2014年11月01日

☆2014年10月に読んだ本。

2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:4854ページ
ナイス数:484ナイス

腰痛探検家 (集英社文庫)腰痛探検家 (集英社文庫)感想
転んでも只は起きないという見本のような1冊、さすが高野秀行である。腰痛に苦しんだことをネタに整体、鍼、PNF、整形外科などなど、ありとあらゆる施術を試みていく。ウモッカを探す時より、ムベンベを訪ねるのと同じ体力と気力を傾注しているのだからすごい。たとえ様が密林の探検家だったり、ダメ女子だったり、ダメ男子だったり、会社再建だったり。絶妙軽妙。間に入る地の文はまた哲学的で思索に富む。最終的には元々親しんでいた水泳に戻って、がむしゃらに遣っていたら、それで腰痛が軽快したという、めでたしめでたし、なのだけど。
読了日:10月31日 著者:高野秀行
日本劣化論 (ちくま新書)日本劣化論 (ちくま新書)感想
安倍首相が実際にやっていることは米国の第2次世界大戦での成果の否定であり、米国の都合と何事も一致するか分からないという見立ては過去にもあった。ただ本書は自民党内のハト派とタカ派の関係から、社会主義の変遷、受容史、19世紀の戦争と20世紀の戦争の違いまで、ありとあらゆる分野に言及しているのが特徴。「反知性主義の否定」ということをこういう形で表現しているというか。武芸百般、博覧強記、百家争鳴……。黒門町の文楽風に言えば「奥の方に何かキラッと光る物がございます」。広汎過ぎて読了後もどう書いていいか分からない。
読了日:10月29日 著者:笠井潔,白井聡
日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】 (PHP文庫)日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】 (PHP文庫)感想
読みました。昔、阿川弘之は「だ」「だった」ばかりで止める原稿のことを「安物の軽機関銃」といって馬鹿にしたように記憶しています。まさに、その感じ。信濃川の大河津分水も偉大な工事のように言いますが、今は砂浜の浸食など大きな禍根も残しています。評価が一面的に過ぎる気がして。それを補うような軽機関銃の音。
読了日:10月26日 著者:竹村公太郎
日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫)日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫)感想
読みました。
読了日:10月26日 著者:竹村公太郎
ユリイカ 2014年9月 臨時増刊号 総特集◎イケメン・スタディーズユリイカ 2014年9月 臨時増刊号 総特集◎イケメン・スタディーズ感想
「イケメン」という言葉をくくりに、見る側、見られる側、見せる側と論を広げていく。かつての「2枚目」「男前」という言葉は確かに経験のある人間が選び出して磨いていく存在だったけど、今は「ジュノンボーイズ」に代表されるように、集合知が見つけ出し、育てていく存在になっている。最後の伝統的な藝系を示しているのがジャニーズ事務所であるという位置づけはわかりやすい。現に同事務所でも、アイドルが変質しているのだから。久しぶりに「ユリイカ」を読んだけど、こういう活字媒体(何せ1カ所の広告がない雑誌)というのはうれしいな。
読了日:10月24日 著者:小越勇輝,鈴木拡樹,高杉真宙,小野賢章,坂口健太郎,國島直希,飯伏幸太,阿久津愼太郎,千葉雅也,星野太,柴田英里
検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)感想
長篠合戦といえば甲州武田の騎馬軍団が織田徳川の鉄砲隊に敗れ去った戦いと教科書では習った。でも実際は別のところに敗因があったとの分析がこの本。筆者の見立ては物流の中心か否か、動員が可能であったかなどを挙げる。鉄砲を重視してもそれを調達できる製造工場があるか、硝煙、特に弾丸に使う鉛を調達できたかなど。信長記や甲陽軍鑑、手紙や命令書といった文書の読み解きに留まらず、鉛の鉄砲玉を発掘して成分分析をし、産地を同定するなど、歴史学も大きく進歩したものだ。中国産やインドネシア産の鉛まで入っていたというのだから。面白い。
読了日:10月24日 著者:平山優
日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)感想
戦後、日本の地形は大きく変わった。その点でかつての地形や地勢を見落としていると、歴史的な出来事の分析を見誤ることになるというのは事実です。ただ、この方の本は思い込みが激しい気がします。下部構造(地形や河川などの自然地理学の領域)に関しての記述に徹していればおもしろい本だったと思うのですが、生半可な知識と結びつけようとしているのが残念。3冊買っちゃったけど、ちょと2冊目以降はつらいかな。例えば濃尾平野の木曽三川と東海道の関係なら「中世の東海道をゆく」の方が良書。PHP文庫風というか。生兵法は事故の元。
読了日:10月20日 著者:竹村公太郎
二〇世紀の歴史 (岩波新書)二〇世紀の歴史 (岩波新書)感想
出来事の羅列になるのが歴史の教科書、でもこの本は時代に横串を通して20世紀を概観していく。ロシア革命から共産主義体制の崩壊までと捉える「短い20世紀論」に対し、世界全体に視野を広げて帝国主義の領土分割が進んだ1870年代から1990年代までの動きを分析する、結構の大きな1冊。アフリカ大陸や中東の植民地化、極東での動きと、宇宙から眺めたような視点で見ると、歴史の因果がよく分かります。と同時に「謎の独立国ソマリランド」が微分ならこの本は積分。日本という国が遅れてきた帝国主義国として近視眼的だったこともまた。
読了日:10月18日 著者:木畑洋一
四人組がいた。四人組がいた。感想
元村長、元助役、元郵便局長に老婆。元郵便局舎に集まって日毎に繰り返す話を綴ったファンタジー。狸や熊、駝鳥まで登場してのお伽話である。ただ、どの辺にピントを合わせたのかが計り兼ねた。写真で言えば「被写界深度」のようなもの。近景を見れば痛快娯楽の話、遠景を見れば現下の少子高齢化から社会風刺。近景で見えている話は地方では現実であり、遠景はまた抱えている悩みの実像。虚実皮膜の間に仕立ててすべてを包含しようとしたのだろうけど、使い捨てカメラの画像のように、結局はどこにも焦点が合っていない、ということではないかな。
読了日:10月14日 著者:高村薫
昭和陸軍全史 1 満州事変 (講談社現代新書)昭和陸軍全史 1 満州事変 (講談社現代新書)感想
永田鉄山と石原完爾。2人とも日本史の教科書には余り登場しない。でも15年戦争の端緒となった満州事変の立役者である。本の妙味は時の政権がこの2人にどう引き摺られていったのかを詳述している点にある。九カ国条約、四カ国条約といったワシントン体制、国際協調路線からどう逸脱していったか。旧憲法下での内閣制度の限界や参謀本部の位置づけ、海外派兵に対しての内閣の責任等々。政府が執った一つずつの手続きは2人の策謀の前に糊塗弥縫を繰り返したのが分かる。惜しむらくは索引、年表がなく、地図も不十分な点。人物索引は特に欲しい。
読了日:10月13日 著者:川田稔
誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸 (ちくま文庫)誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸 (ちくま文庫)感想
「パオロ・マッツァリーノの日本史漫談」(二見書房)の改題。仮面の作者は誰か分からない(いじめ問題を専門にした社会学者という説もあるそうだ)が、論理は合理的に見えて結構専断的。朝日と読売のデータベースを活用とあるものの、1980年代以前のデータベースは十全ではないのは承知の通り。土下座の習慣、先生という呼び名、牛はどこにいた?、牛乳臭いの由来などなどを考証して見せる文です。確かに誰も書かなかったろうけど、逆に価値があったか否か。新聞の一面広告の章は天野祐吉の本を一度目を通した方がよさそうな内容。戯作ですな。
読了日:10月9日 著者:パオロマッツァリーノ
馬鹿について―人間-この愚かなるもの馬鹿について―人間-この愚かなるもの感想
「勤勉は馬鹿の埋め合わせにはならない。勤勉な馬鹿ほど、はた迷惑なものはない」。人生の愚かさについての格言集(巻末)についている一文である。今日、ゼークトの言葉として喧伝され、ビジネス本に時々登場するこの言葉「有能な怠け者は司令官に、有能な働き者は参謀にせよ。無能な怠け者は連絡将校か下級兵士にすべし。無能な働き者はすぐに銃殺刑に処せ」の元ネタである気がしている。阿川弘之がこの本を随筆で紹介していたので読み始めたけど、ナチスの優性政策の影響が色濃い感じが違和感につながる。今は出版も難しい1冊かもしれない。
読了日:10月8日 著者:ホルスト・ガイヤー
第一次世界大戦 (ちくま新書)第一次世界大戦 (ちくま新書)感想
サラエボでの1発の銃弾がなぜ欧州全体の戦争に発展したかという第1章と第4章の「おわりに」に妙味がある。大戦後、他民族国家の崩壊し、民族自決権と政治への民衆参加で国民国家の成立し、多国間の安全保障体制への移行、女性の社会進出など。今につながる結果が出たこと。ドイツを中心とした総力戦体制が実は国力を問われるこという結果。資源、人口などなど、日本は第二次大戦に向けて何も学ばなかったのだろうか。15年戦争で日本兵の死亡率は約3割3分といわれるが、この大戦の主要国より高く、総力戦の末路もご存じの通りなのだが。
読了日:10月6日 著者:木村靖二
カラー版 国芳 (岩波新書)カラー版 国芳 (岩波新書)感想
浮世絵といえば歌麿、北斎、広重、写楽が既成概念だけど、忘れてはいけないのが国芳。大胆な構図と機知に富む題材、西洋画の技法を取り入れる進取の気性。概観する本がなかったのだが、この1冊は入門書として好個である。こういう企画展があったら楽しいだろう。「猫好き」の浮世絵師であると同時に、弟子思いであり弟子に慕われる一面、総身に彫物をした鳶のような気っ風のよさ、江戸っ子気質が渾然一体となって生まれた絵なのだ。筆者はフリーのキュレイター。ボストン、大英の両博物館蒐集の国芳作品がWebで見られる時代ならではの1冊。
読了日:10月5日 著者:岩切友里子
鞆ノ津茶会記 (講談社文芸文庫)鞆ノ津茶会記 (講談社文芸文庫)感想
織豊時代に生きた外交僧安国寺恵瓊を一応の主人公に、その周辺にいた架空の人物が鞆ノ津辺りで茶会を開いたという舞台設定、道具立てやもてなしを記して置くのが茶会記。小早川家やその周縁の人々の話を聞き書きしたという体裁で話は進む。話の中身は石山合戦のころから関ケ原の合戦前夜まで。登場人物の何気ない会話から、秀吉の時代の空気を写し取ろうという試みは蕪村の絵を見ているような感じで、淡い中に何が心に残る。小田原征伐のこと、朝鮮出兵のこと、権力者という立場の狂気が浮かび上がる。巧い。軽い読後感と同時に残るもの多々。
読了日:10月5日 著者:井伏鱒二
お言葉ですが…〈別巻6〉司馬さんの見た中国お言葉ですが…〈別巻6〉司馬さんの見た中国感想
原稿の執筆年代が支離滅裂で、内容に基づいて、とりあえず部立てをしてまとめましたみたいな1冊。1990年代のものが多く、時代を感じてしまう。2014年6月の新刊ということで期待をしたけど、ちょっと裏切られた感じです。落ち穂拾いみたいな。さすがに本の紹介をする下りはこの筆者ならではの筆捌き(この書き方の影響は受けているのを自覚)だけど、前後は如何かな。週刊文春に連載をしていた頃の筆鋒の鋭さがないのが残念。ちなみにこの本には巻末に詳細な索引(別巻の分だけですが)がついていて、筆を擱くことを考えているのかな。
読了日:10月2日 著者:高島俊男

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posted by 曲月斎 at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする