2014年06月01日

5月に読んだ本。

2014年5月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2888ページ
ナイス数:223ナイス

鉄道でゆく凸凹地形の旅 (朝日新書)鉄道でゆく凸凹地形の旅 (朝日新書)感想
私見です。ひどい本です。散漫で、書いてある内容が印象批評の域、もっといえば見たまま聞いたままの取材メモの域を出ていないようなものだからです。東京都内の地下鉄(丸ノ内線、大江戸線)や山手線の高低比較をするのなら、それで1冊きちっと作ればいい。そうでもなく、メモ書きのような高低図を書き、説明もいささか手抜き。で、それ以外の部分も、ササッとしたメモ書きを項目立てしているので読みにくい上に軽薄。既出のものも地図をきちっと掲載して説明する良心を失ったのなら、こういう本は上梓すべきではない。筆者、編集者の見識を疑う。
読了日:5月30日 著者:今尾恵介
能楽研究講義録―六十年の足跡を顧みつつ能楽研究講義録―六十年の足跡を顧みつつ感想
参った。表章は横道萬里雄と共に旧大系本の謡曲集の筆者であり、戦後の能楽研究の第一人者なのは誰も認めるところ。横道が音楽的側面を含めて天才肌とすれば表は努力型である。史料を読み込み、底本を確かめ、読み解き、立論する。一つの業績が胎蔵曼荼羅のように広がっていく。一編の原稿でも凡俗なら大業績になるのに。本書は講義録なので執筆当時考えたこと、周囲の人の月旦や自身の業績への評価、後の展開など、率直に言及しているのが興味深い。この分野に限らず、研究者の矜恃とは、を示す1冊でもある。表は鬼籍に入ったが猶、畏怖べきか。
読了日:5月28日 著者:表章
ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)感想
シュノーケリングが趣味の筆者が東南アジアを中心に経巡る旅行記。所謂、スキューバではないので深度も潜水時間も限られる中、好みの生き物を見つけて、その面白さを説く。曰くウミウシ、アメフラシ、エイ、イカ、イソギンチャク………。その挿絵も秀逸だし、楽しみ方が生き方の範とするに足る。ウラヤマシイ。ぜひ、私も本を買ったところによって発生する印税を有効に活用されんことを祈る。
読了日:5月24日 著者:宮田珠己
日本一周3016湯 (幻冬舎新書)日本一周3016湯 (幻冬舎新書)感想
統計には標本調査と全数調査(悉皆調査)と2手法がある。筆者は後者の手法を選んだ。章が進んでいくにつれ、書くことに自信が漲る。本書は、本文と脚注からなる。脚注は経巡った温泉の全数の記述。本文は1泉は4〜5行ほど。1日8泉を目標に過ごした生活リズムが伝わってくる。挙げている好きな温泉の条件「ぬるめ、掛け流し、硫黄臭、泡」というのも納得がいく。温泉街の公衆浴場を勧めているのもいい。会社を辞めてまで取り組んだ温泉制覇の旅。3016湯に入って、経費は449万円余だったそうだ。数で温泉を語る。新しい試みである
読了日:5月21日 著者:高橋一喜
旅の理不尽 アジア悶絶編 (ちくま文庫)旅の理不尽 アジア悶絶編 (ちくま文庫)感想
筆者の処女作。若書きとも思えるけど、何か新鮮。何が一番秀逸と思うのは「あとがき」と解説。自費出版の後、小学館文庫に入った時と、ちくま文庫に入った時のが付いていて、猶且、2度の蔵前仁一の解説が付いている。宮田珠己の作家としての生い立ちから、今に至るまでの経緯がよくわかる部分であります。「これまでの旅行記が海外の真実の姿をとらえ、真摯な姿勢で伝えなければならないという使命を帯びていたのに比べ、そういうところからかるがると解き放たれている」という蔵前の一文が全てだ。ステロタイプの台本を脱却したのが価値なのだ。
読了日:5月18日 著者:宮田珠己
一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで感想
「一揆」というと暴力革命という印象ながら「体制を維持した上での契約履行を求める運動」との見立てが新鮮。初期の土一揆、国人一揆、土一揆、国一揆、一向一揆の如き宗教一揆に至るまで説明がつくというのは明快だ。ただ「御用組合」のように事前の了解があってすべて説明がつくというのは??? 一方FBの「いいね!」と一揆の連署は同じ心情という説明は面白いし当たっている。ただここまで明快に切り捌かれるとかつて素敵と思った日高晋の「日本経済のトポス」を思い出す。この本、マル経学者の1冊。律令制から日本を読み解いた本だったが。
読了日:5月16日 著者:呉座勇一
憲法遺言 憲法随想 憲法うらおもて 私の履歴書 (金森徳次郎著作集)憲法遺言 憲法随想 憲法うらおもて 私の履歴書 (金森徳次郎著作集)感想
明治憲法の解釈の根本資料としては伊藤博文の「憲法義解」がある。その点で、現行憲法の生みの親の一人である筆者の解釈注釈は制定当時の人間の意を汲む上で参考になる。現憲法は旧憲法の「改正」という意識を繰り返しているのは興味深い。昨今課題の9条絡みではこう記している。抄記すると「もし再軍備をするとなれば、統帥権の所在が明記されることが好ましい。内閣に属するよりほかの道はないと思うが、政治の波に変化する内閣ではなく、露骨に変化することのない内閣に属さしめねばならない」と。政治の波に翻弄されぬ行政府など望蜀の嘆、か。
読了日:5月14日 著者:金森徳次郎
天皇と葬儀: 日本人の死生観 (新潮選書)天皇と葬儀: 日本人の死生観 (新潮選書)感想
天皇の葬送儀礼を綴っていくことで、日本という国のある一面をプレパラートに載せることに成功した本。蘇生を期待する儀礼があった時代、火葬なのか土葬なのか、天皇が「不在」となることがないように腐心した時代。天皇制を利用することを意図しながら逆の目がでた徳川幕府と江戸時代。本の半分を占めるのは明治以降の儀礼。皇室の伝統のように言われる部分がこの時代の創造であることを示している。象徴天皇制が定着して約70年。なお整理しきれないものもある。家父長、家の文化が消滅しつつある今、その答えを見つけるのは難しいかも。
読了日:5月10日 著者:井上亮
戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)感想
日本史の教科書で習った知識で言えば元寇から応仁の乱までの間、かく国内が激動していたのかと蒙を啓かれる思い。筆者の言うように「階級闘争史観」を通して考えていたから、という部分もるけど、戦で武士が東奔西走していたのか、と。権謀術数に明け暮れた時世に「無為」という妥協の立場をとることが意外や安穏を齎すことを今の世の相似形と見るのは一理。「猛きに逸る」者が闊歩する一方、実は兼好や長明のような人物が出たり、能が成立したり、営々と二十一代集が編纂されたり。本書が挙げる文書では読み切れない何かがあるのだろうけど。上々!
読了日:5月8日 著者:呉座勇一
煙管の芸談煙管の芸談感想
歌舞伎の舞台に登場するタバコ、酒、水の名場面を取り上げ一篇の随筆に仕立てた作品集。「たばこと塩の博物館」関係の雑誌連載で、紫煙に何かと五月蠅い昨今、こう堂々と賛美の原稿となるとこの向きの媒体しか書けないかも。版元も大手ではない。原稿の中では、「村芝居は嫌い」という筆者が豊田市郊外の地芝居で「熊谷陣屋」を見て驚く話がいい。そこには古い歌舞伎の型が残っていたからだ。地方巡業を打った役者の型がそのままに伝えられたということになるのだけど、都会の芝居だけ見ていては分からぬこともある。一種の「蝸牛考」なのかも。
読了日:5月6日 著者:渡辺保
四次元温泉日記四次元温泉日記感想
会社の元上司、仕事仲間の3人で出掛ける温泉紀行。風呂に入るのが面倒なので温泉に興味がないと言う筆者が温泉に目覚めるまでの道のりが綴られる。おっさんの旅行故、目的地で勝手に合流し分かれていく。途中はメールのやりとりをするそうだが「人間、おっさんともなれば寂しさと自己顕示欲が制御しきれないのか、自由行動のおっさん三人旅は現状報告メールがどかどか飛び交う不思議な展開になっている」と記しているのがこの本の本質かもしれない。言うように、温泉に行きたいと思っても湯に浸かりっぱなしではない。何もしないのが値打ちなのだ。
読了日:5月3日 著者:宮田珠己
日本全国津々うりゃうりゃ日本全国津々うりゃうりゃ感想
最初から書籍になることを想定した書き方と、Webで連載の書き方とは自ずと異なる。その点でこの本は元々廣済堂よみものWebの連載、後者であるということを如実に示した本なのかもしれない。テーマは一連の旅随筆というか珍道中ものである。ネタに飽かして自宅の庭や故郷千里ニュータウンをルポするのは蛇足だが、エボックの切り出しとしてしまなみ海道や名古屋の造形美を訪ねる旅は楽しい。ただ、文章が活字になっていると、語尾に続く「だった」が気になり出したり、「である」という語尾が妙に浮いて見えたり。なぜなのか分からぬけど……。
読了日:5月1日 著者:宮田珠己

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posted by 曲月斎 at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする