2012年09月01日

8月に読んだ本。

8月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1902ページ
ナイス数:58ナイス



あらゆる小説は模倣である。 (幻冬舎新書)あらゆる小説は模倣である。 (幻冬舎新書)
小説、否、文章を書くと言うことは誰かの模倣から始まる。それは仕方のないことで、意味が通じるからと言って話した言葉そのままでは文章にならないことを見れば分かるだろう。筆者はその1点を繰り返し述べる。夏目漱石であり、村上春樹であり。でもそれが何の新味があるというのだろう。特に最後の小説の習作を指導する部分はナンセンスだ。使う言葉は「盗作」「剽窃」とこけおどしだけど、遣っていること自体は何も新しいことはない。ちょっと残念な1冊。
読了日:08月24日 著者:清水 良典


古代オリエントの宗教 (講談社現代新書)古代オリエントの宗教 (講談社現代新書)
今のキリスト教世界から見るとマニ教も、イスラームもあるいはアルメニアのミトラ信仰も、すべて異端に見える。でも教義からいうと、拝火教は別にしても、ユダヤ教あるいは古代キリスト教の一派であり、日本国内で奈良仏教、平安仏教と、日蓮宗、浄土真宗ほどの差はない、ということに驚かされる。イスラームの信仰も一享受史に過ぎない。キリスト教を西から眺めるか、東から眺めるかでかくも姿、形が違って見えるというのが興味深い。消えた記録、文書から研究する碩学に敬意を表す。唯一、「もたらす」を「齎す」と書くのは筆者の衒学趣味?
読了日:08月21日 著者:青木 健


日本の土木遺産―近代化を支えた技術を見に行く (ブルーバックス)日本の土木遺産―近代化を支えた技術を見に行く (ブルーバックス)
橋、堤防、防波堤、築港、堰堤などなど、明治期以降に、こんなにも多くの土木工事が行われ、なおかつ現役で稼働しているというのは一種の驚きがある。 もちろん、単なる遺産になってしまっているものもあるが。 それにしても、鉄筋コンクリートという技術や、熔接という技術がまだ未成熟だった時代から、何とか工夫を重ねてきた先人には頭が下がるし、この本に取り上げられている構造物の多くには、一度はいってみようか、という気分にさせられる不思議な魅力がある。文体は正直のところ単調だけど、それを上回るおもしろさを教えてくれる1冊。
読了日:08月15日 著者:


戦前昭和の国家構想 (講談社選書メチエ)戦前昭和の国家構想 (講談社選書メチエ)
戦前日本の少なくとも政治を動かした4つの理念、「社会主義」「議会主義」「農本主義」「国家社会主義」の各観点から、どういう受容があり、それはなぜ主流たり得ぬものに転落して行ったのか、を紐解く。この本は著者の「戦前昭和の社会」(講談社現代新書)で感じた、今の時世を見た時に感じる既視感、特に議会主義、国家社会主義の項でそれを強く感じる。石橋湛山、斎藤隆夫……今振り返っても具眼の士とは思うが、力を発揮できないままに終わる。何とも言い難い「民意」とは何なのだろう。
読了日:08月12日 著者:井上 寿一


明治百年―もうひとつの1968明治百年―もうひとつの1968
一言で言えば「渾沌」。明治百年だったこの年は、記憶を辿れば、日本中に奉祝の提灯がぶら下がり、新聞・雑誌が特集を組んだ。色々な事が同時多発した。一つひとつの動きは関連があったとは思えなかったけど、筆者の羅列するように、この年には大いなる何かの意図があったのかもしれない。この本、最後までカオスなのだが。 ある意味で、これだけの変化の結節点だった、ということを再確認する意味ではいい本なのかもしれないけど、当時の政府を含めての意図、大いなる力が働いていたような気もする。
読了日:08月11日 著者:小野 俊太郎


俳句の向こうに昭和が見える俳句の向こうに昭和が見える
自作他作を含めて、昭和の時代に詠まれた俳句をネタにした自叙伝。 佐田岬半島の小村に生まれた筆者が、川之石高校に進み、立命大に進み、教師になり……という間に、世の中は米が余る時代になり、高度成長期になり、バブルに向かって一直線。 時代の諸相と、自身の思い出とを横糸に、取り上げた俳句を縦糸に、時代の姿を織り上げていった1冊です。 なかなかに出来はいいと思います。 それと、故郷が原発立地となったことについて。昔は甘藷や雑穀の畑がいつの間にか密柑山になり、原発ができると放棄農地になっていった、という話は示唆的。
読了日:08月10日 著者:坪内 稔典


特高警察 (岩波新書)特高警察 (岩波新書)
一言でいえば、筆者が結びに代えてでいう、「特高警察とは戦前日本における自由、平等、平和への志向を抑圧統制し、総力戦体制の遂行を保持した警察機構、という定義になる。ただこの官僚組織は当初の目的を逸脱して、共産主義、国家主義、宗教と次々に取り締まるものを増やした。要はミジンコの様に官僚組織は現状維持のためには無限増殖するという一番の好例だろう。
読了日:08月08日 著者:荻野 富士夫


カラー版 北斎 (岩波新書)カラー版 北斎 (岩波新書)
「富嶽三十六景」に至るまでの北斎の画業の積み重ね、そして終えた後(版元の都合もあろうが)の肉筆画に移行していく過程と、いずれも資料、作品の積み重ねからの考察で気持ちがいい。 ただ惜しむらくは、絵が少ないこと。特になかなか閲覧の困難なものも多そう。こういう時のために、画集を別冊にして出してくれないだろうかね。岩波さん。 今後もっと工夫してほしいなあ。 中で「彫りにうるさかった北斎と摺りにうるさかった広重」という記述が出てくる。2人の作品の差を言い表して妙。いい本。
読了日:08月05日 著者:大久保 純一

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
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posted by 曲月斎 at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする