2016年02月01日

☆2016年1月に読んだ本。

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:4652ページ
ナイス数:521ナイス

戦国時代の足利将軍 (歴史文化ライブラリー)戦国時代の足利将軍 (歴史文化ライブラリー)感想
中央集権的だった鎌倉幕府の得宗体制に対し、室町幕府は地方分権的である。有力守護大名と将軍家の相互補完で成立していたからで、鎌倉府の存在もある。「上の権威」より「下の支持」があればこそ成立する領国経営である。当時の幕府を政治学の「リアリズム」「リベラリズム」「コスモポリタニズム」の視点で分析し、「上なる権威」として将軍家の価値を秀吉の登場まで残したと見立てる。だが幕府の役割は畿内にすら威勢は及ばず、宮廷の武力部門の長という程度ではなかったか。筆者が見立てているほど、武威も権威のなかったように見えるのだが。
読了日:1月30日 著者:山田康弘
江戸時代の遊行聖 (歴史文化ライブラリー)江戸時代の遊行聖 (歴史文化ライブラリー)感想
一遍を宗祖とする時宗。中世以来、藤沢遊行寺にいる藤沢上人と廻国する遊行上人の2トップ制で、後者は出歩くことが特徴。江戸幕府から全国で通用する伝馬朱印状(馬人足の徴発許可状)と天皇から貰う「他阿上人」号を背景に「生き仏」が町に出前する形。ただ本で取り上げている江戸期には「南無阿弥陀仏、決定往生六十万人」という賦算の札が民衆からの篤い信仰を集めていた一方、どこか「金」の臭いもする体制だったような。明治になって後ろ盾を失うと一気に宗門としての勢いを失ったのも成程と思うばかり。宗教として興味深いのだけど……。
読了日:1月29日 著者:圭室文雄
江戸の武家名鑑―武鑑と出版競争 (歴史文化ライブラリー)江戸の武家名鑑―武鑑と出版競争 (歴史文化ライブラリー)感想
武鑑とは大名や幕府の役人を網羅した本。紋や行列の道具、屋敷の位置、家系図などを記している。改版を重ねる実用書であり、時代の人にとっては都市の賑わいを感じさせてくれる1冊だったろう。当時は本屋の株仲間があり、出版・販売できる店が限られていたうえ、仲間内でも著作権保護のため、版木の保有、項目やレイアウトの独自性の確保が「株」という表現で守られていたという。版木は転売され、抵当に入り、版元間で係争の対象ともなる。当時の出版に対する統制や版元の権利意識も今に通じるものがある。現に「版権」という言葉は今も残る。
読了日:1月29日 著者:藤實久美子
辻調が教えるおいしさの公式 西洋料理 (ちくま文庫)辻調が教えるおいしさの公式 西洋料理 (ちくま文庫)感想
和、中と読んで洋。西洋料理と一括りにはできない分、素材別の章立てになっています。基本的には仏、伊も西も出てきます。豚ロース肉のシャルキュティエール風では豚肉は筋切りをし、小麦粉をまぶしたらすぐ焼くとか、煮込むにしても具材の加減で鍋から取り出すという工程とか。その辺がこのシリーズの本らしい「突っ込み」です。ただ料理名から完成の絵が即座に連想できない点で写真のない料理本の限界も感じつつ。ちなみに挿絵が入っているのは「ニョッキの生地のまとめ方」「手打ちパスタの生地の練り方」「プレーンオムレツの作り方」の3カ所。
読了日:1月28日 著者:
江戸城が消えていく―「江戸名所図会」の到達点 (歴史文化ライブラリー 239)江戸城が消えていく―「江戸名所図会」の到達点 (歴史文化ライブラリー 239)感想
江戸の名所案内、古地図を題材に、筆者は「絵」から「図」への進化を説く。扁平だった区画表示が実測に近くなる。江戸の象徴として画面に登場していた城が消え、市井の姿が主役となる。一つの到達点が神田の町名主斎藤長秋・莞斎・月岑の3代が書き、長谷川雪旦・雪堤親子が挿絵を描いた「江戸名所図会」。その分析から「江戸城が消える」というのだがさて? ガイドブック、地誌の類と絵は違うとはいえ、広重の江戸百景には城は登場する。何か筆者の立論に無理がある気がする。古来地図であれガイドであれ、関心のあるものは大きくなるのだから。
読了日:1月27日 著者:千葉正樹
比叡山と高野山 (読みなおす日本史)比叡山と高野山 (読みなおす日本史)感想
最澄の開いた比叡山と空海が開いた高野山。日本を代表する山岳宗教拠点だろう。比叡山寺はその教学の広汎なるが故に、禅、法華、浄土などの諸宗祖を生んだ。一方、高野山寺の方は弘法大師の尊格化と高野聖が全国を行脚することで広めた祖霊信仰の根強さだろう。本書は山の骨格、歴史、そこに残る伝統、文化、美術など拾いまくる。筆者は1916年生まれ、まだ歩いて研究をせざるを得なかった時代の人としての目線の高さが改めて新鮮に映る。叡山の「宗徒:堂衆:山徒」の階級差が野山でも「学侶方:行人方:聖方」の3方となるのも興味深い。
読了日:1月25日 著者:景山春樹
辻調が教えるおいしさの公式 中国料理 (ちくま文庫)辻調が教えるおいしさの公式 中国料理 (ちくま文庫)感想
こちらは一転、中華料理の神髄は下準備にあると説く。下味を付け、粉をはたいて揚げたり、そのまま油通ししたり。炒めるには火の通り加減を適切にする必要があるので、加熱する時間をどう調整するのか、素材に水分をどの程度残すかが肝要であると説く。日本料理編よりはかなり枝葉に及んだ説明ながら、読んでいて違和感はない。もう一手間、の部分を明快に示しているからだろう。缶入りの中華スープの素で何でもごまかしては美味しいものは作れない、というところになるのだろうか。素材への味の含ませ方に腐心があるのがよく分かる1冊です。
読了日:1月22日 著者:
辻調が教えるおいしさの公式 日本料理 (ちくま文庫)辻調が教えるおいしさの公式 日本料理 (ちくま文庫)感想
「割主烹従」という言葉があるそうだ。切っただけという刺身を例に分析をする。単純だから切ることを丹念にせよ、という。きんぴらゴボウでも冷奴でも切ることを疎かにすれば味にも響くのは間違いない。調味料についても興味深い。塩について「非常にストライクゾーンの狭い調味料」、酒は「けちらずたっぷり使うこと」、味噌は「値段の差が出やすい。合わせてつかうこと」が「公式」の例として挙がっているのですが、上手いと思います。レシピの部分よりもその間に挟まっている小文(公式の部分)が小気味いい本です。文字ばかりですが、簡潔。
読了日:1月21日 著者:
ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン (単行本)ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン (単行本)感想
テレビで観ている時はおもしろいな、と思ったのですが、イラスト入りの活字本となると、さてどうなのだろう……、って感じです。説いていることはごく当然至極で、論理的なのですが。
読了日:1月21日 著者:NHK『ロンリのちから』制作班
見果てぬ日本: 司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦見果てぬ日本: 司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦感想
過去に遡るのが大好きな歴史小説家・司馬遼太郎、日常現在を描くのが大好きな映画監督・小津安二郎、未来へと大風呂敷を広げるのが大好きなSF作家・小松左京。筆者がこの3人をして、日本の姿を描いた慧眼に敬服。左翼・ブルジョア民主主義・右翼の3点倒立の妙。小松左京語るに〈日本は失敗者を全否定する。素人には失敗者を叩くのが一番分かりやすい。一方失敗に広い意味で関係する専門家筋は責任の追及を恐れて触らぬ神に祟りなしを決め込む。失敗の内容を細かくつつくような面倒なことを不撓不屈の信念で遂行する気風がこの国にはない〉と。
読了日:1月20日 著者:片山杜秀
されど鉄道文字―駅名標から広がる世界されど鉄道文字―駅名標から広がる世界感想
今のJR系列で使用している字体(フォント)について論じた1冊。ゴチック体の中でも「すみ丸ゴチ」についての論考。元々、駅名表示板や行先表示板は筆文字だったし(変態仮名の中で語頭にくる「し」だけ「志」と表記していたなんて知らなかった)、高度成長期に切り替わって行き、最終的に国鉄分割の後もフォントが生き残ったという経緯を綴る。琺瑯引きの駅名板、機関車の砲金製ナンバープレートなどの話や営団地下鉄時代の字体の話も。面白いネタだけど、何か抄き込みが足りない気もする。あと貨物車に書いてあった隷書体、知らないのかな。
読了日:1月18日 著者:中西あきこ
その後の東国武士団: 源平合戦以後 (歴史文化ライブラリー)その後の東国武士団: 源平合戦以後 (歴史文化ライブラリー)感想
基本的知識が必要な1冊。読み進めるには付箋紙と赤ペンが必要です。地図と系図に紙を貼り、事件に傍線。教科書を読むような加工をすると非常に明解な本になります。前半部分で通史を、後半部分で関八州の国ごとの動向を説いていきます。日本史の教科書では鎌倉・室町の両幕府に焦点が集まり、東国の状況が語られる部分は少ないだけに新鮮です。と同時に新領地の獲得や遠征、縁戚関係の結果として、人間が東に西にと大移動していたことが分かるのが驚きです。現状維持を目指した族は衰亡し、新天地を目指した族が存続する傾向があるのが興味津々。
読了日:1月18日 著者:関幸彦
潜水艦の戦う技術 現代の「海の忍者」――その実際に迫る (サイエンス・アイ新書)潜水艦の戦う技術 現代の「海の忍者」――その実際に迫る (サイエンス・アイ新書)感想
筆者「せとしお」元艦長。普段は情報が開示されることの少ない潜水艦についての基本的な解説本。日本は三菱重工と川崎重工が潜水艦を建造する技術を有しており、日常的な情報収集活動を続けている。一方、現実の問題として潜水艦を利用しての自衛行動というのが想定しにくい気がする。筆者は「日本が海を自由に利用することを邪魔しようとしたり、侵略を企てるものによる海の利用を拒否する役割を果たす」と力説するのだが。なお、潜水隊では今でも攻撃をすることを「襲撃」と称するそう。何か秋山真之の能島流海賊古法の伝統でもあるまいが。
読了日:1月18日 著者:山内敏秀
うらやましい人生うらやましい人生感想
読み終わったものの感想が書きにくい。ご本人が記しているように「クラゲ」のような生き方ゆえ、に。もし読後感というものが砂のようなものなら、指の間から抜け落ちていく感じ。元から普通などということはクラゲのようなもので定まらないものではあるけれど。それと「女装家」という呼び名は人気アイドルグループの不祥事で「メンバー」という肩書きが登場したけど、そんな違和感と当たり障りのなさと。本当は自分という存在が当たり障りないなんてことはないのを一番ご自身が承知しているのに、というか。なお、この本はキンドルで読了。
読了日:1月17日 著者:ミッツ・マングローブ
戦国大名の兵粮事情 (歴史文化ライブラリー)戦国大名の兵粮事情 (歴史文化ライブラリー)感想
ゆるキャラの「かつ江さん」で話題となった鳥取城の飢え殺しではないけど、兵糧=食料と考えがちだ。でも通貨の用途もある。「兵糧」を巡って後北条氏の事例を中心に叙述した1冊。銭と米の換算で当時の経済が成り立っていたことを考えれば、簡便な交易手段であり、運搬に不便だけど必要不可欠な軍需物資とも見られる。貸借や権利の輻輳なども起きる。兵糧を戦国大名が一括管理しようとする計画経済的な発想への発展は興味深い。ただ、惜しむらくは戦国時代の貫高制から江戸期の石高制への移行で、兵糧の概念が変わる姿をもう少し読みたかった。
読了日:1月13日 著者:久保健一郎
そして生活はつづく (文春文庫)そして生活はつづく (文春文庫)感想
これも年末年始のテレビ番組の連想から衝動買い。面白いとの評判だったけど、個人的には酢豆腐状態。星野の言説がきっと面白いと思える年頃があるような気がする。たまたま自分はそれからずれているのだろう。確かに遠藤周作の狐狸庵ものや北杜夫のどくとるマンボウものにうつつを抜かしていた自分を思い返せば、不思議はないのかもしれない。何よりも本書のテーマである「くそして生活はつづく」という現実が堆積してきたのかもしれないが。独特の極端な言い回しについつい「何の何の」と突っ込みたくなって仕方ない。これも年頃なのかもしれない。
読了日:1月9日 著者:星野源
メタモルフォシス (新潮文庫)メタモルフォシス (新潮文庫)感想
個人的に小説は滅多に読まないが、NHKの「SWITCH インタビュー 達人たち」の再放送で筆者とオードリー若林正恭の対談を見て、思いついてポチる。普段は読まない分野なのでどう書いていいのか分からないけど、精緻な叙述なので飛ばし読みができる。2つの顔を持つ男、公私で立場の逆転がある、などの道具立ては、特異で非日常であればあるほど、戯画化しやすい分野なのではないかな。そこから先がどうなの、という部分については個人的には読み込み切れない感じがした。安易な結論に帰着させれば人間の心の闇は深いってことになるのかな。
読了日:1月9日 著者:羽田圭介
鎌倉幕府の滅亡 (歴史文化ライブラリー)鎌倉幕府の滅亡 (歴史文化ライブラリー)感想
「鶏が先か、卵が先か」という警句を思い出す。教科書では暗愚な執権北条高時の出現で鎌倉幕府は崩壊したとされる。だが将軍と御家人が直接結びつく中央集権型の地方政権として頼朝の下で発足した幕府が、執権を頂点とする合議制、家系を重視した得宗専制へと進化する中で全国政権となり、地方分権化を迫られつつ、中央集権化も守るという矛盾をはらむ。家職化した幕府の官僚の活躍でトップは必要ですらなくなる。被支配層の武士が最大の宿痾は幕府組織であると覚醒した時に倒れるのは自明。昨今の「霞ケ関対地方」の論議にもどこか重なって見える。
読了日:1月9日 著者:細川重男
新田一族の中世: 「武家の棟梁」への道 (歴史文化ライブラリー)新田一族の中世: 「武家の棟梁」への道 (歴史文化ライブラリー)感想
源頼朝、足利尊氏、新田義貞。八幡太郎義家を祖先に持つ同族であり、「武家政権が成立した」と京で関東で全国津々浦々で認知されるためには武力を以て「清和源氏の棟梁」となる必要があった。征伐をしないと認められない。そのために足利氏には新田氏が必要であり、徳川氏が系図を乗っ取って新田氏を祖先に仕立て武威を示したのもこの構図による。だが新田一族の実像は如何だったのか、史実と物語の間を読み込んだ1冊。正史に準ずる扱いの太平記にどう描かせるか、当事者には問題になる訳で、出来事の点綴では見えない世界を立体視させてくれる。
読了日:1月4日 著者:田中大喜
弊風一斑 蓄妾の実例 (現代教養文庫)弊風一斑 蓄妾の実例 (現代教養文庫)感想
黒岩涙香は土佐国安芸郡川北村前島の人。蓄妾は男(女も)の甲斐性という社会通念の時代に、一夫一婦制を宣揚しようと、妾を囲っている者を暴露していく。町の商人から貴族院議員まで。俎上には北里繁三郎、犬養毅といった面々も。個人情報とかプライバシーとかいう以前の時代。後のモンティパイソンを連想させるような。逆に何で書いてくれぬという者もいたというから、蓄妾も栄典のうち、という意識だったか。ただ救いようがなく読めたのは池上本門寺関係の記事。女犯と横領と。本当なら本当に筆誅に値するのかも。紙一重ですね、この手の問題は。
読了日:1月1日 著者:黒岩涙香

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posted by 曲月斎 at 13:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする