2013年11月01日

10月に読んだ本。

2013年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2342ページ
ナイス数:134ナイス




新版 歌舞伎十八番新版 歌舞伎十八番感想
今年急逝した12代団十郎の文。歌舞伎十八番といえば古くは戸板康二の著作があるが、演じる側から書いているのが興味深い。言ってみれば渡辺保の名著「歌舞伎手帳」で余白のような部分に、書き込んでいる藝談の部分のような味わい。これを歌舞伎十八番の根源、団十郎が語ったというところがミソです。勧進帳、助六、矢の根、毛抜など、上演頻度の高い狂言に関しては興味深い。口伝や伝承といった歴史的な部分から上演者としての経験を織り交ぜている。いわば堀越夏雄の肉声です。読んだ後、「歌舞伎 家と血と藝」を再読すると興趣が深いです。
読了日:10月26日 著者:十二代目市川團十郎


仏像の顔――形と表情をよむ (岩波新書)仏像の顔――形と表情をよむ (岩波新書)感想
入門書としては好個の1冊でしょう。図版がもっと挿入されていればもっとよかったのに、と思います。 印度から中国、そして日本。日本国内では飛鳥、白鳳の昔から鎌倉時代までの変遷を追います。当たり前のことですけど、顔を科学することが仏像の表情の研究に役立つというのはコロンブスの卵、みたいな話。習った記憶の彼方の「日本美術史」ではそんな視点はなかったなあ。ただ、初心者向けに書いていることを筆者自身も認めていますが、ちょっと訳知りな方にはもの足りないかもしれない。そんな気もしました。
読了日:10月16日 著者:清水眞澄


暦に見る日本人の知恵 (生活人新書)
暦に見る日本人の知恵 (生活人新書)感想
これも今更、本かな。日本が採用していた「旧暦」と呼ばれるものは、月の満ち欠けを基本にした太陰暦の部分と、太陽の運行を利用した二十四節気の2つの組み合わせで成立している訳で、それをどう割り振るか、という点で改暦が繰り返されてきたのですから。日本人の知恵と大上段に振りかざすほどの内容ではないです。「こよみのページ」をWebで検索してその詳細な注釈を読んだ方が得策です。
読了日:10月10日 著者:岡田芳朗


スポーツの世界は学歴社会 (PHP新書)スポーツの世界は学歴社会 (PHP新書)感想
プロスポーツ選手と学歴の相関関係を探った1冊。目新しいのは統計経済学の手法を取り入れ(ちょっとその変数の設定には疑問が残るが)て、大卒、あるいは特定の大学を卒業する方が、セカンドライフを含めて優位である、というのが本書の結論。ただ、中盤で調べたことがうれしくなったのか、少し訳が分かっている人間には既知のことを羅列されるのには閉口。ただ、手法が目新しく見えるとはいえ、何かサプライズはない気がする。
読了日:10月10日 著者:橘木俊詔,齋藤隆志


孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生感想
「社会関係資本」という概念こそが人間が生きていく上で重要である、ということ−−ま、人間ひとりじゃ生きていけない−−ってことなのだが。米国内での社会的な統計調査の結果を駆使して、1960年代から始まった社会構造の変化、つまり社会関係資本の衰退を分析する。その理由は? 時間と金銭的な問題、世代交代、技術革新などなど傍証が並ぶ。社会関係資本は大事、ということになるのだけど再生の端緒はあるのだろうか。米国内がそうであったように日本国内でも同じ現象は進行している訳で、加えて少子高齢化が進んでいる。不可逆的に見えるが
読了日:10月9日 著者:ロバート・D.パットナム


ひと皿の記憶: 食神、世界をめぐる (ちくま文庫)ひと皿の記憶: 食神、世界をめぐる (ちくま文庫)感想
本を読んでいて「これを食ってみたい」と思ったのは久々の経験。 それほどに食い物を美味く、巧く書く技能に長けているとしか言いようがない。言ってみれば、「丸谷才一+開高健+吉田健一」というべきか。 冒頭の能勢のアユから始まって、世界を巡る食談は端倪すべからざる、としかいいようがないので、知り合いのイタリアンシェフに「フィレンツェ風ステーキは作れるか」と尋ねるしかないほど。 一時が万事、腹が空いている時には読むべき1冊ではない。 「食べることは記憶につながる」というテーゼを傍証する旅に付き合うのもまた一興である
読了日:10月8日 著者:四方田犬彦


ヒロシマヒロシマ感想
「葭のずいから天覗く」ということわざが思い浮かんだ。被爆直後の広島で生存者に聞き取り調査をし、それを時系列で整理する。人類が初めて蒙ったこの惨劇を「点」を細密に描くことでそれ以外の情景を連想させている。筆致が上手い。ただ真実を探ればはその何万倍もの事実の山があるのも確かだ。後段はその生存者の後日談。こういうルポを読んだなら、当然抱くその後の話に答えてくれている。GHQが報道制限をした中で、ある意味で率直な姿を米本国に伝えたこの一編のルポは貴重なものだろう。出来れば訳出される時に広島の地図が欲しかった。
読了日:10月2日 著者:ジョンハーシー


一軍人の思想 (1940年) (岩波新書)一軍人の思想 (1940年) (岩波新書)感想
第1次大戦後の制約の下、独逸陸軍を再建したといわれる人物の本です。たぶん、今の日本ではゼークトの組織論、と喧伝される部分で唯一知名度を保っているともいえるかも。その論に曰く「有能な怠け者。これは前線指揮官に向いている。/有能な働き者。これは参謀に向いている。/無能な怠け者。これは総司令官または連絡将校に向いている、もしくは下級兵士。/無能な働き者。これは処刑するしかない」と。でもそんなことは書きそうもない人物の本に見えましたね。「次の大戦は米がついた方が勝つ」ともあったし。所謂、「ギョエテ曰く」の伝説?
読了日:10月2日 著者:ゼークト

読書メーター
posted by 曲月斎 at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする