2015年03月01日

☆2015年2月に読んだ本。

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3295ページ
ナイス数:407ナイス

三四郎はそれから門を出た (ポプラ文庫)三四郎はそれから門を出た (ポプラ文庫)感想
活字なしの人生なんて考えられないという点で、自分にもその自覚はある。筆者と同じく寝転がって右半身を下にして読み耽るのが常。でも書畜の中でも上手が居るものだ。言えば段違い。本の紹介はどれも面白そうでポチってしまいそうになる。本への偏執、分かる分かる。中でも紀伊國屋のPR誌への寄稿をまとめた「本のできごころ」など、本の始末の仕方を除けば我が身、我が家を覗かれているような心境になる。そして身辺雑事。すべてが活字につながっていく。スピード感があって軽妙だけど浅薄ではない。別の著書にも手を伸ばしたくなる。実に才媛。
読了日:2月26日 著者:三浦しをん
古典注釈入門――歴史と技法 (岩波現代全書)古典注釈入門――歴史と技法 (岩波現代全書)感想
日本の古典文学は営々と享受されてきた。ただ前の時代の物は読みにくい。本文を定め、読み手に意味を正確に伝え、今日的に見た上での時代的な批評も加える。この作業が「注釈」である。中世の「秘儀」から戦国期の「合理性、一般性の追究」になり、江戸時代に「科学的」な批評態度になる。儒学、博物学の影響もある。長い流れの一つの頂点が岩波の旧、新大系本、小学館の古典全集本、角川の全注釈、新潮の古典集成本と指摘する。個人的には紙媒体を捨てられない身ゆえ、電子書籍の世には校注にはどんな事が求められるか、筆者同様に気になる處だ。
読了日:2月23日 著者:鈴木健一
定本 日本の秘境 (ヤマケイ文庫)定本 日本の秘境 (ヤマケイ文庫)感想
1955年頃、人が行かない地を訪ねた紀行文。元は雑誌「旅」に連載されたものだ。同時代の岩波写真文庫のような視点が見えるのが面白い。筆者が睨んでいた地図は旧陸地測量部以来の墨刷り1色の5万分の1地形図であったろう。青森・酸ヶ湯では若き日の三浦雄一カが出てきたり、もう廃絶したかと思う上州の浜平温泉、越後の逆巻温泉、白山の中宮温泉はそれぞれに今も栄えているようだし。高度成長期ですべてが変わってしまう前のルポ、という感興はある。ただ、筆者の書きぶりはどこか「日本百名山」の深田久弥に似て高踏的、上から目線のような。
読了日:2月18日 著者:岡田喜秋
教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)感想
宗教学の入門書として書かれたこの本の一番のポイントは「濃い宗教」と「薄い宗教」という見立てを取り入れたこと。前者にはユダヤ教を源に持つキリスト教、イスラムが連なる。後者には仏教、儒教、道教、神道などアジアに広がる多神教系を指す。筆者は前者は篤い信仰や奇跡の祈願のような「信仰のための宗教」といい、後者を人々に共有される宗教的知識、習慣の集積として「文化としての宗教」と捉える。兎角教義や用語の解説に陥りがちな本が多い中、概括的、かつ平明、普遍的に宗教というものの現在の姿を要約したのは見事。教科書もできる1冊。
読了日:2月16日 著者:中村圭志
やきとりと日本人 屋台から星付きまで (光文社新書)やきとりと日本人 屋台から星付きまで (光文社新書)感想
やきとりクロニクル。料理関係の取材を重ねてきた経歴ゆえか、丹念に書いている本です。先行文献を博索して適切な引用をし、店を巡って聞き書き(これが上手い)。本の中で紹介されている店はどこも魅力的です。鶏に限らず、牛や豚の肉やモツもこの料理法で対応できる。串を打って焼くだけなのですが。素人料理では難しいことがよく分かります。また野鳥から鶏、さらにブロイラーの出現で一気に大衆料理化したこと、料理方法次第では美味しいことなど、示唆に富みます。備長炭の活用法や酒などの品揃えも含め業態の工夫、在来種の活用など内容多岐。
読了日:2月10日 著者:土田美登世
夢を見ない、悩まない 市川左團次夢を見ない、悩まない 市川左團次感想
市川左団次丈の人生相談。中身は肩の力を抜いて生きよ、自分の仕事を大事にしろ、ということか。お悩み相談よりも面白かったのは弟子の左升、蔦之助が話す左団次像。2人とも門閥の出身ではなく、檀那を裏で支えるのが仕事。左団次に惚れ込んでいるのがよく分かる。例えば助六の意休。大松島を始め、名優が務めてきたこの役を高島屋以上に務められる役者は今の舞台にはいない。腹もニンもある名優である。一方、SMが趣味でスッポンポンになるのも、照れ隠しなのかもしれないと。「いい加減、人生録」も読んでみたくなる。藝談のない藝談かも。
読了日:2月9日 著者:四代目市川左團次
中空構造日本の深層 (中公文庫)中空構造日本の深層 (中公文庫)感想
記紀神話の構造から日本民族が無意識の下で抱いてきた「安定感」の姿を探る。神話でアメノミナカヌシ−ツクヨミ−ホスセリと役目のよく分からない神様が中心にいる、という指摘から、日本人は決断のできない父親と、母性的家族集団に挟まれ、何でも異界の概念をこの中空構造の中に取り込んでいくという仕掛け。中空もさることながら、日本的父性と母性社会の概念がおもしろい。憲法改正論議で、改憲派は実は革新的であり、護憲派が保守的であるというネジレの指摘は、後の「リベラル保守宣言」(中島岳志)などにつながる冷静な思索につながる。
読了日:2月8日 著者:河合隼雄
雨のことば辞典 (講談社学術文庫)雨のことば辞典 (講談社学術文庫)感想
おもしろいとは思ったけど、それ以上でもない気もする。評価は微妙。読む辞典としては内容がもう少しほしいし、検索する辞典としては物足りないような。
読了日:2月8日 著者:倉嶋厚,原田稔
早稲田大学 (岩波現代文庫)早稲田大学 (岩波現代文庫)感想
岩波現代文庫がこの本を今、出版する意味が分からない。尾崎の小説3編。1は大学草創期の大隈重信が外相時代に関わった条約改正問題と騒擾。2には1916年の早稲田騒動(大隈夫人の銅像建立を発端に総長人事の騒乱に発展)の話、3に大隈侯の暗殺未遂犯の話。「冀望は学の独立」といっても私塾なのか、文部省の大学令に基づく学校となるのかは自明の理。尾崎は早稲田騒動の当事者であり、騒動を機に校風が変わったとしているが今や何人がそれに共感できるか。そして今、尾崎がいう「明るさ、叛骨、額縁のない自由さ」は存続しているのだろうか。
読了日:2月6日 著者:尾崎士郎
満蒙 日露中の「最前線」 (講談社選書メチエ)満蒙 日露中の「最前線」 (講談社選書メチエ)感想
日清、日露の戦役から15年戦争の終結まで、日本が常に進出、支配を試みた地域が「満蒙」である。日本の歴史書の多くは東から見た姿を語るが、実は西から(つまり露側)から見た景色も大切である。本書はシベリア鉄道から分かれ、ウラジオに向かう「中東鉄道」を舞台回しに日露、国共、赤軍と白系ロシアや軍閥同士の相剋まで視野に覇権争いを描く。外交だから相互に利害があり、欧亜のバランスもある。帝政ロシアの崩壊、辛亥革命の余波など日中露の「歪み」が溜まる場所と、この「鉄路」を見立てた点が卓見。戦後70年の今年、ぜひお勧めの1冊。
読了日:2月4日 著者:麻田雅文
武士の奉公 本音と建前: 江戸時代の出世と処世術 (歴史文化ライブラリー)武士の奉公 本音と建前: 江戸時代の出世と処世術 (歴史文化ライブラリー)感想
江戸時代の泰平の世と今は似ているのかもしれない。槍働き本位で切り取り次第だった世ならは評価は簡単であり、雇う側も財源が増えることが期待できる。だが石高が固定し、裁量の余地がなくなった時、どう「やる気」を生むのか。筋目(家格)の評価を元に勤務態度をで人材評価をし、石高を増減する。結局はパイの大きさは同じなので逼塞する。事務処理能力の高い新参を抱えたくても古参の周囲の怨嗟も生まれる。「加役」などの職能給を出すか、或いは雇われる側が別の生き甲斐を見出すか。流れ奉公が増えるようでは安定しないのは言うまでもないが。
読了日:2月2日 著者:高野信治
日本海軍と政治 (講談社現代新書)日本海軍と政治 (講談社現代新書)感想
旧憲法の欠陥は天皇が唯一絶対の存在で、内閣は輔弼し、軍部は輔翼という形で統帥権を行使する。内閣内でも首相が閣僚の任免権がなく、軍部内でも軍政機関(海軍省、陸軍省)と軍令機関(参謀本部、軍令部)の齟齬が起きる。陸軍より海軍は蹉跌が少なかったとはいえ、機構の欠陥が最後まで尾を引く。陸軍に統制派と皇道派があったように、海軍内にも条約派と艦隊派が存在し、自分らの権益のため政党と結んで予算確保で策動するし、自分の担当、専門分野に立て籠もることもできる。相互のチェックが働かない組織の脆さ。日本株式会社の母型かも。
読了日:2月1日 著者:手嶋泰伸

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posted by 曲月斎 at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする