2015年06月01日

☆2015年5月に読んだ本。

2015年5月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2987ページ
ナイス数:331ナイス

選挙の民俗誌―日本的政治風土の基層選挙の民俗誌―日本的政治風土の基層感想
津軽選挙に甲斐選挙、奄美全島区……。この本は衆院選旧山梨全県区で12期当選した金丸信を題材に、選挙運動の話を点綴する。これも柳田国男以来の民俗学の姿ではあるのですが。地縁血縁、さらには後援会の顔をした無尽(頼母子講)などなど。ただ、こんな形態が残っているのは地方の町村議選、市議選くらいではないか。衆院選の小選挙区制がもたらした弊は少なからずあるような気がする。ま、金が動くことは地域の活性化であるのは事実なのですが。この本は飛ばし読みでした。
読了日:5月31日 著者:杉本仁
江戸商家と地所―江戸草分け町家の存続と守成江戸商家と地所―江戸草分け町家の存続と守成感想
東京都中央区日本橋2丁目に所在の柳屋ビルディングは、徳川家康が1584(天正12)年に中国人に浜松で与えた屋敷の土地が江戸に移転後も引き継がれてきたことを文書を読み解くことで示した1冊。途中、近江商人出身の養子が嗣子に入って今のポマードの柳屋の始まりとなる。「拝領屋敷」という制度、江戸期は町役の下で営々と更新されている訳で、ある意味で驚異的な事務能力の累積だ(例えば佃島は漁師連名の拝領地だったそうな)。ただこの筆者の奔放な筆捌きがさすがにこのテーマではあまり発揮されず、ご自身の興奮ほど興奮できなかった。
読了日:5月24日 著者:鈴木理生
江戸のみちはアーケード江戸のみちはアーケード感想
土地と道路の関係を下水を鍵に読み解く。「雨だれ落ち」という言葉がある如く、今も雨水を隣家の敷地に落とす訳にはいきません。江戸時代の江戸の町の多くは歩道部分3尺に庇を出し、雨だれの落ちる下水から下水までの間が公道になっていた訳です。物流の拠点南伝馬町では庇が1間、そのうち3尺が公儀の土地でした。で、町の間口が課税基準。江戸の中心街だった万世橋〜日本橋〜京橋〜新橋は僅かの勾配を利用した自然流下式の下水の配管を考えての整備だった、と説きます。元々千代田区図書館の職員が郷土史を編む余技で書き綴った本。好著です。
読了日:5月23日 著者:鈴木理生
人生激場 (新潮文庫)人生激場 (新潮文庫)感想
小説の面白さで定評のある筆者だが、どうも随筆の方を選びたくなる自分の性癖。この本は元々は週刊新潮の連載らしい。で、「乙女心」という表現が適切かどうかは別にして、さりげない日常を大袈裟に、客観的に、戯画化する、というのは並々ならぬ才気を感じさせてやまぬ。エンターテインメント作として読者の心をとらえて話さない手練手管。浅田次郎の「勇気凜々ルリの色」とか、遠藤周作の狐狸庵ものを連想させるようなサービス精神の横溢した作品が並ぶ。ふざけるだけではなく、時々文明批評が混じるので笑ってばかりいられないのが味噌。
読了日:5月17日 著者:三浦しをん
江戸っ子歳事記江戸っ子歳事記感想
現代版三田村鳶魚。歳事記仕立てで、江戸・東京のしきたりを振り返り、資料(といっても随筆が中心)を引き、論を展開する。門松を立てることで町内の鳶職が生活し、呉服太物の謂いは「お蚕ぐるみ(絹)とそれ以外」の意味であるとか、深川佐賀町の米市場が庶民向け、神田米市場が外米、蔵前が武家向けの別とか、山王祭・神田祭の主役が山車が江戸城内(皇居)に入らなくなった明治になってから神輿が祭りの主役になったという分析などなど、ひたすら博覧強記。ただ大正15年生まれの筆者、江戸の暮らしはほんのつい最近まで残っていたのか、と。
読了日:5月15日 著者:鈴木理生
能・狂言 謡の変遷―世阿弥から現代まで能・狂言 謡の変遷―世阿弥から現代まで感想
能は伝統芸能で室町時代から伝わっているとはいえ、上演内容は大きく変化している。秀吉の時代には強吟と弱吟は分化していないし、音階も拍子当たりも違う。古い謡本の書き込み(直しという)にある中国の五音(宮・商・ 角・徴・羽)の注や諸本の胡麻点(謡の符号)の校勘で音を再現していく研究を綴る。レコードもCDもない時代の音の再現、すごく興味深い。狂言の小謡の拍子合、拍子不合(リズムに乗るか乗らないか)の研究も流儀諸家の謡ぶりから復元していく。伝統は1対1で、身体にのせて伝えられるものだ。能狂言の研究は進化している。
読了日:5月11日 著者:高桑いづみ
多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)感想
憲法改正論議が盛んな今、衆参両院の議員の3分の2が賛成すれば国民投票では過半数の賛成でいいことになっている。だが、衆院は小選挙区制、参院も第2院のとしての性格を失い、小選挙区制に近づいている今、多数派政党の出現は不思議ではなく、この条文の危うさを筆者は指摘する。そもそも民意を多数決で決めることがいいのか。民意?の反映は投票結果だけであってそれを民意ということの危うさを説く。本の中身は統計学のような話の展開だが、決して難解ではない。より民意を反映させるための思索は「私」ではなく「私たち」の問題なのだから。
読了日:5月7日 著者:坂井豊貴
都市――江戸に生きる〈シリーズ 日本近世史 4〉 (岩波新書)都市――江戸に生きる〈シリーズ 日本近世史 4〉 (岩波新書)感想
浅草寺を中心とした寺内町、宿場町としての品川、5街道の宿場や輸送ターミナルとしての南伝馬町。この3所に伝わった史料を読み解き、日々の生活の姿を探る。身分の転落があったり、利権の奪い合いがあったり、統治機構の一部としての株仲間の存在の意味であったり。数学の微積は同じ現象を分析する手法だが、その感覚に近いです。執筆姿勢は学術的ですけど、鈴木理生の本と好一対、という感じ。終章の生活物資としての薪炭を素材に物流網の仕掛けを探る手法も新鮮。PCの進化で、古文書というビッグデータが解析されていくのが楽しみになる。
読了日:5月6日 著者:吉田伸之
性欲の研究 東京のエロ地理編性欲の研究 東京のエロ地理編感想
「東京のエロ地理編」の副題の通り、前半部分が興味深い。皇居前広場に公団住宅、交通(鉄道や路面電車)の発達と都市計画と遊郭の関係等々。中でも新宿に関しての項が面白い。内藤新宿の飯盛女から始まって、2丁目の赤線(公娼地域)、外側の花園町、三越裏の青線(非合法の集娼店舗地域)、白線(不分明な売春施設)と西へ西へと移動しながら進化したこと、旧赤線の跡地が売防法施行以降、所有者が再開を信じているうちに取り残され、性的マイノリティーの地となっていった話。土地の歴史を見直す意味を教えてくれる。ゴールデン街の由来も。
読了日:5月3日 著者:
鉄道技術の日本史 - SLから、電車、超電導リニアまで (中公新書 2312)鉄道技術の日本史 - SLから、電車、超電導リニアまで (中公新書 2312)感想
世界初の商用鉄道が誕生したのは1825年、日本で鉄道開業が1872年。船の往来だった時代に極東の一島国で欧米で発達した舶来の技術を自前の技術と生産に50年もたたぬうちに切り替えていったのは大したものです。そんな歴史を多角的に分析します。測量、製鉄、車両の生産、制御システム等々。この本の何より優れているところ、図、表、写真が適切に挿入されていること。門外漢にも鉄道というのは産業革命以降、工業技術の集大成であったことがよく分かります。東京駅丸ノ内口にあった銅像・井上勝の功罪も、安全技術の集積であることも。
読了日:5月3日 著者:小島英俊
近藤乾之助 謡う心、舞う心近藤乾之助 謡う心、舞う心感想
訃報を聞き、書架から取り出して再読。家元制の制約が最後まで強かった宝生流で、他の流儀、他の世界との交流を通じて藝の幅を広げた人だった。流儀全曲の口伝を残すところがこの人らしい。野口兼資、兼資に私淑した観世寿夫。この2人を脳裏に描きながらの舞台だった。本の中で「藝は紆余曲折を経て伝わっていく」や「役者は死ぬまで冒険野郎」と言う言葉が鮮烈。伝統藝能といわれる能ではあるけど常に革新を続け、解釈、研究にいそしむ。そんな姿が舞台から伝わってくる役者だった。その中身を文字に残しておいてくれたのは今となっては財産。
読了日:5月2日 著者:藤沢摩彌子

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posted by 曲月斎 at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする