2013年02月01日

1月に読んだ本。

2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4525ページ
ナイス数:170ナイス

井月句集 (岩波文庫)井月句集 (岩波文庫)感想
この方のこと、不明にして知りませんでした。金高堂に平積みになっていたのをぺらぺらとめくって購入。味わい深い句が多いような気がします。芥川龍之介が褒め、種田山頭火があこがれ、つげ義春は漫画に描いたよし。句集ってのは一気に通読するものではないので、しばらくパラパラするつもりですが、一身放下したような作風はなかなかのものと思います。ちなみに、モデルにした映画「ほかいびと」はこちらから。http://youtu.be/HD9lblDXfic
読了日:1月31日 著者:井上 井月
高速道路の謎 (扶桑社新書)高速道路の謎 (扶桑社新書)感想
2009年の本。つまり民主党政権誕生前夜、後半の内容はもう古くなっています。前半の渋滞のメカニズムは「渋滞学」の入門編として分かりやすい。拡幅や新路線建設が交通の円滑化に資しているのはよくわかる。そして今、首都高速の改修が叫ばれ、それは尤もと思うのだけど、今暮らすエリアにはまともな国道はなく、高規格道路もない。日本人として交通の便を平等に享受したいと思うが、限られた財源。どうしたらいいのか、正直のところ、答えはまだ見つかっていない。
読了日:1月27日 著者:清水 草一
空海と密教美術 (角川選書)空海と密教美術 (角川選書)感想
弘法大師空海が本格的な形として日本にもたらした密教。彼が招来した膨大な仏像や法具、絵画などから読み解くというのが眼目の本だが、結構厳しいかも。ただ、大日経系の思想を反映した胎蔵曼荼羅と金剛頂経系の金剛界曼荼羅の両部が彼のところで合体したという示唆や、その発展で実際に法具を使っての法要、後七日御修法の内容、台密を伝えた天台宗のみならず、浄土、曹洞、日蓮の各宗に見る密教的要素にも言及。ざっと概観するには便利かも。ただ、空海自身が目指した思想とは別に、高野聖が確立した信仰の方が今も色濃く残る、との指摘はいい。
読了日:1月27日 著者:正木 晃
日本の舞踊 (岩波新書)日本の舞踊 (岩波新書)感想
舞踊が難解に見える理由を「定義がない→どこまでを舞踊というのか領域が分からない→故に言葉で表現しにくい」と言う。 で、提示した概念が「身体の言葉」。曰く声が聞こえるものが舞踊である、と。巻末の章では「振、肚、舞い手の言語」と言い換える。ここを先に読んだ方がいいかもしれない。 代表的な演者として地唄舞の武原はん、歌舞伎の7代目三津五郎、6代目歌右衛門&7代目梅幸、6代藤間勘十郎、京舞の4世井上八千代、能の友枝喜久夫を挙げる。自分で得心がいったのは親しみのある喜久夫くらい。 難しいことを易しく書くのは難しい。
読了日:1月22日 著者:渡辺 保
浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか (幻冬舎新書)感想
表題に対応する部分は224ページから231ページの前半のみ。それまでの縷々とした文は南都六宗から、各宗旨の解説が続く。いくつか興味深いこと(曹洞宗で暴力が修行の課程で容認される気風、親鸞伝説の意図的な形成など)はあるが、氏の本の特徴か、全体的に既読感は否めない。本書では指摘が薄いが、曹洞宗の寺院が異様に多いのは江戸時代の寺請制度、宗門改の影響である。親鸞&日蓮を除き、相互乗り入れが多いのが日本仏教の特質であると思う。だから××宗とも○○派ともいえない。誠実さに欠け、新書だからな、という感が濃厚な1冊。
読了日:1月16日 著者:島田 裕巳
北の無人駅から北の無人駅から感想
今年最初の★5本。北海道の無人駅を端緒に其処に暮らす人の姿を綴っていく。時間をかけ、人間関係を深めながらの記述に敬服。時間軸を加味した4次元のルポというべきか。断崖の磯で暮らす漁師、タンチョウから考えた自然保護、美味いと最近評判の北海道米の生産現場から見た日本の農政、流氷の果てから見た日本の観光と世代間の意識の差、陸の孤島で暮らし続ける人々の覚悟、平成の市町村合併と地方自治のあり方への論考。どれも北海道での問題であるが、北海道だけの問題ではない。自分もいつかはこんな1冊を、と勇気を与えてくれた本。注も秀逸
読了日:1月14日 著者:渡辺 一史,並木 博夫
田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)感想
神は細部に宿るという。首相在任時代から刑事被告人となり、没するまでの間、取材対象と記者として身近に接してきた筆者ならではのエピソードが心憎い。ただ、日本の政治、自民党の政争という側面から見た場合の充足感と、ex.孫崎史観(というか「戦後史の正体」のような対米関係の中も視野に入れた考え)を見た時の物足りなさと。何か不思議な読後感だった。この本が微分なら後者は積分、のような関係か。早野さんはこの本と大逆事件が書きたかったテーマなのだろうか。記者としては冥利の対象だとは思うけれど。あと現下の政治家は小物だなあ。
読了日:1月13日 著者:早野 透
体現芸術として見た寺事の構造体現芸術として見た寺事の構造感想
世の中には天才という人がいるのだな、と思う本です。体裁は能の世界でいえば岩波の旧大系本に付された解説のように、基礎的な事項解説の後、寺で行われる諸法要を分類、小段に分類して解説していくという作業を9種の行事で解説しています。また、口伝や直伝の多い世界のこと、参考文献を列挙しているのも研究者の姿勢として畏敬できます。筆者は日本の楽劇の構造解明に一生を捧げた方ですが、源流の一つにこの「寺事」を見、研究の第1歩だけを示されたように思います。後進の研究者がこれをどう生かすか、泉下の先生はどう見ているのかなあ。
読了日:1月13日 著者:横道 萬里雄
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)感想
外交で自国の利益を優先して相手と交渉するのは当たり前だ。それが「これは驚いた!」という本の帯に惑わされてしまうのは如何? 対米追従か、自主外交か。世界の中の日本の立場で変わるのは当然。紹介している石橋湛山の言葉、「次の大蔵大臣も圧力に屈しなければ米国も考える」と紹介している。政治家以上に国益を守るのを職責とし、外交の任に当たっているプロの外務官僚がそれすら貫けないのかよく分からん。政治家の所為にするのと同時にプロの責任は? と思う。一歩過てば松本清張の「戦後史探訪」になる所を事実の積み上げで凌いだのは佳。
読了日:1月8日 著者:孫崎 享
空海と日本思想 (岩波新書)空海と日本思想 (岩波新書)感想
正直に言えば、難解本です。筆者が「プラトンの思想は美とイデアと政治という基本系」と覚醒したのに基づき、空海の基本系は「風雅と成仏と政治」にあると、気づいたというテーマに基づいての随想が続きます。性霊集を軸に、その著作を例挙しながら、論を進めていくのですけど、これがまた実に飛び石風で難解。なかなか筆者の意図するジャンプについていけません。白川密成の「空海さんに聞いてみよう」の方が平易で、ほぼ同じ内容を綴っている気がすると思うのは小生の僻目でありましょうが。
読了日:1月4日 著者:篠原 資明
米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて感想
書名はともかくも、日、米、中の地上戦戦闘マニュアルの比較です。圧倒的な火力と物量、制空・制海権を持つ米軍に対して、建前の水際殲滅から勝つ見込みのないゲリラ戦に変換していく日本軍の思想、そして重視をしていなかった「地雷」の不足ゆえに手作り爆弾をせっせと作っていたかと思うと切なくなります。「相手が圧倒的な鉄量なら日本は土の量」と蛸壺、ですから。「未完のファシズム」から連なる思想の揺れが最末端にいくとどうなるのか、教えてくれる1冊です。
読了日:1月4日 著者:一ノ瀬 俊也
日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)感想
デザイン、という言葉から連想されることよりもずっと広い世界を見渡している。日本を繁栄させてきたキーワードを「繊細・丁寧・緻密・簡潔」に収斂し、車や家、観光、先端素材などに論考を広げる。ものや情報が平衡、均衡が進む今の日本(というか世界)にあって、「オープンネス」と「シェアリング」への感受性の大事さを説く。2011年の東日本大震災を契機に考えることまた広がりが刺激に富む。今、自分が住んでいる土地の問題を考える上で、一つのきっかけになった。68歳のミック・ジャガーを「大人のプリンシパル」と評すのが面白い。
読了日:1月3日 著者:原 研哉
性愛空間の文化史性愛空間の文化史感想
「ラブホテル」という空間の誕生から現在に至るまでの考現学、です。立派な博士論文。前著より読みやすいかもしれません。「さかさクラゲ」なんて言っても今時は死語。でも曖昧宿の昔からモーテルの出現、そして改正風営法の下で、変貌を遂げ、さらにはぴあ、Tokyo1週間などの雑誌媒体でのラブホの登場など、紆余曲折を綴っています。ただ、この装置の盛衰は結局は人口減少という今の現実の前に、大きくカーブを切っていくのだろうなあというのが読後感。ともあれ、筆者の資料を博索し、聞き書きを積み上げる執筆姿勢には敬服します。
読了日:1月2日 著者:金 益見
キリスト教入門 (扶桑社新書)キリスト教入門 (扶桑社新書)感想
日本では難解と思えるキリスト教を簡単に説明した本です。キーワードは「マーケティング」と「イノベーション」。宗教をビジネスとみれば、パウロに始まるカソリックの経営には教会、修道院、聖職者という括りが、ルターに始まる宗教改革には在家第一の考えが、英国教会には寺請檀家制度が、今のアメリカの清教徒系〜福音派では野外集会が果たした役割の大きさを説きます。だが、日本ではすべての試みは在来の文化に飲み込まれるという指摘はなるほど、です。あと実はキリスト教は多神教という指摘もGOOD。新書の読み物としては好個の1冊です。
読了日:1月2日 著者:島田 裕巳

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posted by 曲月斎 at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする