2015年10月01日

☆2015年9月に読んだ本。

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:7167ページ
ナイス数:759ナイス

番線―本にまつわるエトセトラ (ウンポコ・エッセイ・コミックス)番線―本にまつわるエトセトラ (ウンポコ・エッセイ・コミックス)感想
Twitterで本屋さんの陳列関連のつぶやきを見つけ、「番線印」という言葉を知り、画像検索を掛けたらこの本が登場。コミックエッセイという形式でしかできない芸かもしれません(写真にしたら本の単価はいくらになることか)。本への愛に充ち満ちています。国立国会図書館のルポ、写植の話などなど。「1日の終わり ふとんの中で読む本は格別です」という書き出しの「おやすみ本」の章や「本棚戦線異状なし」の章など、身につまされるばかり。ということで、この本はキンドルで済ませたので本棚に負荷をかけることないのが吉だったか。
読了日:9月29日 著者:久世番子
近世の仏教―華ひらく思想と文化 (歴史文化ライブラリー)近世の仏教―華ひらく思想と文化 (歴史文化ライブラリー)感想
近世の宗教というより、日本人の宗教観についてまとめた1冊と受け止めたい。GODのいる世界は人間の世界と絶対神だけで中間はない。無神論の世界になると神が消える。対して日本は人間の世界の「顕」とそれ以外の「冥(みょう)」があってそこには神も仏も死後の世界も住まっていると考え、その遙か彼方に無の世界があると見立てる。柳田国男のいう年数が経てば祖霊も神になるという論で分かるか。また江戸幕府が長きに渡って葬送儀礼を仏教に限ったことが日本の仏教の変質に寄与したという指摘、その反動の平田神道の出現と構図が分かりやすい。
読了日:9月28日 著者:末木文美士
日本風景論 新装版 (講談社学術文庫)日本風景論 新装版 (講談社学術文庫)感想
明治27年、日清戦争の頃に刊行された本。というよりも個人的には講談社学術文庫が刊行され始めて間がなく上下2冊で出た本の再刊で、たぶん高校1年の時に読んで以来の再読になります。明治時代の青年を啓発すること多、であったらしい。当時、有隣堂本店は中2階(いまの2階)に機関紙「有隣」の編集部があって、そこで顔見知りになったK川さんという大学の先生にあれこれと教示してもらった思い出につながる1冊です。「日本風景論、ああ、志賀重昂ね」と即座に返答された。たぶん、明治生まれの方だったと思うけど。内容は特に記すことなし。
読了日:9月28日 著者:志賀重昂
大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実 (講談社選書メチエ)大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実 (講談社選書メチエ)感想
江戸期の商業を探る1冊。長期に亘る史料が残っていることから三井文庫中心の叙述が多い一方で、町方の残した「小間付」や「沽券帳」、天保の改革後、株仲間復活に際しての「諸問屋名前帳」等々のデータを元に実態を推計する。「狭いけど深いケーススタディより浅いけど広い数量分析」が合言葉である。ただ土台にした「江戸商家・商人名データ総覧」の実像が分からず、表計算ソフトの結果を次々と挙例していくような書きぶり。躍動感と同時に少々荒っぽさを感じる。そも史料が残っていない期間をどう見るか。隙間を埋めるだけのものだったか……。
読了日:9月25日 著者:山室恭子
九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史 (角川選書)九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史 (角川選書)感想
実物を見たことがない読者に、絵のことを書いて想像してくれ、というところが難しい。九相図というのは人間が死んで腐敗し、白骨が散乱するまでの様を描いた図絵で、人間は不浄のものであり、美人も一皮むけば白骨に過ぎない、という無常観を画像化したもの。今の時代だから、本で印刷写真製版するのは難しいにせよ、Web上で絵を見られるような仕掛けがあれば良かったかな。それと、無常の諦念と大上段に振りかぶっているけど、こりゃ落語の「野ざらし」の世界でもある訳で堅苦しくなりすぎな気も。「野を肥やす骨を形見に芒哉」と手向けて。
読了日:9月25日 著者:山本聡美
自然災害と民俗自然災害と民俗感想
気象衛星も近代的な水防施設もなかった時代。島国で荒ぶる自然に向き合ってきたのは、今も昔も同じ。どう被害を最小限にしてきたのか。例えば農地を拡大するにも、防砂と津波の被害を意図して、松林や照葉樹林を活かしたり(静岡・浜岡)、堤防内の滞水を防ぐために敢えて本流沿いに堤防を築かない京都・木津川の例など示唆に富む。「蛇(じゃ)」という地名が土砂災害の地域に残るとの指摘があるけど、確かに深層崩壊を起こした様態は「大蛇が抜けた」ようだ。同じ造林でも尾根筋に照葉樹(シイ、カシなど)を残す知恵は今も残っているだろうか。
読了日:9月24日 著者:野本寛一
川を巡る―「河川塾」講演録―川を巡る―「河川塾」講演録―感想
旧建設省と旧文部省が所管した財団法人建設技術研究所から、1963年に分離された(株)建設技術研究所が会社創立50周年を記念して発行した「説明本」というところか。国内の1級河川(国が所管)と主な河川を概説したもの。都道府県界を跨がって流れるのが川であるのに対し、章立ては都道府県別。あくまでも行政単位からの視点に立っての構成なので、不自然なところも出てくる。とはいえ、「日本海側の河川は河口に砂丘を作る」とか「東西に流れる川で文化を興したのは中国の黄河・長江以外にない」とか、独特の語りがあるのはいいのだけど。
読了日:9月23日 著者:宮村忠
新宿二丁目の文化人類学: ゲイ・コミュニティから都市をまなざす新宿二丁目の文化人類学: ゲイ・コミュニティから都市をまなざす感想
「性欲の研究 東京のエロ地理」(井上章一ほか)に詳しい内容だが、「2丁目」という土地の重ねてきた歴史(江戸時代の内藤新宿以来の)がゲイのコミュニティを生んだ背景にある。新宿という街の「エッジ」で「ディストリクト」なのだ。筆者がこの博士論文を執筆した2008年以降でも、ゲイの置かれている立場が変わった部分、変わらない部分がある。周囲の建前論とその一方に今も「クローゼット」な部分はあるし、東京メトロ副都心線の開業に伴う土地利用の変化など都市計画的な外的要因もある。ゲイにとっての「アジール」の記録といえる。
読了日:9月22日 著者:砂川秀樹
世界の辺境とハードボイルド室町時代世界の辺境とハードボイルド室町時代感想
数年来随一の本。「探検家・作家」でエンタメノンフの旗手・高野と日本中世民衆史研究者の清水が自在に語り合う。ここまで見事に2人の興味を噛み合わせることを思いついた集英社の編集者に拍手。きっかけはツイッターだそうだ。両者の本の愛読者にはソマリアと室町時代の日本がつながるという感覚は「天晴れ」というしかない。1冊の本を読んだだけでは断片的だった興味がここで体系付けされるというか、金胎両曼荼羅の関係のように収斂しまた発散していく。学問的な興味のみならず、ものを考える、書くという作業の話も興味深い。装丁は山口晃。
読了日:9月21日 著者:高野秀行,清水克行
坊さん、父になる。坊さん、父になる。感想
四国札所58番栄福寺住職、38歳時点の3冊目の本。処女作が住職になるまでなら、この本では住まいを建て、結婚し、子を授かるという過程が題材。読者には見せなかった自画像もみえる。ただ読者は「筆者が僧侶」というだけなら3冊も読む興味は続くまい。でも面白い。謎は日本中世史学者の清水克行が夏目房之介に言われたという言葉で解けた気がする。「ものを書いて生きていくには自分の中に特殊な核となるものがないと食べていけない」と。ミッセイさんにとって「自分の核」は密教であり、空海であり、仏教であり、信仰のありようなのだと。
読了日:9月20日 著者:白川密成
恋するソマリア恋するソマリア感想
人間集団を形作る内面的要素は「言語・料理・音楽(踊りを含む)」ーーという「高野の推論」を証明していく1冊。前著を承け、前半は北部ソマリランドを舞台に、氏族社会の機序、食生活、そして詩の朗唱に起源を持つと推定する歌を説く。後半は南部ソマリアでイスラム過激派と戦闘まだやまぬ中、中東とアフリカの文化の接点を見、イスラム教と都市化、豊かになることへの疑問を浮かべる。筆者の視点は、体験したことを必ず自分の頭の中で位置づけし直すところが上手い。司馬遼太郎の「人間の集団について」や開高健の著作をどこか連想させる1冊。
読了日:9月19日 著者:高野秀行
放送禁止歌 (知恵の森文庫)放送禁止歌 (知恵の森文庫)感想
放送禁止歌という「自主規制」を追ったドキュメンタリー番組の活字版。この一括りの言葉の中には実は、猥褻、公序良俗に反すると判断されたものあり、ポリティカルコレクトの考えを当てはめたものあり、「竹田の子守唄」「手紙」「赤いアップリケ」のような背景を忖度して姿を消したものあり。本は最後の一項を追って進む。全ては自身の意思、判断に戻り、無思考・脊髄反射的な反応を繰り返していてはいけないということ。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という水平社宣言。「にんげん」という読み以外に「ジンカン」という読みもあるよし。
読了日:9月18日 著者:森達也
男の絆の比較文化史――桜と少年 (岩波現代全書)男の絆の比較文化史――桜と少年 (岩波現代全書)感想
T・マンの「ヴェニスに死す」、夏目漱石の「坊ちゃん」、三島由紀夫の「仮面の告白」から萩尾望都の「風と木の詩」まで、比較文学という学問の手法を使って、日本の「男の絆」という言葉の分析をする。とはいえ印象批評の域を出ない感じ。まず「桜」と「美少年」というイメージが中世の稚児物語に起源を持つという説は断定の材料が十分提示されていない。「男の絆」という言葉は少年愛に源を持つ「男色」と男性間の感情としての「ホモセクシャリティ」に因数分解できるという見立ては興味深いが。特に少女漫画、BL小説に関する最終章が駆け足。
読了日:9月14日 著者:佐伯順子
ゲイ性愛辞典 GAY SEXUAL LOVE DICTIONARY (もう一つの文化を知るバイブル)ゲイ性愛辞典 GAY SEXUAL LOVE DICTIONARY (もう一つの文化を知るバイブル)感想
研究社の「アメリカ俗語辞典」かつてあり。その四つ文字の豊富なること、圧巻でありました。本書はそのゲイ版。こういう辞典が編まれること自体、時代の変化を感じるし、多彩な語彙を誇っているのがすごいというか。辞典類は高島俊夫センセは「工具書」というと書いていますが、工具書好きとしてはつい買ってしまいました。はしがきに曰く「この辞典は多くの文献からの引用で成り立っている。引用した文献、参考とした資料には心より謝意を表する。この辞典から引用する際は『ゲイ性愛の辞典』である旨、明記していただきたい」。意気やよし。
読了日:9月13日 著者:いけだまこと
知って役立つ民俗学 現代社会への40の扉知って役立つ民俗学 現代社会への40の扉感想
この本の種明かしは最終章、筆者自身の文にある。庶民の生活を調査研究することで、その意味するところを探り出そうとするのが20世紀の民俗学だった。今は地方の人口減少、地域社会の崩壊が深刻化する一方で、都市に集積した人々の行動様式についての考察は京都、江戸を除き、少ない。何とか身近なテーマとして取り上げようというのがこの1冊。「出る杭は打たれ」「贈答の習慣」は続く。身内が減る中、どう生きるか。考え始めるきっかけをこの本は作ってくれる。できれば、社会人1年の新卒の人々に読んで欲しい気がした。特に公務員ならば。
読了日:9月13日 著者:福田アジオ
弔いの文化史 - 日本人の鎮魂の形 (中公新書)弔いの文化史 - 日本人の鎮魂の形 (中公新書)感想
随筆なのか、論文なのか。一般の読者に分かりやすい形で学問の最先端を提示するのがこの手の新書ではないかと思います。この本は随筆寄り。筆者は東北大で学びを始め、長年、日本の宗教に関わる民俗学に関わってきた碩学。だから、鴨長明から折口信夫、柳田国男、南方熊楠に飛び、イタコから巫女、殯(もがり)の話と自由自在に移り動いても自在なのかもしれないのですが、ちょっと読者はついていくのが大変かも知れません。
読了日:9月9日 著者:川村邦光
カレーライスと日本人 (講談社学術文庫)カレーライスと日本人 (講談社学術文庫)感想
1989年、講談社現代新書の補筆再刊。筆者はカレーの淵源を尋ねて、インド亜大陸に赴き、大英図書館で史料を博索し、カレー粉製造の元祖と言われる「C&B社」で調査を重ねる。インドではスパイスを入れた料理がカレーであり、英国では日曜に焼いたローストビーフの残り肉を食べるシチュー風のものがカレーであるという結論に至る。さて日本では。魚柄仁之助が見立てたように「インド風+英国風」に日本伝来の「あんかけ」が重なったのではないか、というのが当たっている気がする。確かにカレー粉がなければ「カレー味」の食品は成立しないし。
読了日:9月9日 著者:森枝卓士
食べかた上手だった日本人――よみがえる昭和モダン時代の知恵 (岩波現代文庫)食べかた上手だった日本人――よみがえる昭和モダン時代の知恵 (岩波現代文庫)感想
2008年の本の再刊。昭和10年代に日本の料理に変革が起きた。原因は戦役など外地との交流で中華料理などを覚えた人が増えたこと、熱源がガスに変わったこと、欧風料理を換骨奪胎する技術の確立。電気冷蔵庫の存在と物流の点で、食品を保存する技術が一般的だったこと。漬ける、干す、燻す等々、加工して保存。今の人間にこの手間がかける時間が欲しい気も。電気冷蔵庫の普及が人間の感覚を鈍磨させているのか。氷冷蔵庫は夏だけ使うものとは知らなかった。賞味期限も含め、表示ではなく自分の舌と感覚で。とまれ、当時のレシピは美味そうな。
読了日:9月8日 著者:魚柄仁之助
二〇世紀の歴史 (岩波新書)二〇世紀の歴史 (岩波新書)感想
日清、日露の戦役から盧溝橋事件に至るまでの本を読み進める中で、実はあそこで起きていたことは辺境で起きていた植民地の獲得競争であることが改めて分かる。本書では定点ポイントとしてアイルランド、南ア、琉球の3カ所の動きを綴っているけど、それが効いている。戦いのベクトルは18世紀は内向きに、19世紀は外向きに働き、アフリカ、中東での戦いに広がる。極東のある国の動きもそれに乗ったもので、距離感故に、手出しがなかったり、融和策だったり。権力のエアポケットが生まれた。実は今もきちんと精算できていないのかもしれない。
読了日:9月7日 著者:木畑洋一
戦国乱世から太平の世へ〈シリーズ 日本近世史 1〉 (岩波新書)戦国乱世から太平の世へ〈シリーズ 日本近世史 1〉 (岩波新書)感想
前半は「信長の野望」を活字化したような展開。ただ「天下」という概念や「惣無事令」の意味が教科書で習った頃よりかなり限定的な概念であったという読みの面白さから始まって、文禄・慶長の役の捉え方(これだけやれば戦場にされた国は恨みを残すし、冊封制との関連は後の日清日露戦争前夜を連想させる)とか、幕藩体制の確立とか、一朝にして成立した訳ではないのが詳述されています。中世は太閤検地により終了したように認識していたけど、実はもう少し時代が下がったところかも、と考えたくなりました。時代の感覚を掴むにはいい本です。
読了日:9月6日 著者:藤井讓治
日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。感想
この本を読んで分かったこと。宮田珠己さんは男前であるということ。口絵写真に登場するし、筆者近影が奥付の向かいにでていたのがステキであった。何か肌合いが違うと思って読んだのだけど、あとがきで謎が解けた。従来の本は筆者が行きたいところにいく企画を立てて出掛けていっていたのに対し、この本は編集部が行きませんかという企画を立てたところにのった、という仕掛け。元は裏千家系出版社の淡交社「なごみ」に連載されたものらしい。同じ仕掛けで山口晃&藤森照信の「日本建築集中講義」があるけど、何か「パッション」が違う感じ。
読了日:9月5日 著者:宮田珠己
四國遍禮道指南 全訳注 (講談社学術文庫)四國遍禮道指南 全訳注 (講談社学術文庫)感想
今、ツアーではなく個人で四国霊場を廻っている遍路はたいてい手にしているのは「四国遍路ひとり歩き同行二人地図編」という本です。地図のほかに、宿泊施設、距離が一覧できるので手放せない1冊です。2015年4月にこの本の第10版が刊行されましたが、たぶん、江戸時代のこの本もそういう意図を持って版行されたものでしょう。翻刻した原文、現代語訳、地図という構成になっています。地元に住んでいると改めて思うのは高知県東部は昔も今もそう変わっていないなぁと思うばかり。今でも辺地行道なのです。
読了日:9月4日 著者:眞念
日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))感想
1903〜1904年の日露戦争を中心に前後100年間を概観した本で「キメラ−満洲国の肖像」の著者。本は2005年刊。その後に旧ロシア、旧ソ連の史料の発掘など研究の進展があった分、10年間の時の流れを感じさせる部分もあるものの、日露戦争に至るまでの視点、出来事を概括的に見るには好個の1冊。「ハルビン駅へ」の指摘や「李鴻章」などの指摘と考え合わせると面白い。特に戦争後の「アジアの解放者」「文明化の示範」であったはずの日本が「欧米と共に侵略者」に変わっていく様や、非戦論、文化的波及などへの言及は興味深い。
読了日:9月3日 著者:山室信一
ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)感想
「戦争が廊下の奥に立つてゐた」とは渡辺白泉の句。異常事態が起こったと認識される以前に小さな「歪み」が積み重なっていた、ということが分かる1冊。1兵卒が戦争と虐殺を指導するまでの過程を探る。部品を組み立てるように話は進む。ナチ入党、議席確保、大統領緊急令を利用しての政敵の拘束、授権法によるワイマール憲法の実質的な改正。職業官吏再建法による人種差別、安楽死政策に始まる人種的優生主義……。絶滅収容所に至るまでの道は実は長い。責任の所在が分からないままになる日本と機構が複雑過ぎて独裁がまかり通るドイツの怖さと。
読了日:9月3日 著者:石田勇治
李鴻章――東アジアの近代 (岩波新書)李鴻章――東アジアの近代 (岩波新書)感想
今も世界一の人口の中国。対外貿易活動をすると、挙措が巨体なるが故に影響は波及する。乾隆帝の世の入超から収支改善を計る列強の介入を招き、その世に登場したのが主人公。銀地金、銅貨を流通させる政権では生産・経済政策は民間の「幇・会・団」と呼ばれる組織が支え、武力は地方の私兵に頼る形。主人公か科挙及第者ながら地方官として私兵・淮軍を率い、上海を押さえて西欧と直面、外交の表舞台に立つことになる。朝貢関係こそ安全保障と考えた旧制の中で、満州人が漢民族を治めるという統治体制の矛盾を糊塗弥縫したと見立てるのが新鮮。
読了日:9月1日 著者:岡本隆司

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posted by 曲月斎 at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする