2012年03月31日

第1日

早石炭をば積み果てつ……、というのは舞姫の書き出し。「をとこもすなる日記を……」とは六歌仙の紀貫之が遺した「土左日記」。
浅学菲才の身を重々に知りながら、土州に暮らす日々の始まればとて、曲学阿世の小身を羞じず、書き綴らんと、「土州日乗」の項目を立てることとしたり。
さても如何なる日々となるやら。

前任の西方への除目を承けて、土州に至る。家の鍵の引き継ぎは町内会の総代に托せりとのこととて、総代宅を訪ふ。良きひとがらにて、慣れぬ土地に歩む道しるべとも思ほゆ。この街の一番高き旅宿に荷を解く。眼下に広がるのは太平洋の大海原。その脇のNHKのローカルニュースでは、南海地震に備えてなるミニコーナーあり。津波は紀州沖が震源なら約10分ほどで岸まで到達するべし、高さは8公米にも及ぶべし、と。新たな住まいの海抜はおよそ5公米。ということで思い巡らしつつ、第一夜は更けぬ。
posted by 曲月斎 at 02:02| Comment(1) | TrackBack(0) | 土州日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月28日

引っ越しの当日

引っ越しの当日である。
前日の無慮11時間に及ぶ荷造りと荷出しの成果があって、今のところは順調。
独身の引越しなのに、作業の方々は7人。

あまり思い出深いとは言えぬ住まいであった。

ま、一年のうち、41週は出張していたのだから、当たり前か。

引っ越してきた時は盛りの桜が、今年はまだ硬い蕾。

転任先の高知は一昨日、満開になったようだ。
posted by 曲月斎 at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月15日

某月某日。

某日。
ゴルフの今季の開幕戦で沖縄。
もう大洋が初めて宜野湾キャンプをした頃からの知り合いのホテルナハ港に寄る。
ちょうど日大の陸上部の投擲チームが合宿中。このあとはまた、別に大学が入ってくるそうだ。

某日。
沖縄最後の晩餐は、栄町のまるまん。休みだったけど、女将さんが開けてくれた。
ヤギの刺し身のほか、「つかれているだろうから薬のスープね」と言って出してくれたのが「チムシンジー」。漢字の表記をすれば肝煎じ、である。
豚のレバーに香草を加えて煎じたもの。薄い塩味だ。「私のおばあが作ってくれたそのままの味だよ」。
何かしみじみとしてしまった。

その翌朝。飛行機の搭乗時間まで余裕があったので、どこか、と思って、ナハ港の石垣さんに知恵を借りたら「識名園はどう?」との助言。要は琉球王朝の尚氏の迎賓館。回遊式の庭園に、寝殿造りの庭にも通じるような橋に中の島。実に出来のいい空間だった。
実は琉球ぜんざい、というのに今回ははまっていて、識名園のこに逸品もなかなかに美味しかった。

ちなみに琉球ぜんざいとは小豆の代わりに金時豆が使われており、上にかき氷が載っているもの。何か滋味豊かだったな〜。

某日。
第2戦で高知。
4月からの任地だ。
前任の方に会い、話をする。局舎は木造二階建て、海抜5メートルほど。
その翌日は新しい管内の安芸郡を一周。芸西村〜安芸市〜安田町〜馬路村〜北川村〜東洋町〜室戸市〜奈半利町〜田野町〜安芸市。ぐるっと回って………。本当に広くて。海の青さに深い山。広い。

某日。
第3戦で鹿児島。この試合でゴルフ担当の生活が終わる。
3年間。2009年のヤマハレディース葛城から始まってこの試合まで。
いい経験もできたし、もう少しできることもあったのかな、という気もする。
でも、年間52週のうち40週余も出張を繰り返す生活は肉体的に無理な気もする。
大きなミスを起こす前に、人事異動という形で止めてもらったというべきかもしれない。

島田市の桜井市長に「希望の星人事」というのがあると聞いた。改めてこの3年間の役割はまさに「希望の星人事」を演じることだったかもしれない。

某日。
高知で待望のウツボにたたきをたべ、鹿児島でのり一のラーメンを食べた。最初の感動はやはり薄れていた。
驚けない程度の感性に堕した自分はやはり、老化しているのだろうか。
posted by 曲月斎 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月02日

2月に読んだ本。

2月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:4148ページ
ナイス数:81ナイス

散歩もの (扶桑社文庫)散歩もの (扶桑社文庫)
読了日:02月25日 著者:谷口 ジロー,久住 昌之
孤独のグルメ (扶桑社文庫)孤独のグルメ (扶桑社文庫)
単行本の他に同じ内容の文庫版を買ってしまった。文庫で十分なのだけど、読みやすいのは単行本。
読了日:02月25日 著者:久住 昌之,谷口 ジロー
孤独のグルメ 【新装版】孤独のグルメ 【新装版】
松重豊が名演であるというのがしみじみとわかった。。淡彩の原作に色を添えているのが。原作ももちろん余趣がある。主人公の設定が妙、酒が飲めないというのが。
読了日:02月25日 著者:久住 昌之
独楽園 (ウェッジ文庫)独楽園 (ウェッジ文庫)
薄田泣菫というと、冨山房新書にあった「茶話」にトドメを刺す。文章に才気が満ち満ち、斎藤緑雨に通じる味わいの妙のゆえだ。ちなみに本書は最晩年。茶でいえば出がらしの感がある。日向ぼっこしながら書くような文章はどうも性に合わないみたい。こに本の中では、平曲波多野流最後の検校である藤村検校の話。廃れた藝はどんなに貴重でも聞き手がいないという逸話と「絵の難しいところ」という一編。画家大雅堂にある御仁が「絵の難しいところは?」と問い掛けたところ、「紙の上に何一つ描いていないところでしょうな」と答えたとか。こういう話の
読了日:02月18日 著者:薄田 泣菫
歴史人口学で見た日本 (文春新書)歴史人口学で見た日本 (文春新書)
人口の推移から歴史を解析しようにいうのが歴史人口学。筆者はその先駆的存在らしい。日本にこの概念を導入し、江戸時代の「宗門改帳」から人口動態を分析することを始めた。筆者の研究史回顧の部分と、解析結果の事実の提示が混在しているのが難点なのだけど。考え方としては少し前の「デフレの正体」に通じるもの。読み物として興味深いのは江戸時代の農村と都市の平均年齢の差を示した部分、近代に入ってからの考察、そして日本の民族的起源にまで考察した部分。数学でいう微積分の明快さに似ている読後感。
読了日:02月18日 著者:速水 融
芝居の食卓 (朝日文庫)芝居の食卓 (朝日文庫)
歌舞伎の舞台に登場する食を狂言回しに筆を走らせた1冊。鯛、シャモ、豆腐、蕎麦、酒……。登場する素材はさまざま。今度、その芝居を見る機会があれば、筆者の挙げたその逸話をきっと思い出すだろう。で、気になった素材を2つ。「夏祭りの献立」で出てくる鱧皮膾。そういえば心斎橋の蒲鉾屋で売っていたっけ。もともと鱧好きだけど、ちょっと機会があれば、ね。それと「3人の女中」という一編。脇役の仲居をさせたら逸品だった女形の話だけど、現実の世界でも、料理そのものと同時にどうサービスされるかが肝要、と思い至りましたな。
読了日:02月17日 著者:渡辺 保
能のドラマツルギー―友枝喜久夫仕舞百番日記 (角川ソフィア文庫)能のドラマツルギー―友枝喜久夫仕舞百番日記 (角川ソフィア文庫)
喜久夫は晩年しかしらない。小柄で白髪の老人だった。でも舞台に上がると別物であった。そんな体験がまずある。仕舞の妙は、白湯を飲んで甘露と思う心境に似ている。能を囓った人間には少しまどろっこしくなるほどの構成が難なのだけど、こうしないと読者には説明がわかってもらえまい。印象批評、の極端な形、文章であろうと思う。承知で挑んだ筆者の力量にまた感服。最後に私見を。仕舞を実際に見てみると、所作云々もさることながら、五感を通じて残った記憶こそがすべてになる。相撲の取組もそうだが、人間の脳は巧みな取捨選択をするものだ。
読了日:02月12日 著者:渡辺 保
小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)
松竹蒲田の大部屋俳優から、小津安二郎監督作品の常連に。晩年は「男はつらいよ」に欠かせぬ存在になった笠智衆。俳優としての恩人小津をどう見ていたのかを語った1冊です。1928年の「若人の夢」から62年の「秋刀魚の味」までほとんどに出演し、無声からトーキー、白黒からカラーと小津の歩みとともに歩んできた人ならではの言葉が綴られています。著作の中では「ベストワンは『東京物語』」と話していますが、巻末の解説で子息・徹氏が「ずっと家族には『父ありき』と話していた」という内輪話まで含めて、秀逸な回顧記です。
読了日:02月12日 著者:笠 智衆
贈与の歴史学  儀礼と経済のあいだ (中公新書)贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書)
品物の贈答が儀礼として確立したのは室町時代と言われる。足利幕府、天皇家、寺社とそれぞれの社会相互の間で贈答が繰り返される。前例に基づいたり、相手をどう見るのかという変化だったり。この辺までは想像がつくが、目録が先に贈られて、実物がなかなか届かなかったり、贈り物を受けた側が不満を表して半分だけ受け取ったり。目録が半ば後世の為替手形のような役割を果たしていたり。結納や表彰の儀礼で残っている目録、折紙が負っていた役割も意外だった。貨幣経済と贈与の関係など、知的な刺激に富んだ1冊だった。
読了日:02月11日 著者:桜井 英治
大江戸世相夜話―奉行、髪結い、高利貸し (中公新書)大江戸世相夜話―奉行、髪結い、高利貸し (中公新書)
江戸時代の人は実に筆まめだ。身の回りで起きたこと、聞いた話などを書き留めた。そういう文骸を解して編み直すと楽しい読み物になる。この本はその好例。遠山の金さんの彫り物が桜吹雪か女の生首か、という話題やら、将軍の肉声を探ったり、オランダから献上の象の顛末だったり。脈絡のない話だから変化に飛んでいていい。1項目の分量も適切。元は吉川弘文館の季刊誌用の連載だったそうで、丁寧な筆運びだ。
読了日:02月09日 著者:藤田 覚
学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書)
丹念に証言を集めました、って感じの本。一方で、筆者の意向、意志に基づく選択もあるのだろうな、という感じも垣間見えます。要は戦時中学徒動員で学窓なかばにして出征していった若者がどんな思考を抱いていたのかを探った1冊です。エリート意識あり、選民としての不遜あり、過酷な条件に引き吊りおろして等しくなろうとする根性あり。あの神宮外苑雨の学徒出陣で答辞を述べた人物は戦後、鹿屋体大の理事長になっていたり、最前線に駆り出されるのを免れる数々の恩典があったり。日本の官僚機構は様々な仕掛けを考えるものよと関心したり。
読了日:02月08日 著者:高田 里惠子
鉄道と日本軍 (ちくま新書)鉄道と日本軍 (ちくま新書)
気がつかず再読してしまった。内容が不足。もっと軽便鉄道などに視野を広げ、中段の「プチ坂の上の雲」部分を削除するがよかろう。
読了日:02月06日 著者:竹内 正浩
中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史
テーマは中央集権型(筆者のいう郡県制)の宋代、元代とそれ以外の時代の地方分権型(筆者のいう封建制)を2項対立を提示、この物差しで日本史を見てみると、という仕掛け。ミソは2項対立です。江戸幕府と明治政府の連関性、建武の新政の革新性などは正鵠を射たものです。だが2分法は詭弁の温床になりがち。白か、黒か。時代、人の世は単純に割り切れるものではない。人口、物の生産など計量的な部分を重視したら、説得性に富んだものになったと思うのですが。どこか「張り扇」と「小拍子」の音がするような気がします。
読了日:02月05日 著者:與那覇 潤
マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)マンチュリアン・リポート (100周年書き下ろし)
ミルフィーユ形式の小説は「壬生義士伝」と同じ構造。張作霖爆殺事件についての真相究明を昭和天皇が陸軍若手将校に下した構えで話は進む。機関車の独白が挟まっているのだけど、ちょっと甘口。どうしても「機関車トーマス」を連想し、飛ばし読みにせざるを得なかった。筋としては関東軍の犯行というのは周知の事実。逆に張作霖がなぜ奉天に戻ったのかという一点に収斂していくのだが、「藪の中」にした方がよくはなかったか。満州報告書の最終信は白紙なのだが、本当は黒沢明の「天国と地獄」のように違う結末を筆者は用意していた気がする。
読了日:02月05日 著者:浅田 次郎
失言恐慌―ドキュメント銀行崩壊 (角川文庫)失言恐慌―ドキュメント銀行崩壊 (角川文庫)
きっかけは演劇評論家渡辺保の生家が昭和の金融恐慌の端緒となった東京渡辺銀行だったということから。時の蔵相片岡直温が衆院予算委で「東京渡辺銀行が到頭破綻をきたしました」と失言のゆえに倒産に至った一件だ。歴史の彼方のこと、当事者はすでに他界しており、すでに資料に依るしかない。一般的な認識は小銀行の経営ミスに起因するというものだろうが、それは当時の大蔵省官房文書課長の口碑が出典と知る。佐高信の文章は頗る攻撃的なものが多いが、抑えた筆致で双方の登場人物を綴っていくことで、断定しないでも見えてくるものがある。秀。
読了日:02月04日 著者:佐高 信
君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
浅田センセの随筆は、「勇気凛々瑠璃の色」の筆致の方が好きだ。私小説風というか、身辺雑記という風情の題材は、軽妙に仕立てた方が読みやすい。戯画化というか。そも随筆の楽しさは、書き出しから途方もない天地に場面転換してくれる妙技にある。その点で、未刊行の掌編を集めたこの1冊にはその藝が希薄な気がする。
読了日:02月03日 著者:浅田 次郎
オオカミの護符オオカミの護符
大口真神のお札ってのは、ひと昔前まではよく門口で見かけたものです。オオカミは日本では食物連鎖の頂点にある哺乳類であり、昨今、人口減少の続く中山間地での獣害(シカ、イノシシ、サルなど)を駆除する形で存在していたのです。ニホンオオカミが明治年間に絶滅して以降、山間に人がいるうちはまだしも、今や限界集落という言葉も定着した通り、山から人が消えました。オオカミへの信仰は、太古に生まれたものであろうし、里と山の間の関係を示す証があの「お札」だったわけです。それを自分の目線の高さで追いかけた1冊。好感が持てます。
読了日:02月03日 著者:小倉 美惠子

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
posted by 曲月斎 at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする