2013年01月01日

2012年に読んだ本(2)。

テキヤ稼業のフォークロアテキヤ稼業のフォークロア感想
考現学の報告書、というこの本の性根を踏まえて読めば、非常に楽しい本です。近所に夏になると、0の付く日(10日、20日、30日)に縁日が立つ環境に育った所為もあるかもしれないけど、おじさんやおばさんたちの日々の生活や社会の一端を知ることができました。本の中で出てくる「擬制的親子関係」という言葉(要は親分と子分の関係)にずっと引っかかりを感じ続けているのですが、この仕掛けを知ることができたのが収穫です。ただ、ひと昔前はテキヤ系といわれていた組織も、広い意味での反社会組織に色分けしていいのか、とも思いました。
読了日:5月23日 著者:厚 香苗
公家侍秘録 7 (ビッグコミックス)公家侍秘録 7 (ビッグコミックス)感想
ストーリーが面白いのだから、ドラマ化したらいいのにね。そもこういうマンガも掲載されていたビッグコミックは恐るべきというべきか。
読了日:5月6日 著者:高瀬 理恵
公家侍秘録 6 (ビッグコミックス)公家侍秘録 6 (ビッグコミックス)感想
だんだん、この辺りにくると、展開が苦しくなってくるような。1話読み切りなのだけど。
読了日:5月6日 著者:高瀬 理恵
公家侍秘録 5 (ビッグコミックス)公家侍秘録 5 (ビッグコミックス)感想
このシリーズは設定の妙、に尽きますね。絵の内容とかはともかく、ストーリーに尽きる。当たったストーリーなら面白い。
読了日:5月6日 著者:高瀬 理恵
公家侍秘録 4 (ビッグコミックス)公家侍秘録 4 (ビッグコミックス)感想
3巻まで持っていて、その後は池波正太郎の「黒白」を焼き直した話が出てきたので疎遠になっていたのだが、思いついて4〜7巻を購入したのでおじゃりまする。
読了日:5月6日 著者:高瀬 理恵
公家侍秘録 3 (ビッグコミックス)公家侍秘録 3 (ビッグコミックス)感想
引っ越しで出てきた。久しぶりに読む。
読了日:5月6日 著者:高瀬 理恵
四国遍路―さまざまな祈りの世界 (歴史文化ライブラリー)四国遍路―さまざまな祈りの世界 (歴史文化ライブラリー)感想
遍路道の傍らに住むようになって、歩く人と歩かれる側の人、という視点が出てきたところで、この本は新鮮だった。行乞のために遍路道を外れる者がいた存在、「オヘンロサン、オシコクサン」対「ヘンド」の差、ハンセン病などの差別故に旅に出た遍路の存在などなど、最近は視点から外されることの多い問題も扱う。印象的だったのは、「××寺」ではなく「××番」と呼ぶことの多い札所という考え方。寺という存在は実は二の次であることを示唆するいい視点だと思う。頼富先生の本と並んで四国遍路本として出色。岩波写真文庫への言及もいい。
読了日:5月4日 著者:星野 英紀,浅川 泰宏
日本の聖地ベスト100 (集英社新書)日本の聖地ベスト100 (集英社新書)感想
期待は端からしていなかったけど、買ってしまったものだと割り切って読んだものの、何ともはや、の本。一応、大学教授であるのなら、しかるべき研究的な側面がないことには、始まらない。単なる個人的な紀行文とその感想、という域を出ない。一時は流行った先生だけどね、トホホ。
読了日:5月3日 著者:植島 啓司
ジョージ・ポットマンの平成史ジョージ・ポットマンの平成史感想
手法としたら、かつてのCX系で放映した「カノッサの屈辱」と同じなのだけど、そこはTX系。予算の枠が限られている中で、よくも作り込んだと思う。もっともらしい話の運びと、もっともらしい有識者のコメント。ある意味で今のテレビ番組の戯画になっているのがこの番組だった。それを活字に起こしたら、という内容になっている。イメージを広げるのなら、併せて発売されているDVDを見ることをおすすめする。最後の最後までもっともらしい結構。たぶん、平成という歴史を語る上では楽しい1冊です。
読了日:4月30日 著者:ジョージ・ポットマン,高橋弘樹 (日本語版著者),伊藤正宏 (日本語版著者)
病理集団の構造―親分乾分集団研究 (1963年)病理集団の構造―親分乾分集団研究 (1963年)感想
日本的な結合形態として親分子分関係に注目し、その原理を家や、同族意識と深く関わっていることを明かした上で、親分子分集団を「第一次集団的性格と第二次集団の交錯、累積」とする。このような見解はそれ以降の日本の組織や集団研究の分析に登場するし、家族主義的経営や擬制的親子関係という考え方の生まれる起点にもなっている。800ページの飛ばし読みでもいいがいい本です。
読了日:4月30日 著者:岩井 弘融
戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)感想
「それでも日本は戦争を選んだ」の骨子版、です。どちらを先に読むかは、個人の好みでしょう。平易なのはもちろん講義録である後者ですが。
読了日:4月30日 著者:加藤 陽子
眠る盃 (講談社文庫)眠る盃 (講談社文庫)
読了日:4月30日 著者:向田 邦子
霊長類ヒト科動物図鑑 (文春文庫 (277‐5))霊長類ヒト科動物図鑑 (文春文庫 (277‐5))
読了日:4月30日 著者:向田 邦子
女の人差し指 (文春文庫 (277‐6))女の人差し指 (文春文庫 (277‐6))
読了日:4月30日 著者:向田 邦子
日本人の性格構造とプロパガンダ日本人の性格構造とプロパガンダ感想
日本に対しては「父性」に基づいて命令をする、この方法が統治の早道であるとの分析は見事としか言いようがない。しかも外部から認められぬ存在となると、本来はようごしてくれるはずの身内までアンチに回るという分析も面白い。単なる大家族制とか封建制で片付けきれぬ部分見事に分析している。しかも数十人への聞き取り調査で達成したところに筆者の剛腕を感じる。ただ、幼少期の排便排尿の躾に帰納するのは、果たしていかがかとも思うが。読んで楽しい1冊。
読了日:4月30日 著者:ジェフリー ゴーラー
鍾馗さんを探せ!!: 京都の屋根のちいさな守り神鍾馗さんを探せ!!: 京都の屋根のちいさな守り神感想
遠目の美人という言葉があるけど、屋根の上の鍾馗さんもそんな存在なのかもしれない。アップでみると威厳があるというより、どこか滑稽な面も見える。 巻末に紹介している瓦屋さんに、思わず発注したくなったのも事実。 とあれ、街角のエポックに注目した筆者に敬服。
読了日:4月29日 著者:小澤 正樹
全国森林鉄道 JTBキャンブックス全国森林鉄道 JTBキャンブックス感想
日本国内で今や森林鉄道が現役で動いているのは、屋久島だけ? でもこの鉄道が日本の林業、いや中山間地の生活を支えてきた。その総まとめ、というか、クロニクルというか。漏れはあるものの、格好な入門書である。でも林鉄が存在していたことを知っていて、なおかつ乗ったことがあるという世代はもう50歳代半ばをすぎている現実。林鉄は文字通り、文明の通路だったことを忘れてはいけないのだが。
読了日:4月15日 著者:西 裕之
魚梁瀬森林鉄道 (RM LIBRARY(29))魚梁瀬森林鉄道 (RM LIBRARY(29))感想
よくまとめてある本です。何より豊富な写真が残されていたのが幸いしているのですが。あとこの手の本で恨みが残るのは、きちんとした地形図を掲載しないことです。複製したものが出ていたらもっと充実していた、と思うのですが。
読了日:4月15日 著者:舛本 成行,寺田 正
ラーメンと愛国 (講談社現代新書)ラーメンと愛国 (講談社現代新書)感想
数週前のジョージ・ポットマン先生の講座のタネ本。この本を映像化するとああなるのかな、と。ま、米国の小麦戦略に目を付けたところが、新味、かなあ。
読了日:3月26日 著者:速水 健朗
漢詩の名作集〈下〉漢詩の名作集〈下〉感想
その点で、この本は読んだ本、というのは適切ではないかもしれない。でも、古めかしい分類に戸惑うかもしれないけど、網羅している分野が広く、古詩から日本の攘夷派の志士まで拾っているのが、この本の特質。日本人の漢詩、というのを再発見する手がかりになるかもしれない。
読了日:3月26日 著者:簡野 道明,田口 暢穗
漢詩の名作集〈上〉漢詩の名作集〈上〉感想
簡野道明といえば、小生が最初に接した漢和辞典の角川書店の「字源」の筆者。何が書いてあるのか、小学生にわかるはずもない。そして、古い活字は半分潰れかかっていて、いよいよ読みにくい。この本も明治書院の古い冊子の中の1冊。新しく組み直して、仮名遣いを一部改めただけで、新しい命がこの本に吹き込まれた。通読するというよりも、拾い読みするのが楽しい本。
読了日:3月26日 著者:簡野 道明,田口 暢穂
四国遍路とはなにか (角川選書)四国遍路とはなにか (角川選書)感想
五来重先生の本を読んでから、この本を読むと、すこぶる理解が進みます。というのは、五来先生の宗教民俗学に基づく見解を、合理的に説明してくれるからです。筆者は真言宗の現役僧侶で、その著作を読む機会はなかったのですが冷静な論理の展開はすこぶる好感が持てます。四国遍路とは何なのか。熊野へのしんこう、あるいは観音信仰に由来する補陀落信仰に、日本の古来からの山の神、祖霊信仰、海の彼方を見る常世の国の思想などなど、重層的になっているこの信仰をそう簡単には絵解きしきれないからです。その点でこの本は意欲的でもあります。オス
読了日:3月15日 著者:頼富 本宏
補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)感想
大部の著作ながら、お急ぎの向きは訳者あとがきと解説を読めばことは足ります。でもカイバや小麦、兵の数と数字を積み上げながら補給の大切さを解いて行きます。非常に論理的で楽しいです。ただ。何をいえば地図が欲しい。数葉ははいっているのですが、続出する地名にちょっと参りました。でもそれを割り引いても長い戦争の歴史の中で、実は主計兵の果たした役割の大きさを教えてくれます。もう一度クラウゼビッツの戦争論を読み直したくなりました。違う印象になるかもしれない。
読了日:3月7日 著者:マーチン・ファン クレフェルト
空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア感想
内容はとても示唆にとんでいるし、空海の性霊集を今度じっくり腰を据えて読み直してみたいと思いました。実に密成さんのお力大、であります。ただ、組み版の体裁が気になりましたね。質問部分が小さめの活字で左側ページの右側に1行で組んであり、答え部分がその4倍くらいの大きさをで答え部分が載っています。要は答えが先に目に入ってしまうんです。で次のページがその典拠になった文とその原文が小さく組んであります。本当はもっと本文がしっかり掲載されていた方がいいですね。あと密成さんの原稿が2ページ。ここの部分は前著に続いて素敵。
読了日:3月7日 著者:白川密成
人魚はア・カペラで歌ふ人魚はア・カペラで歌ふ感想
久しぶりに丸谷センセの随筆で面白いと思ひましたね。これも掲載誌が「オール讀物」といふ歴史のしからしむるところではないかしら。基本的にこの方は書評家なんでせうね。見たての妙味とwebを飛び回る時の快感。ただ引用が多いのと、ちよつと話し口調に近い文が気になる方もいるでせうが。この本の影響で瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」を買つてきてしまひました。あと本は一気呵成に読むものといふ言説は確かにそうでせうね。このところ読みさしの本が増えているのもその所為かもしれない。
読了日:3月7日 著者:丸谷 才一
散歩もの (扶桑社文庫)散歩もの (扶桑社文庫)
読了日:2月25日 著者:谷口 ジロー,久住 昌之
孤独のグルメ (扶桑社文庫)孤独のグルメ (扶桑社文庫)感想
単行本の他に同じ内容の文庫版を買ってしまった。文庫で十分なのだけど、読みやすいのは単行本。
読了日:2月25日 著者:久住 昌之,谷口 ジロー
孤独のグルメ 【新装版】孤独のグルメ 【新装版】感想
松重豊が名演であるというのがしみじみとわかった。。淡彩の原作に色を添えているのが。原作ももちろん余趣がある。主人公の設定が妙、酒が飲めないというのが。
読了日:2月25日 著者:久住 昌之
独楽園 (ウェッジ文庫)独楽園 (ウェッジ文庫)感想
薄田泣菫というと、冨山房新書にあった「茶話」にトドメを刺す。文章に才気が満ち満ち、斎藤緑雨に通じる味わいの妙のゆえだ。ちなみに本書は最晩年。茶でいえば出がらしの感がある。日向ぼっこしながら書くような文章はどうも性に合わないみたい。こに本の中では、平曲波多野流最後の検校である藤村検校の話。廃れた藝はどんなに貴重でも聞き手がいないという逸話と「絵の難しいところ」という一編。画家大雅堂にある御仁が「絵の難しいところは?」と問い掛けたところ、「紙の上に何一つ描いていないところでしょうな」と答えたとか。こういう話の
読了日:2月18日 著者:薄田 泣菫
歴史人口学で見た日本 (文春新書)歴史人口学で見た日本 (文春新書)感想
人口の推移から歴史を解析しようにいうのが歴史人口学。筆者はその先駆的存在らしい。日本にこの概念を導入し、江戸時代の「宗門改帳」から人口動態を分析することを始めた。筆者の研究史回顧の部分と、解析結果の事実の提示が混在しているのが難点なのだけど。考え方としては少し前の「デフレの正体」に通じるもの。読み物として興味深いのは江戸時代の農村と都市の平均年齢の差を示した部分、近代に入ってからの考察、そして日本の民族的起源にまで考察した部分。数学でいう微積分の明快さに似ている読後感。
読了日:2月18日 著者:速水 融
芝居の食卓 (朝日文庫)芝居の食卓 (朝日文庫)感想
歌舞伎の舞台に登場する食を狂言回しに筆を走らせた1冊。鯛、シャモ、豆腐、蕎麦、酒……。登場する素材はさまざま。今度、その芝居を見る機会があれば、筆者の挙げたその逸話をきっと思い出すだろう。で、気になった素材を2つ。「夏祭りの献立」で出てくる鱧皮膾。そういえば心斎橋の蒲鉾屋で売っていたっけ。もともと鱧好きだけど、ちょっと機会があれば、ね。それと「3人の女中」という一編。脇役の仲居をさせたら逸品だった女形の話だけど、現実の世界でも、料理そのものと同時にどうサービスされるかが肝要、と思い至りましたな。
読了日:2月17日 著者:渡辺 保
能のドラマツルギー―友枝喜久夫仕舞百番日記 (角川ソフィア文庫)能のドラマツルギー―友枝喜久夫仕舞百番日記 (角川ソフィア文庫)感想
喜久夫は晩年しかしらない。小柄で白髪の老人だった。でも舞台に上がると別物であった。そんな体験がまずある。仕舞の妙は、白湯を飲んで甘露と思う心境に似ている。能を囓った人間には少しまどろっこしくなるほどの構成が難なのだけど、こうしないと読者には説明がわかってもらえまい。印象批評、の極端な形、文章であろうと思う。承知で挑んだ筆者の力量にまた感服。最後に私見を。仕舞を実際に見てみると、所作云々もさることながら、五感を通じて残った記憶こそがすべてになる。相撲の取組もそうだが、人間の脳は巧みな取捨選択をするものだ。
読了日:2月12日 著者:渡辺 保
小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)感想
松竹蒲田の大部屋俳優から、小津安二郎監督作品の常連に。晩年は「男はつらいよ」に欠かせぬ存在になった笠智衆。俳優としての恩人小津をどう見ていたのかを語った1冊です。1928年の「若人の夢」から62年の「秋刀魚の味」までほとんどに出演し、無声からトーキー、白黒からカラーと小津の歩みとともに歩んできた人ならではの言葉が綴られています。著作の中では「ベストワンは『東京物語』」と話していますが、巻末の解説で子息・徹氏が「ずっと家族には『父ありき』と話していた」という内輪話まで含めて、秀逸な回顧記です。
読了日:2月12日 著者:笠 智衆
贈与の歴史学  儀礼と経済のあいだ (中公新書)贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書)感想
品物の贈答が儀礼として確立したのは室町時代と言われる。足利幕府、天皇家、寺社とそれぞれの社会相互の間で贈答が繰り返される。前例に基づいたり、相手をどう見るのかという変化だったり。この辺までは想像がつくが、目録が先に贈られて、実物がなかなか届かなかったり、贈り物を受けた側が不満を表して半分だけ受け取ったり。目録が半ば後世の為替手形のような役割を果たしていたり。結納や表彰の儀礼で残っている目録、折紙が負っていた役割も意外だった。貨幣経済と贈与の関係など、知的な刺激に富んだ1冊だった。
読了日:2月11日 著者:桜井 英治
大江戸世相夜話―奉行、髪結い、高利貸し (中公新書)大江戸世相夜話―奉行、髪結い、高利貸し (中公新書)感想
江戸時代の人は実に筆まめだ。身の回りで起きたこと、聞いた話などを書き留めた。そういう文骸を解して編み直すと楽しい読み物になる。この本はその好例。遠山の金さんの彫り物が桜吹雪か女の生首か、という話題やら、将軍の肉声を探ったり、オランダから献上の象の顛末だったり。脈絡のない話だから変化に飛んでいていい。1項目の分量も適切。元は吉川弘文館の季刊誌用の連載だったそうで、丁寧な筆運びだ。
読了日:2月9日 著者:藤田 覚
学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)感想
丹念に証言を集めました、って感じの本。一方で、筆者の意向、意志に基づく選択もあるのだろうな、という感じも垣間見えます。要は戦時中学徒動員で学窓なかばにして出征していった若者がどんな思考を抱いていたのかを探った1冊です。エリート意識あり、選民としての不遜あり、過酷な条件に引き吊りおろして等しくなろうとする根性あり。あの神宮外苑雨の学徒出陣で答辞を述べた人物は戦後、鹿屋体大の理事長になっていたり、最前線に駆り出されるのを免れる数々の恩典があったり。日本の官僚機構は様々な仕掛けを考えるものよと関心したり。
読了日:2月8日 著者:高田 里惠子
鉄道と日本軍 (ちくま新書)鉄道と日本軍 (ちくま新書)感想
気がつかず再読してしまった。内容が不足。もっと軽便鉄道などに視野を広げ、中段の「プチ坂の上の雲」部分を削除するがよかろう。
読了日:2月6日 著者:竹内 正浩
中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史感想
テーマは中央集権型(筆者のいう郡県制)の宋代、元代とそれ以外の時代の地方分権型(筆者のいう封建制)を2項対立を提示、この物差しで日本史を見てみると、という仕掛け。ミソは2項対立です。江戸幕府と明治政府の連関性、建武の新政の革新性などは正鵠を射たものです。だが2分法は詭弁の温床になりがち。白か、黒か。時代、人の世は単純に割り切れるものではない。人口、物の生産など計量的な部分を重視したら、説得性に富んだものになったと思うのですが。どこか「張り扇」と「小拍子」の音がするような気がします。
読了日:2月5日 著者:與那覇 潤
マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)感想
ミルフィーユ形式の小説は「壬生義士伝」と同じ構造。張作霖爆殺事件についての真相究明を昭和天皇が陸軍若手将校に下した構えで話は進む。機関車の独白が挟まっているのだけど、ちょっと甘口。どうしても「機関車トーマス」を連想し、飛ばし読みにせざるを得なかった。筋としては関東軍の犯行というのは周知の事実。逆に張作霖がなぜ奉天に戻ったのかという一点に収斂していくのだが、「藪の中」にした方がよくはなかったか。満州報告書の最終信は白紙なのだが、本当は黒沢明の「天国と地獄」のように違う結末を筆者は用意していた気がする。
読了日:2月5日 著者:浅田 次郎
失言恐慌―ドキュメント銀行崩壊 (角川文庫)失言恐慌―ドキュメント銀行崩壊 (角川文庫)感想
きっかけは演劇評論家渡辺保の生家が昭和の金融恐慌の端緒となった東京渡辺銀行だったということから。時の蔵相片岡直温が衆院予算委で「東京渡辺銀行が到頭破綻をきたしました」と失言のゆえに倒産に至った一件だ。歴史の彼方のこと、当事者はすでに他界しており、すでに資料に依るしかない。一般的な認識は小銀行の経営ミスに起因するというものだろうが、それは当時の大蔵省官房文書課長の口碑が出典と知る。佐高信の文章は頗る攻撃的なものが多いが、抑えた筆致で双方の登場人物を綴っていくことで、断定しないでも見えてくるものがある。秀。
読了日:2月4日 著者:佐高 信
君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい感想
浅田センセの随筆は、「勇気凛々瑠璃の色」の筆致の方が好きだ。私小説風というか、身辺雑記という風情の題材は、軽妙に仕立てた方が読みやすい。戯画化というか。そも随筆の楽しさは、書き出しから途方もない天地に場面転換してくれる妙技にある。その点で、未刊行の掌編を集めたこの1冊にはその藝が希薄な気がする。
読了日:2月3日 著者:浅田 次郎
オオカミの護符オオカミの護符感想
大口真神のお札ってのは、ひと昔前まではよく門口で見かけたものです。オオカミは日本では食物連鎖の頂点にある哺乳類であり、昨今、人口減少の続く中山間地での獣害(シカ、イノシシ、サルなど)を駆除する形で存在していたのです。ニホンオオカミが明治年間に絶滅して以降、山間に人がいるうちはまだしも、今や限界集落という言葉も定着した通り、山から人が消えました。オオカミへの信仰は、太古に生まれたものであろうし、里と山の間の関係を示す証があの「お札」だったわけです。それを自分の目線の高さで追いかけた1冊。好感が持てます。
読了日:2月3日 著者:小倉 美惠子
日本人の性生活日本人の性生活感想
確かに興味深い内容の1冊では、あるだろう。しかし、今の人間が読み返す時、ドイツ人が書いた「遠野物語」みたいな感じが拭えない。専門書?を飛ばし読みする暴挙の末の感想ではあるが、オリエンタリズムに基づいた好奇心、高い目線からの博索ぶり。彼らがなぜこの極東の島国にかくも篤い関心を寄せたのか、本を読みながら考え込んでしまった。内容は実に多岐に渡る。筆者は多分、概念として成立間がない民俗学者としての「プラントハンター」のような心境だったか。今はなき「夜想」のような感じの本。中古で買ったのでまだ許せるか、という感じ。
読了日:1月29日 著者:フリートリッヒ・S. クラウス
蝶々にエノケン 私が出会った巨星たち蝶々にエノケン 私が出会った巨星たち感想
中山千夏、と言っても、若い方はご存じないだろう。1970年代頃までテレビや舞台で活躍し、80年代には参院議員を1期務めた。ジェンダーという言葉の前、ウーマンリブといっていた頃に時代の人だ。子役からの長い芸歴の持ち主で、出会った多くの役者、芸能人の子役目線で見た思い出話。途中で気がつくのだけど、筆者自身の見聞と、webで検索した情報とがない交ぜになっている。自身の見たこと聞いたことで綴ってくれた方が面白いのに、と思ったのだが。印象深い挿話を一つ。「仁丹というと、詩人のサトウハチローと越路吹雪を思い出す」。
読了日:1月29日 著者:中山 千夏
へうげもの(14) (モーニング KC)へうげもの(14) (モーニング KC)感想
はるばる来ぬる旅をしぞ思う、という感じ。このマンガを読み始めて幾年月である。本巻は徳川家康の上杉討伐から、関ヶ原前夜まで。途中で笑えるのはやはりガラシャ夫人が西軍方に攻められて「猛反撃」する場面と、幽齋センセの古今伝授の逸話かな。一幕だけ出る登場人物が多くなって、いよいよ作者が「走っている」感じもある。でも、何とか山田先生には、最後までがんばってほしいなあ。無事に完結することを祈るばかり。
読了日:1月28日 著者:山田 芳裕
あの日からのマンガ (ビームコミックス)あの日からのマンガ (ビームコミックス)感想
あの震災からもうすぐ1年。あのときに「マンガ」という手法で何かをしようとする筆者の姿勢にひたすら感服。ある意味で、朝日新聞夕刊の4コマ漫画に加えて、ストーリーものも一緒に載せてあるのだけど、実にしりあがり調。振り返って読んでみても十分におもしろい。故に手元に届いたのは6刷目だった。震災、津波、原発事故と続いたあの時期の空気を見事に切り取っているのに感じ入るばかり。おすすめです。
読了日:1月25日 著者:しりあがり寿
父・金正日と私 金正男独占告白父・金正日と私 金正男独占告白感想
筆者は東京新聞の外報部記者・編集委員。本の内容は一言で言えば、取材メモの開陳に近い。北京空港で出会ったのを僥倖に(というのは本当かどうかわからぬが)、メールのやりとりを繰り返し、途中で澳門でのインタビューもはさみつつ、金正日死去の後にやりとりをしたというメールで締めくくっている。内容は、特に新味もないし、金正男の真正の発言であるという根拠もない(筆者がいうところによれば日本語はそんなに得意ではないそうな。朝鮮語→日本語、あるいは英語→日本語の変換が正確であるかどうかもわからぬ)。ちょっと看板倒れ?
読了日:1月23日 著者:五味 洋治
江戸の縁起物――浅草仲見世助六物語江戸の縁起物――浅草仲見世助六物語感想
助六といえば、浅草の仲見世にある細工物店。紙、泥、竹に木を材料に豆寸法の縁起物が売っている。きっぷのいい先代の女将がいた頃は、よく狸の人形を買ってきたものだ。今でも観音様にいけば覗いて見る。楽しいんだけど、手作りの一点物だから高い。あれこれできないのが現実だが、写真にまとまると楽しい。今でも机の正面には助六で買った今戸焼の火鉢・河童が鎮座している。何とかご無事なのは河童様のおかげかしらん。
読了日:1月18日 著者:木村 吉隆
写真集・火の見櫓写真集・火の見櫓
読了日:1月18日 著者:石川 元之
写真集・火の見櫓写真集・火の見櫓感想
読んだ、というよりも眺めた、という方が正確だけど。志太榛原に勤務していたとき、町のあちこちに火の見櫓が残っていた。というのは自治体の消防能力(いわゆる消防署)だけでは災害に対応できるマンパワーはなく、消防団の役割が大きいからです。消防団はホースを使う。干すための場所がいる、従って火の見櫓なのです。柔らかめの調子の白黒写真が写す風景は優しい景色です。人間同士のつながりの濃淡を示す指標が火の見櫓の存在なのかもしれない。そんなことを考えました。 写真を見ているだけでも、結構心和みます。用の美、もあるし。
読了日:1月18日 著者:石川 元之
日本伝統音楽の研究 (2)日本伝統音楽の研究 (2)感想
やっと古本屋で見つけた2巻目。この本ではわらべ歌から、民謡、雅楽、能楽、長唄、詩吟・・・・。ありとあらゆる、とさえ思えるほどの、日本の音楽を採譜し、リズムの展開について考察している。最後はアジア音楽との比較でその本質を探ろうとしていたのだが、筆者の急逝に伴い、最終章はメモの画像収録となっている。 博索一途、事実に寄り添うように論理を抽出していく筆者の姿勢は、学者としての誠意ゆえだろう。ぜひきちんとした形にして世に残したかったに違いない。 それと今のOSがあったら。もっと深い研究まで進めていただろう。
読了日:1月18日 著者:小泉 文夫
大解剖 日本の銀行―メガバンクから地銀・信金・信組まで (平凡社新書)大解剖 日本の銀行―メガバンクから地銀・信金・信組まで (平凡社新書)感想
筆者は日本の銀行(特に資金量の大きな3大メガバンク、地銀上位行)は今や、ビジネスモデルを見失って、収益を何で上げ、何を業務としていくのかがわかっていない、と指摘する。金融危機に直面している欧米の銀行は範とするに足らず、護送船団方式で育ってきた邦銀に今後の海図がないという。また、地域密着型の金融機関であるはずの信金、信組ほど、地域との「絆」を失っているのではないかと指摘する。 確かにこれからはネット銀行の時代なのかもしれない。預金と決済が中心の個人にとって便利な銀行は。 でもやりきれない気分になる本。
読了日:1月18日 著者:津田 倫男
教養としての日本宗教事件史 (河出ブックス)教養としての日本宗教事件史 (河出ブックス)感想
日本の宗教においてのエポックを点綴した本。1項目ごとの読み応えにはかけるが入門的通史という点では可。大学の一般教養の教科書のようですね。ただ、筆者の本領が発揮されるのはやはり新宗教の分野。日本の信仰風土について、遠藤周作が「沈黙」の中で記述した一文を引用しているが、これがすべてだろう。それともう一つ。「おひとり様宗教」という視点が新鮮。筆者は「真如苑」をあげている。カウンセリングに近いとその内容を説明している。高度成長期の「創価学会」「立正佼成会」から少子化の時代を迎えての信仰の新形態の指摘は興味深い。
読了日:1月13日 著者:島田 裕巳
ソーシャルメディア炎上事件簿ソーシャルメディア炎上事件簿感想
「炎上」ってのは、パソコン通信の時代から見たし、「ネチケット」なんていう言葉があり、炎上する一方でオフミで親交を暖めるなんてこともあったりして。そういう原始時代は終わったのですね。個別の事件と対応、興味深かった。ただ、この本の要旨はといえば、IBMのソーシャルコンピューティングのガイドライン。引用になるけど「身分を明かして1人称で語る/価値を付加した情報の発信に努める」などなど、195ページの内容に尽きる気がします。それまでの事象検討は、この1ページのため、という感じ。ある意味で勉強になりました。
読了日:1月12日 著者:小林 直樹
日本ラーメン秘史 (日経プレミアシリーズ)日本ラーメン秘史 (日経プレミアシリーズ)感想
筆者が一生懸命、ラーメンを食べて、思索を巡らせているのはよく分かります。昔、通っていたスナックの隣が某有名店で、その話も出てくるので懐かしく読みました。ただ、食い物の話を文章に書くのは実に難しいことです。うまいと思うことをどう表現するのか。実にたくさんの店の名前が登場して、それだけでも楽しいのかもしれませんが、素人には絵が想像できず、豊富な情報を生かせない、という感じです。筆者の熱意に驚嘆するばかりにて。
読了日:1月11日 著者:大崎 裕史
ホームレス歌人のいた冬ホームレス歌人のいた冬
読了日:1月9日 著者:三山 喬
新装改訂版 新書判 山口組動乱!!2008-2011 司忍六代目組長復帰と紳助事件新装改訂版 新書判 山口組動乱!!2008-2011 司忍六代目組長復帰と紳助事件感想
既に筆者は新潮新書「暴力団」で、既にマフィア化するしかない暴力団の現況を指摘している。本書はその中でも山口組の抱える現況に絞って論を進めていく。5代目組長の時代の幹部と6代目組長になってからの新幹部の登用と、それに伴う軋轢。あるいは6代目組長が基盤にしてきた中京圏、特に愛知県警との関係など、論は展開して行く。角界に飛び火した野球賭博の件や、それ以前に朝青龍が現役時代に行ってきた乱行と暴力団の関係、或いは先の島田紳助の件と話は進んでいくが、どうもこの辺りは薄味。加筆部分だけにちょっと残念。
読了日:1月2日 著者:溝口 敦

2012年に読んだ本まとめ
読書メーター
posted by 曲月斎 at 03:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

☆2012年に読んだ本(1)

2012年の読書メーター
読んだ本の数:125冊
読んだページ数:31637ページ
ナイス:818ナイス
感想・レビュー:118件
月間平均冊数:10.4冊
月間平均ページ:2636ページ

ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)感想
門外漢にもダムの何たるかを冷静に教えてくれる入門書。トリビア的には、重力式のダムで、鉄筋をほとんど構造体には入れないとか、コンクリートも大粒の固練りで仕上げるとか、一般の建築物とは違う、ダムならではの不思議も教えてもらってちょっとお得、という感じ。身近にあるロックフィルダムの水利権更新が間近に迫っていることもあって読んだのだけど、濁水対策とか、自然負荷の軽減とか、今や日進月歩ですな。高度成長期に造ったダムも老朽化しているんです。あと黒四ダムってのは今も大した存在であるのだな、というのがよく分かります。
読了日:12月27日 著者:一般社団法人 ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ
9条どうでしょう (ちくま文庫)9条どうでしょう (ちくま文庫)感想
総選挙の最中、一つの単語が脳裏を離れなかった。「軽躁」である。ほんの60余年昔の日本という国を因数分解すれば、この言葉になると指摘したのは阿川弘之。筆者の論考はさておき、一色に染まってしまいやすいのが自分を含めての特質であるかもしれないというのは、誰も否定できないのではないか。本書で内田樹が書いている「内政的矛盾」を受け入れ、いきていくのがいい。GHQ民政局が提示した現憲法であるにせよ、軽躁さを自覚した当時の先人が受け入れた叡知という気がする。やはりこの件は自覚的に先延ばしにするのが一番いいように思える。
読了日:12月24日 著者:内田 樹,平川 克美,町山 智浩,小田嶋 隆
妄撮男子妄撮男子感想
写真の合成の趣向がちょっと気になって買ってみたけど、どうやって処理しているのか、とうとう分からなかった。今どきの写真は画像処理ソフトでどうにでもなるものなあ。
読了日:12月22日 著者:
文様別 そば猪口図鑑文様別 そば猪口図鑑感想
読んだというより、眺めた本。小さな蕎麦猪口の世界に広がる無限の意匠を次々と紹介してくれる。どうしてこういうデザインになるのかは、よく分からない。でもその形や色が小粋に見える。別に古伊万里でなくても古有田でなくても、現代の作家の作品でも楽しい。その本歌を集めた1冊。もう少し図版が大きいといいんだけど、文庫サイズだから仕方ないですね。
読了日:12月21日 著者:
世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代感想
辞典本。世界の軍歌の流れを、ナショナリズムの目覚め、国民国家の盛衰、イデオロギーの時代、総力戦体制の完成、多極化する世界の5部立てで分類、その時代に成立した曲の歌詞を原詩、邦訳という形で紹介していく。冒頭の1曲目は「ラ・マルセイエーズ」。そして筆者は「今やYouTubeで簡単に曲を聴くことができるので、それを聞きながら読んでほしい」とも。Webとこういう形で融合した本が出現したのがすごい。それと先行したサイトで今は閉鎖されてしまった「軍歌索盤考」の名が懐かしかった。とてもいいサイトだったのだが。
読了日:12月21日 著者:辻田 真佐憲
随感録 (講談社学術文庫)随感録 (講談社学術文庫)感想
紐育のウオール街に端を発した大恐慌の下にあって、台風の最中に窓を開けるようなものと言われた金の旧平価での解禁を指揮した井上準之助蔵相。その政策を後押ししたのが浜口雄幸だ。「国家のために斃れるのは本望」と語り、ある意味では決断できる政治をしたかのように評価する向きもあるが、状況を勘案すれば如何だったろう。むしろロンドン軍縮会議を成功させたことに意義があったものの、彼がある意味で戦前の日本で舵を切ってしまった部分があるのは否めない。「率直な心情」とはいうものの、本音の10分の1も書き残して居ない気がする。
読了日:12月14日 著者:浜口 雄幸
アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)感想
表題の内容は第1章の「強さこそがすべて」の各編に書かれているだけ。ステロイドはすごい。「大きく、強く、速く」をモットーにスポーツに取り組むと、こういう悲劇も起こるだろう。それが旧東欧のような社会主義国ならいざ知らず、資本主義の権化のアメリカで起こっているというのはポンチ絵だ。でもこの件に関しては人のことをいえないのかもしれない。2章以下それ以外の章、項目はトホホのアメリカスポーツ寸景集でごく軽い読み物。何分、日本と違って広大なアメリカのことだ。何が起きていても不思議はないし、4大スポーツがすべてではない。
読了日:12月14日 著者:町山 智浩
日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)感想
豊かさって何なのだろ、と考えさせられる本です。放浪を何度も繰り返した山下清ですが、駅のベンチで大半は寝た、といいつつも、三度三度の食事にはありついていた訳で。他人(というか家族以外)を宿泊させることすら、希有になっているのが今の時代。少し余裕があれば施しもする。ゆとりが実は日本という社会を作ってきたのではないか、とも。「兵隊の位」であり、「目方で何貫か」が関心事であるにせよ、除外せずに受け入れていた社会のありよう、というのを考えさせられる1冊です。と当時の新聞記者は実にいい加減でした。目に浮かぶような。
読了日:12月10日 著者:山下 清
私の歌舞伎遍歴―ある劇評家の告白私の歌舞伎遍歴―ある劇評家の告白感想
評論とはどういう作業なのかを解説した本です。素人が宛て推量、好き嫌いで、佳い悪いを言うのと、評を業として生きる人間が記す言葉の差がよく分かります。古典芸能はとにかく見続けること、そうするとある瞬間に今まで見えなかったものが見えてくるようになる。僕もかつて経験したことです。筆者はさらに江戸時代に遡る歌舞伎の原典に立ち返り、当て書きしている脚本であるからその役者の藝に思いを巡らせ、と話を展開していきます。詰まるところは「型」にその規矩があると言います。歌舞伎に限らず、書き物をする人は考えるところ多、でしょう。
読了日:12月10日 著者:渡辺 保
写真がうまくなる デジタル一眼レフ 構図 プロの見本帳写真がうまくなる デジタル一眼レフ 構図 プロの見本帳感想
正直にいうと、あまり参考にはなりませんでした。「構図」って何だろう、と考えると、自分がそれまでに見てきた(実景であれ、絵画であれ、写真であれ、映画であれ)、アレッと思う絵が一番、参考になるからです。あれこれと考える間もなく写す写真が多い所為かもしれません、こんなことを考えるのは。でもその一瞬を切り取る、一番象徴的になるような絵にする、と考えていった結果が「構図」になるのではないかなあ。個人的には広角系の上手い使い方の参考になるかと思ったのですが。選考会狙いのアマ写真家向け、という感じ。
読了日:12月10日 著者:立花 岳志,できるシリーズ編集部
大河内俊輝能評集 2 能の見方・考え方・楽しみ方大河内俊輝能評集 2 能の見方・考え方・楽しみ方感想
能の評論というのは、ほとんど成り立たない分野だ。なぜなら、同じ古典演劇でも歌舞伎や文楽は数日間は興行されるけど、能は1日、それも1回限りの藝。となれば、評してもそれは演者に対しての無益な先入観を読者に植え付けるだけになる。わかりきってはいるのだけど、つい読んでしまった。そして大いなる後悔。自覚はあるのだろうけど、これでは團菊ジジイ以下だ。若いころの筆の冴えを知るだけに、これはこれは「老いてはせぬが花なり」ではなかったか。
読了日:12月4日 著者:大河内俊輝
政友会と民政党 - 戦前の二大政党制に何を学ぶか (中公新書)政友会と民政党 - 戦前の二大政党制に何を学ぶか (中公新書)感想
日本が戦前の一時期に経験した政友会と民政党の2大政党制。現下と比較し、筆者は「既視感がつきまとう」と記す。氏は民政党に見立てた民主党には官僚を使いこなすことを学べといい、政友会に見立てた自民党は東北の農村から東京のスラム街まで調査して政策を導きだそうとした例にならい、包括政党を目指せと説く。時間はあるのか焦燥感がわく。民意の複雑な連立方程式の解を求めての連立政権の再編、国民と痛みを分かち合える指導者の出現、政治参加に対しての国民の責任感の回復……。今時の総選挙でも考えるべき課題提示がこの本にはある。
読了日:11月30日 著者:井上 寿一
誰も書けなかった防衛省の真実誰も書けなかった防衛省の真実感想
仕事関係の本。氏の来歴から始まって、防衛大臣としての経験を踏まえ、現場の目線、上からの目線でこの組織を問うた本。文民統制とは政治家(つまり命令権者)がしっかりしているかどうかを問う制度であり、制服組が事務方に入っていない組織は変、ということに尽きるのであります。財務省であれ、外務省であれ、現場を経験して事務次官になっていくのに、この省だけは制服組ではなく内局から昇進していく。そんな歪みを指摘している本です。ただ、昭和史への反省もあり、どこまで新しい人材登用策がとれるか、つまるところ上の力量です。
読了日:11月24日 著者:中谷 元
右でも左でもない政治―リベラルの旗右でも左でもない政治―リベラルの旗感想
これも仕事の関係で読んだ本。 個人的な見解として、筆者が「リベラルの旗」として指摘しているのは @繁栄の基礎となる社会インフラの整備の後、国民や地域社会の主体性にゆだねる A熟柿の政治。国民的な合意形成を重視する。憲法のあり方など政治が前のめりに誘導してはならぬ。 B日米同盟を基軸にしながらも国連中心主義とアジア近隣諸国の信頼関係構築 C守るに値する国づくり D経済至上主義への警戒感を持つこと−− をあげている。首肯すべき点は多い。一歩間違うと夜郎自大になってしまう国民性ゆえに。
読了日:11月23日 著者:中谷 元
お言葉ですが…〈別巻5〉漢字の慣用音って何だろう?お言葉ですが…〈別巻5〉漢字の慣用音って何だろう?
読了日:11月23日 著者:高島 俊男
なぜ自民党の支持率は上がらないのかなぜ自民党の支持率は上がらないのか感想
仕事の都合があって読了。日頃、氏がホームページで書き綴ってきたことをまとめたものであるという。 @1冊の本にしたときには、部立てにせず、時系列の方が読みやすかったかもしれない。 A外交論、防衛論は自家薬籠中のものであると感心した。明快である。 Bその一方で、この本では地方の振興、再生はどうすることから始めるのか、という部分がもっと具体的に持論を展開されていたらよかったような気がする。たぶん、地方にいると、自分たちがいかな状況にあるかという自覚すらないままになってしまう気がするから。
読了日:11月23日 著者:中谷 元
ことばと文字と文章と―お言葉ですが…〈別巻4〉ことばと文字と文章と―お言葉ですが…〈別巻4〉感想
1年経って、読んだのも忘れて再読。今次の評価は前回と逆。「漢字」というツールを使って一定の文化圏を築いてきたこのエリア、発音はどうあれ、文章語として互いに意味が通じ合うという意味で「文語文」という文章が成立してきた、という指摘は新鮮。今まで文語文&口語文という対句は何度となく見てきたけど、これが一番明解な考え方です。落ち着いて読むと違うものですな。ただ、表題部分の約130ページが出色。外地での日本語教育や「閩妃殺害」の話はちょと筆者のお好み、なのでしょうな。
読了日:11月20日 著者:高島 俊男
未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)感想
上手い本です。15年戦争の末期、「持たざる国」日本は精神力ですべてを解決することに一縷の望みをかけた。でもこの発想は実は第一次大戦の戦訓から「持たざる国」という自覚の下に展開していったことであると立論して見せます。「短期決戦で」と考えた小畑敏四郎、「持てる国への変容を」と考えた石原莞爾&田中智学、「精神力で」と考えた中柴末純、そして末期を看取った酒井鎬次−−。各々狂気と自覚しつつ突き進んだのがよく分かります。そして「統制派」と「皇道派」の違いを明快に説いた本。狂気と正気は紙一重です。何より後書きが秀逸。
読了日:11月5日 著者:片山 杜秀
古典劇との対決―能・歌舞伎・僕達の責任 (1959年)古典劇との対決―能・歌舞伎・僕達の責任 (1959年)感想
ま、60年安保前夜の本です。シテ第一主義、幽玄絶対主義などなど、戦前から続く能への評価への精一杯のアンチテーゼを示そうとしているのですが、悲しいくらいに稚拙、凡庸。「芸術家たらんとする行為を放棄しながら、芸術家として遇されたいという矛盾の谷間に、能楽師は常に漂泊している」と喝破するのは簡単なんですけどね。今となっては能にそれだけの熱を持って語っても聞いてくれる民がいない現実。ただ、雀百までといいますが、この人の言っていることはそう進歩していない、というのがよく分かる1冊ではあります。渡辺保もこの洗礼の下に
読了日:10月31日 著者:堂本 正樹
街場の文体論街場の文体論感想
「文体論」というよりも、言葉とは(意思の疎通とは)どういう仕掛けなのか、ということを説いておられます。講義録だから読み手としても軽快に、でも考えながら読めます。司馬遼太郎や村上春樹についての見立てが即妙。ただ文章を書くことを商売とすれば、「やさしく読みやすく」がともかく第一条件。内田先生のようになかなかに達意の文章というのはかけないものだ、と思い知らされます。
読了日:10月21日 著者:内田樹
四字熟語の中国史 (岩波新書)四字熟語の中国史 (岩波新書)感想
漢字2字の組み合わせで生まれる熟語。筆者はAとB(ex.矛盾)、BをAする(ex.臥薪)、Aと同じB(ex.名称)、AのB(ex.乱世)、Aと非AのB(ex.売買)の5類に分ける。それを2倍にしたのが四字熟語。「温故知新」の訓読を朱子学から古学に目を転じて論じたり、「不射之射」では中島敦の名人伝に論及したり。「宋㐮之仁」では春秋の公羊伝や左氏伝(余談ながら春秋三伝の残り一つは穀梁伝)の話が出たり。単に四字熟語の話というより、丸谷才一の中国版、という飛躍の仕方。楽しい1冊。
読了日:10月18日 著者:冨谷 至
差別語からはいる言語学入門差別語からはいる言語学入門感想
2012年6月発行のちくま文庫版で読了。言語学の概念をご説明になっているのはわかるのだが、これは言語学を修めようといういう方向けの本です。文字は追えても難解です。正直にいうと途中から飛ばし読みになってしまいました。いくつか心に残る記述もありましたけど。
読了日:10月10日 著者:田中 克彦
江戸歌舞伎役者の“食乱”日記 (新潮新書)江戸歌舞伎役者の“食乱”日記 (新潮新書)感想
3代目中村仲蔵の日記「手前味噌」から、食い物ネタを拾い集め、再編集した読み物。終始軽い調子で読みやすい上に、筆者の脱線のし具合も丁度いい塩梅。本書で紹介している「鮎の素揚げを大根下ろしを添えた醤油で食う」とか、「筍を二つ割にして味を整えた生卵をいれ、再び合わせて荒縄で巻いて焼いたもの」とか。ちょっと食べてみたいものが次々こに出てくるのがたのしい。好読み物かな。関連したジャンルに関心を移していくと記す筆者に性向が近い所為かも。
読了日:10月10日 著者:赤坂 治績
関東大震災と鉄道関東大震災と鉄道感想
大正12年9月1日。南関東を襲った関東大震災での鉄道の被害に焦点を合わせた1冊。被害状況や事後の対応を点綴していく。印象深かった挿話。東海道線根府川駅の地崩れで列車が海まで押し流された惨事だ。あと関釜連絡線を管理していた門司鉄道局の対応。被害状況から船2隻を東京に回航、京浜間と清水港の貨客輸送の任に充てることを課長級の会議で決め、進めたこと。鉄道電話の活用の逸話、新聞記者がどう東京〜大阪を動いたか等々。事実の積み上げが全体像を浮かび上がらせる。その像を脳裏に描きながら今、同様の事態が起きたら、と考える。
読了日:10月9日 著者:内田 宗治
武家の棟梁の条件―中世武士を見なおす (中公新書)武家の棟梁の条件―中世武士を見なおす (中公新書)感想
中世の武士は今でいえば暴力団である、というテーゼは実にセンセーショナルではあるけど、本書の前半はこの命題の人文科学者としての解明の姿勢が貫かれたのしい。決して八幡太郎義家も武士であり無頼の徒でもあったのだ。後半はやや前段の詳解風で、重箱の隅感もあるけど、丁寧。ある意味で新鮮な驚きのある1冊。
読了日:10月5日 著者:野口 実
歌舞伎劇評歌舞伎劇評感想
渡辺センセも若かった、ということでしょう。能評なら、坂元雪鳥→大河内俊輝→堂本正樹という藝風の変遷があったわけだけど、歌舞伎評ならだれから始まるのかな。とあれ、渡辺センセがその最新の位置近くにいるのは間違いないのだけど。
読了日:10月2日 著者:渡辺 保
地図から読む歴史 (講談社学術文庫)地図から読む歴史 (講談社学術文庫)感想
地図ってのは、いろんな手がかりを今に残してくれているわけで、その点でこの本は地名であったり、遺跡発掘資料だったり、史料文献だったりと博索統合して、いろんな結論を導き出すという知的な「遊戯(といっては研究者に失礼か)」のやり方を教えてくれる本です。ただ、話が近畿に偏っていること、ちょっと……、かなあ。好きな分野で丹念に書いてある本だけど。個人的に地図を読むのは好きだけど、ちょっと読み方が小拙とは違う気もするので、違和感が残ったのかもしれない。今でも謄本でとれるけど、明治初期の地形図って確かに示唆に富んでます
読了日:10月2日 著者:足利 健亮
フェイスブックが危ない (文春新書)フェイスブックが危ない (文春新書)感想
データ検索をかければ履歴や行状は想像がついてしまうので公開しているけど、改めていろんなところに、落とし穴があるものと感心。自身のことはもとより、「友人」に迷惑をかけないような配慮が必要と再認識した。Facebookの一面を教えてくれる興味深い本です。 ということで、セキュリティの強化をしました。
読了日:10月1日 著者:守屋 英一
武器としての社会類型論 世界を五つのタイプで見る (講談社現代新書)武器としての社会類型論 世界を五つのタイプで見る (講談社現代新書)感想
人間の社会、というか世界の社会を5つの類型に分類したら、という話。曰く 1)上個人下共同体型→古代西洋社会がモデル 2)上共同体下個人型→中国の伝統的社会がモデル 3)全体共同型→日本の伝統社会がモデル 4)資格共同体型→インドの伝統的社会がモデル 5)掟共同体型→古代ユダヤ教社会がモデル という具合に類型化しては、というのがこの本の要諦。 でもおもしろそうなのだけども、申し訳ない、筆者が神学者だった。非常にわかりやすい文字が並んでいるのだけど、頭の中に絵が描けない。お手上げです。
読了日:9月30日 著者:加藤 隆
川と国土の危機――水害と社会 (岩波新書)川と国土の危機――水害と社会 (岩波新書)感想
一つひとつの要素は特に目新しいものではないです。でも一つひとつの事象をつなぎ合わせていくことによって、大きな景色を目の前に見せてくれる本です。 総じて地図も丁寧だし、記述も平易。明治以降の治水政策の限界であったり、高度成長期を挟んで、日本の水、川を取り巻く環境が変わってきたこと、あるいは沖積地の利用が変わってきたことがよくわかります。先の「森林飽和」と併せて読むとおもしろいかも。
読了日:9月30日 著者:高橋 裕
町の忘れもの (ちくま新書)町の忘れもの (ちくま新書)感想
なぎら先生の写文集。元々は東京新聞の連載らしい。 街角で見かけたもの、ポンプ井戸だったり、貸本屋だったり、公会堂だったり。 少し前まではごく自然に身近な存在であったのだけど、今は消えかかっているもの。なぎらセンセの筆にかかれば嫌味なく読み飛ばせるのが楽しい。 確かに、こういうものってあったよなあ、と思う。 ちょっと楽しい1冊。
読了日:9月30日 著者:なぎら 健壱
百年前の日本語――書きことばが揺れた時代 (岩波新書)百年前の日本語――書きことばが揺れた時代 (岩波新書)感想
表題は「百年前の日本語表記」とするべき本です。言葉に西洋活字が出会った時に、どういう変化が起きたか、という点では興味深い指摘かもしれません。でも、文科省の報告書のようで、その枠を超えない、表記法の話が大半です。本当は日本語の100年前の、話言葉の話を期待していたのですが。話言葉と書き言葉の乖離みたいなテーマならじっくり読みたかったけど。
読了日:9月29日 著者:今野 真二
新約聖書外典 (講談社文芸文庫)新約聖書外典 (講談社文芸文庫)感想
逡巡していた本。「古代オリエントの宗教」を読んで、手を出した。 所謂、新約聖書の正典=カノン=(ヨハネ、ルカ、マルタ、マタイの福音書など27編)の他に、外典=アポクリファ=とよばれる一群の本があり、それは時代によって、教派によっては正典とされ、あるいは読み物として流布していたものの、脱落していったものだ。でも、先記の本を読むと、何が正統というべきなのか、よく分からなくなる。そういう意味で、興味深い1冊かも。所収の「トマスによるイエスの幼児物語」なんて、もし事実なら恐ろしい内容、ですから。
読了日:9月25日 著者:
劇評家の椅子―歌舞伎を見る劇評家の椅子―歌舞伎を見る感想
筆者が評価の規矩としているのは3つ。「藝」「型」「役者」の3語だ。換言すれば演技、演出、俳優となるのだろうが、その意訳からはこぼれてしまう部分、澱のようなものが実はある。その出来不出来について、渡辺は一生懸命論じている。巻末の一文を読んでから、本編の劇評の部分を読んでいくといい。氏の文章は好きだけど、月1回の雑誌連載を1冊にすると、いささか鼻につく匂いもあるのは事実。「私はまず読者と、そして役者と真剣勝負をしている」とあとがきに書いているけど、これだけの手練れも時にウブになるのかな、と思った。
読了日:9月23日 著者:渡辺 保
重金属のはなし - 鉄、水銀、レアメタル (中公新書)重金属のはなし - 鉄、水銀、レアメタル (中公新書)感想
重金属、というと、日常生活に無縁のような感じがするけど、実は人間が生きて行くには微量は欠かせないもの。でも量が過ぎれば毒になる、という。筆者は重金属のもつ役割を丁寧に説明し、水銀や鉛、カドミウム、砒素、銅などの各論に進める。丹念な書きっぷりには敬服。末尾の方で、生物は酸素という有毒なものを生きていくために使うことを始めた時から、こういう諸物質を生かす機能を付けてきたというのはすこぶる示唆に富む。理系でなくても是非読んでほしい1冊。ついでに岩波新書の「口伝 亜砒焼き谷」を書棚で探しているところ。
読了日:9月17日 著者:渡邉 泉
佐川男子佐川男子感想
近所のカレー屋シェヌーで見掛けて買って見たけど、まあ、評すること能わず、という感じ。佐川のドライバーの図鑑です。それ以上でも以下でもない。お好きな向きはどうぞ。結構写真は綺麗です。
読了日:9月9日 著者:
舞台を観る眼舞台を観る眼感想
歌舞伎を始め、古典芸能の世界での評論が主なグラウンドの氏。その氏が所謂、商業演劇系も材料に評論した部分が大半を占める。でも一生懸命書こうとしているのだけど、ピンと来ない。なぜか。古典芸能なら「型」があり「規矩」がある。でも現代の演劇にそれはない。物差しが氏の目だけになってしまうと、箇条書きの説明も腹に収まらなくなる。ただ、随筆部分の「批評家の視座」の部分は、肩の力の抜けたように見せている好随筆が並ぶ。最終章の「折口信夫という存在」は折口の弟子筋で言えば第2世代に当たる筆者、言葉の調子の割に説得力に欠ける。
読了日:9月8日 著者:渡辺 保
日本の楽劇日本の楽劇感想
音楽と所作が伴ったものを、筆者は「楽劇」と呼んだ。歌舞伎、文楽、能楽、琉球舞踊、寺院での法要などなど。各分野のほんの小さなことでも一家をなせる業績だがいとも簡単に、横に並べて論じていくのはこの人しかできない才能だ。幼少期、相撲に親しみ、手さばきを1番ずつメモしたという。各章の論文の出来は明快で秀逸だが、巻末の自叙伝が秀逸。アルゼンチンに渡った幼児期、フランス語を生かして理丙に入りながら文学部に転じた学生時代、習志野で毒ガス弾を打つ練習をしたこと……。経験すべてを梭にかけて縦糸横糸見事に織り上げた天才だ。
読了日:9月8日 著者:横道 萬里雄
日本語雑記帳 (岩波新書)日本語雑記帳 (岩波新書)感想
全部で9章の章立てのうち、興味を持って読めたのは前半の5章まで。たとえば方言の項で、「学区」と「校区・校下」の使い分けが新潟・親不知から木曽三川に至る境界で分かれるとか、「シアサッテ」と「ヤノアサッテ」の順番が東西に分かれ、なおかつ首都圏では埼玉の影響が出るとか、アクセントの問題(しん」かん「せん、かしん」か」ん「せんか)とか、まではこの寸法の読み物として面白いのだけど。どうも終盤の方は、国立国語研究所の先生の顔がチラチラ見え出すのが気になる。軽い雑記帳としてはいい、読み物ですけどね。
読了日:9月7日 著者:田中 章夫
日本語練習帳 (岩波新書)日本語練習帳 (岩波新書)感想
だいぶ昔によんだけど、「日本語雑記帳」と間違って読んだ、を押しました。再読したわけではないのであしからず。しかし、のであるは、文章のリズムとして、碩学がどう言おうと、使う時は使う、のである。
読了日:9月7日 著者:大野 晋
詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191)詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191)感想
文部省唱歌を底流とした「官製の郷愁」から、大正期の童謡運動、労働運動を押さえ込もうとする動きの上にある新民謡運動−−北原白秋という人物を狂言回しに論考を進めていく。関東大震災後の混乱、不況、15年戦争へ。歌の担った役割は、郷土愛だったり、帰属意識だったり(校歌、社歌、新民謡)。白秋は先頭に立っていた。国への帰属意識の発露として出たのが国民歌謡。国家総動員体制への応援歌だった。でも、これらの動きは戦後も脈々と続いていく。「型に鋳込まれた」郷愁が歌で刷り込まれることを自覚しておくことは無駄ではない。
読了日:9月3日 著者:中野 敏男
あらゆる小説は模倣である。 (幻冬舎新書)あらゆる小説は模倣である。 (幻冬舎新書)感想
小説、否、文章を書くと言うことは誰かの模倣から始まる。それは仕方のないことで、意味が通じるからと言って話した言葉そのままでは文章にならないことを見れば分かるだろう。筆者はその1点を繰り返し述べる。夏目漱石であり、村上春樹であり。でもそれが何の新味があるというのだろう。特に最後の小説の習作を指導する部分はナンセンスだ。使う言葉は「盗作」「剽窃」とこけおどしだけど、遣っていること自体は何も新しいことはない。ちょっと残念な1冊。
読了日:8月24日 著者:清水 良典
古代オリエントの宗教 (講談社現代新書)古代オリエントの宗教 (講談社現代新書)感想
今のキリスト教世界から見るとマニ教も、イスラームもあるいはアルメニアのミトラ信仰も、すべて異端に見える。でも教義からいうと、拝火教は別にしても、ユダヤ教あるいは古代キリスト教の一派であり、日本国内で奈良仏教、平安仏教と、日蓮宗、浄土真宗ほどの差はない、ということに驚かされる。イスラームの信仰も一享受史に過ぎない。キリスト教を西から眺めるか、東から眺めるかでかくも姿、形が違って見えるというのが興味深い。消えた記録、文書から研究する碩学に敬意を表す。唯一、「もたらす」を「齎す」と書くのは筆者の衒学趣味?
読了日:8月21日 著者:青木 健
日本の土木遺産―近代化を支えた技術を見に行く (ブルーバックス)日本の土木遺産―近代化を支えた技術を見に行く (ブルーバックス)感想
橋、堤防、防波堤、築港、堰堤などなど、明治期以降に、こんなにも多くの土木工事が行われ、なおかつ現役で稼働しているというのは一種の驚きがある。 もちろん、単なる遺産になってしまっているものもあるが。 それにしても、鉄筋コンクリートという技術や、熔接という技術がまだ未成熟だった時代から、何とか工夫を重ねてきた先人には頭が下がるし、この本に取り上げられている構造物の多くには、一度はいってみようか、という気分にさせられる不思議な魅力がある。文体は正直のところ単調だけど、それを上回るおもしろさを教えてくれる1冊。
読了日:8月15日 著者:
戦前昭和の国家構想 (講談社選書メチエ)戦前昭和の国家構想 (講談社選書メチエ)感想
戦前日本の少なくとも政治を動かした4つの理念、「社会主義」「議会主義」「農本主義」「国家社会主義」の各観点から、どういう受容があり、それはなぜ主流たり得ぬものに転落して行ったのか、を紐解く。この本は著者の「戦前昭和の社会」(講談社現代新書)で感じた、今の時世を見た時に感じる既視感、特に議会主義、国家社会主義の項でそれを強く感じる。石橋湛山、斎藤隆夫……今振り返っても具眼の士とは思うが、力を発揮できないままに終わる。何とも言い難い「民意」とは何なのだろう。
読了日:8月12日 著者:井上 寿一
明治百年―もうひとつの1968明治百年―もうひとつの1968感想
一言で言えば「渾沌」。明治百年だったこの年は、記憶を辿れば、日本中に奉祝の提灯がぶら下がり、新聞・雑誌が特集を組んだ。色々な事が同時多発した。一つひとつの動きは関連があったとは思えなかったけど、筆者の羅列するように、この年には大いなる何かの意図があったのかもしれない。この本、最後までカオスなのだが。 ある意味で、これだけの変化の結節点だった、ということを再確認する意味ではいい本なのかもしれないけど、当時の政府を含めての意図、大いなる力が働いていたような気もする。
読了日:8月11日 著者:小野 俊太郎
俳句の向こうに昭和が見える俳句の向こうに昭和が見える感想
自作他作を含めて、昭和の時代に詠まれた俳句をネタにした自叙伝。 佐田岬半島の小村に生まれた筆者が、川之石高校に進み、立命大に進み、教師になり……という間に、世の中は米が余る時代になり、高度成長期になり、バブルに向かって一直線。 時代の諸相と、自身の思い出とを横糸に、取り上げた俳句を縦糸に、時代の姿を織り上げていった1冊です。 なかなかに出来はいいと思います。 それと、故郷が原発立地となったことについて。昔は甘藷や雑穀の畑がいつの間にか密柑山になり、原発ができると放棄農地になっていった、という話は示唆的。
読了日:8月10日 著者:坪内 稔典
特高警察 (岩波新書)特高警察 (岩波新書)感想
一言でいえば、筆者が結びに代えてでいう、「特高警察とは戦前日本における自由、平等、平和への志向を抑圧統制し、総力戦体制の遂行を保持した警察機構、という定義になる。ただこの官僚組織は当初の目的を逸脱して、共産主義、国家主義、宗教と次々に取り締まるものを増やした。要はミジンコの様に官僚組織は現状維持のためには無限増殖するという一番の好例だろう。
読了日:8月8日 著者:荻野 富士夫
カラー版 北斎 (岩波新書)カラー版 北斎 (岩波新書)感想
「富嶽三十六景」に至るまでの北斎の画業の積み重ね、そして終えた後(版元の都合もあろうが)の肉筆画に移行していく過程と、いずれも資料、作品の積み重ねからの考察で気持ちがいい。 ただ惜しむらくは、絵が少ないこと。特になかなか閲覧の困難なものも多そう。こういう時のために、画集を別冊にして出してくれないだろうかね。岩波さん。 今後もっと工夫してほしいなあ。 中で「彫りにうるさかった北斎と摺りにうるさかった広重」という記述が出てくる。2人の作品の差を言い表して妙。いい本。
読了日:8月5日 著者:大久保 純一
治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)感想
警察組織、思想動向を統括した内務省と、法曹の世界を牛耳った司法省。この2つの組織の思惑に乗り、目先の利益(政争)での覇権を願った政党。 その三位一体が「治安維持法」という怪異な法律を生み出していった、というのがよく分かります。 いきなりこの法律が生み出された訳ではなく、その前段として「小さく産まれた」段階があった訳で、これは今の政治にも当てはまるような気がします。 今、政治の世界で「決断」と称して専断していこうとしていることが、政党の消長とは無縁にことが進んでいく。この法律の教訓をしっかり掬み取らねばと思
読了日:7月29日 著者:中澤 俊輔
いしいひさいち  仁義なきお笑い (文藝別冊/KAWADE夢ムック)いしいひさいち 仁義なきお笑い (文藝別冊/KAWADE夢ムック)感想
やはり巻頭のインタビューが出色でしょう。インタビュー形式で本人が書くというもの。いままで画業40年の来し方行く末を語っています。 朝日新聞連載の「ののちゃん」が「写経」というのは秀逸。と同時に、「地球防衛軍のひとびと」のしりあがり寿と、「ののちゃん」のいしいひさいち。同じことを言っているのだけど、自分という立場をともに見据えていることに好感を持ちましたね。
読了日:7月26日 著者:
へうげもの(15) (モーニング KC)へうげもの(15) (モーニング KC)感想
関ヶ原の合戦編。そこは通り一遍の小説とは異なり、山田ワールドであります。光成が最期に頓悟した世界、ああいう風に絵にされると非常に愉快。 それとこの巻から登場の大久保長安。だれかの絵に似ていると思ったら、たぶん藻黒服蔵のイメージなんですね。 上手い本歌取りです。 という訳で、この漫画も大団円が近くなってきたのがちょっと寂しくもあります。
読了日:7月25日 著者:山田 芳裕
ミッドウェー海戦 第二部: 運命の日 (新潮選書)ミッドウェー海戦 第二部: 運命の日 (新潮選書)感想
第1部でそういう印象を持ってしまったので飛ばし読み。いろいろな人物が登場するけど、毀誉褒貶は世の習い。きちんと結果を清算しないままに、都合のよい事実だけで次に進むというのは、日本の国民性なのかもしれない。ただ、筆者の言いたかったことはこの巻の「あとがき」に尽きる。そういえばあまりピンと来なかった「作家と戦争 城山三郎と吉村昭」の筆者であったかと後で気がついて、ちょっと後悔。
読了日:7月22日 著者:森 史朗
ミッドウェー海戦 第一部: 知略と驕慢 (新潮選書)ミッドウェー海戦 第一部: 知略と驕慢 (新潮選書)感想
世に知られた太平洋戦争の転換点。その前後を綴った1冊なのだけど、どこまでが資料に依拠しての記述なのか、どこからが小説仕立てなのかが、正直のところよく分からない。この手の話はその1点が一番肝心なところだと思うのだが。
読了日:7月22日 著者:森 史朗
藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎感想
分かりやすく要約すれば、利休の作ったと言われる二畳台目の茶室は、メビウスの帯の親戚、クラインの壺であったという見立てをした点。「へうげもの」という作品は、この本を画像化したということがよくわかる。 あと、待庵という空間は、仮設の茶室で、宝積寺阿弥陀堂内に作られたという解説はすこぶる興味深い。後段は近代建築における茶室の享受史。前段の絵解きに比べてちょと、ね。
読了日:7月22日 著者:藤森照信
鉄道地図 残念な歴史 (ちくま文庫)鉄道地図 残念な歴史 (ちくま文庫)感想
新味なし。残念な内容です。もっと丁寧な本があります。期待したので……。 明治時代の民鉄の国有化、先の大戦前後の混乱などなど、既出の話が多く、もっと新しい視点がほしかった。 それと、国鉄民営化のどさくさの影響をもっと掘り下げてほしかったですね。
読了日:7月12日 著者:所澤 秀樹
句読点、記号・符号活用辞典。句読点、記号・符号活用辞典。感想
真剣に読む本じゃありません。でもパラパラとめくっている分には楽しい。 ちょんちょん括弧を井上ひさしが使っていたり、単柱2本が日本語入力の時はダッシュの用例として普通、とか。 あれこれ、文章を書く上で、飾りをどう使うのか、考えさせてくれる本です。 そう、池波正太郎の括弧にも一時、あこがれた時期があったなあ。
読了日:6月30日 著者:
銀幕の銀座 - 懐かしの風景とスターたち (中公新書)銀幕の銀座 - 懐かしの風景とスターたち (中公新書)感想
元は連載。本にすると一部重複感はあるけど楽しい1冊。「昔恋しい銀座の柳」の時代から、東京五輪前後までの映画に出てくる銀座を取り上げる。映画のあらすじを紹介しつつ、俳優のエピソードもいれ、自身の感想も織り込む。こういう藝はなかなかにできることではありません。 取り上げられている映画何本かは実際に見てみたくなるような気も起きます。 東京五輪前後で筆を置いていますが、「それ以降は銀座が映画の舞台にあまり取り上げられなくなった。新宿、渋谷と繁華街が増えた」からと分析する。確かに一つの文化が終わったといえまいか。
読了日:6月22日 著者:川本 三郎
大相撲新世紀 2005-2011 (PHP新書)大相撲新世紀 2005-2011 (PHP新書)感想
期待した私がバカでした。新味がない。途中から身辺雑記になっている。世間様に問うほどの中身はない。一番の今の角界の問題は、NHKが勧進元になって支えている構図。もしNHKがつっかえ棒を外したら、土俵は維持できなくなる。その自覚が全くないことこそ問題なのだが。
読了日:6月19日 著者:坪内 祐三
将棋名人血風録    奇人・変人・超人 (oneテーマ21)将棋名人血風録 奇人・変人・超人 (oneテーマ21)感想
いわゆる聞き書き。本の構成がなっていない。次に内容が平板。木村、大山、升田の下りから、ちょっとでも将棋の本を読んだ人間なら新味が全くない。第3に将棋の手筋の話が出てくるのに、盤面図がない。不親切極まる。第4に結局は自慢話である。1冊読むのは苦痛。同じ将棋の世界なら、先崎学くらいものが見えていないと、新書にする意味がない。最も筆者が一番の奇人かもしれないのだが。
読了日:6月15日 著者:加藤 一二三
日本のお守り―神さまとご利益がわかる日本のお守り―神さまとご利益がわかる感想
お守りの本。オールカラーで、きれいな本だ。興味とすれば、何を日本人が祈ってきたのか、という点。昔から伝わるものには、それなりの趣が備わっている一方で、神社仏閣も商業主義に走らざるを得ない現実の前に生み出されたものも目につく。ま、それなりに楽しい1冊。でもこの値段は高かったかな、内容と比べて。造本からして仕方ないのだけど。
読了日:6月11日 著者:
三日月とクロワッサン三日月とクロワッサン感想
筆者は東大大学院理学系の教授で、専門は宇宙物理学。ダークマターの存在などを研究している方。産は安芸市。最初の方に「高知県のソウルフードは柚の酢」という自己分析に感銘を受けて読み通してしまった。途中までは(具体的には東大出版会のUPに連載していた部分)は門外漢でも読みやすい。人生の幸せについての対数微分(全然分からぬが)し、さらに積分と数式で考えるところ面目躍如。後段でこの数式の間違いもまた自ら挙証するのは科学的態度である。「ローの精神」「三日月とクロワッサン」等々、力の抜けたいい文。註にまた味がある。
読了日:6月8日 著者:須藤 靖
劇評になにが起ったか劇評になにが起ったか感想
1960年代後半、つまり70年安保前夜の時代の劇評(というか演劇論)を集めた1冊。確かにあの時代は熱かったというのは伝わってくるけど、この渡辺保らしい理屈だった立論に若さの故か、余裕がなく、読んでいていて息苦しくなってくるような感じ。でもこういう時代があったればこそ、渡辺保の今があるのかな、とも思えてくる。ともかく、アジテーション紙一重、の時代なのだった。
読了日:6月6日 著者:渡辺 保
「ガード下」の誕生――鉄道と都市の近代史(祥伝社新書273)「ガード下」の誕生――鉄道と都市の近代史(祥伝社新書273)感想
ガード下、というのは当たり前の話だけど、都市文化なのである。都市でなければガード下はない。 で、ガード下というのは、建築と土木の中間、隙間のような存在であるという指摘は当たっているし、全国各地のルポも楽しい。 で、次の展開があるのか? 鶴見線の国道駅周辺や、阪堺線の美章園駅付近を美化するのは簡単だ。でもそれだけではすまない問題があるような気がする。 もうひとつ、掘り下げてほしかった。 でも。それはそれなりにおもしろい本でした。
読了日:6月4日 著者:小林 一郎
究極のナローゲージ鉄道 せまい鉄路の記録集究極のナローゲージ鉄道 せまい鉄路の記録集感想
ナローゲージ、というのは線路の幅がJRの在来線よりも狭いもの、いわゆる軽便鉄道のこと。地方の私鉄や森林鉄道、拓殖軌道、鉱山鉄道など、全国各地にあった。この本は今までの本にはない、個人商店のトロッコまで掲載しているのがおもしろい。中で立山砂防軌道の話が出てくる。実は中、高時代の畏友のお陰で、今では乗ること自体が幻になってしまったこの軌道にのったことがある。トロッコに屋根がついた程度の客車で4段、18段といったスイッチバックを上がっていった。その写真も多く掲載されていて、思い出の再確認となった。一興!!
読了日:5月31日 著者:岡本 憲之
コンパスと定規の数学: 手で考える幾何学の世界 (アルケミスト双書)コンパスと定規の数学: 手で考える幾何学の世界 (アルケミスト双書)感想
中学時代、幾何の作図はコンパスと定規しか使ってはいけない、と習った。 そんな懐かしいユークリッドの世界を思い出し、遊んでくれる本です。 最初は垂線を立てる、平行線を引くといった基本的な話から、正多角形の作図、黄金分割、螺旋、楕円といったものの作図まで、順を追って説いてくれています。勿論理解を超える説明もありますが、久しぶりにコンパスと定規を操ってみたくなること請け合いです。
読了日:5月31日 著者:アンドルー・サットン
股間若衆: 男の裸は芸術か股間若衆: 男の裸は芸術か感想
一言で言えば、男性彫刻、あるいは絵画、写真に於いて「股間」をどう表現してきたか、という論究。元々は芸術新潮の連載にて、3編に渡って書き継がれたもの。 明治時代に公序良俗の名の下に、男性の股間はあるものは切断され、あるものは「とろけて」いく。それも戦後の訪れとともに、日の目をみるようになる。 この本の難解さは、先に書いた通り、3編のオムニバスになっている点にある。もし、構成を換骨奪胎して、時系列に書き直してくれていたら……。ずっとわかりやすい本だったに違いない。 もっとも美術史書である。わかりやすい、という
読了日:5月26日 著者:木下 直之
家元探訪: 未来を見据える十人家元探訪: 未来を見据える十人感想
土台は読売新聞web版の記事。その中身だけど、一つには人選。家元制度については林家辰三郎、西山松之助を初め、先賢の研究が積み重ねられてきたのだけど、その辺の知見が生かされている感じが薄い。何か、「家元」と称する人に、「よいしょ」の質問をして、喜ばせて1冊に仕立てた、みたいな感じがある。どうにもよろしくない。中で何人かは、面白いものもある。でも、駄作のインタビューが大半を占める気がする。第二次大戦後に芽生えた、理非を明らかにする視点を見失った。中で団十郎丈のものが出色。
読了日:5月26日 著者:河村常雄
posted by 曲月斎 at 03:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月に読んだ本。

2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2601ページ
ナイス数:143ナイス

ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)ダムの科学 -知られざる超巨大建造物の秘密に迫る- (サイエンス・アイ新書)感想
門外漢にもダムの何たるかを冷静に教えてくれる入門書。トリビア的には、重力式のダムで、鉄筋をほとんど構造体には入れないとか、コンクリートも大粒の固練りで仕上げるとか、一般の建築物とは違う、ダムならではの不思議も教えてもらってちょっとお得、という感じ。身近にあるロックフィルダムの水利権更新が間近に迫っていることもあって読んだのだけど、濁水対策とか、自然負荷の軽減とか、今や日進月歩ですな。高度成長期に造ったダムも老朽化しているんです。あと黒四ダムってのは今も大した存在であるのだな、というのがよく分かります。
読了日:12月27日 著者:一般社団法人 ダム工学会 近畿・中部ワーキンググループ
9条どうでしょう (ちくま文庫)9条どうでしょう (ちくま文庫)感想
総選挙の最中、一つの単語が脳裏を離れなかった。「軽躁」である。ほんの60余年昔の日本という国を因数分解すれば、この言葉になると指摘したのは阿川弘之。筆者の論考はさておき、一色に染まってしまいやすいのが自分を含めての特質であるかもしれないというのは、誰も否定できないのではないか。本書で内田樹が書いている「内政的矛盾」を受け入れ、いきていくのがいい。GHQ民政局が提示した現憲法であるにせよ、軽躁さを自覚した当時の先人が受け入れた叡知という気がする。やはりこの件は自覚的に先延ばしにするのが一番いいように思える。
読了日:12月24日 著者:内田 樹,平川 克美,町山 智浩,小田嶋 隆
妄撮男子妄撮男子感想
写真の合成の趣向がちょっと気になって買ってみたけど、どうやって処理しているのか、とうとう分からなかった。今どきの写真は画像処理ソフトでどうにでもなるものなあ。
読了日:12月22日 著者:
文様別 そば猪口図鑑文様別 そば猪口図鑑感想
読んだというより、眺めた本。小さな蕎麦猪口の世界に広がる無限の意匠を次々と紹介してくれる。どうしてこういうデザインになるのかは、よく分からない。でもその形や色が小粋に見える。別に古伊万里でなくても古有田でなくても、現代の作家の作品でも楽しい。その本歌を集めた1冊。もう少し図版が大きいといいんだけど、文庫サイズだから仕方ないですね。
読了日:12月21日 著者:
世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代世界軍歌全集―歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代感想
辞典本。世界の軍歌の流れを、ナショナリズムの目覚め、国民国家の盛衰、イデオロギーの時代、総力戦体制の完成、多極化する世界の5部立てで分類、その時代に成立した曲の歌詞を原詩、邦訳という形で紹介していく。冒頭の1曲目は「ラ・マルセイエーズ」。そして筆者は「今やYouTubeで簡単に曲を聴くことができるので、それを聞きながら読んでほしい」とも。Webとこういう形で融合した本が出現したのがすごい。それと先行したサイトで今は閉鎖されてしまった「軍歌索盤考」の名が懐かしかった。とてもいいサイトだったのだが。
読了日:12月21日 著者:辻田 真佐憲
随感録 (講談社学術文庫)随感録 (講談社学術文庫)感想
紐育のウオール街に端を発した大恐慌の下にあって、台風の最中に窓を開けるようなものと言われた金の旧平価での解禁を指揮した井上準之助蔵相。その政策を後押ししたのが浜口雄幸だ。「国家のために斃れるのは本望」と語り、ある意味では決断できる政治をしたかのように評価する向きもあるが、状況を勘案すれば如何だったろう。むしろロンドン軍縮会議を成功させたことに意義があったものの、彼がある意味で戦前の日本で舵を切ってしまった部分があるのは否めない。「率直な心情」とはいうものの、本音の10分の1も書き残して居ない気がする。
読了日:12月14日 著者:浜口 雄幸
アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲 (集英社文庫)感想
表題の内容は第1章の「強さこそがすべて」の各編に書かれているだけ。ステロイドはすごい。「大きく、強く、速く」をモットーにスポーツに取り組むと、こういう悲劇も起こるだろう。それが旧東欧のような社会主義国ならいざ知らず、資本主義の権化のアメリカで起こっているというのはポンチ絵だ。でもこの件に関しては人のことをいえないのかもしれない。2章以下それ以外の章、項目はトホホのアメリカスポーツ寸景集でごく軽い読み物。何分、日本と違って広大なアメリカのことだ。何が起きていても不思議はないし、4大スポーツがすべてではない。
読了日:12月14日 著者:町山 智浩
日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)感想
豊かさって何なのだろ、と考えさせられる本です。放浪を何度も繰り返した山下清ですが、駅のベンチで大半は寝た、といいつつも、三度三度の食事にはありついていた訳で。他人(というか家族以外)を宿泊させることすら、希有になっているのが今の時代。少し余裕があれば施しもする。ゆとりが実は日本という社会を作ってきたのではないか、とも。「兵隊の位」であり、「目方で何貫か」が関心事であるにせよ、除外せずに受け入れていた社会のありよう、というのを考えさせられる1冊です。と当時の新聞記者は実にいい加減でした。目に浮かぶような。
読了日:12月10日 著者:山下 清
私の歌舞伎遍歴―ある劇評家の告白私の歌舞伎遍歴―ある劇評家の告白感想
評論とはどういう作業なのかを解説した本です。素人が宛て推量、好き嫌いで、佳い悪いを言うのと、評を業として生きる人間が記す言葉の差がよく分かります。古典芸能はとにかく見続けること、そうするとある瞬間に今まで見えなかったものが見えてくるようになる。僕もかつて経験したことです。筆者はさらに江戸時代に遡る歌舞伎の原典に立ち返り、当て書きしている脚本であるからその役者の藝に思いを巡らせ、と話を展開していきます。詰まるところは「型」にその規矩があると言います。歌舞伎に限らず、書き物をする人は考えるところ多、でしょう。
読了日:12月10日 著者:渡辺 保
写真がうまくなる デジタル一眼レフ 構図 プロの見本帳写真がうまくなる デジタル一眼レフ 構図 プロの見本帳感想
正直にいうと、あまり参考にはなりませんでした。「構図」って何だろう、と考えると、自分がそれまでに見てきた(実景であれ、絵画であれ、写真であれ、映画であれ)、アレッと思う絵が一番、参考になるからです。あれこれと考える間もなく写す写真が多い所為かもしれません、こんなことを考えるのは。でもその一瞬を切り取る、一番象徴的になるような絵にする、と考えていった結果が「構図」になるのではないかなあ。個人的には広角系の上手い使い方の参考になるかと思ったのですが。選考会狙いのアマ写真家向け、という感じ。
読了日:12月10日 著者:立花 岳志,できるシリーズ編集部
大河内俊輝能評集 2 能の見方・考え方・楽しみ方大河内俊輝能評集 2 能の見方・考え方・楽しみ方感想
能の評論というのは、ほとんど成り立たない分野だ。なぜなら、同じ古典演劇でも歌舞伎や文楽は数日間は興行されるけど、能は1日、それも1回限りの藝。となれば、評してもそれは演者に対しての無益な先入観を読者に植え付けるだけになる。わかりきってはいるのだけど、つい読んでしまった。そして大いなる後悔。自覚はあるのだろうけど、これでは團菊ジジイ以下だ。若いころの筆の冴えを知るだけに、これはこれは「老いてはせぬが花なり」ではなかったか。
読了日:12月4日 著者:大河内俊輝

読書メーター
posted by 曲月斎 at 03:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする