2015年04月29日

★2015年3月に読んだ本。

2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:5500ページ
ナイス数:681ナイス

日本映画 隠れた名作 - 昭和30年代前後 (中公選書)日本映画 隠れた名作 - 昭和30年代前後 (中公選書)感想
日本映画というと黒澤明に小津安二郎、と名が挙がる。でも年に1本2本しか撮影しない監督ばかりでは興業は成立しない。「プログラムピクチャー」と呼ばれる量産型の低予算、短期間の撮影で市場に送り出す映画の監督も必要だった。筆者のいう「日本人の暮らしに卓袱台があった時代」はまさにその活躍の場だった。すべてが名作という訳ではない。でも例えば「張込み」。普段は量産していた野村芳太郎がこれと決めて撮った1作だという。佐伯清の「大地の侍」滝沢英輔の「六人の暗殺者」など歴史に埋もれた作品が浮かぶ。炭鉱にダムが背景にある時代。
読了日:3月31日 著者:川本三郎
戦国武将の明暗 (新潮新書)戦国武将の明暗 (新潮新書)感想
真面目なのだけど「張扇」が釈台を叩く音、講談師風の口調。名調子と取るか否か。元原稿が週刊新潮の連載らしいので仕方ないか。さておき、譬えが今様で興味深い本です。関ヶ原の帰趨を決めたもの、論功行賞、江戸開幕以降の当主の好み(家康〜秀忠)の変化等々。例えば関ヶ原の合戦に遅参した秀忠はそれが一生のトラウマになったとか、井伊直政はガチムチのロリコン好きではないか、という見立ての妙味。ただ惜しむらくは、編集の際にせめて系図や地図を挿入すべきでした。というのは同じような名の人物が登場しての話の展開が続くのですから。
読了日:3月30日 著者:本郷和人
江戸の町は骨だらけ (ちくま学芸文庫)江戸の町は骨だらけ (ちくま学芸文庫)感想
前半と後半が分かれる本。前半は江戸という土地の成立のために寺院(墓)が果たした役割を語り、後半は宗教政策全般についての論究。実は前半部分の方が面白い訳で、骨というものが今のように執着すべきものかどうかを考えさせられる部分。埋地の材料とは一半信じられぬ気もする。葬礼の部分まで言及しており、黄金餅とからくだの世界を連想させる。後半はちょっと間怠い。なぜかと言えば筆者独特の実証的な部分が薄れてしまうからで、実は江戸幕府の宗教政策が今に及ぼす影響は大きいので、この部分を雑駁に解説してしまうのは勿体ない気がする。
読了日:3月27日 著者:鈴木理生
江戸はこうして造られた―幻の百年を復原する (ちくま学芸文庫)江戸はこうして造られた―幻の百年を復原する (ちくま学芸文庫)感想
「幻の江戸百年」の改題。江戸には荘園があり、約270年余も鎌倉・円覚寺が領有した。坂東の野の河川が戦国時代の勢力圏の境となった通り、川と台地が錯綜する関東平野で江戸が物流の拠点となり、日比谷入江の埋め立てなど大規模に改修していったのが徳川幕府の天下普請という見立て。利根川、荒川などの瀬替えはダイナミックでぜひ、Web上でも見てみたいくらい。江戸前史から成立までを追ったこの1冊、時に推断が過ぎるかと思う面もある一方で、史料を駆使して大胆に展開するさまは読んでいて心地よいくらい。後の震災被害にも繋がる話だ。
読了日:3月25日 著者:鈴木理生
犬たちの明治維新 ポチの誕生犬たちの明治維新 ポチの誕生感想
明治以前、飼い犬はなく「里犬」として集落や町内で養い、番犬の役割を果たしていた。開国して以降、座敷犬として愛玩されてきた「狆」がいよいよ珍重された一方、元来の日本犬は飼い主がいない野良犬として撲殺される犬が続出したそうな。何で犬の名は「ポチ」になったのか−−。筆者は斑を意味するブチはpatches(パッチ)から転じ、ポチになったと推測する。明治のころ、横浜語といわれたピジン英語の影響を指摘する。さらに西郷隆盛が猟犬を連れて西南戦争を転戦した話……。ともかくまとまりはないけど、日本犬の命運を追った1冊。
読了日:3月22日 著者:仁科邦男
書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト感想
本と仏壇。妙な取り合わせだが、引用の言葉で得心。「古い図書館にある書物の著者の大半は死者である。書物という名の死者の遺言が集められた場だ。書物とは記録の道具ではなく記憶の道具だった」と。生家の仏壇と自身の万巻の書を収めることに通底するものがある。家とは、本とは、仕事とは、住むとは、などという問いへの答えでもある。8坪の土地にこんな建物。本をため込んでしまった人間には理想というか、憧憬のような、羨望のような。自分には一生かかってもできないことではなかろうか、と思いつつ、何とかしてみたい気も起きるのが邪か。
読了日:3月21日 著者:松原隆一郎,堀部安嗣
壇蜜日記 (文春文庫 た 92-1)壇蜜日記 (文春文庫 た 92-1)感想
1行32文字、項目は短ければ1行、だいたい7行から10行ほど。身辺雑記である。書き下ろしだそうで、ブログの内容とは違うような。でもどこかでブログとかTwitterを読んでいるような。中身は猫と熱帯魚を飼い、電車と自転車を愛用し、コンビニと薬局と銭湯を愛する生活。虚像と実像の落差を見せることを意識しているような気がする。あと雨が降る話が多い。すこぶる落ち着いたというか、地に足がついている書きぶりなのだけど、今の立場に至るまでの経験がそうさせるのか。文章の展開が直感的、ご教訓めいた1句。魅せることが巧みだ。
読了日:3月20日 著者:壇蜜
地図が隠した「暗号」 (講談社+α文庫)地図が隠した「暗号」 (講談社+α文庫)感想
実業之日本社刊「地図を楽しむなるほど辞典」の改題再編本。国土地理院が今や紙ではなく電子情報として主に提供するようになった時代。でも地図は紙媒体の方がいい。図上に隠れている土地の歴史や生活を読み込み、等高線をトレースしたり、谷線をなぞったり。作業を加えることで楽しさが倍増するのだから。この本は地図を弄り倒すことで味わえる愉悦を教える1冊ではある。中身は広汎、散漫に渡っているけども。本当は地図自体を紙面に収容してくれていたら、と思う。そういえば国土地理院のHPでは紙時代の図幅名から地図を検索しにくくなった。
読了日:3月18日 著者:今尾恵介
自治体職員のための文書起案ハンドブック自治体職員のための文書起案ハンドブック感想
地方自治体で仕事の第1歩が起案書。起案書を作らないと話が始まらない。法務的な背景を解説したのが本書。法令例規と訓令通達要綱要領の差、協議の意味するもの、組織規範に適合しているか、根拠規範があるか、制約規範を満たしているか、といった点検から公告、公示、告示の手続き、或いは行政不服審査、行政訴訟への対応まで、法令例規の考えでどう対処したらいいのか、書いてあります。本職ではなくても、行政職の考え方を知る上で興味深い1冊であると思います。行政の世界はやはり独特で、合議を「あいぎ」と読むとは知らなかった……。
読了日:3月16日 著者:澤俊晴
東方旅行記 (東洋文庫 (19))東方旅行記 (東洋文庫 (19))感想
14世紀に書かれた中近東からアジアに至る旅行記。というか、見聞録を切り貼りしたものというべきか。でも当時の読者の需要、好奇心に合わせるとこういう本ができる訳で、さらにオリエントのイメージを形作った1冊です。前半は四国遍路の霊験記の匂い。一杯聖人が出てきて、聖遺物が見つかって、聖跡を巡って……。きっと楽しいのだろうな。想定をしにくいのだろうけど、今のどの地名を想定しているのか、もっと簡単に分かれば。なお地図は真ん中辺にあります。それにしても小人の国、巨人の国、女護が島……。荒唐無稽さを喜ぶしかないです。
読了日:3月15日 著者:J・マンデヴィル
東京大空襲―昭和20年3月10日の記録 (岩波新書 青版 775)東京大空襲―昭和20年3月10日の記録 (岩波新書 青版 775)感想
何度読み返しても、この空襲は不条理だと思う。あと、改版する機会があれば、筆者の逃げた道、あるいは取り上げている方々の逃げた道がわかりやすく表示された地図がほしい。基本的には下町は碁盤目なのだけど、その広がりが実感できると思うのだが。今ならWeb上の情報とリンクさせると理解が進むかも。
読了日:3月9日 著者:早乙女勝元
大いなる助走 <新装版> (文春文庫)大いなる助走 <新装版> (文春文庫)感想
主人公が直艸賞の候補作となるところから急展開する。筒井の文章だから戯画調に見えるけど、同人誌についてこう書く。「小説書いて自腹切って安くない印刷代を払って同人雑誌を出して、仲間以外にほとんど誰も読んでくれず、屑箱行きだ。日本の文化に貢献しているとは思えないんだよ。自殺者を出したり、精神の荒廃した無頼漢を出したり、生活無能力者を出したり、はては殺人者を出したり、反社会的傾向の強い人間ばかり育てている。反社会的行為がいくら文学の実践活動だといっても、小説そのものさえ認められていないのじゃ意味ないしねえ」。
読了日:3月9日 著者:筒井康隆
綾とりで天の川綾とりで天の川感想
アラン定義集、まだ買っていなかったなあ。
読了日:3月8日 著者:丸谷才一
8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記 (新潮文庫)8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記 (新潮文庫)感想
戦後70年だという。日本では8月15日で戦争終結したように思っているけど、実は9月2日の降伏文書調印こそ記憶される日である。「日本のいちばん長い日」で鈴木貫太郎が「今を逃してはソビエトが侵攻してくる」とつぶやくシーンがあったけど。樺太であれ、北千島であれ、ソ連の侵攻は8月15日を過ぎて続いていたのだから。ちょっと読みにくいけど抑えた筆致はノンフィクションとして適切。それと北海タイムスという今はなき北海道の地方紙がこの手の連載をしていたという。何かで読めるようにしてほしいなあ。浅田次郎も小説化しているけど。
読了日:3月8日 著者:大野芳
地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)感想
竹中平蔵に続き、人口の推計値を恫喝の種にしながら、「選択と集中」の論理を振りかざしているように思えてならぬ。極端な話を言えば、東京以外は消滅する訳で、その東京も直下型地震などの災害に弱い。どう考えても悲観主義に基づく論理である。本書で取り上げている出産可能な女性の人口動態以外に、地元の意欲とか、市民性みたいな変数が町の盛衰を占う上で加わっている気がする。数量化できない部分なので、煽るだけでは不適切な気がする。確かに人口1万人を切り、地域の共同体の崩壊が始まっているのも事実。でも高知など元から過疎地だ。
読了日:3月8日 著者:増田寛也
災害復興の日本史 (歴史文化ライブラリー)災害復興の日本史 (歴史文化ライブラリー)感想
ちょっと虻蜂取らずの感あり。古代、中世、近世、近現代の4区分で地震や風水害、旱魃、大火、疫病など災害を網羅しようという試みの1冊。悉皆的な入門書を目指したのだろうけど、どれも内容が今一つ薄い感じが否めない。地震の項で「理科年表によると」という話が繰り返されるのが典型にて、今の災害に対する姿勢は、史料に基づくのか、あるいは口碑に基づくのか、科学的知見に依拠するのか。何かがほしい。具体名を挙げれば磯田道史の著作のような手応えがもう少しほしかった。ちょと残念。
読了日:3月7日 著者:安田政彦
軍隊を誘致せよ: 陸海軍と都市形成 (歴史文化ライブラリー)軍隊を誘致せよ: 陸海軍と都市形成 (歴史文化ライブラリー)感想
建軍以来、師団や鎮守府となった都市は多くの兵員が住むことになり、廃藩置県以後の格好の地方創生策となった。城跡に多くの軍隊が入ったのは象徴的だ。鉄道や水道の敷設、遊郭の設置、門前の商工業発達など、インフラの整備が進み、地域経済が活性化し、災害出動もあって治安維持のためにも好個と受け止められた。今も地方では自衛隊誘致合戦があるように当時とすれば無理からぬことで、軍隊が駐屯することによる社会資本の整備という観点が面白かった。師団−旅団−聯隊という構成で約9192人、鎮守府−要港部という組織論がら説き平明。
読了日:3月7日 著者:松下孝昭
幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)感想
筆者の処女作。将に栴檀は双葉より芳し。当初「早大探検部」の名で刊行された。アフリカ・コンゴ奥地の湖に怪獣探しに出掛ける話。1988年に探検に行った話と2002年に書かれた文庫本あとがきの部分がついているのが秀逸。文庫化当時の回顧に「着実に退化の道をたどった」と記す気分。分かる気もする。一番受けたのは隊員が脳性マラリアになり、黄疸症状が出た時に「学食のカレーと同じくらい黄色い」という譬えは実に得心。アフリカの水を飲んだ者は再びアフリカに帰るというけど、ソマリア話につけ、その通りになっているというべきか。
読了日:3月2日 著者:高野秀行
墓と葬送のゆくえ (歴史文化ライブラリー)墓と葬送のゆくえ (歴史文化ライブラリー)感想
火葬すると後に遺骨が残る。習慣の中で骨は扱われてきたけど、僧侶の登場、地域共同体(世間)に代わって葬儀業者の出現で変質してきたと説く。さらに墓の維持管理も一族や集落等で担っていたが明治以降の近代家族制の登場、戦後の核家族化、未婚者の増加、少子化などが重なって崩壊中だと指摘する。昨今の樹木葬や散骨、合葬墓も依拠すべき法令条規(墓埋法、民法など)が未整備という。地域や家族の道徳的・倫理的義務感も失われた今、葬送や死者の尊厳を福祉の一部として考え、墓地の有期限化、共同化、脱墓石化を計れとの指摘。含意を翫味中。
読了日:3月2日 著者:森謙二
江戸の政権交代と武家屋敷 (歴史文化ライブラリー)江戸の政権交代と武家屋敷 (歴史文化ライブラリー)感想
徳川幕府の臣下(大名から旗本、御家人まで)にとって、屋敷は宛がわれるものであり、移動や召し上げも当たり前。古地図や証文を手がかりに変遷を読み解き、人間関係を重ね合わせていくと、表向きの理屈とは異なる本音の論理が読み解けるというのが本書の興。特に西ノ丸下(今の皇居外苑)、吹上(今の皇居内)は世の流れで変転を重ねた。甲府中納言忠長、館林から転じた綱吉、甲府から来た家継、紀伊からの吉宗と代替わり、幕閣の交代で様変わりする。移動は江東、新宿方面等への都市の膨張、員数増など体制の歪みを示す証となっている。好著。
読了日:3月2日 著者:岩本馨

読書メーター
posted by 曲月斎 at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする