2015年01月01日

2014年12月に読んだ本

2014年12月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4749ページ
ナイス数:306ナイス

地図で読み解く日本の戦争 (ちくま新書)地図で読み解く日本の戦争 (ちくま新書)感想
同じ方向の本に「外邦図」(中公新書、小林茂)があるものの、この本のよさはきちんと江戸時代末から終戦後まで縦覧している点。途中で何度も「鹵獲」という言葉が出てくるのが象徴的です。日露戦争の劈頭、鴨緑江渡河でも奉天会戦でも、露軍将校の死体から奪った地図がその後の作戦行動で如何に役立ったかが示される。逆に太平洋戦争中、南洋の島々の地図は未完成で餓島など敗退後に完成したという。地図というのは軍事行動をとる上で不可欠のものながら、旧軍の認識は低かった証しである訳で、この国の機構に通底する何かが隠れている気がします。
読了日:12月31日 著者:竹内正浩
四国遍路 - 八八ヶ所巡礼の歴史と文化 (中公新書 2298)四国遍路 - 八八ヶ所巡礼の歴史と文化 (中公新書 2298)感想
四国の遍路、自身の実感と今の諸相との間で違和感があった。中でこの本は丹念に享受史というか信仰の姿を丹念に追うことで、今の遍路の姿が何処から来たものかを示している。今でこそ当地では「お接待」という言葉が大手を振って歩いているが、実相は違う。ハンセン病への蔑視に代表されるように「ヘンド」は招かざる客という受け止めだったからだ。土佐新聞1886年5月8日付で植木枝盛が書いた「遍路拒斥すべし、乞丐逐攘すべし」と3日間に渡って論陣を張った姿の方が地元(というか高知)の本心に近い気がする。落差を埋める試みである。
読了日:12月31日 著者:森正人
世界国勢図会〈2014/15〉世界国勢図会〈2014/15〉感想
無味乾燥。でも安直な本のネタなのがすぐわかる。例えば少子高齢化の問題。「人口動態」の自然増加率がマイナスを示しているのは日本だけではない。伊、独や東欧諸国は人口が減少傾向だ。ブルガリアなんて−5.5。ただ、年齢別人口構成みると特異さが分かる。高齢者とされる65歳以上の比率は日本は25.1%。伊20.3%、独20.6%が目立つくらい。また都市人口割合。日本は93%と高い。都市と地方の差がかくも大きい国なのです。金融、財政などの指数をみると今の経済政策が適切なのか考えさせられる数字ばかり。考えながら読む1冊。
読了日:12月31日 著者:
お世継ぎのつくりかた 大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム (ちくま学芸文庫)お世継ぎのつくりかた 大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム (ちくま学芸文庫)感想
学術書ではないのでデータ的な裏付けが希薄な感は拭えないのだけど「お世継ぎ」作りという視点から社会を見た1冊。「地域と住民」(後には商工業活動者を含む)を指す「封」を継承するための「一夫多妻制」を旨とした武士階級と商工業の権益を相互に維持するための「株」を持続するためには「女系相続」の方が都合がいいと割り切った農工商階級と。特に前者の話題を縦軸にしながら、三都の経済的力学の遷移、大奥と表の差、大奥女性に支持された日蓮宗(不受不施派まで)の話、享保・天保の改革の意味などなど。派生するトリビアの部分がいい。
読了日:12月28日 著者:鈴木理生
へうげもの(19) (モーニング KC)へうげもの(19) (モーニング KC)感想
へうげものも気が付けばもう19巻でござる。遙けくも来たりつるものかは。この巻では加藤清正が物故。史実では1611年。主人公織部が死んだのが1615年。この漫画、この残り4年分をどう展開していくのか……。増えに増えてきた登場人物も少しずつ減っていく時期になったみたいで。中でやはり清正の描き方が秀逸。あと遠州の訣別の茶会、大人になったのだなぁ。
読了日:12月24日 著者:山田芳裕
夜這いの民俗学・夜這いの性愛論夜這いの民俗学・夜這いの性愛論感想
共産党講座派の元闘士が播州に潜行する中で、地域に沈潜、見て聞いてやった体験を元にした民俗学記。柳田國男が埓外においてきた分野に切り込んでいる。調査対象と目線の高さを同じにしているからこそ、書ける1冊である。フィールドワークもまさにこの域に達すれば以て銘ずべき。前段が農村なら後段では商家での実情が明かされる。今日、断片的に残っている習俗の原型を考える時に、欠け落ちてしまったパーツを補うことができる気がした。戦後の農地改革、高度成長期前までの社会とその後の間には大きな隔絶があるのを教えてくれる貴重な資料。
読了日:12月23日 著者:赤松啓介
「地元」の文化力: 地域の未来のつくりかた (河出ブックス)「地元」の文化力: 地域の未来のつくりかた (河出ブックス)感想
生煮えの米、みたいな本です。外側は柔らかいようで、芯が硬い。サントリーの賞典を受けた現場を調査しました、みたいな内容の本なのですが。文章をわかりやすく書く、という概念がない1冊でした。たぶん、言っていることはそう複雑ではないと思うのですが。職域に基づく社会だけではなく、地元の人との関係など、他者との関係を持った方がいいし、そういうのが地域の活性化には欠かせないよね、というような内容と理解したのですが。もう少し丁寧なフィールドワークがほしい気がしました。
読了日:12月23日 著者:苅谷剛彦,玄田有史,渡辺靖,小島多恵子,熊倉純子,神門善久,狭間諒多朗,吉川徹
昭和陸軍全史 2 日中戦争 (講談社現代新書)昭和陸軍全史 2 日中戦争 (講談社現代新書)感想
陸軍内の皇道派と統制派の権力抗争は2・26事件で後者が制することになるものの、今度は派内の抗争が続く。永田鉄山没後、ソ連との緊張関係を考え、国民党政権との妥協を模索する石原完爾と一撃屈服を目指す武藤章の対立だ。陸軍内の不一致のまま、内閣を巻き込み、事態は泥沼化する。ただいずれの局面でも資源を持たぬ国日本が帝国主義的に振る舞うにはどうしたら都合がいいか、得手勝手の論理が拭えない。行き着くところが大東亜共栄圏構想なのだけど。狂気と正気は紙一重。戦術的に勝てても戦略的に勝てない姿がどこか日本の当今に重なる。
読了日:12月22日 著者:川田稔
旧日本陸海軍の生態学 - 組織・戦闘・事件 (中公選書)旧日本陸海軍の生態学 - 組織・戦闘・事件 (中公選書)感想
旧軍の行動様式は日清戦争前に確立されていた。閩妃暗殺で現地が独断専行〜本省が追認、という姿が見える。満州事変の時と同じ図式ではないか。あと人事の恐ろしさ。旅順攻撃の第3軍、無能さを露呈した参謀連は軒並み最終的には将官に昇進。ノモンハン事件からインパール作戦へと転身した辻政信よろしく、復権した無為の人材が流す害毒は恐ろしい。あと、日本軍の戦死者の半分以上は餓死、栄養失調、海没死だったという数字。無為無策という言葉がこれに勝る証左はあるまい。ただ、川田捻の著作と比べると些か感性の古さを感じてしまったのも事実。
読了日:12月21日 著者:秦郁彦
血と薔薇コレクション 3 (河出文庫)血と薔薇コレクション 3 (河出文庫)感想
最後に巌谷國士が解説で書いていることが、かつて存在したこの雑誌の空気をよく伝えている。まず澁澤自身が離婚をし、独身であったこと。サッポロ一番をすすりながらの暮らしの一方でこういう文章が生まれた。第2に70年安保前夜だったこと。60年安保とは違い、高度成長期を挟んだ後のこの騒擾の季節にはまだ、戦争の記憶も残っていたと思う。第3に三島由紀夫の存在。戦後の文化の中である象徴的存在だったのだが、百尺竿頭なお一歩進んでしまう寸前だった時の空気を反映している。堂本正樹の男色演劇史についてはすでに取り上げたので割愛。
読了日:12月12日 著者:
血と薔薇コレクション 1 (河出文庫)血と薔薇コレクション 1 (河出文庫)感想
最初の方に収録されている三島由紀夫の「All Japanese are perverse」の一篇が出色。「意味論の森にさすらひながら、つひにはもつとも下劣で卑賤な分析家になるのである」との一文あり。最期を承知していれば何とか自身の中で収斂したいとの思いがにじむような気がしてならぬ。あと写真のモデルでは土方巽がいいなあ。
読了日:12月12日 著者:
血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫)血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫)感想
拝読しました。頭の中を仏文、耽美主義、自然主義、衒学的……という漢語が飛び交いました。中で稲垣足穂の一文は少し気になりました。
読了日:12月12日 著者:
ねこの秘密 (文春新書)ねこの秘密 (文春新書)感想
農耕文化が始まれば収穫物を荒らすネズミが人間の身近に出現し、それを追ってネコが生活圏に現れる。リビアヤマネコから「家畜」としてのイエネコに進化するまでの話が興味深い。福岡県新宮町の相島でネコの生態観察を重ねたという筆者らしく、知見や意見が何処か納得できる。この本を読みながら、久しぶりにネコを飼いたくなってしまった。真っ黒な尻尾の短いオスネコが。イカンイカン。そういえば今や「完全室内飼い」のネコが結構主流なのを知り、それにも驚く。凡百のネコ本の中では出色。
読了日:12月3日 著者:山根明弘
戦場の精神史  ~武士道という幻影 (NHK出版)戦場の精神史 ~武士道という幻影 (NHK出版)感想
伝統だと思っていることの多くが実は明治以降、あるいは戦後に形作られたということは多い。「武士道」もまた、そういう幻想の下に美化された概念だということを解き明かす1冊。中世の軍記文学を繙けば分かる通り、騙し撃ちだろうが、謀略だろうが、寝返ろうが勝った方が善である、という概念はごく自然である。争乱から縁遠くなった江戸時代に入って、「葉隠」のような記述が出現し、明治になって新渡戸稲造の「武士道」で決定的に作られた概念としての「武士道」。西欧の騎士道と重合することで実在したかのように見える。既製の通念は危うい。
読了日:12月3日 著者:佐伯真一

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posted by 曲月斎 at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする