2014年01月01日

☆12月に読んだ本。

2013年12月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:3593ページ
ナイス数:256ナイス

藤森照信×山口晃 日本建築集中講義藤森照信×山口晃 日本建築集中講義感想
古くは法隆寺、新しくは聴竹居、日本建築の名品、優品、珍品を取り上げて、藤森テルノブ先生と画家の山口晃師が巡るという構成。元々、裏千家御用の淡交社の雑誌に掲載されたもの、品よくまとまっている。山口師の絵は一昔前の夏目房之介風であり、その感覚は新鮮だった。引き換え藤森センセイはもう自家薬籠中の所説という感じ。軽みを感じたとすれば、良き聞き手をえ、良き編集者を得たゆえだろう。中で未訪の閑谷学校や西本願寺書院などいってみたいと思うところがあったのはまた幸せ。
読了日:12月30日 著者:藤森照信,山口晃
今日の風 (中公文庫)今日の風 (中公文庫)感想
昭和40年前後の随筆が中心。今、読み返すと、こういう感覚を持てる大人がいたのだ、という事実に感嘆を禁じえない。今となってはジェンダーとか、いろいろな制約はあるにせよ、そういうものを超越して読ませてしまうのがこの筆者の人徳というか。でも、あれだけの仕事をこなしながら、自由な時間にこれだけの随筆をこなしてしまうというのは一種の天才、なのでありましょう。
読了日:12月29日 著者:入江相政
歌舞伎 型の真髄 (単行本)歌舞伎 型の真髄 (単行本)感想
数々の演目を取り上げ、演目ごと、場面ごとに、上演された型を紹介して行く。古い時代は劇評や写真を頼りに推量、推定する。膨大な蓄積があっての藝である。歌舞伎という演劇が数日に渡って興行されるからできる芸当ともいえる。同じ古典演劇で、能なら1回限りが原則。偶然の産物が型として、小書(特別演出)として、残ることもあるが、大半は揮発してしまう。そんな彼我の差を読みながら考えていた。あと、ああ、この場面と思い浮かぶ程度に演目を脳内で画像化できないと面白くもなんともない1冊になる。
読了日:12月27日 著者:渡辺保
日本海軍進水絵はがき〈第4巻〉 (光人社NF文庫)日本海軍進水絵はがき〈第4巻〉 (光人社NF文庫)感想
このシリーズは切り離せばそのまま絵はがきとして使えます、という趣向。つまり本の「のど」の部分の製本が甘い。少し開いて読もうとすると、本自体がバラバラになってしまうという代物。この巻の中に出てくる戦艦摂津、戦艦加賀のように、計画と実態は食い違ってしまうと思うのはうがちすぎですな。
読了日:12月24日 著者:
日本海軍進水絵はがき〈第3巻〉 (光人社NF文庫)日本海軍進水絵はがき〈第3巻〉 (光人社NF文庫)感想
重巡利根の絵はがきが所収されているが、出てくるのは進水式のくす玉と日章旗&スリーダイヤの旗。今の自衛艦の進水式に変わらぬ有様で、興味深い。あと藤永田造船所というのが頻出する。見れば元禄年間創業の大阪・堂島の船大工屋兵庫屋を淵源にもち、1967年に三井造船に吸収合併されるまでそのブランドはあったという。特に駆逐艦の建造を得意として「東の浦賀船渠、西の藤永田」と言われたよし。
読了日:12月23日 著者:
日本海軍 進水絵はがき〈第2巻〉 (光人社NF文庫)日本海軍 進水絵はがき〈第2巻〉 (光人社NF文庫)感想
同じ絵はがきでも、かつてタミヤなどプラモデルメーカーが連合して発売していたウォーターラインシリーズの箱の絵、のようなタッチのものもある。いわば劇画調というか。でも、進水式の空気にはそういう勇猛果敢なものよりもどこかめでたさがあるものの方がふさわしい。
読了日:12月23日 著者:
日本海軍 進水絵はがき〈第1巻〉 (光人社NF文庫)日本海軍 進水絵はがき〈第1巻〉 (光人社NF文庫)感想
進水式というのは実に晴れがましい。今でも防衛省の海自のHPにいけばその光景を見せてくれる。そこで記念品で登場するのが絵はがき、というのが時代である。昭和初期の「意匠(デザインとはいわない)」を尽くしたものもあり、なかなかに興味深い。中でも龍驤、雪風、第12号掃海艦のものがそんな空気を伝えている。
読了日:12月23日 著者:
味のぐるり (中公文庫 M 62-5)味のぐるり (中公文庫 M 62-5)感想
明治38年生まれの筆者。生家は藤原俊成、定家親子を先祖にもつ家柄である。お公家さんの出だなぁ、というしかない筆捌き。久しぶりにこの人の文章を読んで思った。今までの食の遍歴を綴るもの。品のいい店が多いのだけど嫌みにならないのが筆者の徳、というものだろう。体言止めがうまくリズムを作っているし。自身の書き方の上では知らず知らず影響を受けていたかも。ただ、こういう文章を書く品格のある人物はもう日本にはいない。それをスノビッシュとか、ペダンチックとか、ディレッタンティズムとか謂わば言えと言い切れる気位の歯切れ良さ。
読了日:12月23日 著者:入江相政
そして、メディアは日本を戦争に導いたそして、メディアは日本を戦争に導いた感想
要点は最後の2章、「暴力とジャーナリズム」「現在への問いかけ」にある。特定秘密保護法が成立した今、国民を四角形に囲い込む1辺が成立してしまったのを感じる(残りの3辺は教育、暴力、情報の一元化)。昭和1ケタ時代に似ているという措辞は今までにも重々感じてきたところ。中で、週刊朝日の「ハシシタ事件」に関しての橋下市長の態度など劇場型になっているという指摘が興味深い。確かに情報発信の手段を個々が持てなかった時代との差、経験則が成立しえない、煽情や大衆行動、暴走が起きやすいのは事実。改めて「軽躁」という言葉を想う。
読了日:12月21日 著者:半藤一利,保阪正康
場末の文体論場末の文体論感想
1956年生まれの筆者の妄言、いちいち心に響く。高度成長期、自身が果たせなかった夢を託す親、収集癖もリアルでないと納得できない世代。こういう人種はある意味で奇矯であると思うし、その自覚はある。でも筆者がこの本で書いていることは、痒いところに手が届く愉悦に近い。他の世代に共感を得うるとは思えないが。本を溜め込む親父、ブリタニカのセールスの親父、いたよ、うんいた、としか言えない。ただ筆者の目指すところはそういう同時代感だけではないのは言うまでもない。悲しいくらいにある意味で普遍的なのだから。
読了日:12月19日 著者:小田嶋隆
小田嶋隆のコラム道小田嶋隆のコラム道感想
随筆、漫筆、コラム、エッセー、随想。色々な言い方はあるにせよ、本記が主菜なら、コラムはお新香である。このお新香を美味しく食べてもらうには、盛り方、塩加減、素材は何、等々を縷々書いている本。コラムについてのコラムだ。ハウトゥ本ではない。巻末に付いている内田樹との対談を先に読んで、本編を読み返すと面白かったかもしれない。筆者のいう、主語、結語の大切さ、視座の多様性、話題を飛躍させるテクニックなどなど、掬すべき点は多かったとまじめっぽく書くと、似合わない気がする。原稿の行数と締め切り、確かに執筆の2大要素だ。
読了日:12月16日 著者:小田嶋隆
正弦曲線 (中公文庫)正弦曲線 (中公文庫)感想
不明にして筆者のことは知らぬ。岐阜県出身の作家で仏文系が専門みたいだ。扨措、故丸谷才一が力業の随筆とすれば、筆者は手弱女ぶりが目立つ。標題は三角函数の「sin cos tan」に由来する。バイオリズムを想えば分かるけど、いつも同じ振れ幅の波動だが、少しずつ前に進む。そんな論法を身近で展開してみせる。野帳、測鉛、パジャマ、瓦、製氷皿。60年代生まれの感覚をどこかで擽りながら進む。こういう本もたまにはいいか、と思う。ところで活字の組体裁で天の余白は広めで小洒落ていると思ったが……。目の錯覚だった。なぜ?
読了日:12月15日 著者:堀江敏幸
大衆めし 激動の戦後史: 「いいモノ」食ってりゃ幸せか? (ちくま新書)大衆めし 激動の戦後史: 「いいモノ」食ってりゃ幸せか? (ちくま新書)感想
一番おもしろい部分は「野菜炒め」の考察。家庭の厨房の火力が強くならないと作れない。炭火とか、竈では無理であるとの指摘は実に目から鱗。1960年代ごろから一般化する。かつて横浜の南京町ではコークスを燃やして料理を作っていたのを思い出す。その下りに至るまでの全段、結構話がややこしい。言い換えれば理屈っぽいというか。大洋漁業に関わったらしいこと、大量生産大量消費の時代に移っていったこと。そういう記述が筆者の体験と重ね合わせて綴られるのであるが。で、日本料理は料亭割烹のもので家庭の菜とは違うという論理は如何かな。
読了日:12月12日 著者:遠藤哲夫
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)感想
久しぶりの読み直し。内容については各氏が書いているので。俎上に上がっているのはノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル島攻防戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、そして沖縄戦。そろいもそろって敗因に共通項があり、それをえぐり出していくのが妙味。2度目だったので、各章のアナリシスを読み、最後の失敗の本質、失敗の教訓と読み進めるといいでしょう。詳細な項目に戻りたければ1章目の各項に戻ればいい。今でも何も改善されていないのだな、と久しぶりに読み直して、ひとりつぶやくばかり。
読了日:12月10日 著者:戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
日本軍艦ハンドブック (光人社NF文庫)日本軍艦ハンドブック (光人社NF文庫)感想
光人社NF文庫っていうのは、不思議なラインナップです。これは旧日本海軍の軍艦の艦歴などを略記した本。文庫の紙質という制約の中、写真を掲載してもつらい。Webにある「天翔艦隊」(http://www.d1.dion.ne.jp/~j_kihira/tensyofleet.htm)の艦影でもきちんと載せた方が良かったか。ざっとした記述なのだけど、戦艦→空母→重巡→軽巡→駆逐艦、とあっけなく沈んでいるのがよく分かる。中で潜水艦では「消息不明」「沈没と推定」「喪失と認定」という用語が増えるのは何ともいえぬ。
読了日:12月9日 著者:雑誌「丸」編集部
著名人名づけ事典 (文春新書)著名人名づけ事典 (文春新書)感想
失礼ながら、好事家がまとめた1冊、って感じ。ただただ羅列。その上、「願いを込めたものではなかっただろうか」「意味を込めた命名であっただろうか」という文末が非常に目立ち、筆者の「思い込み」が窺える。本の体裁とすれば、著名人の尊属、卑属を羅列し、事績を切り貼りしただけの本。名前の通事(1字をもらって、みたいな部分)があればそれを宛て推量する、くらい。今後、この本を眺めるとすれば、森鴎外の子供の名前は何と読むのだったっけ、と探す時くらい。工具書にもならない1冊。徒労感が残る。でも筆者は満足なのだろうな。
読了日:12月6日 著者:矢島裕紀彦
謎解き洛中洛外図 (岩波新書)謎解き洛中洛外図 (岩波新書)感想
1994年京博の図録「都の形象」が見付かったら読み直すかと思っていた1冊。今回の引っ越しで2冊がそろった上に、東博の新図録も加わって再読。上杉本洛中洛外図屏風の成立を探るという内容。明治時代に存在を知られるようになって時期や作者、注文主等の経緯が探られてきた。先学先考の論文を引用しながら、結論はある1点に収斂していく。パズルであり、歴史学や美学、建築学など学際を縫う世界。それはおもしろい。でも、一推論である。個人的には「研究とは世の中の何に役立つのか考えよ」と師匠に学生時代に言われた言葉が脳裏に浮かぶ。
読了日:12月4日 著者:黒田日出男
龍の棲む日本 (岩波新書)龍の棲む日本 (岩波新書)感想
結構、話題の展開に飛躍がある。理解するにはエピローグを読んでからの方がいいかもしれない。測量も衛星写真もない時代に書かれた行基図。日本の古い地図であるが、「日本は密教法具の独鈷の形である」という理屈が加わったり、「金輪際(地底の最深部)から続く要石がある」「竜が出入りする穴が各地にあり、つながっている」などの解釈だったりと、残っている図の背景の不可解さを謎解きしていく。それが蒙古襲来であったり、鉄砲伝来とともに変化、衰退していくという指摘はおもしろい。ただ筆者のいう竜穴のように論理は天衣無縫、である。
読了日:12月3日 著者:黒田日出男

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posted by 曲月斎 at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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