2015年05月01日

☆2015年4月に読んだ本。

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3121ページ
ナイス数:590ナイス

日本の「運命」について語ろう日本の「運命」について語ろう感想
浅田が言いたいことは「人間は時代とともに進歩ではなく変容し、退行しているのだという謙虚な認識をもたなければ時代小説どころかほんの一昔前の舞台すらも正しく描くことはできない。戦争というものなどはその重大な錯誤と認識の不足のせいで繰り返されると思われる」(あとがき)という一句に尽きる。連想したのは司馬遼太郎の「この国のかたち」か。話が雑駁に過ぎる。そこに食い足りぬものが残る。余談ながら、高校時代の日本史の授業、2人の教師に同時進行で習った。一人は石器時代から、一人は寛政の改革から。あの教え方には今でも感謝。
読了日:4月24日 著者:浅田次郎
『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩 (NHKブックス No.1206)『平家物語』の再誕―創られた国民叙事詩 (NHKブックス No.1206)感想
「平家物語」といえば叙事詩という枠組みに嵌め込んで理解し、されてきたこの作品。この言説は実は噓である。江戸時代の儒学に基づく大義名分論、あるいは欧米の文化に曝された明治に、雄渾な大和民族像を希求するがゆえの「叙事詩」化論、先の大戦に於ける「武士道」論に基づく読み込み、そして戦後の階級史観に基づく読みと、元のテキストはどうあれ、時代の要求に応えて「読み」が生まれていく。「平家物語」という作品の融通無碍さというべきか。「平家は享受史こそ本線」と言い残して夭逝した高校時代の恩師の言葉が改めて思い浮かぶ。
読了日:4月22日 著者:大津雄一
神道集 (東洋文庫 (94))神道集 (東洋文庫 (94))感想
中世に各地の神社の由来を集めた1冊。神仏混淆の色彩濃厚で、天台宗系の唱導という語り藝によって伝播されてきた。聴衆を意識している文学であり、ドラマチックである。特にこの本の一番最初に載っている「熊野権現の事」。印度の王の側室の胎内に宿った子は出産直後に母が無実の罪で首を切られながらも乳を含ませてもらって育ち、肉を食べに来た虎に養ってもらい育つというプロットは当時の民衆ならずともオオッと思ってしまうのである。その後、熊野三所権現として定着していく話以上に、こんな不思議な世界を想像した無名の人々はすごい。
読了日:4月13日 著者:
山岳信仰 - 日本文化の根底を探る (中公新書)山岳信仰 - 日本文化の根底を探る (中公新書)感想
日本で独自に育まれてきた山岳信仰。多くは行を主体に師匠と弟子の間で面授されてきた実践が主なので、文字に残っていないものの方が多い。ではどう全体像を求めるのか。筆者は大峯山、出羽三山、富士山、英彦山、恐山、御嶽山、石鎚山と各地を丹念に調査していく。共通項を括りだし、各地で独自に生まれたものを見極める。五来重の「修験道入門」と比較すると、中身は駆け足ではあるけど、学問が如何に進歩してきたかがよく分かる1冊。どの山への信仰も少子高齢化の波の中、変容を迫られているのが現在。山への信仰は将来、どうなるか興味津々。
読了日:4月13日 著者:鈴木正崇
日本戦後史論日本戦後史論感想
「安倍首相はインポのマッチョ」の惹句で読み始めた1冊。それ以上に興味深かったのは東西冷戦終結以降の日米安保体制の制度劣化と気がつかないふりをし続ける自民党政権という構図が興味深い。米にとっては今や日本以上にパートナーとなっている中国。尖閣の有事には加担はしてもらえないだろう。と同時に軍事費に喘ぐ米にとっては「集団的自衛権の容認と法制化」をしてしまえば現内閣は用済みということになる。所謂TPPもそう。吞んでくれればOKなのだから。「日米外交基軸」という言葉は追従ではなく同盟国としての意思を持つことである。
読了日:4月8日 著者:内田樹,白井聡
非常民の民俗文化―生活民俗と差別昔話 (ちくま学芸文庫)非常民の民俗文化―生活民俗と差別昔話 (ちくま学芸文庫)感想
同文庫所収の本と重複が多い。ただ欠点以上に掬すべき点がある。例えば「住民になること」だ。住民票を居住地の役所に届け出ればいい。都会の論理だ。地方はそうではない。居住者独自の社会、規則があり、草分け、本家、分家、別家などの区別があり、自作、小作の別や、鎮守での序列等々、独自の規範がある。本当に地域の一員になるとは地域社会に迎え入れられてこそなのだ。勿論、時代は変わっている。分母が減った。でも一方でこういう染みついた感覚は否定し切れない。今時流行の「地方創生」「地域協働」といった言葉が如何に銀流し、であるか。
読了日:4月5日 著者:赤松啓介
ジャーナリストの生理学 (講談社学術文庫)ジャーナリストの生理学 (講談社学術文庫)感想
新聞には政論を主とした大新聞、三面記事やゴシップを主体とした小新聞、その中庸を狙った中新聞があります。日本では実質的には3番目しか発達しなかったのですが、仏国ではなお大新聞が元気です。バルザック先生、自身も小説とジャーナリズムの間を揺れた訳で、風刺を効かせているつもりかもしれないけど、戯画化しすぎの観も。話柄から連想したのは宮武外骨ですが、その鋭さにも欠ける気がします。解説で「パリ 19世紀の首都」(ベンヤミン)から引用している「ジャーナリズムは精神価値の市場を編制した」の一句がこの本の登場意義なのかも。
読了日:4月3日 著者:バルザック
マネキン 美しい人体の物語マネキン 美しい人体の物語感想
日本に於いてのマネキン人形製作の始まりは京都の理科学機械製作会社の島津製作所にあり、伝統的な京人形の技法の発展形として進化したとは知らなかった。マネキンも仏像同様、目が彫心鏤骨の一点で、玉眼にしてしまうと味わいが欠けたり、新味を出したりと変化するとは。筆者は美大の彫刻科からマネキン人形制作会社に転じて、長年、その原型創作に携わってきた方。欧米はマネキンが買い取り制なのに日本はレンタル制とは知らなかった世界。彫刻として成立し、しかも商品を売るための道具であるという要素の並立。独自の世界観、価値観がある。
読了日:4月3日 著者:欠田誠
毒薬としての文学―倉橋由美子エッセイ選 (講談社文芸文庫)毒薬としての文学―倉橋由美子エッセイ選 (講談社文芸文庫)感想
土佐山田町の生まれ。「土佐人について」との一文で「イゴッソウ氏の本領はしばしばタテマエを盾にとって正義の権化となる」と書く。名人に介錯されたようなもので切られたことに気付かないのではないか。「田舎暮らし」では「田舎町に住んでいると孤独であるということはおよそ不可能。自分と呼べる強固な実体もありえない」と書く。快感を覚える。書き手としての才は勿論、後半にある全集の月報、文庫の解説などで見せる読み手としての確実さも。就中「坂口安吾論」、三島由紀夫についての「英雄の死」、「吉田健一の文章」等々、いとおしくなる。
読了日:4月3日 著者:倉橋由美子
震災画報 (ちくま学芸文庫)震災画報 (ちくま学芸文庫)感想
震災が1923年9月1日、1輯目が刊行されたのが25日。混乱続く中でまとめ上げたのは、「石巻日日新聞」の存在を連想させる。尋ね人の貼紙が町に溢れる中で「逝去」の2文字が書き加えられた話を紹介したり、流言蜚語に基づく朝鮮人虐殺を「最も痛恨事」と評したり。逓信省の郵便振替貯金課は震災後60日経ても業務を正常化できぬことを糾弾したり、「地震計は官権のようなものか。危害もない微動には敏感だが、人の圧死するような時には役に立たない」と言った警句があったりと縦横無尽。時に筆誅を、時に愛惜の視線がある。根性に敬意。
読了日:4月3日 著者:宮武外骨
秋の日本 (角川文庫)秋の日本 (角川文庫)感想
ちょっと引用。「長さ二、三百bの十段になった階段座席、聖殿、天上界から抜け出してきた神々の一軍団が黙示録にあるような光景を目撃するためとでもいったように整列している」。何の描写か分かりますか。A:三十三間堂。1885(明治18)年に来日した仏海軍将校の日本旅行記。東京、京都など回ります。気に入らぬことには上から目線になりますけど、彼には当時の日本がどんな風に見えたのか、表現を追うだけで楽しいし、日光で去り際に子供から花束を贈られた場面など性根が見えるようで、微笑ましくもあります。謎解きの心境も楽しめます。
読了日:4月2日 著者:ピエール・ロチ

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posted by 曲月斎 at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする