2016年04月01日

★2016年3月に読んだ本

2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4243ページ
ナイス数:519ナイス

ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015感想
国内の銀行の盛衰史。まだ歴史が近い分、民衆史までは降りていない。でも人の判断という部分に焦点を当てることで厚みを生み出した1冊。13行の都銀、7行の信託専業、3行の長期銀と計23行もあった。今、その名を諳んじることは最早、鉄道唱歌を覚えている程度の価値もないが、やってきたことは人々の暮らしを左右してきたことばかり。最初の長期銀の精算、3大メガバンクの出現、UFJ銀行を巡る綱引きなどなど、当時の断片的な知識が繫がっていく快感がある。仕事の枠組みは中世から変わらない一方、「護送船団方式」は外れた今はどう???
読了日:3月31日 著者:前田裕之
首都直下地震 (岩波新書)首都直下地震 (岩波新書)感想
かつては「69年周期説」という説があった。まだ身近に関東大震災の経験者も生きていた。そんな時代とは違う首都圏で起こりうる地震についての本。プレート境界型と沈み込んだプレート(スラブ)内で起こる直下型とがあり、結局のところ、分からないことが多いということが分かる1冊。相模プレートが3・11の後、動いても不思議がなかったという学者としての印象は分かるのだけど、被害想定とか、対策にまで話が及んでいるのは広汎に過ぎる気も。せっかく碩学の書いた1冊。首都直下地震の機序と知見を整理してくれた方がよかったかも。
読了日:3月27日 著者:平田直
南海トラフ地震 (岩波新書)南海トラフ地震 (岩波新書)感想
平明な本。北米プレートにのった東日本とユーラシアプレートにのった西日本。それぞれに東や南から太平洋、フィリピン海と2枚のプレートが沈み込んできています。南海トラフ地震はこのフィリピン海プレートの沈み込みに由来する巨大地震で、震源域が実は陸地に近く、津波もさることながら激しい揺れが想定されることを説きます。東海道ベルト地帯から四国の太平洋側、九州西部に至る範囲です。休止中の富士山にも影響が出て噴火するかも。被害想定をどう考えるべきか(浸水高30aと2b)など、怖がるだけでも開き直るでもない智恵があります。
読了日:3月26日 著者:山岡耕春
鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町 (歴史文化ライブラリー)感想
鉄道という仕掛けは勾配・傾斜に弱く、隧道・橋梁が増えれば金がかかる。路線の通過地は経済的な判断に基づく訳で、どうしても必要なところではないと、碓氷峠のような仕掛けは作らないのである。しかし、市街地から外れたところに駅が作られると、なぜか旧来の街道筋の人々から鉄道が忌避されたという伝説が喧伝されてきた。この一事を丹念に論破していったのがこの1冊。鉄道の果たしてきた役割が変わってしまった今となっては(小口の貨物輸送なんてもうない)この本が熱心に掘り起こした当時の熱意は朧化し伝説を生む素地ができているのだけど。
読了日:3月23日 著者:青木栄一
完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫)完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫)感想
NHKでの羽田圭介との対談を観て手を伸ばした1冊。自意識過剰、俯瞰的等々、自画像を見立てているけど、実は犀利な視線と挙措を持っている人物ではないかな。個人的には中、高の恩師の言葉を思い出した。「何か一生懸命やっている自分を斜め上から見下ろしているもう一人の自分がいる」と師は言っていたけど。そこで止まれば次がないのだけど、筆者は「感動」という形で止揚しているんじゃないかな。決して冷笑的に捕らえる必要はないことだし。「結果より、自己ベストを求める」なんて泣かせる一言じゃないか。悩む時には「応援の1冊」かも。
読了日:3月22日 著者:若林正恭
海の武士団 水軍と海賊のあいだ (講談社選書メチエ)海の武士団 水軍と海賊のあいだ (講談社選書メチエ)感想
だいぶ前に読んだ記憶があるが、記録していなかったので備忘。武士の統制の下にある「水軍」とソマリア沖のような「海賊」、そして海の上を生業の場として生きていた武士団がいたという説明。どうしても陸路の攻防をメインに語ってきた従前の歴史(例外は毛利氏の厳島合戦、本願寺の救援くらいかな)とは違う視点を提示するという意味で新鮮な1冊。ただこの1冊で筆者の提唱する概念がカバーしきれているかというとそうでもない気がする。大本にあるのは明の海禁策であり、冊封体制であり、筆者得意の東と西の戦国大名の異質性があるのだから。
読了日:3月21日 著者:黒嶋敏
琉球王国と戦国大名: 島津侵入までの半世紀 (歴史文化ライブラリー)琉球王国と戦国大名: 島津侵入までの半世紀 (歴史文化ライブラリー)感想
筆者の論を全部を是とする訳ではないのですが、南シナ海の自由な通商の展開と海上の状況の変化に伴って、明と琉球の冊封体制が変化していき、2次尚氏王朝が存立基盤を揺るがすような事態だったという見立ては新鮮。冊封使が明から来るときには内地からの準備をしなくてはいけない、そのための琉球と薩摩、日本との関係が変化するのが一様ではないことが自然に読める。と同時に、戦国大名と言いつつ、中央集権的な体制が整っていた東国と土豪の支配を認めつつ、臣下に組み入れるという形で領国を広げた西国では事情が違うことが背景への指摘が新鮮。
読了日:3月21日 著者:黒嶋敏
鉄道への夢が日本人を作った 資本主義・民主主義・ナショナリズム (朝日選書)鉄道への夢が日本人を作った 資本主義・民主主義・ナショナリズム (朝日選書)感想
鉄道への「信仰(というか憧憬)」が日本を近代国家たらしめた、というのが本書の論。巨大な投資を必要とする鉄道事業の成立には資本主義の発展は必要だし、我田引鉄的な地方の要望を通すためには政友会原敬を代表とする代議士が必要になり、民主主義? が成立する。そして大喪と大典、行幸、お召し列車の運行で天皇の存在が見えなくても形になるという仕掛けを見立てる。個人的には1の部分をきちんと書くべきだった気がする。2の部分、今の国政でも同じ構図は続いているのかと、当時を嗤う気分にはなれなかった。解説の小熊英二の一文が秀逸。
読了日:3月18日 著者:張ケ暋
丸谷才一 (文藝別冊)丸谷才一 (文藝別冊)感想
高知・金高堂本店でKAWADE夢ムックのフェアをやっていて見付けた1冊。小説は疎遠だったけど(というか取り組んだけど駄目でしたね)、随筆はずっと好きで読み継いできた作家。巻末の評論とエッセイはほとんど読んでいた。「古典と外文と作家・批評家」というサブタイトル通りの筆業。採録されている網野善彦との御霊信仰の話、小島吉雄との「新古今と後鳥羽院」など丁々発止、面白かった。巻頭の岡野弘彦の随筆が地味豊か。自分の文体に、面白がり方に大きな影響を残した作家だったな、と改めて思うことしきり。
読了日:3月17日 著者:
社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)感想
「等身大の中国を知る努力」として書かれた1冊。抗日という大義を失った国共が終戦を機に分かれていく。蒋介石は信を失い、百家騒鳴の時代を挟んで共産党の一党独裁へと変わる中、スターリンの影が大きくなったり、小さくなったり。土法高炉・深耕密植などを試みた大躍進、毛沢東の権力欲の末の文化大革命と錯誤を繰り返すさまは喜劇にすら見える。ただ現政権は反汚職を重要な課題に据えるのが現状。正確な情報、統計を開示することの大切さを思う。と同時に、史料が公開されてきたとはいえ、なお隔靴掻痒の感が残る。近現代史ゆえの難しさ、か。
読了日:3月15日 著者:久保亨
革命とナショナリズム――1925-1945〈シリーズ 中国近現代史 3〉 (岩波新書)革命とナショナリズム――1925-1945〈シリーズ 中国近現代史 3〉 (岩波新書)感想
日中戦争に就いて種々理由を並べ立てることはできるだろうけど、筆者の言う「中国人を屈服させる」ためという日本側の根源的な動機は一連の不可思議な決断の連続を解明する点で分かりやすい。もう一つの鍵は「ねじれ」だ。南京政府内(第一次国共合作から国民党内の内部抗争)、国民党と共産党の間(囲剿戦から西安事変、第二次国共合作)、重慶政府と英米ソ、コミンテルンの存在、WW2全体の中での中国大陸の位置づけ、日本が降伏した後の戦後処理(国共内戦に向けての兵器の鹵獲)……。新たに公開された史料を基にした著述は新鮮で明快だった。
読了日:3月13日 著者:石川禎浩
近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書)近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書)感想
日清戦争〜孫文の死までの時代を描く。日本側から見ると、礼に縛られ、近代的な国家としての体をなさない清は「眠れる獅子」であるという見方に偏りがちだ。しかし内側から見れば諸外国の圧力と地方分権のうねりの中で行政が機能しなくなってきたのは当事者こそ百も承知で、何とか変革の道を探るものの失敗を繰り返す。真っ当過ぎるくらいに一生懸命な指導者の姿の一方、皇帝という重しを外した後は袁世凱から始まる北京政府、孫文から始まる広東政府、そして長江流域の「省人省治」という指向。混乱の2文字で済ませきれない歴史の綾を綴った好著。
読了日:3月9日 著者:川島真
BL進化論 ボーイズラブが社会を動かすBL進化論 ボーイズラブが社会を動かす感想
そもそも関心の外にあるこの本を読むきっかけは、「きのう何食べた?」(よしながふみ)というゲイカップルの料理漫画を読み、スピンアウト版がコミックマーケットで発売されたというので、取り寄せて読むとまた驚愕吃驚。筆致は穏やかなものの、BL(ボーイズラブ)とは何じゃと思い、この本を読み通した。BLという分野は広大で無辺なのだなぁ、と思う。最後のBLの視点から見た映画評ってのは興味深かった。ホモフォビア(同性愛に対する恐怖感・嫌悪感・拒絶・偏見)の視点とか、意外に自分でも見落としている部分があるものだ、と感じたり。
読了日:3月5日 著者:溝口彰子
時代の正体――権力はかくも暴走する時代の正体――権力はかくも暴走する感想
キンドルで読了。
読了日:3月4日 著者:神奈川新聞「時代の正体」取材班
洛中洛外図・舟木本を読む (角川選書)洛中洛外図・舟木本を読む (角川選書)感想
屏風の筆者は岩佐又兵衛、荒木村重の息。筆者の出自は扨置、舟木本を取り巻く環境はこの20年で変わったな、と思う。屏風に描き込まれた世界を読み解くこの1冊、断片的な史料を繋ぎ合わせていく筆捌きはここまで断定調で書き込んでいいのかと思いつつ、肯んじている自分がいる。豊国祭の能の演目、内裏に向かう武者行列を家康と見立て、御所で密会する男女に猪熊事件の寓意を見、二条城に向かう公家から禁中公家法度制定前夜の人間関係など当時の出来事を画像化しているという解釈は、たぶん屏風の注文主の視線と重なっている気がする。面白い。
読了日:3月4日 著者:黒田日出男

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posted by 曲月斎 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする