2008年11月25日

「京都、オトナの修学旅行」

京都、オトナの修学旅行 (ちくま文庫 あ 10-19)
「京都、オトナの修学旅行」

元番頭サンお勧めの1冊。

赤瀬川原平と山下裕二のコンビシリーズの中の2冊目になります。修学旅行の定番、京都をおぢさんの目で見直すとどうなるのか、という対談集であります。2人で出掛けていってその感想を語り合うというスタイルが結構、ツボを押さえている内容になっています。

ものを説明する時に、「見立て」の腕前がものを言う。その点で赤瀬川原平というのはその達人だし、山下裕二もその見立てを補足するだけの説明ができるところが、この対談の妙味だ。

金閣寺。成金趣味で観光客目当ての好感の持てる寺だとは思っていなかったけど、「正面の建物は金閣です。金閣寺ではありません」という立て看板に触発され、「金梨地にレザー貼りのカメラみたい」と見立てる。執事長が「みんな金に魅せられて見にくるんだからその期待に応えなくてはいけない」という気概を見せているというのがおかしい。

二条城。「ゼネコン狩野株式会社の大仕事」という見立て。狩野探幽がゼネコンの若社長というのがおかしい。確かに信長、秀吉、家康と時代の主が変わる中で、その組織を維持しなくてはいけないのだから。その工房を支えた手腕という視点は再評価されてもいい。「慇懃無礼の極致」という評価が適切過ぎて何も言う言葉がない。

平等院。「平安貴族が夢見たサンダーバード基地」という。考えて見れば都は常に戦乱の渦中。この前の大火が蛤御門の変だという感覚は別にして、現実問題として建物は残らない。中でこの寺は創建当時の風合いを残しているわけで、それをハイテクで守りながら見せるという寺の運営姿勢。実に面白い。

という訳で、樂美術館(本当は神戸の香雪美術館も)、銀閣、待庵、嵐山、清水寺などなど次々に題材に取り上げている訳で、その珍道中ぶりが何とも快感であります。

確かに修学旅行っていっても、何がなんだか分からないうちに廻っている訳でしょ。訳知り顔の中学生、高校生が居たら逆に気持ち悪い。大人になっていってみるというのはある意味で、知識も了見も備えた上で見るという点で面白いと思う。もう自分の人生の残りを賭けてもこんな建物は造れないと思うこともあるだろうけど。

☆2つ。


posted by 曲月斎 at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「静かなノモンハン」

静かなノモンハン (講談社文芸文庫)
「静かなノモンハン」

小説は普段、読まないのだけど、この1冊は買ってきた。

目的は巻末に付いている伊藤桂一と司馬遼太郎とのノモンハン事件についての対談。半藤一利などが司馬のことばをよく引用しているが、どういう形で吐かれたものなのか、興味があった。つまり対談の部分を読みたいから買ってきた。

騎兵出身の作者と戦車兵だった司馬。わずか17ページの対談だけど、「日本人はどこかでノモンハンをやっている」という司馬の警句が後味として残る、いい対談だった。

この部分を読むつもりだけでも、値打ちかな。
posted by 曲月斎 at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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