2014年05月01日

4月に読んだ本。

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3763ページ
ナイス数:232ナイス

辞書になった男 ケンボー先生と山田先生辞書になった男 ケンボー先生と山田先生感想
見坊豪紀と山田忠雄。三省堂発行の2種の国語辞典の作成に関わる話である。NHK番組の活字化。東大国文科の同級生が方や辞書作りに関わり、もう一方は誘われるままに同じ世界に。見坊は客観・短文・現代的を旨とする「三国」を、山田は主観・長文・規範的を特徴とする「新解」を作った。学者たるもの一国一城の主、主張はあるし、見識を世に問いたいと思うのは当たり前だし、版元との関係で印税や原稿料などの報酬の問題もある。我欲に由来する確執を「お話」に仕立てた訳だけど下世話に堕さなかったのが救い。国語辞典はやはり工具書だと思う。
読了日:4月29日 著者:佐々木健一
日本全国もっと津々うりゃうりゃ日本全国もっと津々うりゃうりゃ感想
本篇より先に続篇を読んでしまった。でも何も齟齬を来すところはない。編集者とともに全国を経巡り歩く話である。例え自分が行ったことがある土地でも目の付けどころが違い過ぎて、目から鱗状態である。長崎編に出てくる出島の懐旧−−オランダ人は小さい空間に閉じ込められ暇だったろうし。奄美大島のスノーケリングは楽しそうであります。楽しくて面白いことを書くのに、読者にもそう思わせるためには並外れた筆力やリズムが必要な訳で、見事に巻き込まれてしまう快感は格別。ただ編集者という存在が筆者の本来の「詰め」を甘くしている気もする。
読了日:4月27日 著者:宮田珠己
ときどき意味もなくずんずん歩く (幻冬舎文庫)ときどき意味もなくずんずん歩く (幻冬舎文庫)感想
宮田珠己という作家には習慣性と言うか、中毒性がある。 「だいたい四国……」を読んでからというもの、立て続けにハマっている。全編通して横溢するのは「それあるある」と「そこまではせんぞ、オレは」という心境が入り混じる。意味もなく奈良を目指したり、次々とアウトドアスポーツに挑戦したり、道楽で始めたジェットコースター巡りから評論家にされたり。ただ、この饒舌に過ぎる文体は真似をしようがないし、本当に自分の望むことを追求してそれが本になるというこの人の僥倖(多分努力も)を妬ましく思うばかりであります。脱力と脱帽と。
読了日:4月27日 著者:宮田珠己
へうげもの(18) (モーニングKC)へうげもの(18) (モーニングKC)感想
「一読三嘆」という言葉があるけど、この本は「一読三?」である。大筋の話が大団円に向かう中、あれもこれもと道具立てが多くなるし、プロットも仕掛けなければならない。でもそれはそれ。1巻からの読者としては???の連続なのである。これは漫画を読む力が年齢的に衰えたとしかいいようがない事実をこの作者は言外に教えてくれているのかもしれぬ。それにつけても???というプロットが多すぎる。どうまとめていいのか分からない。
読了日:4月25日 著者:山田芳裕
蔦重の教え蔦重の教え感想
勧奨退職となった会社員が江戸時代の吉原のお歯黒ドブに転生する。出会ったのが版元として知られた蔦屋重三郎。出会いから現世に戻って、第2の人生を歩き出すまでを書く。で、気になったのが巻末の「蔦重の教え」なる1章。自分の小説で「ここが教訓になりますよ」といちいち書くか。それこそ無粋だ。筋立て、小道具等々、オッと思うことあるのに。小説? ビジネス書? 「おまえに教えてやるよ。人生の勘どころってやつを。」と帯にあるのだけど、大きなお世話だと言いたくなるのは小拙の臍曲がりの性のゆえか。「九仞の功を一簣に欠く」、か。
読了日:4月24日 著者:車浮代
創作の極意と掟創作の極意と掟感想
筒井康隆はすごいと思う。ここまで自己分析をしながらものを書いているということに対して。ただ、個人的な印象を言えば「文学部唯野教授」の読後感の方が遥かに衝撃的だったような気がする。それは時代性なのか? 戯画化するべき対象が脆弱化しているゆえか。種種の切り口で小説を分析するのだけど、作例が自身かヘミングウェイに戻ってしまうのはそんな限界を示している気がする。読み、分析し、書いて見せてきた文筆業の成果がこれである、というのはかなり違う気がしてならない。何かを企んでいるのではないか? 訝る自分が既に術中にあるか。
読了日:4月21日 著者:筒井康隆
有次と庖丁有次と庖丁感想
有次といえば京都の調理器具店。打ち出しの鍋、網、おろし金、そして包丁が名高い。プロの料理人が愛用するというその包丁は確かに切れ味が抜群、素人でも振るうのが楽しくなる。ただ、手入れは丹念にしないとすぐ錆びるし、切れ味も鈍る。それでもなお、魅力的なのはその背後に人を感じるからだろう。この本はその包丁を取り巻く人々を点描することで日本の手仕事、精神性、人間関係の機微を書いていく。京都のものづくりに限らず、教えてくれるところは大きい。ただ、茫漠とした筆運びはややまどろこしい、が。元は新潮社の雑誌「波」の連載。
読了日:4月17日 著者:江弘毅
ジェットコースターにもほどがある (集英社文庫)ジェットコースターにもほどがある (集英社文庫)感想
筆者のジェットコースター道中記。長年のマニアという筆者が日本はもとより、世界を駆け巡り、乗り倒す。好きなものを追究し、知見を広めるためには、世界を目指さなくてはいかん、狭隘なナショナリズムは捨てよ、と示唆をしている。狭い日本にゃ住み飽きた、という訳ではないが、実に若者への教訓に満ちた1冊といえよう。巻末の座談会がまた好事家のオフミらしく秀逸。熱意と見識は分かるのだけど、何を言っているのか分からないのが楽しい。唐突ながら、坪内稔典の「カバに会う 日本全国河馬めぐり」にもこの本と似た匂いがしたのを思い出した。
読了日:4月14日 著者:宮田珠己
実録テレビ時代劇史 (ちくま文庫)実録テレビ時代劇史 (ちくま文庫)感想
テレビの放送が始まって60年余。時代劇という分野が生まれ、発展し、衰えていった歴史を追う。筆者はCXの制作者。東京、京都という制作現場や、東映、東宝、大映、日活といった映画会社の系列の問題などを絡めながら振り返る。同業他社への目配りも行き届いていて、通史としては上々の出来だ。スターがいて、景気の変動があって、視聴環境の変化があって……。時代劇は変遷、進化を重ねてきたのがよく分かる。今や大河くらいしか残っていない中、専門チャンネルが生まれ、一方韓国時代劇が垂れ流しの昨今。日本の手業が一つ消えるのが分かる。
読了日:4月13日 著者:能村庸一
わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)感想
やっぱり本業の分野は生き生きとしてますな。サラリーマン時代からその後にかけてのものを収めています。文体としては椎名誠とか、好調時の原田宗典というか。でも、荷造りで荷物を減らせない、海外の空港からのタクシーが不安な心境、選んだホテルが外れだった時の空しさ、などなど、あるあるネタが続く。一方、鳥葬、ネパールやバリの火葬を見たり。パキスタンの核実験で亜欧横断の旅が迂回させらりたり。旅先で起こる珍事(後になれば些末なのだけど)をネタに綴っていく、膨らませていく、地口の連発に、タマキワールドに巻き込まれるのである。
読了日:4月6日 著者:宮田珠己
なみのひとなみのいとなみ (幻冬舎文庫)なみのひとなみのいとなみ (幻冬舎文庫)感想
文句なく面白かった。筆者の愛読者にしてみればスピンアウト企画の1冊なのだろうけど、随筆として十二分に楽しめました。たとえば高校野球の全国優勝の選手、いつの間にか自分より年下になっている訳で、特撮のヒーローものを見ても、特捜隊の隊長が自分より年下になっているなんていう指摘や、個人と法人との関係の考えなどなど。ただ、最後の章「悩みなんてスベスベマンジュウガニの糞の如し」は少し観念論が多い気もして、やはり随筆は難しいと思ったり。あ、最後の有村海運の運航している那覇行きの貨客船話。いいです。改めて乗ってみたい。
読了日:4月4日 著者:宮田珠己
なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか 最強11神社―八幡・天神・稲荷・伊勢・出雲・春日・熊野・祗園・諏訪・白山・住吉の信仰系統 (幻冬舎新書)なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか 最強11神社―八幡・天神・稲荷・伊勢・出雲・春日・熊野・祗園・諏訪・白山・住吉の信仰系統 (幻冬舎新書)感想
正直に言えば羅列本、点綴本です。ありとあらゆる本の記述をつなぎ合わせているに過ぎない。だから本に奥行きがない。一昔前のスピリチュアル本なみの内容です(すこしは学術的な体裁をとっているけど)。たとえば、出雲国造の話。明治以降、千家が独占的に役割を担いました。でも同時に北島家という家もありました。この両者の名はあってもそこからの掘り下げがない。伊勢神宮に神宮寺が設けられた→でもなぜ遠ざけられたのか。朝熊山との関係はどうなるのか、などなど、言葉足らずの部分が目立ちすぎます。八幡神や牛頭天王の成立も。物足りない。
読了日:4月2日 著者:島田裕巳

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posted by 曲月斎 at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする