2009年01月31日

いやぁ、映画はスクリーンで見るものですね。

meiga.gif
隣町のホールで、小津の映画の3本立て。
しかも500円である。

ここのホールは足の便が悪いのだけど、箱としては立派。
で、きょう観たかったのは最後の「秋刀魚の味」。
のそのそと出掛けて、始まってから5分くらいから観たのだけど、面白かった。
もちろんたしかDVDを持っているし、何度も観ている作品ではある。
meiga2.gif
しかし、スクリーンで観ると違うね。改めて思った。
何が違うかというと、背景がよく見える。
たとえば、中村伸郎のオフィスにかかっている絵。気にもしたことなかったけど、能の石橋の獅子の絵なんですね。梅原竜三郎みたいな力強いタッチでいい絵だった。また、この役の自宅の唐紙。これがまた京唐紙で上品。庭の臥竜梅も昼、夜と表情を変えるのにいい造作だ。

ちらっと写る背景にまで細かく監督の神経が行き届いているのが本当によく分かる。それで自然と役者の演技に奥行きがでているんですなあ。

それと発見したのは、小津映画で客席から笑いが起こることが面白かった。確かにシニカルだったり、巧いせりふだったり。それは承知していたけど、笑い声に結びつく、ってのは面白い。

こういう催しはいいよね。500円。お値打ちでした。
ちなみに1日も3本立てでやっています。
追記
posted by 曲月斎 at 17:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 銀幕緞帳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「天皇陛下の全仕事」


天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書 1977)
天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書 1977)


この本を読み始めたら、ちょうど今上陛下の公務削減の話が出てきた。

何でもお言葉の回数を減らすとか、大使の信任状捧呈式を減らすとか、皇室の祭事も出御の回数を減らすとか。あれこれと新聞にでているけどね。またこのエリアの新聞が大の皇室の話題好きなんだから。

で、確かに、この本を読んでいても、陛下は忙しいわな。
ちらちらと書いているけど、皇室典範を決めたときには、こんなに寿命が長くなることを想定していたとは思えない。だから宝算を重ねてもゆっくりできないし、ゆっくりすることが一大事になってしまう。

やはり、摂政制度を生かした方がいいよね。確かに。
その方が東宮殿下も何よりの親孝行ってもんだと思いますよ。
この本は同じ天皇の仕事を書いているにしても、内側から書くか、外側から書くかの差で、こうも違うものかと思うくらいにポイントを突いていると思います。たとえば、被災地の巡幸、その時の目線の位置なんてね。ま、値段分はあったかな、内容が。
posted by 曲月斎 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月22日

今年のおみくじ

先日、藤枝の鬼岩寺に詣でたついでに、おみくじを引いた。
ちらと事前におみくじの入っている引き出しを覗くと、
元三大師観音籤であるようだ。

この件についてはこのブログでもこのページに書いた通り。

で、この日の籤は16番「吉」。文に曰く
「破改重成望 前途喜又寧 貴人相助處 祿馬照前程」
(古きを捨てて新たに望まば 先に喜びありて安らかに 観音菩薩の御力受けて 宝を馬に行手明るし)
-----------
【総 合】努力を惜しまず、神仏の御加護・お導きに従って進めば、幸ありて前途は明るく開ける。過去にこだわってはいけない。
【願 望】かなうべし
【病 気】回復する、名医に付くべし
【待 人】来る
【失 物】出る
【縁 談】急いでよし
【売 買】利あり
【その他】旅立ち、家移り吉

ということで、まずまずと言う内容というべきか。
ただ、この「吉」という同じ文面でもえらく差があるのがこの籤の特徴だ。

以下、同じ「吉」でもどんな文面があるかというと……

追記
posted by 曲月斎 at 01:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月19日

買ってきた本。

きょう買ってきた本。このごろ、物忘れが酷い。
天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書 1977)
天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書 1977)

今上天皇も宝算を重ねてもう70歳代後半である。大内山から漏れ聞こえる「ご公務」の煩雑さが少し気になって。ま、入江相政が書いた随筆で大体は知っているつもりだけど。

滅びの遺伝子―山一證券興亡百年史 (文春文庫)
滅びの遺伝子―山一證券興亡百年史 (文春文庫)

昨年の米バブルの崩壊のひな形を往年の山一がなぜ市場という舞台から退場し、野村がリーディングカンパニーになったのかを探るという趣旨。どうも獅子文六の「大番」が好きな小説の一つなので、この手の話には弱い。

ご近所富士山の「謎」 富士塚御利益散策ガイド (講談社プラスアルファ新書)
ご近所富士山の「謎」 富士塚御利益散策ガイド (講談社プラスアルファ新書)

大学時代、浅草のミニ富士の山開きに行くのは恒例だった。いま、住まいから東を見ると、高草山の脇から頭だけ見える富士山。位置によっては本当に雄大に見える。その富士信仰の淵源を平易に書いてありそうなので。

東京フレンチ興亡史  ――日本の西洋料理を支えた料理人たち (角川oneテーマ21)
東京フレンチ興亡史 ――日本の西洋料理を支えた料理人たち (角川oneテーマ21)

これは店頭で見付けた。天皇の料理番秋山徳蔵から村上信夫、小野正吉の時代、そして今の三國清三に至るまでの系譜の概説。ちょっと面白そうでしょ。

山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)
山口組概論―最強組織はなぜ成立したのか (ちくま新書)

これは今朝の何かの新聞の書評で見付けた1冊。4万の組員を抱える指定暴力団山口組の成立過程を追った本とのこと。ちょと期待してしまいます。
posted by 曲月斎 at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 積本抛讀 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

8ミリビデオ

3P6-120HMPL.jpgご存じでしたか?
8ミリビデオが店頭から姿を消していることを。

消えてしまった訳ではありません。
でも、どうも世間ではハンディカメラ用の媒体に特化してしまったらしいんですな。

小生は今でも番組の録画や複製には8ミリビデオを愛用しています。
でも、レンタルビデオ屋にはまずない。
大型量販店に行っても、ビデオテープ売り場にはなく、ハンディカメラ売り場にこっそりと置いてあるくらい。

ある程度、個人映像の記録媒体なので、生産は続けられるのでしょうが、なにかベータビデオの末路を見るようで寂しくなってしまいましたな。そういえばベータビデオのテープ、プロ用には生産が続いているんだろうけど、店頭で見ることはなくなりましたな。

PCの記憶媒体ではZIPというのも消えましたな。MOも風前の灯。何しろ、ここまでHDDが安くなってしまうと大量のデータもそれにぶち込んでいればいいわけで。


posted by 曲月斎 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月18日

梅津神楽/川根本町

翁の舞1.jpgこの週末は川根本町に梅津神楽を見に出掛けた。
接岨峡温泉会館で毎年、催されるこの神楽。大井川を挟んで大間の若宮神社と梅地の郤[谷令]石(こだまいし)神社の神楽が隔年で開催されており、今年は若宮神社の番。
神事自体は昼過ぎの湯立てに始まっているのだが、見物に出掛けたのは午後6時半ごろ。神楽は午後5時くらいから始まっている。

このエリアの神楽、笹間も徳山も藤枝の滝沢も高根白山も、基本的には駿河神楽といわれるごくきれいな藝能だ。笛のメロディーは基本的にはほぼ3つ、合いの手に太鼓が入る。採物(手にするもの)は刀、幣、鈴、弓矢といったもので、ほぼ同じように四方+天を意識したステップを見せる。

で、梅津神楽で楽しかったのは「翁の舞」と「金丸の舞」。どちらも折口信夫が言った「まれびと」の存在を連想させるものだからだ。

まず翁の舞。曲がりくねった枝を杖に、俵を背負った老人が客席後方から登場する。前の番組の恵比須大黒の舞のうちの恵比須を呼び止め、昔語りをしようと言い出す。
自分はきょうこの地で神楽があるということ高天原から来たのであるが、まあ立派に飾り付けてあることよ、と場を誉める。ここは決まりの文句。真ん中で恵比須とのやりとりが即興の部分だ。この日は「エアメールで送った荷物はないか」と柳行李や茶葉を摘んだものを入れる袋を出させ、自分の背負ってきた俵の中と加えて、人形を客席に撒いた。
次に俵の中から擂り鉢、1合枡と1升枡、大根を出し、「氏子繁盛、蔵前繁盛」と言い出す。座った恵比須に擂り鉢を膝元に傾けて据えさせ、自分は腰から下げた山椒のすりこぎで男女和合の姿だと性交の様を見せる(つまり擂り鉢が女陰、擂り粉木が男根という訳)。「今夜帰ったら実行するように。氏子繁盛じゃ」など言い、もどきの部分を終える。そしてさらに口上の下段部分。ここは決まり文句を言い、そのまま恵比須と共に舞台から下りる。

まさに余所から来た神、折口信夫が提唱した「客人神」のありようそのままに思えた。

写真とこの続きはまたあした。
posted by 曲月斎 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 街角辻辻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月12日

河馬続報

中島敦の河馬の漢詩。
ちくま文庫版の全集1巻目に出ていました。

春河馬 二首
悠々独住別乾坤 美醜賢愚任俗論
河馬檻中春自在 団々屎糞二三痕

春昼悠々水裡仙 眠酣巨口漫垂涎
佇眄河馬偏何意 閑日閑人欲学禅

確かに2首目の方はちょっと出来がよくないはな。
それより、「元町プウル所見」と題して、坊主が泳ぐ姿をスケッチした短歌も出てきた。
墨染めの衣にあらぬ海水着坊主プウルに飛び込まんとす

とかね。元町や中華街界隈を詠んだ歌も出てくる。
地元でも忘れられているけど、もう一度見直してもいいよね。中島敦は。

そういえば、横浜時代の仮寓は中島敦の勤務先の隣でした。
posted by 曲月斎 at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「八甲田山」遺聞

GOOD LUCK!! DVD-BOX
GOOD LUCK!! DVD-BOX


何でか分からないけど、この人のアホみたいなドラマが見たくなる時がある。総じて正月とかの再放送を見て、見てみようかなという気になる訳で。
評判になった時から考えると周回遅れもいいところ。

でも、役者が臭くても、ホッと何か残る台詞が時々あるんだよね。
HERO 全巻(1〜6)セット [DVD]
HERO 全巻(1〜6)セット [DVD]

という訳で、正月の影響で、このDVDを見始めたところ。
今さら、何ですけどね。
レンタル屋さんも様変わり。
月会費で自宅に宅配してくれるようになったらしいね。
今まで延滞料で稼いでいたのに。これも無店舗の人件費なしの方が安く上がるってことでしょ。何かいいんだか悪いんだか。

ところで、「ソフトバンク」の携帯のCM。
八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]
八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]

の主題曲をBGMに使っていて、お父さん犬の声がこの映画の主役の1人、北大路欣也というのもあって、久し振りに見たいのだけど、レンタルしていないのかな。
近所のTSUTAYAでは見付からないんだけど。久し振りに見てみたいなぁ
posted by 曲月斎 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 銀幕緞帳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月11日

「浮世絵」

カラー版 浮世絵 (岩波新書)
カラー版 浮世絵 (岩波新書)
浮世絵、というと何を思い浮かべるだろう。
永谷園のお茶漬けのおまけ?
北斎の赤富士?

ともかく、どうあれ浮世絵というのは一種の日本が生んだ文化だし、その実態についてどれほど知っているのだろう。
もちろん、作家は知っている。歌麿、広重、北斎などなど。
だが、本当にその歴史、題材の意図、制作工程、検閲体制、市中での流通まで俯瞰した本というのは実際には未知のことが多かった。
本の前半部分、歴史くらいまでは小生も知っていた。でもその後の題材の変遷以降の話はぼやっとは知っていても、こういうシステムであったというのはこの本が初めて教えてくれた。

この値段でこういう入門書が出るというのは岩波新書の底力だろう。最後の方で「本物の浮世絵を手にすることはそれほど難しいことではないし、それを手にして絵柄はもちろん、刷りの技巧などに目を配ってほしい」というようなことを筆者が書いているが、日本の誇る美術の身近さを見直すきっかけにもなった。
posted by 曲月斎 at 10:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

トンカツやの赤だし

tyoya1.jpg静岡・呉服町のとんかつ屋「蝶屋」にまた、出かける。
このごろ、とんかつよりもメンチかつの方がうまいと思う。
そんなことはさておき、ここの赤だしが何とも懐かしい。

中の具は豚肉の切り落とし。細かいさいころくらいの大きさのかけらがたくさん入っている。

昔、横浜の関内に「とん亭」というとんかつ屋があった。
ここで出前を頼むと小さな密封容器にこんな赤だしを入れて持ってきてくれた。

ご家庭では作れない赤だしである。
つい、お代わりをしてしまうのであった。
posted by 曲月斎 at 01:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 美食飽食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「カバに会う」

カバに会う―日本全国河馬めぐり
カバに会う―日本全国河馬めぐり
坪内稔典先生の日本全国カバ巡り。
日本には今、カバが60頭いるそうだ。
全国津々浦々の動物園にカバを訪ね歩くネンテン先生、実に楽しそうである。

還暦を前に、カバのようにありたいと思っての巡歴である。「気分が沈滞すると言葉も元気を失う。感性とか思考とかも鈍る」という訳で、カバ巡りを決断するのだから、さすがとしか言いようがない。

何しろ、甘納豆の連作といい、自作を語るで「水中のカバが燃えます牡丹雪」を取り上げ、「炎天やぐちゃっと河馬がおりまして」「横ずわりして水中の秋の河馬」「正面に河馬の尻あり冬日和」と四季の河馬を詠んでいる御方である。

1匹ずつ訪ねていく先々でネンテン先生、あれこれと述懐する。最後は夭逝の作家中島敦が河馬好きで短歌に漢詩まで詠んでいることに及ぶ。
悠々トシテ独リ住ム別乾坤
美醜賢愚ハ俗論ニ任ス
河馬ノ檻中春自ラ在リ
団々タル屎糞二三痕

いい詩ですわな。山月記とか李陵とか、硬い印象のあったこの御仁、こんな詩も残していたのかと思う。

そういえば、私事にわたるけど、初めての海外旅行がケニア、タンザニアだった。
それでタンザニアのンゴロンゴロ国立公園、クレーターの中の沼地にいる河馬が何ともうらやましく見えたのを思い出した。せめてもとソープストーンとかいう石の河馬の彫り物を買ってきたけど、今はどこにいったのだろう。

河馬、いいもんだ。ところで今は野毛山動物園には河馬がいないみたい。上野動物園くらいしかいない。貴重なんですな。
posted by 曲月斎 at 01:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月05日

和田浦行

車で帰ってきているので、和田浦に出掛ける。
往路はアクアライン経由。
館山道が完成しているので、すこぶる快適である。
海はまるで日曜のように大混雑。
小生のようなヘボが入る余地はない。

この日、泊まったのは港のそばの民宿長吉。
窓から見える海のさまが何とも春の海という感じでよかったなあ。

で、師匠のところを辞去して、そのまま千倉から白浜へ。
快調な道だ。
そういえば、初詣でをまだしていない。
ところの一之宮安房神社に参ることにする。
なぜか警官が出て、交通整理。拝殿は鉄筋コンクリート作りだったのだが、それ以外はなかなかの風情。
DSC005021.jpg
そのまま道を進むと洲崎の辺りで、洲崎神社の前にも「安房国一之宮」の標石。こっちの方が海の道を考えた時に、ふさわしいのかもしれない。

さて、そのまま館山に向けて平砂浦を行く。波がサイズアップしたときにサーファーが集うところだけど、この日は真っ平ら。鏡ケ浦もその名通りに波静か。

那古船形まで来て、そう那古寺っていったことがないと思い、立ち寄る。坂東三十三カ所の結願寺。寺の鐘を撞く。ちょっと高台、海に響くようなつもりで撞くと気持ちがいい。小さな多宝塔が何か良かった。
nakoji-00011.jpg

それで、しばらく行ったら崖の観音というのが見えた。鳥取の三仏寺投入堂のような断崖にへばりつくように建てられている。今度来たらば、よってみることにしよう。

保田の交差点まで大渋滞。というのは右折する鴨川向きの車と左折する金谷向きの車がわずかな右折車線しかないので、詰まってしまうんですな。そのまま金谷からフェリー。わずかに我が愛車は3メートル超。料金がだいぶ上がってしまうのにちょっと無念。

フェリーの後をカモメがしきりに追い掛けてくる。乗客がエサをやるのと、水面に浮かんでくる魚を狙うのか。なかなかいい景色だった。

車を持っていると全然違うね、景色が。
posted by 曲月斎 at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 街角辻辻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月02日

「破戒と男色の仏教史」

破戒と男色の仏教史 (平凡社新書)
「破戒と男色の仏教史」

 「一稚児二山王」とは能「大江山」の中に出てくる一句だが、比叡山を開いた最澄が初めて山に登った時、最初に稚児に会い、次いで山王に会ったと伝える故事から転じて、比叡山の僧侶たちが山王権現よりも稚児を愛し男色に耽ったことを嘲っていう慣用句とは知らなかった。
 日本の歴史の中で男色が語られることは少ないけど、基調低音のように当時の常識としてはあったことが分からないと意味合いが分からない。例えば平家の若公達を主人公にした修羅能「経政」も仁和寺に在ったときに法親王と衆道の契りがあったとした方が意味合いが深くなる。
 で、この1冊は僧の戒律から説き起こし、鑑真が伝えた戒律とその意味を解き、国立の三戒壇と最澄が開いた延暦寺の戒壇の差、成仏と往生の差から、さらには当今の葬式仏教からは想像もできない立場、当時の僧は死穢を忌避し葬儀に関わることがなかったという立場の説明などに及ぶ。そして東大寺別当にまでなった宗性という僧が男色に耽っていた話から、仏教界で男色の通用が常識だったという話。さらにはその破戒をもう一度、本来のものに戻そうという動きの中で、西大寺の復興に尽くした叡尊や鎌倉の極楽寺などに関わった忍性などの僧の存在、さらに持戒を主張する方向と、親鸞のように「無戒」を主張する方向に分かれていく姿まで概説している。そして最終章は徳川幕府の下で行われた寺院統制政策の下での仏教界のありように及んで終わる。
高野聖 増補 (角川選書 79)
「高野聖 増補」

 今、葬式仏教といわれる日本の仏教のありようを考える時に、以前に取り上げた五来重の「高野聖」と共に、「戒律」というキーワードを元に解きほぐしたこの本は好個の1冊だった。
posted by 曲月斎 at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月01日

元日や。

 元日、である。
 今年は未明に夜遊びをしなかった(例年だと横浜のバーに知人と出掛けるのであるが、何しろ寒かったのである。という訳でこの恒例行事はあっけなく取り止め)ので、そのまま母と屠蘇を祝う。
 車で担いで帰ってきた志太の銘酒「初亀」はやはり美味い。正月の煮染めとかで酒を飲むって結構幸せであります。ま、母親も元気で居てくれるので感謝。
 夕方、弟夫婦が来て、一緒に屠蘇を祝う。無事に暮らしているようでひと安心。
 とかくするうちに一日は暮れて2009年が始まった。元日というと思い出すのが芥川龍之介の句。「元日や手を洗ひをる夕ごころ」
 何か毎度のようで、情けないけど、この句に戻ってしまうんだな。
 ネットではこの句も挙がっていた。「混沌として元日の暮れにけり」尾崎紅葉
 という訳で今年もよろしく。
posted by 曲月斎 at 23:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑事雑用 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする