: つくられた〈京都〉を読み解く (歴史文化ライブラリー)洛中洛外図屏風: つくられた〈京都〉を読み解く (歴史文化ライブラリー)感想
洛中洛外図屏風の出現から衰退までを概説した1冊。要は注文主が誰に贈るのかで画像は決まるという読み解きだ。歴博甲本、上杉本、舟木本と話が展開する。美術史の立場からの観る研究と日本史の立場からの読む研究の間合いを縫う。ただ読み終えて思うのはこの一連の屏風の面白さは、表象というか、隠喩というか、「分かる人に分かる」という自己満足を写す鏡である点が伏せてあるのが面白いのだ。紋所、有職故実に基づく装束や装具の分別などなど。それを逆手にとったのが今様なら山口晃だろう。彼の作品が今、最前線の読み解きの姿かもしれない。
読了日:4月6日 著者:小島道裕
大日本帝国の海外鉄道大日本帝国の海外鉄道感想
戦前、日本が「外地」(旧満洲を含めて)と呼んだ地域の旅客向け概説書。亜欧連絡運輸があり、下関〜釜山〜新京〜満洲里〜倫敦が15日かかった時代の話です。長崎〜大連、敦賀〜浦塩などのルートもありました。鉄路への実感が今と違うのを感ずる。台湾、樺太、南洋諸島の鉄道事情も。個人的には日銀券と朝鮮銀行券、満洲中央銀行券、法幣とのリンクの話(関釜間、安東での税関、山海関での日銀券持ち出し制限等)、時差の話(朝鮮時間、満洲時間、哈爾浜時間など)や年の表記など、鉄道の話よりも旅にまつわる話が興味深かった。とまれ不思議な本。
読了日:4月4日 著者:小牟田哲彦
日本歓楽郷案内 (中公文庫)日本歓楽郷案内 (中公文庫)感想
濹東綺譚のような描き方の対極にある一冊。当時はエログロの風靡した時代、歓楽街のガイドブックの体裁で実はルポ。満州事変が勃発した1931年に刊行されたと知って読むと戦地とは別の生活が続いていたのがわかる。吉原のような伝統的な色街が衰退する一方、新興の街玉ノ井や亀戸などの話、一方で大阪・道頓堀の芝居茶屋の利用のような古典的な姿や、横浜のチャブ屋のような戦後は絶滅した業態にも、筆が及ぶ。独特の文体に少々戸惑うものの、当時のウケ狙いはこんな感じなのかな?とも。モガモボの時代、乱歩の時代、こんな世界もあったのかな。
読了日:4月1日 著者:酒井潔

読書メーター
posted by 曲月斎 at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする