2007年12月26日

「浮動票の時代」

「浮動票の時代」
元逗子市長の著書。
フジテレビの記者から鎌倉市議に転身し、さらに逗子市長に転身した筆者の市長時代の回顧録。

回顧録というのが適切ではないが、官僚と呼ばれる組織、議員と呼ばれる人種に徒手空拳で立ち向かった人間の怨念の記録というべきか。

筆者が言うのは、無党派の時代であり、地方行政の現場にあって、何の支援もない市長は人事権を武器に官僚組織に立ち向かい、議員に対しては民意という名のマスの圧力をかけていくしかない、という逸話の集積である。

地方議会を見ていると、何でこんなに議員がいて、何でこんなに役人がいるのかと思う時がある。まして議会でこんな程度の発言しかできない人間に、税金から給料を払っていると思うと情けなくなるときがある。そういう傍観者、あるいは伴走者がいつしか、自分が走りたくなってしまって走った結果を描いている本、といえるかもしれない。

言ってみれば、逗子なんてお気楽な自治体だ。納税率は高く、住民の意識も高く、これといった産業もないけど、食うには困らない、というところ。その首長になったからといって、何が分かるのかという木がする。長島某が知悉しえたと思っているのは、行政の何分の一でしかない、という高笑いが行政マンから聞こえて来そうな気がする。

それでもただ一つ。人事権というのは大したものなのだ、ということはよく分かった。
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「大人の見識」と「昭和陸海軍の失敗」

「大人の見識」

という本がそこそこ売れているらしい。
というのは、町場の本屋で探したが2軒目でやっと手に入れることができたということからもしれよう。
この本の論理は明々白々。簡単に言えば、旧日本海軍はよかった、日本人は軽躁の気味があるので気を付けた方がいい、論語は読むと役に立つ、の3点。
この論点の中で、軽躁の気質があるというのは否めまい。自分の知る限りでも、たかが相撲の問題で百家争鳴、吾こそは一言居士という人間が何人乱立したことか。
たかが15尺の土俵のことだ。大の大人がまじめくさって語る話ではない(モンゴルの人の話の件に関して、である)。
阿川先生は個人的にはすこぶる好きな作家のひとりであり、「論語知らずの論語読み」など、秀逸だと思う。しかし、話が正直のところ、事実を美化しすぎている気がする。

「昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか」
という本を読むにつけ、旧日本陸軍の英才教育もほめられたものではないが、旧日本海軍のそれも決して称揚されるべき筋合いのものでもないというのがよく分かる。
この本がいい、と軽躁に走りがちな気分を抑制してくれる1冊である。

そういえば、新潮社の機関誌で阿川弘之が「温故知新」と揮毫していた。本当の温故知新、ということを考える意味でこの2冊を読み合わせるのは楽しかった。

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2007年12月21日

「骨董掘り出し人生」

「骨董掘り出し人生」


開運なんでも鑑定団の中島誠之助が書いた自叙伝。

幼くして両親を失い、養父母とも別れ、骨董屋の修行を選ぶ前段から、骨董屋として一家をなし、その店を畳んで次の人生に歩み出すまでを綴っている。

この人の本は割合、スノッブな感じがする本が多かったように思うのだけど、自分の来し方を考える年になったというべきなのかもしれない。

本の内容自体は波瀾万丈、すこぶる面白い。丁々発止のやりとりを期待するなら、「ニセモノ師たち」あたりの方が面白いかもしれない。でも、半分、眉につばを付けながら、読んでいく上には角の少ない、上々の仕上がりになっている。

帯にあるような「豊かな知恵と生きるヒント」とは思わないけど、ちょうど新幹線辺りで読むにはちょうどいい1冊かもしれない。

一度、機会があれば話をしてみたい人物ではある。
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ミシュラン 東京2008とそのほか

「3つ星ガイドをガイドする」


やっと評判のミシュランが手元に届いた。

パラパラとめくってみて、いったことのある店は1軒だけだった。
そんなガイドブックが異例の売れ行きを見せているというのが意外な感じを受けた。

唯一、いったことのある店、銀座の竹葉亭については「自然体で日本の情緒を寿ぎ、愛でることのできる店。和服を着た女性従業員の応対やサービスも親切だ。座敷は予約が必要。入り口が別になっているテーブル席ではうな丼が昼夜ともに手ごろな値段で楽しめる」とある。確かにその通りである。

で、山本益博の本では、結構、そのミシュランの本の評価を当てていると同時に、独自の評価もしている。例えば麤皮。「思わず自然の恵みに感謝したくなる」とミシュランも評価しているが星は一つ。日本人のいわゆる評論家との感性の差、基準の差を見せる。

山本の本と読み比べてみると、うまいということを表現するのに、どういうテクニックがあるのかを教えてくれる赤い教科書、という意味合いが見えてくる。店の紹介も簡潔で楽しい。

その店に行けるかどうかは別にして、ミシュランの楽しみ方が見えてくる1冊かもしれない。
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2007年12月16日

「ワイはアサシオや」

「ワイはアサシオや」


名作。
今回、双葉文庫で再刊されるのに当たって、本の帯に「この親方にしてあの弟子あり」とあるけど、本当に言い得て妙。

アサシオ、つまりは今の高砂親方であり、あの大ちゃんと言われた現役時代を振り返ると、まさにこう戯画化されても仕方のないキャラクターだった。

この前も、朝青龍の問題でモンゴルに渡った時に、「ツルッツル」との名言を吐いたが、この考えの回路の根底には、自らの歩いてきた道があるのを思い知る。

もちろん、漫画だから真実ではない。しかし、真実を描いたものよりも、デフォルメしたものの方が正鵠を射たものになることもあるのは承知の通りだ。もちろん、あの横綱に関しては、小生はもう土俵の上に存在していない、という感覚だが、ここまでのドタバタを予見したかのような漫画に漫画家の眼力の鋭さを思う。

中に、千代の富士に負けて、布団を被ってしまう北の湖も出てくるけど、まさにそれ。説明責任などという言葉はさておいて、今の姿に重なってくる。秀逸。
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2007年12月10日

「華より幽へ」観世栄夫

「華より幽へ―観世榮夫自伝」


今年、他界した観世栄夫の自伝。結局、聞き書きを進めている途中で、逝去してしまったので、未完なのだが、肝心なところは書きつづってある。

兄・寿夫、弟・静夫と共に、戦後の能を支えてきたといっていい人物の自叙は、なかなかに興味深い。特に、喜多流に転向した理由や、能楽協会からの脱退、そして観世流に復帰するまでの心構えがなかなかに面白かった。

兄寿夫が自分の家で能を深め磨いていったのに対して、栄夫はその藝を磨くためにありとあらゆる手段を使っていった、ということだろう。そして静夫が銕之丞家を継承するということで能をまとめ上げていったというところか。

この3兄弟の本、それぞれに三者三様の生き方だが、同じ方向のベクトルであるというのは、藝を継いできた家の人間の性、というべきか。

ともあれ、遥か昔。栄夫師が「学生諸君、ビールでも飲み給え」と芝居がかった声を掛けてきたのを思い出す。
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2007年12月09日

正力&やぶや S市

どちらも本通からちょっと裏に入った一角にある居酒屋です。

正力は本当に美味いです。豚足の焼いたのを「おもろ」といって出しているのですけど、これは筋に丁寧に包丁が入れてあるので、箸でちぎれます。で、ポン酢にラー油の入ったタレが合う。酒は杉錦一本。いつも、お茶割りを飲む方が多いですな。

この前はマグロのステーキとか、白子の塩焼きとか。酒の肴、という感じがすごくうれしい。

で、もう1軒のやぶや。看板は泥鰌です。
といっても、東京の駒形とか、伊勢喜のような太い泥鰌ではなくて、普通の店で売っているような、小指くらいの太さの泥鰌です。

丸鍋もあれば、開きも柳川もあるんですが、ここは丸鍋で。ただ、ネギがぶつ切りなので甘くなってしまいます。2鍋目は薬味でもらいました。ささがけのゴボウも入っていて、実に結構なもんです。

島田はこういう店があるんで、なかなかに侮りがたいものであります。
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香蘭 F市

kouran_photo.jpg
藤枝東高校の校門に曲がっていく角にある中華料理店である。

アバンティのマスターが「ここの焼肉丼はうまいよ。あと餃子も。本当はあと肉団子がうまいやあ」と教えてくれた。

ひらべったい丼に、ちぎったレタスが敷かれ、その上に、肉とタケノコ、ピーマンを炒めたものが乗っかっていて、上にカイワレがぱらり。紅ショウガが添えてある。これだけである。

でも確かに妙に美味い。餃子は普通だと思ったけど、この焼き肉丼は750円、お値打ちである。機会があれば行ってみる値打ちはある。

場所は白子の商店街の中。
posted by 曲月斎 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 鯨飲馬食 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「イッキ乗り」

「イッキ乗り―いま人間は、どんな運転をしているのか?」


以前、紹介した「運転」の続編。同じくNavi誌上での連載をまとめた1冊だ。

1冊目が結構、おおっという感じのものを多く取り上げていただけに、2冊目も面白いのだけど、驚きは少ない。

それでも、新幹線や重ダンプ、ボンネットバス、鉄道車輌の運送など、取り上げているものでは、それなりの筆致で書き進めているので楽しい。取り上げている中で、輸出車積み込みドライバーの話が出てくる。これで驚いたのが64万台扱って、こすったのはわずかに2台だけ、という話。もっとも、これは事前に資質みたいなものを見極めて、仕事に就けさせるそうだから、その点で、小生などは、その資質がないのは言うまでもない。

それと、文庫とちがって、写真が綺麗なのがうれしい。1冊目の方も、文庫でももっと写真を掲載してくれていたら、と残念に思った。
posted by 曲月斎 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 汗牛充棟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

ストーブ登場。

3652l.jpgやはり寒い。12月である。

そこで登場したのがストーブ。去年、千葉の家用に買ったものの使わずじまいになっていたのだが、今年は転宅を機に引っ張り出してきた。石油ストーブを使うなんてもう何十年ぶりになるのだろう。

近所のDIYストアで石油タンクとポンプ、灯油を買ってきて、給油して点火。やはり、ほわっとした暖かさがいい。そして何よりも火が揺らめくのが何ともいい。

世の中にはブルーフレーム好きという向きもいらっしゃるようで、hpを開設しておられる。かつてはヤナセが輸入していたように記憶しているのだが、今は日本エーアイシーという兵庫の加古川の会社が発売元になっている。作りが全体にちゃちになった気もするのだけど、やはり石油の嫌なにおいがしないのは今も優れもの、である。
posted by 曲月斎 at 02:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 身辺雑事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「鉄道唱歌のすべて」

「鉄道唱歌のすべて」


キングレコードお得意の「××のすべて」シリーズの最新版、である。

昨今の鉄道ブームに当て込んでの企画のようだ。鉄道唱歌といえば、ご存じない向きにご説明申し上げれば、JRの特急などの車内放送で案内の前に流れるジングル、あああのメロディーね、ということになるだろう。

この当時は、一つの詞に二つの曲、という形で出版されていたそうな。当時といっても明治のこと。で、このCDでは普通に耳慣れているメロディーのほかに、幻となっていた曲による吹き込みもしている、というのが第一の売り。で第二が、例によって東アジアにこのメロディーが流布して、別の替え歌になっている、という話。韓国、中国、モンゴルと紹介している。

で、肝心の鉄道唱歌だが、ダークダックスが1972年に「ダークダックスによる日本唱歌大百科」のために吹き込んだものが収録されている。これはこのグループ結成20周年を記念して3年がかりでLP6枚に唱歌を吹き込んだものだったのだけど、東海道編聞けば、本邦初の全曲録音だったそうだ。

しかし、企画は面白いのだけど。どうもキングレコードさん、お手軽でいけません。ついでのように発売したのが下のCD。

「鉄道唱歌 全曲 地理教育 鉄道唱歌 全5集334番」


鉄道唱歌は大和田建樹が全5集、作詞をしているのですけど、そのすべてをボニージャックスに歌わせた、というものです。しかし。伴奏はすべて上のダークダックスのものを流用。メロディーの違う北陸編だけ新規の録音です。しかも、同じ男性4部合唱ですけど、そのパートの振り方、ユニゾンの美しさなど、いかにも歌ってはいるのだけど、企画を練ったという感じではありません。伴奏のアクセントの付け方も、ダークダックスのものの場合は詞の内容に合わせて上手く作られているのに、後者は如何にも歌を載せました、という内容。

CDの企画なんて、考えたこともなかったけど、こういうところで自社のデータを流用するにしてもきちんと仕立てるかどうか、本当は問われているところだと思うのですけどね。
posted by 曲月斎 at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 天象乃音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする