2015年07月01日

★2015年6月に読んだ本。

2015年6月の読書メーター
読んだ本の数:28冊
読んだページ数:7777ページ
ナイス数:684ナイス

人物で語る数学入門 (岩波新書)人物で語る数学入門 (岩波新書)感想
高校時代、三角、微積、数列、行列式と続いた辺りで挫折した記憶の下、この本を読み始め、頭から読解は無理と判断。ただ、古代ギリシアでピタゴラスやユークリッドに始まった数学は、16世紀のデカルト、17世紀のフェルマ、デカルト、ライップニッツ、18世紀のオイラー、18世紀のガウスと才能と好奇心を繫ぐように発展したことだけは分かった。さらに特に中世の数学者の多くは大学では哲学や法律学、神学などを修めた訳で、高校時代の恩師に「数学は理解することではなく、考え方を学ぶことが大事なのだ」と後にいわれたことを思い出した。
読了日:6月30日 著者:高瀬正仁
時代を刻んだ貌―田沼武能写真集時代を刻んだ貌―田沼武能写真集感想
金高堂本店で見付けた。人物写真というのは難しい。表情、構図、カメラのレンズと被写体との間の空気も写る。言動や言葉が写真から聞こえてくるような1枚が続いている。背景の絞り込み加減まで緻密に神経が行き届く。更に編集も見事だ。1人1ページ、志賀直哉〜永井荷風〜谷崎潤一郎〜佐藤春夫〜里見クと続く。ページをめくるのが本当に楽しくなる。向かい合わせに載っている三島由紀夫と石原慎太郎。被写体が本の中で語り合っている如く。中でも向坂逸郎と吉田健一。見事だ。写真家という職業に就いて人生が豊かになったと結ぶ氏。続編に期待。
読了日:6月28日 著者:田沼武能
きのう何食べた?(10) (モーニング KC)きのう何食べた?(10) (モーニング KC)感想
月1度のペースで連載して単行本はほぼ年に1回。そのペースに乗って主人公のシロさんとケンジというカップルの生活は少しずつ変わっていく。親の老い、勤め先での立場や役割分担の変化、そして何より自身の身体。そのわずかな変化を1話に仕立て上げていく上手さ。同時に生活のリズムを自然に見せていくのが料理。季節の移ろいと共に取り上げられるメニューが変わり、1年が過ぎていく。時の流れを読む愉悦というべきか。日々の生活で節目になるのが2人の食事。相変わらず段取り、手際の良さには感服するばかり。食べることって大事だな、と思う。
読了日:6月27日 著者:よしながふみ
へうげもの(20) (モーニング KC)へうげもの(20) (モーニング KC)感想
BSマンガ夜話で取り上げられたのがきっかけで読み始めたこのマンガも早20巻。この巻では大久保長安、高山右近が舞台から退場し、古田織部の身辺は本当に寂しくなってきた。登場人物が円熟してくるにつれて、筆致も内容も一緒に成熟している気がする。もうすぐ大阪冬の陣。最期の時が近づいている。
読了日:6月26日 著者:山田芳裕
世論調査とは何だろうか (岩波新書)世論調査とは何だろうか (岩波新書)感想
筆者はNHK放送文化研究所世論調査部副部長。世論調査とは何かを易しく解説した本。統計の専門的な知見や論理、解析が大きな比重を占める分野だが、報道記者から現職に移って「参与観察」したルポである。週刊こどもニュースの3代目おとうさんの面目躍如。調査の意味、起源から方法、調査の実態、将来の姿まで縦覧する。偏差、調査の母数、無作為抽出、RDD等々用語説明も明解。就中重要な部分は分析の手法。常に調査には誤差があり、調査者のバイアスが掛かる、ビッグデータの読み誤りがあるという謙虚さを強調する姿勢は筆者ならではの視点。
読了日:6月26日 著者:岩本裕
選書日本中世史 2 自由にしてケシカラン人々の世紀 (講談社選書メチエ)選書日本中世史 2 自由にしてケシカラン人々の世紀 (講談社選書メチエ)感想
所謂、南北朝から室町時代という区分に関しての本。摘まみ食い感はあるけど、先行研究を紹介していく。例えば日本の「公」という言葉は「小宅(おやけ)」に対しての「大宅(おおやけ)」という概念から生まれたと説いたり、太平記を土台に「公」と普通の人の関係が変動した時期を分析したり。中で京都で起こった飢饉が流通システムの破綻に起因するものから、流入人口増で供給が間に合わなくなった原因に分かれるとか、尊氏が見物した田楽と義満が見物した猿楽での観客の差とか。ある意味で旧世代と新世代の確執が時世を動かすのかもしれない。
読了日:6月26日 著者:東島誠
昭和陸軍全史 3 太平洋戦争 (講談社現代新書)昭和陸軍全史 3 太平洋戦争 (講談社現代新書)感想
日米開戦について「中国市場の争奪戦というより、英国とその植民地の帰趨を巡って始まった」と説く。この巻での視座は、日米開戦当時の武藤章陸軍省軍務局長と田中新一参謀本部作戦部長の2人。知性があり、適切な判断をする時もあれば、居丈高になって決断を誤る時もあり。満州事変以降、同じ人間が、時間軸の中で揺れるのが不思議。ただ日、中、独伊、ソ、米英と各々思惑があり、力関係があり、状況判断がある。一局面を見て結論は出せない。日本の力の実態を把握すれば、誰も米国相手の戦いに勝機を見いだせていなかったことは確かに明白だが。
読了日:6月26日 著者:川田稔
草原からの使者―沙高樓綺譚 (文春文庫)草原からの使者―沙高樓綺譚 (文春文庫)感想
先ず以て有川浩の解説が秀逸!! 下ネタは作家にとって禁じ手なのだけど、書き手によってはファンタジーとして成立しうると説く。確かに最後の1篇「星条旗よ永遠なれ」は男性が「打ち止め」になると旗が飛び出すという逸話だ。米退役軍人と日本人妻の人情話に仕立てているのが何ともすごい。表題作「草原からの使者」は浅田にとっては自家薬籠中、お手のものの話だ。ただ当時の競馬場で特券を大量に刷り出す話や、「星条旗〜」で「米国では隠居ができない」という主人公のつぶやきなど、洒落た警句に満ちているのが、この人ならでは。続編を期待。
読了日:6月23日 著者:浅田次郎
選書日本中世史 1 武力による政治の誕生 (講談社選書メチエ)選書日本中世史 1 武力による政治の誕生 (講談社選書メチエ)感想
中世日本の枠組みを考える上で黒田俊雄が提唱した「権門体制論」は斯界で支持されているそうだ。だが筆者は異議を唱える。単純化すると、天皇であれ、寺社であれ、武力の前には無力なのだと。論証のために手紙(綸旨、御教書、直状等々)の遣り取りを追跡したり、「取次」等の役職(中枢と地方を繋ぐ役目)の人物を詮索したり。実証的で説得力があります。また戦前の皇国史観の影響を清算しきっていない、という指摘は興味深い。唯物史観でも尚武の気風は続き、網野善彦の出現が別の時流を形成したという。社会科学の学徒たらんとする筆者に拍手。
読了日:6月22日 著者:本郷和人
選書日本中世史 3 将軍権力の発見 (講談社選書メチエ)選書日本中世史 3 将軍権力の発見 (講談社選書メチエ)感想
日本史の教科書ではさらりと済ます南北朝時代。混乱の極みでした。兄弟で足利政権を作ったかと思えば離反して南朝に合流したり、北朝の血統が絶えかかったり。武力による政権は源頼朝(或いは平清盛)以降に成立したとされつつも、「太政官符」「官宣旨」といった朝廷由来の文書の効力が有効だったことから権力構造の複雑さを読み解きます。南都北嶺といった宗門勢力もいる。最初は為す術なかった武家政権も3代義満の後半になって武力鎮圧という手を発見するまでの話です。最終章の「公家と武家」を最初に読むとよろしい。ま、古文書の鬼の本。
読了日:6月20日 著者:本郷恵子
ナチスの財宝 (講談社現代新書)ナチスの財宝 (講談社現代新書)感想
ルポは新聞記者にとって入門編です。藝として確立するのは難しい。あったこと、見たことをそのままに書いていては成立しないから。その点、この本は至芸の一つかもしれない。旧ソ連レニングラードの宮殿にあったモザイク画が旧独軍に略奪され、戦後摘発されることから話が始まります。琥珀の間の財宝の追跡がナチスの残党が南米に逃れた話に転じ、ロンメル将軍の財宝(山下将軍の財宝の話に似てます)になり、最後はヒトラーの美術館建設の野望まで一気に進んでいきます。昨今評判のフェルメールもその中の1枚。確かに戦後ドイツの裏面史です。
読了日:6月20日 著者:篠田航一
ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫)ぼくらの近代建築デラックス! (文春文庫)感想
共同筆者の門田慶喜曰く「建築は建築家だけではなく施主、大工、政治家、華族、軍人、小説家……。建物の周りには様々な人がいる。逸話と物語の宝庫。自動車評論家の徳大寺有恒が言うように『車の楽しみは結局は人間の楽しみ』」と。そこに尽きる。辰野金吾の3大万歳、大阪で活躍した渡辺節、宮廷建築に活路を見出した片山東熊、妖怪の主伊藤忠太、傍流の王妻木頼黄などなど草創期のメンバーから多くの職人上がりの建築家まで。2人の談論風発つきることなく楽しい。嘗ての藤森照信の「建築探偵シリーズ」に続く文脈。2人の異能の作家に拍手。
読了日:6月19日 著者:万城目学,門井慶喜
幕末から維新へ〈シリーズ 日本近世史 5〉 (岩波新書)幕末から維新へ〈シリーズ 日本近世史 5〉 (岩波新書)感想
教科書の日本史とはひと味違う立体感が楽しい本。11代将軍家斉の時代から話は始まる。16人の妻妾から男児26人・女児27人を作ったこの方は寛政の改革の一方、財政的な窮乏と権威低下を招く。川越藩、庄内藩、長岡藩を同時に転封する三方領地替えは継嗣家慶が取り消さざるを得なくなり、天保の改革も失敗。ナポレオン戦争や毛皮用のラッコ猟で北辺に外国船が近づく。金と力がない中で頼った天皇の権威にいつか将軍家側も振り回されるようになる。国内と国外、江戸と京都、地方。学問の進捗と貨幣経済等々。同時代を輪切りにしてみせる愉悦。
読了日:6月17日 著者:藤田覚
しをんのしおり (新潮文庫)しをんのしおり (新潮文庫)感想
2005年刊。弟や友人との日常生活の中で妄想を膨らませ、文字化していく。明晰な文章であるにも関わらず、自由奔放な乙女の心は追いかけるのが大変だ。ただ時に見せる才が恐ろしい。古今集の凡河内躬恒の口語訳(乙女訳というべきか)は見事だし、BUCK-TICKの追っかけをし、宝塚歌劇に心を躍らせる姿にはまた掬すべきものがある。これらの随筆(というか雑文の分類という方がふさわしい)は筆者の「小説」という創作活動の余技という範疇ではなく、大いなるジャンピングボードになっているのが分かる気がする。文の落差がすごい。
読了日:6月16日 著者:三浦しをん
日本の名作住宅の間取り図鑑 (エクスナレッジムック)日本の名作住宅の間取り図鑑 (エクスナレッジムック)感想
一般庶民の家は別としても、家というものが常に「来客」を想定して作られてきた歴史と読み解けると思います。客と家人の動線を別にするために「中廊下」ができたり、「表」と「奥」の区別や、店と奥の別であったり。便所が2カ所になったり、洋館風の建物がくっついたり。ただ時代が下がると、家の敷地としての広さを確保することが難しくなること、家族の単位が核家族化することなどから、家がプライベート空間としての意味が強くなっていく過程が見えます。この本は江戸〜昭和の住宅を取り上げているのが一種の生活史となっています。
読了日:6月15日 著者:大井隆弘
空海はいかにして空海となったか (角川選書)空海はいかにして空海となったか (角川選書)感想
正直に言います。すこぶる学術的でありまして、広汎な史料を博索して、そのわずかな断片から佐伯真魚から空海へと変身していく過程を探ろうとしているのですが、いささかに全体像が見えにくい。個別の挙証がどう本体に繋がっていくのか、博学の士には何も苦にならないのであろうと拝察しますが、ちょっと選書という形態では難解に過ぎる気がしています。行間から実に篤学の士である様子は伝わってくるのですが。
読了日:6月13日 著者:武内孝善
道路の日本史 - 古代駅路から高速道路へ (中公新書 2321)道路の日本史 - 古代駅路から高速道路へ (中公新書 2321)感想
筆者は1925年生の元建設官僚。日本道路公団などを経て関連法人の道路歴史研究所理事長。古代の駅制に始まる道の概念と現代の高速道網の発想が近いとか、移動手段が古代の馬から近世の徒歩に変わると道も姿を変えたという指摘や、名神高速を開通させる際に世界銀行から招いたワトキンス、道路計画のドルシュ、土質・舗装のソンデレガーという「お雇い外国人」の教えを受けた世代である筆者の感慨は興味深い。また国交省、農水省、各地方自治体と管理主体がばらばらな道の規定を一元化する「道路総合法」の制定提唱は正論だけど実現するかな。
読了日:6月12日 著者:武部健一
桃色トワイライト (新潮文庫)桃色トワイライト (新潮文庫)感想
大河ドラマの「新撰組」が登場しているから、2004年ごろの連載なのだろうか。掲載誌は分からないけど。この方の随筆はすこぶる楽しいので手を伸ばしたけど、本書では筆者のスピード感について行けなかった。ニヤッとしている間に対象物は遠くに走り去っているような感じ。残るは真抜けた己が顔ということになる。このスピード感(というかものを事柄を省いていく感覚)について行ける人にはおもしろいし、共感できる1冊なのだろうけど。「爆笑の大人気エッセイシリーズ」という売り文句に取り残された自分が……。
読了日:6月11日 著者:三浦しをん
日本木造遺産 千年の建築を旅する日本木造遺産 千年の建築を旅する感想
これも木造建築か、と思う。就中佳いのが、菅の舟頭小屋。のべ床面積約1坪。畳1畳と土間。生活ができるのだ。川崎の日本民家園にあるらしい。福井・大瀧神社、岩国・錦帯橋等々、写真に惹かれて買った1冊。藤塚光政の写真がいい。で、巻頭を飾るのが播州小野の浄土寺浄土堂。実に素敵な堂内なのだが今は撮影禁止なのだそうだ。昔の写真を所収しているけど、それがまたいい。空撮(たぶんドローン)写真があるのだけど、氏のこの写真の類の方はまだ練度が低い気もする。藤森照信センセイの説明文、腰原幹雄氏による構造説明と、行き届いた1冊。
読了日:6月11日 著者:藤森照信
小説を、映画を、鉄道が走る (集英社文庫)小説を、映画を、鉄道が走る (集英社文庫)感想
連想に任せて、鉄道が出てくる映画、小説を綴っていく。随筆だから仕方ないけど、読み進めると発想について行くのにちょっと疲れる。でも映画「張込み」、小説「オリンピックの身代金」の夜行列車、林芙美子の「房州白浜海岸」、吉村昭の「東京の戦争」などを含む一篇は心に残る。映画に当時の風景が残っていることの意味を説かれて成程と。「砂の器」再読したくなった。個人的に印象的だったのは旧制一高時代の芥川龍之介が外房での海水浴について書いた一文。「海水浴と云うのは名ばかりで実は波にぶんなぐられにはいるのだから堪りません」
読了日:6月11日 著者:川本三郎
ハルビン駅へ 日露中・交錯するロシア満洲の近代史ハルビン駅へ 日露中・交錯するロシア満洲の近代史感想
ロシアの根底に流れる汎スラブ主義。欧州からアジアまで制覇するのが歴史的使命感と遅れてきた帝国主義国としての現実。東清鉄道を創設し、資金的な裏付けを担った露清銀行を設立して話が始まる。中心がハルビンという新しい町。鉄道が荒蕪の地を開発の拠点に変えた。利権が生まれればロシアの大蔵省と外務省、陸軍省との主導権争いが生まれる。軍人、旧教徒やユダヤ人の入植、満州の大豆輸出が経済活動を生み、日清、日露の戦争を経る間に力関係が変わっていく。ユーラシア大陸の西から満州、朝鮮を観るを視点が新鮮。結論を先に読む方が楽かも。
読了日:6月9日 著者:ディビッド・ウルフ
メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)感想
わずか1年余ほど前の本だけど、中身の一部はもう古くなっている気がする。活字媒体というか、テレビというか、既存のメディアのありようというのはいよいよ分からなくなっている気がする。そして重心が偏った時にどうするのか……。
読了日:6月6日 著者:長澤秀行
侍従長の回想 (講談社学術文庫)侍従長の回想 (講談社学術文庫)感想
元・中公文庫所収。1944年8月から1946年5月まで、侍従長として昭和天皇に仕えた人の随筆。1次史料として読む場合には注意が要る。第1に旧海軍出身であること。畢竟旧陸軍系統の人物評は辛口になる。第2自身の見聞を見極めること。8月15日の記述、朝日新聞を引用している。多分、二重橋前の光景を見ていない。ともあれ動乱の時期に日本の中枢にいた者が記憶を基に綴った文という点で値打ちがある。映画「日本のいちばん長い日」の描写に色濃く反映している。また、学術文庫版の価値は保阪正康の解説の部分。先に読んだ方がいい。
読了日:6月6日 著者:藤田尚徳
満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)感想
加藤陽子は分かりやすい本を書く人ですが、この本の内容を平明にするためには3分冊くらいにしないと無理です。読者は観覧車に乗ったつもりが、昨今流行のジェットコースターに乗せられていたようなものです。書いてある内容は理性的、中立的で学術的ですが、新書で1冊という体裁、分量に、このいくつもの補助線(外交、世界情勢、財政金融、陸海軍と各国の軍事力、国民の生活などの統計資料などなど)が必要な事象を収めていくのは無理です。満州事変以後を書いたいい本ですが、教科書から1歩進んだところで、という時にはおすすめできないです。
読了日:6月4日 著者:加藤陽子
満鉄調査部 (講談社学術文庫)満鉄調査部 (講談社学術文庫)感想
国策会社の満鉄で植民地経営の企画立案を担ったのが同社の調査部。赤化するロシアとの関係の研究が入ってきたり、世界が中国大陸の権益に注目する中で始まる15年戦争の中、満州に留まらず広く日本の権益を探る機関に変貌していく。今日考えている以上に共産主義的な考え方は魅力的に映った部分があり、左傾する者もいたり、関東軍を中心とした軍部に阿る部分もあったり。ただ、この時に身に付けた感覚は戦後、自民党を中心とした政治体制の中でも大きな影響を残したのは事実。例えば椎名悦三郎。概説的な内容。なお本書は平凡社新書の再編版。
読了日:6月3日 著者:小林英夫
沙高樓綺譚 (文春文庫)沙高樓綺譚 (文春文庫)感想
前回勧めた2篇を再読。「小鍛治」の方は読み返すと、探偵小説の鉄則「ノックスの十戒」にあるとおり、前半に登場した人物が最後に鍵を握っているという仕掛けであり、モデルの人物をだれに想定するかも楽しい。蒼風か太郎か? 「雨の中の刺客」の方は何でもない別れが最後の引き金になっていく。日常生活にはそんな瞬間があちこちに転がっているのだと改めて思う。 そして全編。沙楼のモデルというか、イメージには、華道家の栗アfが2000年代初頭までやっていたという六本木の高級ゲイバー「西の木」のイメージが投影している気がする。
読了日:6月2日 著者:浅田次郎
沙高樓綺譚 (文春文庫)沙高樓綺譚 (文春文庫)感想
1編目の「小鍛治」と5編目の「雨の中の刺客」がいい。前者は刀剣鑑定を家業とする友人が主人公を秘密の会合に誘うことから話が始まる。自然な展開で刀剣の「折紙」を付ける鑑定作業、また出自不明の名刀が現れ、話が展開していく。後者は高度成長期に博徒系ヤクザに入り込んだ男が綾なすままに斯道の真ん中を歩く羽目になった回顧談。「天切り松」の口調に近く、話の流れが自然だ。「誇張や飾りを申されますな、聞いたら夢にも他言なさいますな」という女装の主人の台詞は、濃いビロードのような世界を作り出す決め台詞か。解説の百田尚樹が蛇足。
読了日:6月1日 著者:浅田次郎
増補 八月十五日の神話: 終戦記念日のメディア学 (ちくま学芸文庫)増補 八月十五日の神話: 終戦記念日のメディア学 (ちくま学芸文庫)感想
第2次大戦が終結して今年で70年。日本で終戦記念日といえば8月15日になる。だが歴史的には昭和天皇の降伏詔書が公表された日であり、ポツダム宣言受諾は8月14日、降伏文書の正式締結は9月2日になる。1945年からしばらくは、8月14日や9月2日の記憶が残っていたものの、記憶が8月15日に収斂された過程を記した本。政府の戦没者追悼式典や昔からの旧盆の習俗が重合した結果ながら、筆者の言う如く、8月15日は戦場銃後や敵味方の別ない慰霊の日とし、無条件降伏した9月2日を敗戦の日と分けた方が昨今の議論が明解になる。
読了日:6月1日 著者:佐藤卓己

読書メーター
posted by 曲月斎 at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑事雑用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする